真・恋姫†無双 魏伝『鄧艾の章』   作:雪虎

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第十三話:新人たち

今日も今日とて机仕事だわーい!・・・・・・・・これっぽっちも嬉しくねぇよ。

 

「南壁の修繕は李典と第三軍で応急処置を。本復旧に関しては後日、職人と相談するように伝えるんだ」

 

「北部に現れる賊の対処は陳泰に任せろ、それと郊外の物見櫓建築の進行状況を牛金から確認してくれ」

 

「陳留にいる荀彧にこの書簡を届けてくれ、それと曹洪から今季の予算案を受け取って来てくれ」

 

色々と言いたい事はある。

 

「夏侯惇隊の鎧と夏侯淵隊の弓、それに幾つか建設する予定だった孤塁の設計図と予算案を司馬懿へ届けろ」

 

「陳珪から上がってきた洛陽周辺の情報を趙儼に依頼しまとめさせろ」

 

だが・・・・定陶常駐の俺に!なぜ陳留側の案件や軍全体の仕事が来るんだ!?いや確かに軍部の頂点だけど!!誰か直属の補佐を寄越せ!!!

 

「鄧元帥、こちらの書類ですが・・・・」

 

どれどれ・・・・全部陳留側の陳情書じゃねぇかぁああああああああ!!!!

 

「■■■■■■■ーーーーー!!!!!」

 

「うわぁあああああ!!?鄧元帥がご乱心なされたぞぉ!!」

 

 

SIDE 景

 

「と言うわけで吼狼様の超過労働が深刻な状況に達しております。我ら飛雷騎の四将は各々持ち場があります故、吼狼様を満足に補佐する事がかないません。吼狼様専属で補佐する者の登用、もしくは陳留よりの異動を我ら飛雷騎総員の連名にて嘆願致します」

 

吼狼様は優秀なお方だ。武においては春蘭様と互角、兵を操れば比肩するのは華琳様のみ、内政においてもありとあらゆる事案を一人で片付けてしまえる。だが、吼狼様も人間だ。身は一つしか無く、限度と言うものが存在する。本来はそういう目的で栄華様の下から私が異動したハズだったのだが、吼狼様から「お前の力は補佐だけで使うのは勿体無い、俺に構わず自分の力を発揮してくれ」と望外の評価を頂いてしまっているがためにその役目を外れてしまった。

 

「そう・・・・思っていた以上に吼狼にかかる負担は大きいようね」

「はっ・・・・」

 

私は吼狼様は苦労性なのだと思う。どれだけ優秀な補佐を付けられても、その能力を認めてしまえば『能力を振るうに相応しい』場を用意し手放してしまう。『自分』が楽をするよりは『曹操軍』全体の益になるように、意識的にしろ無意識にしろ動いてしまっている。

 

「それにしても・・・・飛雷騎総員の連名、とはどこまでを指すのかしら?将官だけ?それとも・・・・」

「末端の兵、それと飛雷騎では無いのですが派遣されて来ている本隊の兵、北郷殿をはじめとした北郷隊もかなり名を連ねております」

 

そう、そして問題なのは過労気味である事をを直轄である飛雷騎だけでは無く一時的に本隊から派遣された者や不定期ではあるが出入りを繰り返している北郷殿、その配下にまで悟られていると言う事だ。

 

「ただ、吼狼様の性格上一度手放した者をもう一度補佐として・・・・と言うのは否とお答えになるでしょう」

「そうね、となると・・・・丁度良い子が先日入ったばかりなの、香風と季衣の推挙で併せて四人。定陶へ戻る時に連れて行くと良いわ」

 

香風殿と季衣の推挙、か。どちらの推挙もどのような人物か、予測は付けがたい・・・・と言うか季衣の方に関しては全く検討がつかない。あの武辺者からどのような人物が推挙されたのだろうか、と疑問しか浮かばない。

 

―――――――――

 

『と言う訳で華琳様から新人の武官二名、文官二名を預かって参りました。暫くはこの四名を補佐としつつ、育成を進めて欲しいとの事でした』

 

どういう訳だ、と言いかけてそれを飲み込んだのを覚えている。陳留から戻って来た景が、三人の少女を連れて戻って来た。んでどうやら香風推挙の文官二名と、季衣の幼馴染の少女をこちらへと寄越したみたいだ。その三人を部下として迎え、色々とあったが一ヶ月が経過した。

 

「吼狼様!真桜さんが!」

「あーほっとけ、どうせまた絡繰が爆発したんだろ?該当箇所の修繕費用の請求書を叩きつけとけ」

「えぇー・・・・」

 

典韋、真名を流琉。季衣の幼馴染であり、季衣からの誘いを受ける形で陳留へ。定陶に来るまでは秋蘭の下で兵法の基礎を学んできたとの事。今は俺の代わりに定陶の警備を務めてもらっていて、割と最近は見ることの少なかった新鮮な反応をしてくれるのでちょっと癒されてる。あとたまに作ってくれる料理が美味い、マジで。二日に一回は季衣が陳留から馬を飛ばして食べに来て、一ヶ月に一回は華琳が馬を飛ばして食べに来るぐらい美味い、両方とも一緒に飯食って説教してから帰らせてるけど。

 

「慣れる事が一番ですよ、流琉」

 

郭嘉、真名を稟。噂で聞いていた(どんな噂かは知らんが)華琳を慕い、友人の香風を頼って陳留へ。華琳もその才覚を気に入り登用、桂花の下に付けていた・・・・のだが。妄想癖が凄いようで、華琳との事を妄想すると洒落にならないぐらいに鼻血を吹き出すとの事。仕事が出来るだけに毎度毎度鼻血を吹き出して倒れられるのは勿体無い、だからと俺のところに寄越したらしい。まぁ華琳は月に二、三度しか来ないからな。その二、三度で鼻血吹いて倒れるけど。

