真・恋姫†無双 魏伝『鄧艾の章』   作:雪虎

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第十六話:連合

「雑多過ぎるし裏で色々あったのが眼に見えすぎだ・・・・もう少し考えやがれってんだ」

 

俺たち曹操軍はほぼ最後尾で到着した・・・・のだが、陣の並びがおかしい。発起人であり、三公を排出した家柄でもある袁紹が中央に陣取るまでは良い。だがその周囲を固めるのが公孫賛と劉備を除いた河北四州の諸侯たち、荊州刺史(劉表)の名代である劉埼、涼州太守(馬騰)の名代である馬超、幽州太守公孫賛と平原相劉備、淮南牧袁術ら袁紹に阿らない連中が外周に配されている。自分たちの思い通りになる連中を傍に、ならない連中を遠くにってのがアリアリと出過ぎている。

 

袁紹にその配慮が出来なくとも、その側近が最低限の配慮をするべきだろうに。

 

「私と春蘭、秋蘭、一刀、桂花で軍議に。その間の采配は吼狼に任せるわ」

「俺が行った方が良いんじゃあないのか?」

 

秋蘭や桂花に設営や他陣営の情報収集をやらせて、俺が軍議に参加した方が良いとは思うんだがな。

 

「いいのよ、覚えておきなさい。例え貴方が正論や良策を振り翳したとしても身分がどうのと正論にもならない幼稚な論理を家柄の力で圧してくるのが袁紹よ。普通なら愚挙と取られるそれを力で正しい行いにしてしまうのが厄介なところなのよ」

「そいつはまた面倒な事だ・・・・なら俺はこっちで色々やっときますよ。なんで一つ進言を」

「聞きましょう」

「汜水関では先鋒は避けて、助攻辺りを貰えれば御の字だ」

 

春蘭は納得がいかない、と言う表情をしながらも俺を信頼してくれているのか、何か理由があるのだろうと言う感じでいる。秋蘭、桂花は俺が言った狙いを読みきれていないのか、思案顔。華琳と、これまた意外な事に一刀だけが狙いが分かったようで無言で頷き返してきた。

 

「じゃあ任せるわね」

「御意に」

 

一行を見送り、俺は直ぐに指示を飛ばし始める。

 

「稟、立夏、景、真冬は直ぐに他の諸侯の陣容、規模の把握に務めろ。犹、星、由空、季衣、凪、真桜、沙和は陣を張れ、全体の指図は犹に任せる。流琉と華侖で各隊への兵糧の振り分けを頼む。柳琳、栄華、香風は俺と来い、作戦会議だ」

 

俺の指示で、直ぐに動き出す面々。

 

「作戦会議・・・・との事ですが、御姉様たちがそこはやってくるのではありませんか?」

 

残った栄華が、首を傾げながらそう問いかけてくる。

 

「多分主導権争いでまともな軍議になどならんだろうさ、それに華琳から聞いた袁紹の人となりがその通りならまともな作戦を決めるまではならん。だからこっちで、どの配置でも動けるように素案ぐらいは練っといた方が良いのさ」

 

栄華と柳琳はまさか、と言わんばかりだが香風は「分かる」と一言呟いて頷いている。

 

「さて、こいつが真冬が用意してくれた戦場予定地付近の地図だ」

 

広げた地図は真冬が伝手と人手を使って作らせたと言う詳細な地図だ。大きな街道から獣道、正確な道幅、遮蔽物の有無、等など。

 

「俺がこれから思いつく限りの攻め手、守り手を打つ。お前ら三人で対処法を考えてみろ」

 

俺が対処を考えても良いんだが柳琳、栄華、香風は何れは万軍の長足り得る器だと俺は思っている。一方面の長のような『思い描いた図面を現実にする』だけの力は無くてもいいが、『指し示された盤面を実行する』ぐらいの実力は身につけて欲しい。だからやらせてみる。

 

―――――――――

 

「随分と厳しい教え方をしたようね?」

 

全体の軍議(笑)から戻って来た華琳が笑みを浮かべながら椅子へと座り込み、その対面へと俺が座る。

 

「こと戦術面に関しちゃあ軍内五指に入るぜ?今の一刀はよ」

 

俺の編み出す攻め手に対し、とうとう対処しきれなくなった三人。二進も三進も行かなくなったその空気を、動かしたのは軍議(嘲)から戻って来た一刀の一言だった。

 

『この隊を右翼に寄せれば防げるんじゃないか?』

 

その一手こそ、俺が三人から引き出したかった解。驚愕の表情を浮かべる三人と桂花、秋蘭。心の底から愉快そうな笑みを浮かべる華琳の対照的な姿が忘れられない。

 

「五指、の内容が気になるところなのだけれども?」

「一が俺、二がお前、三に秋蘭、四に一刀、五に犹。これで五指だ、妥当なところだろう?」

「あら、一番は譲ってはくれないのね?」

「譲らんよ」

 

元帥たる俺が主君に劣る、となっちゃあ大問題だろうし。

 

「主攻は公孫賛、劉備の両名。袁術配下の孫策と劉琦、そして私たちが助攻を務める事になったわ。劉備が押し付けられて、公孫賛がそれを庇って巻き込まれた形になるわね」

 

助攻は一つか二つ居れば足りるもんだが・・・・あれか、前線が壊滅したら盾になれって事か?ここまで露骨だと怒る気にもなれんな。

 

