黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~ 作:マイン
それとグリッドマンのアニメ…あれは良いものですね。正直今までのシリーズはチラ見程度しかしてませんでしたが、あれこそまさにアニメだからこそ出来る特撮って感じですよね。…ウルトラマンXとのクロス小話でも書いてみようかな?似てるし
ではどうぞ。今回オリジナルフュージョンアップ出ます
一方、マガキングギドラと対峙するジードとゼロの方にも異変が起きていた。
『ストロングコロナゼロ!ガルネイトバスターッ!!』
『ソーラーブースト!』
ルナミラクルから一転、赤と銀を基調とした炎と剛力を操る『ストロングコロナ』へと変身したゼロとジードの攻撃がマガキングギドラへと向かう…が。
シュババババッ!
ガガガガッ!!ドガァァンッ!!
射線上に割り込んだ『黒い影』が代わりに光線を受けて爆砕する。
ゾワワワワッ…!
直後、上空から大量のドビシが降下し3つに別れてそれぞれ一塊となり…
『…キュワァァァァッ!!』
今し方爆散した存在…3体の新たな『カイザードビシ』へと変貌した。
『糞ッ!こいつらいくら倒してもキリがねえ…これじゃ魔王獣の弱点を探るどころじゃあないぜ!』
『レム、あの怪獣の方には弱点は無いの!?』
『…観察の結果、あの怪獣…破滅魔虫カイザードビシは多数のドビシによる群生融合怪獣です。突出した能力を持たぬ代わりに、ドビシのいる限り何度でも生み出されます。対策法は、元になっているドビシを殲滅するより他にありません』
『殲滅って…どれだけいると思ってるのさ!』
『現在確認できているだけでこの辺り一帯に『4兆匹』のドビシが居ます。カイザードビシ一体当たりに1000匹のドビシが必要ですので…』
『真面目に答えなくていいよッ!聞くだけ嫌になる…!』
マガキングギドラを相対したジードとゼロは、戦いながらレムが言ったマガキングギドラの『核』を探していた。…だが、ドビシフリーザスが生まれるのと同時に上空のドビシ達がカイザードビシへと融合し、マガキングギドラをフォローするように戦いに割って入ってきたのである。
二人は悪戦苦闘しながらも何度もカイザードビシを倒したが、倒した端から今のように次々と復活するため戦況は変わらず…否、活動限界のある二人の方が確実に不利になってきていた。
そしてその状況は、学園から戦いを見守っている皆にもハッキリと目に見えていた。
「むうう…!あの虫どもしつこ過ぎるぞ!あのままではいずれ押し切られてしまう、なんとかしなければ…」
「虫さんは僕大好きだけど…アレは違う!アレは良い虫さんなんかじゃあないよッ!!」
「…入間さん!」
「分かってるっての!…よし、調整終わり!いつでも行けるぜ、さっさとあの化け物共にブチ込んできやがれッ!!」
「はい!キーボ、出撃します!!」
メンテナンスを終えたキーボはウルトラマン達を助けるべく再び学園を飛び立っていく。
「……待てッ!」
「え?…宗方さん?」
そのキーボを、屋上に居た宗方が呼び止めた。
「キーボ…と言ったな。…『頼み』がある、手を貸してくれ…!」
「は、はぁ…」
「京助…?」
一方、ザージダークとドビシフリーザスと交戦しているオーブカラレスは、先ほどと打って変わって劣勢に追いやられていた。
『クォォォォォォッ!!』
ドビシフリーザスの甲高い鳴き声と共に甲殻に空いた『間欠孔』から超低温の冷気が噴き出し、空気中の水分を凝結させ辺り一帯の地表をスケートリンクのように凍らせてしまう。
『ハァァァァッ!!』
ザージダークは足の裏にスケート靴のようなエッジを創り出すと、凍り付いた大地を滑るように移動し、先ほど以上のスピードで残像を生みながら四方八方から二人を斬りつけ回る。
『ぐうッ!こ、この戦い方…前に戦ったあの『ギアッチョ』とかいうスタンド使いを思い出す…。だが、この苛烈さは奴とは比べものにならないッ…!』
『くっ…例え闇に堕ちようと、このコンビネーションはあの頃と変わらないか…!どうするオーブ、このままではジリ貧だぞ…!』
『確かに…なら、戦い方を変えるまでだ!』
剣の手数で並ばれ、機動力でも完全に負けている以上ナイトリキデイターでの戦闘継続は困難と判断し、オーブは新たな姿へと変わる。
「ガイアさん!」
『ウルトラマンガイア!』
「ビクトリーさん!」
『ウルトラマンビクトリー!』
「大地の力、お借りします!」
『フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ フォトンビクトリウム!』
ドゴォォンッ…!
