黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~   作:マイン

26 / 31
誠に勝手ですが、最近転職しまして…仕事に慣れるまでは更新速度が遅くなるそうです
今後しばらくは他の作品含め、ゆっくり待って貰いたいと願います

ではどうぞ。


搭和シティ編:振り上げた拳

「…そうだったのか。こまる、お前はずっと子供達を守って戦ってたんだね」

「うん…。あはは、ちょっぴりショックかな…ずっと会いたいと思ってたお兄ちゃんに、こんな姿で会うことになるなんて…」

 最原たちは興奮する大門をなんとか宥めた後、こまるからこれまでの経緯について話を聞いていた。

 ゼブブの来訪により大人達がおかしくなって以来、こまると腐川は子供達を率いていた新月たちと接触を図り、子供達を守りながら異変の原因を探っていた。未来機関にも何度も連絡を取ろうとしたが、街全体に及ぶ『電波障害』のせいで通信機器がまったく使い物にならなくなっていた。加えて、こまるの武器である『ハッキング銃』はギャオスやレギオン相手では役に立たず、必然的に腐川…もといジェノサイダーだけが戦力であった。そのジェノサイダーも怒濤の如く襲ってくるレギオンには多勢に無勢で、スタンガンの効果が切れた直後に襲われて重傷を負い、今も寝込んでいる状態である。こまるもその時に左目と右手を失ったが、腐川の分まで頑張ろうと奮起し、治療を受けながらこの基地のまとめ役を担っているのであった。

 

「…済みません、こまるさん。僕の力ではそれだけの怪我を治すのは…」

「あ…そんな、全然気にしなくてもいいよ!むしろ痛いのが無くなっただけでも感謝してるから!」

「…まあ、そう悲観することはねえさ。この街のことが片付いたら、会長さんに治して貰えば済む話だろ」

「それもそうっすね。…ここから生きて帰れればの話でもあるっすけど」

 こまると腐川の負傷を知った最原は『自分の血液』を水で希釈してこまると腐川に渡した。バオーの血には『治癒促進作用』があり、多少の怪我であれば直ぐに治せるのだが、こまるの欠損した目や手を治すほどの力は無かった。

 

ガチャ…

「…戻ったぞ」

「おお、十神君。腐川さんの容態は…?」

「結構ヤバそうだったけんど、最原っちの血のおかげで意識は戻ったべ。起きるなり十神っち見て飛び起きようとしてまた気絶したけどな…」

「ふん…あれだけ動けるのなら心配なぞいらん。放っておけ」

「またアンタは…ホントにもう」

 そこに、腐川の様子を見に行っていた十神たちが戻って来たことで、その場に『全員』が揃った。

 

「さて…ちょうど皆揃ったところで、そろそろ話しを聞かせて貰ってもいいんじゃない?」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 皆の視線の先には、こちらに向けて明らかな『警戒』の目を向ける大門、蛇太郎、新月、言子の4人。一人我関せずとばかりにそっぽを向いて携帯ゲームに熱中しているモナカ。そして、その視線の間に挟まれてオロオロとするモノクマーズがいる。

 

「…おい、モノキッド。本当にこいつらは敵じゃ無いんだろうな?」

『…と、当然だぜ渚ッ!前にも話したろ?最原たちはオマエラの言う『魔物』共とは違うってよ!』

「そうは言われても…信用できませんわ。確かにキャワイイ子がいるのは認めますけど、だからといって私たちの味方である保障はありませんもの」

『そ、そんなこと言わないで言子ちゃん…!』

「お、オトナ…!オトナ怖いよぉ…!」

『ジャタロウ、オチツイテ…』

『…なあ、モナカちゃんからも何か言って…』

「うっさい、黙って」

『す、すんまへん…』

 新月たちは言葉の端に無意識的にか大人に対する『恐怖』がにじみ出てはいるものの、この基地にいる子供たちを守るという『使命感』もあってか気丈に振る舞おうとしていた。…それに対し、モナカは大人に対してもまったく反応を示さず無気力に言葉に吐き捨てるとまたそっぽを向く。

 そんな彼らを代表し、大門が一人前に出て最原たちを指さす。

 

「…やい、お前ら!何をしに来たのか知らねえけど、ここの皆に何かしようってんならこの『勇者』大門大様が相手になってるからなッ!!」

『だ、大門君!?』

「…ふん。ご自慢の『玩具』を無くしておいてよくほざくものだ」

「なんだとぉ!」

「十神君、挑発しないで…」

「知ったことか。俺はこいつらに散々な目に遭わされたんだ、気を遣ってやる義理など無い」

「……」

「あ、朝日奈っち?顔怖いべよ、どうしたんだべ?」

「…朝日奈さん」

 十神のみならず普段なら誰にでもフレンドリーな朝日奈までもが大門たちに厳しい目を向けていることで張り詰めた雰囲気の中、子供達の緊張をほぐそうと最原が目線を下げて優しい声音で声をかける。