「苦労性なのか不運なのか、或いは狙ってやったのか」

 

前者ならご愁傷様、としか言えないが後者なら厄介な相手としか言いようが無い。

 

「私たちは右翼側になるのだけれど・・・・劉備軍の軍師から『本陣との直線上には入らないように』って言われているのよね」

「・・・・なる程、随分と性格の悪い軍師のようだな」

「見た目は随分と愛らしいのだけれどね」

 

何を考えているかが分かってしまった。自分たちから狙ってその配置をやった上で、ちょっとした意趣返しまでするつもりたぁとんだ腹黒だ。どんなツラしてんのか拝んでみたいもんだが。

 

「私たちは劉備、公孫賛の後詰よ。右翼が孫策、左翼が劉琦」

「・・・・事が成る前に劉備と公孫賛が崩れないように俺たちが支える、って事か」

「正確には私たちと劉琦で、よ。孫策は劉備、公孫賛と共に前に出るそうよ」

 

こっちの想定以上に雑多な盤面になりそうだな。便宜上、主攻、助攻を決めはしたがこう言う義よりも権益を求めるような戦いになれば、必ず抜けがけ、横入りをする連中が現れる。そういった連中への対処も考えなけりゃならないし、そういう真似をされても動じない体勢を作っておく必要がある。

 

そう思って、俺が取り出したのは稟、立夏、景、真冬が集めさせた他陣営の情報を記した竹簡。数十本にもなった束の中から、劉備、公孫賛、孫策、劉埼の名が記されたモノを引き抜いて机上に開く。

 

「これが各軍の陣容、ってワケだが・・・・」

「心配なのは劉埼、かしらね」

 

劉備、公孫賛の連合軍。兵数は合計二万、劉備側は将として関羽、張飛、陳到、簡雍、軍師に諸葛亮、鳳統。公孫賛側は軍師がおらず、将に田楷、関靖、単経。兵の割合は公孫賛が一万五千、劉備が五千。兵の割合には開きがあるが、劉備側の将の殆どが黄巾討伐にて功績を挙げた者たちだ。頭脳となるであろう、劉備側の軍師たちの戦術、そして他所の軍師の指示をキッチリ守らせると言う簡単でいて難しい事を公孫賛がどこまで兵たちに徹底させられるかにかかってくるだろう。

 

孫策軍は八千。軍師に周瑜、陸遜、諸葛瑾、将として孫権、程普、黄蓋、韓当、甘寧、周泰、蒋欽。いわゆる少数精鋭と言うヤツで、ここ数年の袁術の軍事的功績の九割が彼女らの手によるものであり、長年江賊や山越族と戦い続けたその兵たちも練度が相当高いと予想される。何より軍の長たる孫策があの『江東の虎』孫堅の娘、その資質を受け継いでいるか否かで今後の事を色々と考えなければならない。

 

劉琦軍。兵数は三万、単独での兵力は袁紹、袁術に次ぐが問題は人材不足。軍師に徐庶、将が王威、文聘、李厳の三将のみ。兵の練度は並より少々上程度、明らかな過剰兵力。どうやら異母妹劉綜の叔父蔡瑁が現在は荊州で幅を効かせており、その蔡瑁が諸侯への面子を通しつつ、自分の姪が劉表の後継になるのに邪魔な劉埼を追い落とすべく今回の兵力を持たせたらしい。蔡瑁の権勢を恐れ、着いて来たのも反蔡瑁派筆頭の王威、その側近の若手三名だけだったと言う事らしい。

 

「大筋の指揮は頼まぁ、俺はいざとなったら劉備、公孫賛、劉琦の三軍を援護して回る」

「あら、イキナリ大立ち回りをするつもりなのかしら?」

「まぁ、そろそろ『本気』出しても良い頃合だろ。俺と犹が久々に最初から揃うワケだしな」

 

軍を率いての『本気』。昔からの付き合いになる迅と立夏ではダメ、俺がまともに軍を率い、育てた頃から戦場を共にしている犹とだからこそ出来る戦い方がある。

 

「それなのだけれど・・・・もう一人ぐらい加えられないのかしら?貴方のその戦い方、後世に伝え、可能ならば伝授し、乱あらば鎮静に役立ててもらいたいものなのだけれども?」

「・・・・ぶっつけ本番は厳しいんだがなぁ、騎馬前提だから星だろうな」

 

そう、俺と犹の戦いは部隊が騎馬である事が前提。となれば、騎馬の扱いに慣れ、率いる兵も騎馬隊である星が候補となるだろう。今後も、上手く騎馬の扱いに長けた将が入ってくれれば俺もそういう事を考えるが。

 

「幾つか試したい事もあるしな」

「ふふっ、期待するわ我が『太公望』」

 

何かその呼び方、久しぶりに聞いた気がするな。

 

「仰せのままに、我が『文王』」

 

だから、俺もこう返しとこう。




第十六話でした。

思ったより早く書けちゃいました。毎回これぐらいで書ければ良いんですけどねー。

という訳で、次話から汜水関攻略戦。呉蜀の新キャラたちも本格的に登場しますよ!

そう言えば呉革命が出ましたね、早速買ってプレイしてました。本作では黄巾より前に孫堅は故人、という事でひとつ。
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