『闇を砕いて、光を照らせ!』
重厚感ある着地と共に足下の氷を砕いて現れたのは、岩石をそのまま貼り付けたような武骨なプロテクターを纏い、両腕の拳に至ってはいつもの倍ほどの大きさにまで頑健な装甲に覆われた戦士。ガイアを思わせる胸のラインと、ビクトリーの意匠である額の『Vクリスタル』が印象的なその姿こそ、大地より生まれし二人のウルトラマンの力を借りた『ウルトラマンオーブ フォトンビクトリウム』だ。
『その姿は…!?』
『『足場が凍っている』ことが奴らのアドバンテージだというのなら、その『前提』をひっくり返すまで!これなら…どうだぁーッ!!』
オーブは巨大な両腕を振り上げ、叫ぶ。
『フォトリウムアームブレイクッ!!』
ドゴォォォンッ!!!
力の限り拳を地面に叩きつけると、その衝撃が波動となって地面を揺らし、足下の岩盤が隆起して凍り付いた地面を砕いていく。
『ッ!?』
地面を滑走していたザージダークは瞬く間に荒れてしまったリンクに蹈鞴を踏んで急停止してしまう。
『ザージが止まった!』
『そこだッ!フォトリウムシュート!』
オーブの額のVクリスタルから放たれたVの字の光線がザージダークへと迫る。だが…
『グオオオオッ!!』
ガガガガゥッ!!
再び間に割って入ったドビシフリーザスがその甲殻で一心に受け止め、スピード重視で全力では無かったとはいえ軽々と耐えきってしまう。
『チッ…徹底的にザージさんの盾になるつもりか!厄介だな…』
『フリーザス…』
『コォォォォッ!!』
攻撃を耐えきったドビシフリーザスは再び冷気を噴き出し、今度は隆起した岩盤ごと周囲を凍らせてしまう。ザージダークは吹き荒れる冷気に紛れて、凍り付いたビルの影に消えてしまう。
『今度はなんだ…?こんなことをすれば、お互いに視界が悪くなるだけなのに…』
『気をつけろ、どこから仕掛けてくるか分からないぞ…』
背中合わせになってザージの襲撃に備えるオーブとカラレス。…そして
…バッ!
凍り付いた岩盤から飛び降りた『人影』が二人めがけて落下してくる。
『…ッ!フォトリウムナックル!!』
寸でのところで気づいたオーブが振り返り際にそのままかち上げた炎を纏った拳が、カウンターの形で人型を強かに打ち据える。
ガコォォン…!
しかし、オーブの拳が砕いたのはザージダークではなく『人の形をした氷の塊』であった。
『!?これは、氷…!』
『しまった!これは『ミラーシ』…ザージお得意の変わり身だ!』
虚を突かれた二人の後ろから、回り込んでいたザージダークが攻撃を放つ。
『フリーズショット!』
ビィィィィーッ!
『『ぐああああッ!?』』
L字に組んだ腕から放たれた光線の直撃を受け、二人は吹き飛ばされるだけでなく光線を受けた場所から徐々に凍り付いていく。
『ぐうッ…!?このままでは…』
『…やむを得ん!苗木君、済まないが少々無茶をするぞ!』
『は、はい!』
『ハァァァァァ…ファイアースフィアッ!!』
立ち上がったカラレスの全身から超高温の炎が噴き出し、オーブとカラレスを覆い尽くそうとしていた氷を瞬時に溶かす。その余りの熱量に、オーブは元よりザージダークやドビシフリーザスもカラレスに近寄れない。
『ハァァァァァッ!!』
更にカラレスは宙に浮き上がると炎を纏ったまま丸まって回転を始める。するとカラレスを中心に炎熱と光が放射状に噴出し、あたかも小さな『太陽』がそこにあるかの如く輝きを強める。
シュゥゥゥゥ…!
その熱はドビシフリーザスによって凍てついた大地をみるみる溶かすだけでなく…
ピコーン、ピコーン…ピ…ピコン!