 

「稟ちゃんの言う通りですよー琉琉ちゃん」

 

程昱、真名を風。稟と共に友人の香風を頼って陳留へ。悠々自適に振舞ってはいるが、何を成すにも抜け目無く、決断も速い上に空気が読める。稟との付き合いは長いようで、鼻血を吹いた稟の介抱をする風の動きは慣れた手つきである。見かけによらず交渉事も得意なようなので、かなり重宝してる。

 

「まぁいい、練兵場に行くついでに真桜に説教してくらぁ」

 

―――――――――

さて、黒焦げになった工房で黒焦げになった真桜に説教し、俺は練兵場へと来たわけだが・・・・

 

「おや、吼狼殿。何か御用で?」

 

白を基調とした装束を身にまとい、槍を片手に立つ少女。その周りには『飛雷騎』の、その中でも俺の隊の部隊長たちが打倒され、あちらこちらに転がっているような状況だった。

 

「訓練の様子を見に来たんだがな・・・・調子はどうだ?星」

「いやはや、流石は音に聞こえし『雷公』の直属。十把一絡げの自称精鋭とは違う、紛う事なき精鋭ですな」

 

趙雲、真名を星。仕官先を求め香風、稟、風と共に旅をしていたと言う。飄々とした態度で相手を煙に巻いたりする事も多いが、その内には確かに通っている一本の芯があるように思える。槍を握れば膂力では春蘭に叶わぬが速さで翻弄し食い下がるだけの実力があり、兵を操れば秋蘭のような鋭さは無いが臨機応変に動き軽々に崩されないだけの粘り強さをも併せ持っている。華琳と言う英傑を見極めるまでは手を貸す、と言う契約で仕官したようだ。今は俺の直属部隊を預かって貰っている。

 

「そう言ってもらえるなら何よりだ・・・・兵の方は?」

「ご指示通り、郊外へ走り込みに行っておりますよ」

「そうか・・・・お前ら立てるか?」

 

倒れふしていた奴らに声をかければ、何とか、と言った感じではあるが一人、また一人と立ち上がってくる。

 

「全員立てるな?郊外にいる兵と合流後、第三軍のいる砦へ。李典の指示で堤防の補強作業を手伝いに行け」

「「「「「はっ!」」」」」

「思っていた以上に頑健ですなぁ・・・・」

 

さっきまでは声一つあげられず、息を切らしていた連中が既に息を整え直し駆けていったのを見て星が呟いた。

 

「あいつらは俺の隊でも古参の連中だからな」

 

と言うよりも、暴徒時代から付き従ってくれてる連中だ。暴徒時代から始まり、定陶防衛戦、沛城救援、黄巾本隊との決戦。『鄧艾』と言う旗の下でずっと戦ってくれてきたヤツラだ。単純な武力は星のような手練にはまだまだ劣るが、生き残る事、耐える事に関しては劣る事は決してないはずだ。

 

「不思議なお方ですなぁ、吼狼殿も華琳殿も北郷殿も」

「俺もかい」

 

華琳と一刀が不思議なのは認めるが。

 

「それ故に興味が尽きない、それ故に中々に見定めきれず、ここを離れる事が出来ずにいるのですよ」

「なる程」

 

つまりはだ。

 

「俺と華琳、一刀が見定めきられない限りは確実に星はここにいる。ってぇワケだ?」

「まぁ・・・・そうなりますなぁ」

「なら簡単には見定められんようにしなけりゃなぁ」

 

星は武術も指揮も非凡なものを持っている、香風、稟、風の三人よりも以前から大陸を旅していただけあり広い見識もある。また真桜と同じく、将としての完成された精神を持っている。これだけの逸材は手放すのが惜しい、いや・・・・だからこそ華琳もこっちに寄越したのか?

 

「というわけでだ、俺はこのあと非番なんだが・・・・ちゃんと仕事をした部下には酒を奢ろうと思うんだが?」

「この趙子龍、一生涯忠誠を誓いましょう」

 

うん、今までにないぐらい気安い関係だが・・・・まぁ嫌いじゃあ無い。と言うか悪くない。そこそこに上下関係を保ちつつ、軽口を叩き合える。

 

立夏は若干、上下関係を投げ捨ててる部分があるし。

 

犹や由空、景はそこらへん堅いし。

 

近しいのは真桜だが俺の前だと比較的、上下関係を気にしてるみたいだし。

 

「さぁさぁ、近頃見つけたメンマの美味しい店があるのですよ」

「メンマねぇ・・・・ま、たまには変わったツマミも良いだろうさ」

 

うん、本当に悪くない。




第十三話でした。

星の魏参入フラグと星√フラグが立ちましたw

星は本家キャラの中でも一番の、無印時代からのお気に入りでして・・・・因みに二番目は栄華、三番目は霞姐さんですが。ですが革命シナリオが基点なので本来は星はヒロイン候補にすら上がらない・・・・なら、やってしまえ!と言う事でやってしまいました。反省も後悔もしていません(断言)。

そして吼狼のバーサーカー化案件。鯖化したら槍兵、騎兵、狂戦士と適正がありそうな気がする。槍と馬と軍勢召喚が宝具みたいな・・・・これどこの征服王?

と言うわけで・・・・次話あたりから徐々に反董卓連合編に入っていきたいと思います。思っている以上に日常編が苦手な事に気づく今日このごろ。

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