 

「…君たちのことは聞いている。だから僕らを信用してくれとは言わない。でも、これだけは約束するよ。僕たちは絶対に、君たちを傷つけるような真似はしない。絶対にだ」

「…ふん!口だけならなんだって言えらぁいッ!」

「お前が言えたことじゃないだろう」

「なにぉッ!?」

「二人とも喧嘩なら余所でやってください!そんなんだからオトナに舐められるんですよ!」

「うひぃ!?ごご、ごめんなさい…」

「…なんか懐かしいなこのやりとり。まだこっちの世界に来て一週間も経ってないのに」

「色々あったからのう…」

 元いた世界で見慣れたやりとりに、79期生の皆は境遇が異なっても根っこの部分は『自分たちの知る大門達』であることを確認し、頬を緩める。

 

「まあまあ、落ち着きましょう皆さん。確かに素性も分からない我々を信じろというのも無理な話。まずは自己紹介を…」

「要らないよそんなの」

「え…?」

 ゴズがその場を取りなそうとしたところに、突如モナカが口を挟む。

 

「要らないって、どういう…」

「そのまんまの意味だって。自己紹介なんかしなくても、こっちはアンタ達のことはぜ~んぶ知ってんの。アンタたちが未来機関と『余所の世界から来た希望ヶ峰学園の生徒』だってことも、この街がレイブラッドとかいう奴に狙われたからのこのことやって来たことも…苗木誠とそっちのお兄さんがさっきあのバケモノと戦ってたウルトラマンだってこともね」

「えっ…な、なんで知ってるの!?」

「アハハー!そんなの決まってるよ、モナカちゃんがずっと私たちのことを『見てた』からだよ。…だよね、月光ヶ原サン?」

「……」

 モナカの代わりに疑問に答えたアンジーが、月光ヶ原に冷えた目を向ける。

 

「あ、アンジーさん…?月光ヶ原さんがなんだっていうのですか?」

「まさか…月光ヶ原さんがこいつらの『スパイ』だっていうんじゃ…」

「そんなんじゃないよー。コレはスパイじゃなくて、モナカちゃんの『目』なだけだよ。そうでしょ?」

「…凄いね、バレない自信はあったのに」

「私は『超高校級の美術部』だからねー。会長ほどじゃないけど『生き物と作り物』ぐらい見分けるのは簡単だよー!」

「…作り、もの?」

「ふ~ん…ま、ネタバレしちゃったんならもういいや。ちょっと、こっち戻ってきてー」

 モナカの声に従った月光ヶ原が車椅子を操作してモナカの元へと向かう。

 

「げ、月光ヶ原君!?一体何を…」

「ん~、まだ分かってないの?頭の固い牛さんだね~。要するに…」

 

カチャン…

『こういうことでちゅ!』

 月光ヶ原の持つモニターの中の『ウサミ』がそう言うと同時に、月光ヶ原は徐に自分の『首を引っ込ぬいた』。

 

「…ッ!!?あッ、な…」

「えええええええッ!!?」

「くく、首がッ…!?ど、どうなってんの!?」

「…まさか、僕と同じ『ロボット』だったんですか!?」

「そうだよー。これは月光ヶ原に似せて創ったモナカ特製の『アンドロイド』。アンタ達はそれを本物の月光ヶ原って人と思い込んでたってワケ」

「…じゃあ、本物の月光ヶ原さんは?」

「ん?『殺した』よ、入れ替わるのに邪魔だったし」

「なッ!?」

 平然と言い放ったモナカに苗木達はショックを受ける。

 

「こ、殺したの…?月光ヶ原さんを、君が?」

「そーだって言ってるじゃん。しょうがないでしょ?同じ人間が2人もいたら怪しまれるし、そもそも殺す以外の方法なんか無かったんだしさ」

「…どうして、そんなことを」

「…別に、ちょっと気になっただけだよ。ジュンコお姉ちゃんを殺した苗木誠ってのが、どんな奴なのか見てみたかっただけ。しばらく観察したらトンズラしようと思ってたんだけど…なんか面白いことになってたし、気がついたらこっちの方がヤバいことになって来たから、回収ついでにロボをついてこさせたの」