『ッ!これは…エネルギーが回復した!?』
点滅していたゼロのカラータイマーが復活するほどのエネルギーをザージダークを除いたウルトラマン達に分け与える。3本の『ウルトラホーン』を持ち、他のウルトラ戦士より多くのエネルギーを蓄積できるカラレスだからこそできる荒技である。
ピコンピコンピコンピコン…!
『う…ぐぅ…ッ!』
しかしその代償として、炎が治まったカラレスのカラータイマーは点滅を早め、今にも消えてしまいそうなほどに消耗していた。
『カラレスッ!』
『カラレスさん!なんて無茶を…』
『それでも…やらないよりはマシだった…!こうして、君たちに…『希望』を託すことが出来た…!』
『皆…お願いだ、必ず勝って…希望を…』
その言葉も半ばにカラレスの変身が解け、気を失った苗木が虚空に投げ出される。
「苗木君ッ!!」
『危ないッ!』
霧切が叫び、オーブが咄嗟に苗木めがけて手を伸ばそうとするが
『グラァァァァッ!』
『デュワッ!』
『ぐうッ!?こんな時に…!』
その隙を突いて襲ってきたザージダークとドビシフリーザスに対応せざるを得ず、苗木に救出が間に合わない。
その時
「…オーブ!苗木は俺に任せろッ!!」
『ッ!?』
横からもの凄いスピードで飛び込んできた何かが落下する苗木を抱き留め、近くのビルの屋上へと降り立った。
『む、宗方さん!?』
「ふぅ…間に合ったか。感謝するぞ、キーボ」
「はい!では、僕は最原君達の援護に向かいますので!」
「…頼む」
苗木を救出した人物…宗方は自分をここまで連れてきたキーボが飛び去るのを見送り、苗木を足下に寝かせた後、オーブ達へと向いて叫ぶ。
「…苗木誠!日向・Z・創!最原終一!俺は…この世界を、人々の希望を俺達の手で守る!それが我ら未来機関の『存在意義』だと信じていたッ!…だが、今この世界を襲う絶望に対し、俺達は余りにも無力だ…。故に、俺はその『誇り』を捨てようッ!俺を信じて散った友達の為にも、どんな手段であろうと負けるわけにはいかないのだッ!!だから…勝て!勝ってくれッ!俺達の希望を、この世界の未来をお前達に託させてくれッ!!」
「宗方さん…」
「副会長があんなことを言うなんて…」
宗方の懇願と言っても良いその叫びに、未来機関の面々は驚きを隠せない。どんなときも冷静に、時に冷酷に判断を下し、絶望と戦い希望のために戦い続けてきた宗方。未来機関のナンバー2になってからも前線に赴くことを躊躇わなかったその背中は、多くの未来機関員たちにとって紛れもない『希望』であった。
…その宗方が、初めて誰かに『縋る』のを見た。弱さを否定し、強さこそが希望だと信じていた彼が『自身の弱さ』をハッキリと認めたのだ。宗方京助を知る者にとって、それは信じがたい光景であった。
『宗方さん…はい!必ず勝ちます!』
『アンタのその気持ち、確かに受け取ったぜ!』
『貴方がどれほどの想いでこの世界を守ろうとしているのか、それは僕も理解しています。…その貴方が、プライドを捨ててでも僕らに希望を託すというのなら、僕はその想いに全力を以て応えて見せます!貴方の覚悟、お借りします!』
シュイン…!
「ッ!」
その時、オーブのインナースペースに居る苗木の前に『3枚のフュージョンカード』が飛び出してきた。
そのカードは『カラレス』、『タロウ』、そして『メビウス』のものであった。
「これは…カードから伝わってくる、この熱い鼓動は…!…分かりました。皆さんの力、お借りします!」
「タロウさん!」
『ウルトラマンタロウ!』
「カラレスさん!」
『カラレス!』
「メビウスさん!」
『ウルトラマンメビウス!』
『ブレイビングフュージョン!』
3枚のカードをスキャンしたオーブリング・ヌーヴォから炎が噴き出し、その炎に苗木が手を突っ込むと炎の中から『先端にベルの付いた杖』を手に取る。聖杖『オーブスタッフ』である。
苗木がオーブスタッフを振ると、先端のベルから厳かな音が鳴り響く。
ガラーンッ、ガラーンッ…!
