1話
ここは竜の魔女ジャンヌ・ダルクの拠点オルレアン。そこでは巨大な魔方陣が描かれていた。
「ジャンヌ。言われた通りにしましたが、いったい何を呼ぶおつもりですか?」
キャスター、ジル・ド・レェは己が生み出した仕える彼女に聞く。もう既に邪龍の召喚は済んでいる。
「ファブニールを触媒にするのよ」
彼女。ジャンヌ・オルタは当たり前のように言った。
「なんと。ですが、かの邪龍であれば戦力としても申し分ないと思いますが?」
「確かにそのとおりね。でもね、邪龍は英雄に打ち滅ぼされるのよ。天敵となる英霊が現れる可能性がある以上、より確実な手駒を召喚するべきではなくて?」
「なるほど。それは御尤もです。さすがジャンヌ・ダルク! ではいったい何を呼ぶおつもりですか?」
ファブニールを打倒した英雄はジークフリート、またはシグルドが当てはまる。仮にこの二人を召喚できれば、竜属性を従える彼女の配下にできるだろう。
「あれよあれ。ファブニールの元になったやつ」
ファブニールの元、という言葉を聞いたジルはほんの少しだけ顔をしかめた。
「もしや、『黒龍伝説』の龍ですか。ファブニールと違い倒した英雄の伝承はありませんが、御伽噺でありますから不可能と思いますぞ?」
ジルの疑問はもっともだった。黒龍伝説やそれに関連するかの物語は表と裏の世界でも御伽噺と見られているのだ。実在しないものをどうやって呼ぶのか。
「馬鹿ね。あなたそれでも軍師? バーサーカーを見なさい。それを狙うの」
「……おお、そういうことですか。素晴らしい発想ですぞ。ジャンヌ」
バーサーカー・ヴラドⅢ世。彼はスキル『無辜の怪物』という人々の思い込みによって、人間だが吸血鬼としての側面を望まずして得ている。それと同様に、例え御伽噺でも語り継がれてきたそれは、確かに人々の記憶に刻まれている。それを利用する。
「どうでもいいわ。始めましょう」
魔方陣の中心にファブニールを配置し詠唱を始める。邪龍ファブニールは古くに存在する御伽噺、『黒龍伝説』に出てくる龍がもとであると一部で言われている。ただ分かっていることは、この伝説は世界各地に語り継がれていること・西洋世界のドラゴンの姿の原点であるということ、そして―――
「………あら?」
詠唱を終えた。魔方陣も光り輝いた。だが、何も出てこなかった。
「ちょっとジル! どういうことよこれ!?」
「召喚失敗でしょうか? やはり黒龍は無理でしたが何もでないわけが―――」
言葉をつづけようとしたが、体の全て、髪の毛さえも硬直した。殺気、途轍もない何かに睨まれている。
「ガアアアアアアッ!!??」
邪龍の悲鳴と同時に途轍もない振動が発生する。それはオルレアンだけでなく、フランス、ヨーロッパ大陸を揺らした。地震がないヨーロッパ大陸にすむ人々は地面が揺れる現象を体験し、パニックに陥るなど大陸各地で発生した。
「こ、これは、なんと……!」
「ガッ、グゥウ、ガアァッ!!」
邪龍が苦悶の声を出す。ジルは邪龍ではなく、その上の邪龍に乗り潰しているそれに驚愕した。
黒いドラゴンだった。外見の特徴は邪龍と同じ、邪龍より少し小さく見える。背中と翼に生えた巨大な棘、頭の4本の角の存在がより禍々しさを際立たせる。そして何より、邪龍を遥かに上回る圧倒的存在感と強烈すぎる殺気。
「■■」
「ガびゅっ」
黒龍は邪龍の頭を踏んだ。殺す目的はあったのかもしれない。ただ、その一手は遅く見ている側からすれば、うるさいから黙らせただけの行為にしか見えなかった。たったそれだけで潰され、人々に恐れられた邪龍ファブニールはあっけなく死んだ。
「は、あははは! ほら見なさい私の言うとおりだったでしょ!」
手駒の一つを殺され消滅したにも関わらず、ジャンヌ・オルタは歓喜の声と感情を隠さず出す。それは自身の思惑通りに事が運んだからか、それとも新しい玩具を得た喜びからか。黒龍が竜の魔女を見る。
「さあ! 絶望をまきr」
ごう と風の音が唸る。もともと兵士でなく一介の村娘だったジャンヌ・ダルク、それをベースに作られたジャンヌ・ダルク・オルタや戦士ではなく元帥だったジル・ド・レェはその動きに反応できなかった。
「は? ジャン、ヌ……?」
ジルは隣にいたはずの彼女の名を口にする。彼女がいた場所は赤い液体と体の一部だけ転がっていた。そして、咀嚼音だけがこの場に響く。
「………お、おおおおおおおおおおおおおジャンヌ!? ジャンヌううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!?」
状況をようやく理解したジルの絶叫がオルレアンを包んだ。
ごくん
「■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!??」
ジルの声を掻き消す咆哮が響く。それはオルレアンにある城壁、建築物に罅を入れ、崩れていく。まるで空間そのものを破壊しているようにも見えた。
「よくもジャンヌをおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
キャスター:ジル・ド・レェの宝具が巨大海魔を生み出す。巨大な触手が黒龍に襲い掛かる。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
大きく開いた口から、頭部よりも巨大な火の玉が放たれる。触手を焼き、溶かし、灰にし、何も残さない。それは巨大海魔へ当たり、爆発した。肉の壁など意味をなさず、中にいたジル・ド・レェも例外なく吹き飛ばし、消滅した。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ !!!!!!」
黒龍は天に向け咆哮する。空間、大地、この世にあるもの全てを震撼させる。
澄んでいた青空は真っ赤に染まり、黒い雲に覆われる。
終わりが始まった。
第一特異点
人理定礎値 ???
黒龍終末決戦 ミラボレアス
「気になるか?」
アア
「ジッとしてくれよ頼むから」
サアナ
「はぁ……」
ミセテモラウゾ、イノチアルモノ
ぜんぜん書けねえな。次回は10年後にカミングスーン! キタイシナイデネ(白目)