「そんな…そんなことの為に、『人を殺した』っていうの!?自分が何をしたのか、分かってやっているの!?」

「うるさいなー。別に良いじゃん、あんなモブ生きていたって死んだって同じだって。実際、モナカが入れ替わっても別に問題なかったでしょ?」

「そういうことを言ってるんじゃないよッ!!そんな簡単に人を殺すことを、おかしいと思わないの!?」

「あ、朝日奈さん落ち着いて…!」

 いつになく感情的な朝日奈を苗木が宥めようとしていると、その名を聞いたこまるが問いかける。

 

「朝日奈…もしかして、『朝日奈悠太君』のお姉さんですか?」

「…そうだよ。私は!『アンタ達が殺した朝日奈悠太』の姉の、朝日奈葵だよッ!!」

「ええッ!?こっちの朝日奈先輩の弟さん、亡くなってたんすか…」

「しかもこの子達に殺されて…そんなのって…」

 朝日奈の激昂に霧切たちは勿論、悠太と面識のある79期生達も朝日奈の心情を察して口を挟めなくなる。

 一方大門達も、自分たちが定めた『デモンズハンティング』のターゲットであった悠太の死に様は理解していた。当時は自滅したことに落胆すらしていたが、こうして『頭が冷えた』今は自分たちのしたことを自覚しているのか黙り込んでしまう。…一人を除いて。

 

「ふ~ん、そうなんだ。…ご愁傷様、これで満足?」

「ッ!!アンタァッ!!」

「わ、わ!朝日奈先輩、落ち着いてよ!」

「お気持ちは分かりますが、今はダメです。ここで彼女に手を出せば話し合いに影響が出ますし、なにより彼女は殴られた程度で自分の認識を改めるような子ではありません」

「ぐうッ…」

『モナカちゃん…いくらなんでもそらないで…』

「知らないし、モナカにはどーでもいいしー…」

 苗木を振り切ってモナカに掴みかかろうとした朝日奈をゴン太と東条が制する。それでも尚収まらない朝日奈に、意を決した表情で新月が歩み寄る。

 

「おい…ちょっといいか?」

「…何」

「お前の弟が死んだ『原因』…デモンズハンティングを考案したのは僕だ」

「!」

『な、渚ァ!?』

「僕がデモンズハンティングを提案さえしなければ、お前の弟は…少なくともあんな死に方はしなかっただろう。つまり、お前の弟を殺したのは僕だ。お前が憎むべきはモナカちゃんじゃない、僕であるべきだ」

「ちょ…新月君!?」

「黙っていてくれ言子ちゃん。…お前が仇を討ちたいのなら、僕を殺せ。その代わり約束してくれ、ここにいる皆を…コドモには手を出さないって。助けてくれなんて虫の良いことを言うつもりは無い、せめて今だけは見逃してくれ…頼む」

「…ッ!」

 毅然とした態度で頭を下げる新月。オトナに対する憎しみが消えたわけでは無いが、彼らも『超小学生級』の才能を持つエリートである。今の状況で、未来機関に縋る以外にコドモを救う術が無いことは理解している。モナカに良いように利用されていたとはいえ、コドモたちを先導した責任を取るために、新月は自らの命を差しだそうとしていた。

 

「今更、そんなことッ…!」

「…そうだな、今更だ。こんなことをしたところでお前の弟が生き返ることは無いし、お前達が約束を守ってくれる保証なんて無い。でも、それでも…もう僕たちにはこうするしかないんだ。お前達に縋るしか、僕らに生きる道は無いんだよ…!お願いだ、僕はどうなってもいいから皆だけは…!」

「ま、待ってよぉ!…あの『ユータックス』につけてた腕輪を作ったのは、『僕』なんだよ!だからアイツを殺したのは、どっちかって言えば僕の方なんだよ!仇を討つのなら、新月君を殺すより僕を殺した方がいいよぉ!」

「蛇太郎!お前まで何言ってるんだよ!?そんな奴らに頼むなんて…」

『ジャタロウ、ハヤマラナイデ…』

「もう…もうもうッ!!なんなんですか、男の子ってみんなこうなんですか!?理解不能ですこんなのッ!!」

 新月に続いて蛇太郎まで懇願を始めたことに大門は困惑し、言子はその行動を理解できず癇癪を起こす。

 その光景をただ呆然と見ていた朝日奈に、見かねた苗木が霧切とこまるに確認をとって声をかける。

 

「その…朝日奈さん、彼らは本気でこう言っている。少なくとも、僕はそう思う。朝日奈さんの弟のことは…僕がどうこう言える立場なんかじゃあないことは分かってる。だけど…」