「受け継がれる想い、お借りします!オーブブレイバーッ!!」
キュボォォォンッ!!
オーブを包み込んだ炎が弾け、吹き荒れる熱風の内よりオーブが新たな姿を現わした。
真っ赤な身体に走る金のラインは、まるで炎をそのまま身体に宿したような熱すら感じ、メビウスの『バーニングブレイブ』を思わせる。タロウに似たプロテクターはより強固に、かつ豪奢なものになり、その背には真っ赤な『ブレイジングマント』を纏っている。左腕には『メビウスブレス』が、右腕にはかつてタロウがウルトラの母より授かった『キングブレスレット』が填められている。…そして何より、特出すべきは額と側頭部より映えた3本の大きな『ウルトラホーン』。その大きさはカラレスやタロウを超え、ウルトラの父に匹敵するほどであった。
『グゥ…その、姿は…!?』
『受け継がれる意志が光となり、未来を照らす!これが『オーブブレイバー』だッ!』
オーブスタッフを手にザージダーク達の前に立ちはだかるその姿こそ、オーブの新たな境地『ウルトラマンオーブ オーブブレイバー』である。
「かかか…カッケェーッ!!なんかスゴい変身しましたぞ苗木誠殿!」
「熱い…でも、全然嫌じゃ無い。太陽みたいに暖かい…!」
「アレがオーブの、苗木誠の力…!」
今までの形態とは一線を画すその姿に皆が歓声を上げる中、オーブはオーブスタッフを振り翳す。
『響け、オーブベル!』
ガラーンッ…!ガラーンッ…!
杖の先端の『オーブベル』が鳴り響き、音色と共に赤橙色の波動が周囲に広がっていく。
『ギュィィィィッ!!?』
『ガァァァァァッ!?』
すると、マガキングギドラを守るように並列していたカイザードビシやドビシフリーザス、それに空を覆い尽くしているドビシの群れが狂ったような鳴き声を上げて悶え苦しみ始める。
『こいつは…!?』
『ゼロさん、ジード君!今のうちにマガキングギドラを!…流石に魔王獣クラスはこのベルの力では抑えきれません!』
『は、はい!』
『…シュウイチ、たった今マガキングギドラの解析が完了しました。あの怪獣の核は頭の『マガクリスタル』です。しかし、どうやらあのクリスタルはそれぞれ『連動』しているらしく、一つずつ壊しても他のクリスタルの力ですぐに復活してしまいます。3つのクリスタルを『同時』に破壊してください』
『ナイスタイミングだレム!…ゼロ!』
『おう!だったら…こっちも全力だ!』
オーブのアシストに奮起したゼロとジードは一気にケリを付けるべく力を解放する。
『シュワッ!!』
ゼロの左腕の『ウルティメイトブレスレット』が光を放ち、腕から離れたブレスレットは巨大な『盾』…『ウルティメイトイージス』へと変化し、空中で分解するとゼロの胴体と右腕に鎧のように装着される。
『ウルティメイトゼロ!!』
これこそゼロの切り札、遙か遠い宇宙にて『ウルトラマンノア』より託された聖なる鎧を纏いし勇者の姿『ウルティメイトゼロ』だ。
そして、ジードも…
「融合!」
「I Go!」
「Here we Go!」
『フュージョンライズ!』
「揮うぜ、豪力!!ハァッ…ハッ!!」
「ジーーードッ!!」
『ウルトラの父!』
『ウルトラマンベリアル!』
『ウルトラマンジード! ダンディットトゥルース!』
『オオオオオオオッ!!』
父ベリアルとそっくりな赤と黒のカラーリングの隆々とした肉体。側頭部から生える大きなウルトラホーンはオーブと比べると歪に歪み、かつてベリアルが成った『ベリュドラ』の角のようである。目とカラータイマーに宿る光こそ正しい心を示す輝きを放ってこそいるものの、手にした武器『クライシスアレイ』の禍々しい見た目も相まって完全に悪の巨人にしか見えない姿。それがウルトラの父とベリアル、かつての盟友にして宿敵同士の力が融合した『ウルトラマンジード ダンディットトゥルース』だ。
『ハッ…!大隊長とベリアルの力か、そんな危なっかしいもんで大丈夫かよ?』
『ご心配なく…!そっちこそ、『また』そのイージス壊したりしないで下さいよ!』
『…?『また』?おい、俺はイージス壊した憶えなんか…』
「最原君!」
意味深なジードの発言を問いただそうとしたゼロであったが、宗方を降ろして合流してきたキーボに水を差されてしまう。
「えっと…最原君、なんですよね?僕も手助けに来ました!一緒に戦います!」
『キーボ君!ありがとう、…なら僕たちと一緒にあのマガキングギドラの頭にあるクリスタルを破壊して欲しいんだ。3カ所同時に破壊しないとダメだから、僕の合図で攻撃してくれ!』
「了解です!」
『あっ、おい!…ったく、終わったらちゃんと説明しろよ!』
『分かってますよ!じゃあ…行くぞぉ!』
手早く作戦を決め、ジード、ゼロ、キーボはマガキングギドラへと向かっていく。
『ギュロロロロロッ!!』
当然マガキングギドラも黙っているはずがなく、ドビシ達が機能しないのを良いことにカイザードビシすら巻き込んで『マガ流星』で迎え撃つ。
『へっ!そう何度も同じ手が…通じるかよッ!ウルティメイトゼロソード!!』
ブォンッ!
ドガガガガガァッ!!
ゼロが右手に装着された籠手状の刃を振るうと、刃から光の斬撃が放たれ上空の隕石全てを消し飛ばしてしまう。
『ッ!?』
一瞬で攻撃を防がれたマガキングギドラは流石に驚き…その隙が命取りとなった。
『キャプチャーサンダー!』
ジードの角から放たれた雷撃は形を保ったままマガキングギドラを包み込み、稲妻の檻に閉じ込めて身動き一つ取れなくしてしまう。
『ギョワァァァァッ!!?』
『今だ!』
「はい!最大出力…ファイア!」
『オラァッ!』
バキィィンッ…!
ジードのクライシスアレイ、キーボのキャノン砲、ゼロの蹴りがそれぞれの頭のマガクリスタルを粉々に破壊した。
『ガァァァァッ…』
クリスタルを破壊されたマガキングギドラは力ない悲鳴をあげる。金色だった鱗は見る間にくすんでいき、力を失っていくのが目に見えて分かっていた。
『よし、止めだ…ゼロ!』
『応!』
ウルティメイトイージスがゼロから分離し、更に形状を変え今度は巨大な『弓』となってゼロの手に握られる。
ジードがクライシスアレイを天に掲げると、ドビシの群れを貫いて赤雷が天よりアレイに降り注ぎ、そのエネルギーが蓄積されていく。
『ファイナルウルティメイト…ゼロッ!!』
『ブレイザーバニシングッ!!』
ゼロがイージスに張られた光の弦を引き絞り、放つ。イージスは弓から『矢』へと役割を変え凄まじいエネルギーを纏ってマガキングギドラへと猛進する。
ジードがスパークを纏ったクライシスアレイを振りかぶり、突き出す。アレイの先端から溜め込まれたエネルギーが赤黒の稲妻の奔流となってマガキングギドラに迫る。
ババババババッ!!
『ギャアアアアアッ!!!』
ドガァァァンッ!!
いかにタフなマガキングギドラといえどそれらを纏めて受けて耐えきれるはずも無く、断末魔の叫びを上げて爆散する。…当然、もう二度と復活することも無かった。
『フィニッシュ!』
「やりました!」
『よし…よしッ!』
『…!ウォォォォォ!』
マガキングギドラの最期を見届けたザージダークは流石に焦りを憶え、二刀を振り上げてオーブへと斬りかかる。
『ドライヤー光線!』
オーブがキングブレスレットが嵌められた右手を剣に向けて突き出すと、ブレスレットを介して手から超高温の白熱光線が放たれる。ザージダークは思わずそれを剣で受けるが、高温の光線は氷の剣をあっという間に蒸発させてしまった。
『ッ!?…フリーズショット!』
瞬く間に武器を失ったザージダークは即座に切り替えて凍結光線で攻撃する。が…
『ネオ・ストビューム光線!!』
タロウとメビウスのものを合わせたモーションから腕をクロスさせて放たれる虹色の光波熱線。それは従来の『ストビューム光線』を遙かに超える威力でフリーズショットを軽々と相殺し、高温と低温がぶつかった事による水蒸気が辺りを覆い尽くす。
『ムゥ…フリーザス、水蒸気を凍らせて…』
『遅いッ!』
『ッ!?』
ドビシフリーザスに指示を出そうとしたザージダークより早く、水蒸気を突っ切って来たオーブがザージダーク、そしてドビシフリーザスを抱え込んでそのまま上空へと舞い上がった。
『は、離せッ!』
『ガァァァァッ!!?』
『…ザージさん、フリーザス。今、あなた方を蝕む闇から解放させます。カラレスさん達が託してくれた、この熱い光で…!』
ザージダークとドビシフリーザスの抵抗も意に介さず上昇するオーブ。その両腕のブレスレットが輝きを放ち、オーブの身体が炎を纏う。炎は上昇すると共に勢いと熱を増し、炎の色が赤から青、白…そしてあり得ないはずの『虹色の炎』へと変化する。
『これが僕の…僕たちの全力!闇の氷に閉ざされた貴方の心を溶かす、光の炎!思い出せザージ、誇り高き光の国一の剣士の心をッ!!』
『オオオオオオッ!!』
『コスモミラクル…ダイナマイトォォォッ!!』
キュピン!ドォォォォォンッッ…!!!