「…分かってる、分かってるよ…苗木」

「朝日奈さん…?」

 朝日奈の身体から力が抜けていくのを感じ、ゴン太と東条が少し離れる。その場に立ち尽す様になった朝日奈は俯き、肩を震わせながら絞り出すような声で呟く。

 

「…本当は分かってるんだよ。この子達にも事情があるって、この子達に復讐したってなんにもならないって…!でも、だからって割り切れるワケないじゃん!悠太は、私にとってたった一人残された『家族』だったんだよッ!それを、なんの関係も無かった悠太を殺されて…許せるわけがないじゃんかッ!!」

「朝日奈さん…」

「朝日奈っち…」

「ふん…」

 

「…『復讐』とは、『前に進む』為に必要な『きっかけ』になることもある」

「…?」

 ふとそう言い放った最原に、朝日奈が訝しげな目を向ける。

 

「前に苗木先輩が言ってたんです。復讐は…『人の命を奪う』という行為は、許されて良いものであってはいけない。でも…その『咎』を背負ってでも、復讐を成し遂げたいという強い『思い』があるのなら、それはその人にとっての『希望』なんだって」

「復讐が…希望?」

「誰かを殺すってことは、間違いなく『絶望』に繋がることでしょう。でもそれは、裏を返せばそれだけ誰かを『想っていた』ということで…その想いは紛れもない『希望』なんです。希望と絶望は『表裏一体』…真逆であって、限りなく近いものなんです。その想いのために仇を討つことは、その人がその先の『未来』に進むために必要なことでもあるんです。だから僕たちは、復讐と言う行為自体を否定するつもりはありません。…何しろ、僕はそれを『経験済み』ですから」

「えっ…?」

「僕の生まれはもう聞いてますよね?…僕の両親は、僕を生かすために僕を作った『組織』に殺されました。僕はその仇を討つために、『兵器』として生まれた僕自身の『運命』にケジメをつけるために、組織と戦い…多くの人たちを手にかけました。その過去があったからこそ、『今の僕』がある。そのことに関しては、僕に後悔はありません。…『あってはならない』んだと、分かった上でやったことですから」

「……」

「朝日奈先輩、もう一度考えて下さい。貴女が彼らに復讐をすることで、貴女は『前』に進めますか?彼らの死を乗り越えて、引き摺って…それでも尚希望を信じて生き続けるという『覚悟』はありますか?それがあると言うのなら…僕は貴女を止めません」

 最原の真剣な眼差しを前に、朝日奈はしばし沈黙した後…大きく息を吐く。

 

「…ハァ。なんか、情けないよね…ホントなら『後輩』になるはずだった子に、こんな説教されてるんじゃさ…」

「朝日奈さん…」

「ごめんね、苗木。もう大丈夫だから。…うん、そうだね。こんなあやふやな気持ちで仇討ちしたって、悠太が喜ぶはずが無いもん。だから…この気持ちに『答え』が出るまでは、君たちを許すかどうかは保留にするよ。それまでは、私は君たちを『敵』とは思わないから。未来機関として、それは約束するよ」

「…分かった」

「あ、ありがとうっ!」

「…ごめんなさい、皆。勝手に決めちゃって」

「…何、構いませんよ。この中で彼らに対して尤も怒りを抱いているのは貴女だ。その貴女がそう決めたというのであれば、我々はそれに従いましょう。今は立場など関係なく、共に力を合わせる時ですからな」

「ふん…。まったく、貴様という奴はいつもいつも決断が鈍い。未来機関の一員だというのなら、その程度の覚悟ぐらい持ち合わせていろ」

「そんな辛辣なこと言うなよ十神っち~」

「まあまあ…ともかく、今はお互い協力して現状を乗り越えなきゃね!」

「そうだよ!一緒に頑張ろう!」

 朝日奈の決定に皆は安堵の表情を浮かべ、今の現状を打破するべく団結を新たにする。

 

「…なんなんですのこの人達は?こんなオトナ…始めてですわ」

「こいつら…俺っちたちの敵じゃないのか?こいつらなら…信じてもいいのかな?」

 そんな自分の知る『オトナ』とは明らかに雰囲気の違う彼らに、大門や言子は困惑しつつもその光景にどこか『憧れ』のような思いを抱き…

 

「…くっさ。付き合ってらんねー…」

 モナカはと言うと、蔑むように鼻を鳴らして再びそっぽを向いてしまうのだった。

 

 

 

 




今回は解説はお休みです
ではまた次回
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。