オーブが上空のドビシの壁に激突した瞬間…閃光が弾け、轟音と共にオーブが纏っていた炎が拡散した。放射状に広がった炎はオーブベルの影響で統率力を失ったドビシの群れを易々と焼き尽くしていき、その奥に見えたのは見慣れた赤い空…ではなかった。
「…え?」
「青…空?」
半径100㎞に渡ってぽっかりとドビシが消え去った希望ヶ峰学園上空に広がっていたのは、雲一つ無い透き通るように晴れ渡った『青空』であった。…それは、『人類史上最大最悪の絶望的事件』が起きる前に見た記憶と、この世界に来る前に見たものと、何一つ遜色ないものであった。
「…ッ!?これ…皆、コレを見て…!」
青空を見るなり急いで携帯していた『大気濃度計』を確認した忌村が、らしくない大声を上げる。
「どうしたの忌村さん?」
「これ…この辺り一帯の大気から、汚染物質が殆ど『消失』してる…!」
「なんですと!?」
忌村の分析に未来機関の面々は信じがたい顔という顔で驚く。人類史上最大最悪の絶望的事件の折にどこからともなく出現し、以後世界から青空を奪い絶望と戦うもの達を蝕み続けてきた忌々しい汚染物質が、綺麗さっぱり消え去ったというのだ。簡単に受け入れられるはずが無い。
「まさか…あの炎が蝗共諸共汚染物質を消し去ったとでも言うのか!?そんな都合の良い、馬鹿げたことがあり得ると…」
「…ふん。何を今更頭の固いことを言っている?お前達が信じようが信じまいが、それが『事実』だ。下らん勘ぐりなどせずに甘んじて喜んでおけばいいだろう」
愕然とする十神に『十神』がさも当然のように言ってのける。『十神』だけでなく、他の学園の皆も驚きよりもどこか誇らしげに青空を見上げていた。
「な…なんでそんな冷静なんだべあんた達?いくらなんでもこんなのハチャメチャ過ぎるだろーが!?」
「そうだよ!私たちがこの汚染にどれだけ苦労したか…それがこんな一瞬で…」
「…チッチッチ、分かってねーなぁアンタ達。それを可能にするのが『ウルトラマン』ってもんなんだよ!」
「はい、どんな時でも諦めずに不可能を可能にする…それが『私たちの苗木誠』なんです」
「てか会長のビックリドッキリショーなんていつものことだし~?今更奇跡の一つや二つで驚きなんかしないって」
「…ハハハ、感服ですな。どうやら我々の常識は、彼らには意味のないもののようですな」
未来機関の面々が半ば呆れたように肩を竦めていると、上空から『2つの影』がゆっくりと降下してくる。
ズズゥン…
『ぐぅッ…この、感覚は…私の中にあった闇が、消えているのか…?』
膝をつきながら着地したのは、オーブの『コスモミラクルダイナマイト』により闇の力から解放されたザージ。
ドォォン…!
『…ッ!フリーザス!?』
その隣に力なく倒れ伏したのは、ドビシとの融合が解かれ元の姿に戻ったフリーザスであった。
「…あれ?オーブは!?」
「まさか…あの爆発で吹っ飛んじゃったんじゃ…?」
「フフフ…心配ご無用!先ほどの技はおそらく『ウルトラダイナマイト』と同じような技でしょう。ならばそれを使うものは『使用後の準備』も出来ているはず…」
「ゴチャゴチャ言ってねえで要点だけ話せこの豚ァァァァッ!」
「ブヒィンッ!?」
「…あ、アレ!」
『朝日奈』が指さした青空の先を見ると、空の中天に眩く輝く『光の玉』がいつの間にか浮かんでいた。
「な…何アレ?ただの太陽じゃないの…?」
「…いいえ、違うわ。アレは…!」
皆が見上げる中で、その光が徐々に人の形を象っていき…
『…ハァッ!』
光の中から、オーブの健在な姿が現れた。
『オーブ!無事だったか』
『先輩!』
『…二人ともマガキングギドラを倒したんだね、流石だ。キーボ君もお疲れ様』
「はい!ありがとうございます。それより、その…」
『ああ、分かっているよ』
キーボに促され、オーブ達はフリーザスの傍で膝をつくザージの元へと向かう。
『ザージさん…』
『…ウルトラマンオーブ、と言ったか。意識の奥底で戦いを見ていた、私を…そしてフリーザスを救ってくれたことに感謝する』
『えっと…その怪獣は…』
『……』
ジードに問いに、ザージはフリーザスの顔を優しく撫でながら首を横に振る。
『…残念ですが、僕とカラレスさんの攻撃を喰らった時点でフリーザスは致命傷を受けていた。その時点でならどうにかなったかもしれないが…ドビシと融合させられ、残り少ない体力を全て戦闘に費やしてしまったことで限界を迎えてしまった。肉体こそ元通りにできても、失った命までは…僕の力でも取り戻すことは出来ない』
『そんな…』
『クソッ…!』
『…気にするな。君たちはよくやってくれた、フリーザスのことは私の責任だ。…土壇場だったとはいえ、かけがえのない相棒を盾にし、あまつさえあのような姿にしてしまうなど…』
『それはッ…、闇の力に操られてたからで…!』
『例えそうだとしても、そうしたのは紛れもなく私なんだ。…闇の力に飲まれたことも含めて、その罪から目を背ける気は無い』
『…それはどうでしょうか?』
頑なに自らを戒めるザージに、オーブがそう問いかける。
『何…?』
『貴方は『自分の意思』でフリーザスを盾にしたと思っている。…でも、僕にはそう思えないんです』
『どういうことだ?』
『僕とカラレスさんが同時に攻撃を仕掛けたとき、貴方には決定的な隙があった。…それこそ、カプセル怪獣を呼び出す暇なんてない程のね。つまり貴方は自力でフリーザスを呼び出せなかった…ならば、どうしてフリーザスは現れたのか?その答えは一つしか無い』
『…まさか!?』
『はい。おそらくフリーザスは、『自力』でカプセルをこじ開けて外に飛び出したんです。その時の貴方が善でも悪でも関係なく、ただザージさんを…大切な人を守りたいというその一心で…!』
『…ッ、フリーザス…!』
感極まったザージがフリーザスの亡骸を掻き抱く。かつてのババルウとの戦いでは不本意な自滅の道を強いた筈の自分を、仮初めの命を得ても尚守り続けてくれた相棒の心に応えるように。
『…頼みがある。どうか、フリーザスを葬ってやってくれ。もう二度と、あの絶望の代行者とやらに利用されないために…!』
『…はい。リンカーネーション・フレア!』
ガラーンッ…!
オーブがオーブスタッフのベルを鳴らすと、音色と共に温かな火の粉がベルより溢れフリーザスの身体に纏わり付く。火の粉はフリーザスを包み込んだまま輝きを増し…そして、次の瞬間フリーザスの肉体と共に弾けるようにして消えていった。
『…さらばだ、フリーザス。我が友よ…!』
『フリーザスの命は、この星の命の源…『ビクトリウムコア』へと還りました。やがて星の意思により新たな命へと生まれ変わるでしょう。…その時まで、この星が無事だったらの話ですが』
『分かっている。フリーザスが再び生まれ来るように、私もこの星と人々のために戦わせてもらうぞ…!』
『はい!』
『ああ!』
フリーザスを見送ったザージは決意を露わとし、オーブ達もそれを嬉々として受け入れる。
『あ…でもそうなると、ザージさんもカラレスさんみたいにこの世界での身体が要るんじゃ…』
『…その心配は無用だ。少し考えがあるのでな』
ザージはそう言って歩き出し…ビルの屋上からこちらを窺っている宗方の元へとやってくる。
「お前は…ザージ、と言ったか?俺に何の用だ?」
『フ…そんな言い方をせずとも、想像が付くのでは無いのか?』
「…俺に、共に戦えと言うのか?だが、俺は…俺は、もう自分が『正しい』のかが分からない。俺は俺自身の信念を貫こうとし、…その結果、かけがえのない『友』を失った。その挙句、こうして掌を返して別世界からやって来た者達に全てを押しつける始末だ。こんな俺に、ウルトラマンとして戦う資格があるのか…」
『…地球人の若き戦士よ、君の名は?』
「…宗方、京助だ」
『宗方、君の気持ちは私にも理解できる。…私もたった今、自らの未熟で友を失ったところだ。私もまた、今の自分に『ウルトラ戦士』としての資格があるのか迷っている。この心に渦巻いている、私とフリーザスを利用した絶望の代行者への『憎しみ』のままに戦うことが正しいのかがな…。ならば、お互い『迷う者』同士共に『答え』を見つけてみる気は無いか?私の力を使うかどうかは、君が決めればいい。私は君の迷いを断つ一振りの剣として共に戦う』
「…いいのか?君の望む戦いができるとは限らないぞ」
『構わない。…君がこの星を守ろうとするのなら、どんな形であろうとそれは私の本懐でもあるからな』
「……そうか。なら、共に行こう。我々の求める『真の希望』を見つけるために…!」
『…感謝する!』
ザージが光の粒子となり、宗方の身体に吸い込まれていく。そして最後に残った粒子が集り、鍔の部分に宝石があしらわれた一振りの『刀』となり宗方の背に背負われた。ザージの変身アイテムの『ザージブレード』だ。
『…さて、これでひとまず一件落着ってか?』
『そうですね…色々と、大変なこともありましたが。それに…』
『分かっています。…学園に戻ったら、説明します。僕に何があったのかを…』
ザージと宗方の同化を見届け、オーブ達は宗方と苗木を回収すると希望ヶ峰学園へと戻っていった。
「…そう、京助。それでも貴方は希望を捨てきれないのね。なら、仕方が無いね…最後はやっぱり、私が貴方に教えてあげるわ。『希望』に縋った結末が、どんなに残酷なものなのかってことを…!」
ウルトラダンガンナビ!…と言う名の解説
今回は今話で出てきたオリジナル要素について
・ウルトラマンオーブ オーブブレイバー…今作オリジナルのフュージョンアップ体。カラレス、タロウ、メビウスの3世代の師弟によるフュージョンアップ。名前の由来は「ブレイブ(勇気)」と「ブレイズ(炎)」。
身体はメビウスのバーニングブレイブ、顔とプロテクターはタロウ、3本の角はカラレスをモチーフとしており、イメージとしては「ウルトラの父の年齢にまで成長したタロウ」という感じ。
スピードと手数を武器とするオーブトリニティに対し、近接格闘に特化しており常に10万度を維持している体表温度とカウンターを主とした隙の無い戦術で戦う。その分、オーブトリニティよりガッチリとした印象がある。
専用武器として「オーブスタッフ」という杖を使うがこれ自体に殺傷能力は無く、先端に付いたウルトラベルを模した「オーブベル」は鳴らした回数で技が変化し、回復や浄化、戦意喪失など様々な能力を発揮する。また両腕のメビウスブレスとキングブレスレットはオリジナルとほぼ同じ性能があるが、どちらかというと「ウルトラ心臓」の役割の方がメインである。
必殺技は通常のストビューム光線の3倍の威力がある「ネオ・ストビューム光線」、そして3本のウルトラホーンの力を全て解放し敵諸共大爆発する「コスモミラクルダイナマイト」だ。
・クライシスアレイ…ジードダンディットトゥルースの専用武器。名前は今作オリジナル。元になったウルトラアレイに比べると破壊能力に特化しており、ベリアルの影響が窺える
・キャプチャーサンダー…ダンディットトゥルースの角から放たれる拘束技。元になった技はベリアルのベリアルウィップとウルトラの父のウルトラコクーン。
次回はジード世界の説明、そして江ノ島(レイブラッド)が本気を出してきます。…逆蔵がどうなったかって?それは…フフフ
同時更新の黄金の言霊本編もよろしく!ではまた次回