黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~   作:マイン

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再掲載、2話目です

宇宙忍者 バルタン星人 登場!
触覚宇宙人 バット星人 登場!
異次元人 ヤプール 登場!
破滅魔人 ゼブブ 登場!
高速宇宙人 スラン星人 登場!
暗黒星人 ババルウ星人 登場!
悪質宇宙人 メフィラス星人 登場!


狙われた本部

「…う、ん…?」

 最初に目を覚ましたのは霧切であった。目覚めと同時に凄まじい倦怠感が体を襲い、重たい体と漠然としたままの思考が霧切の判断能力を鈍らせている。

 

「…く、しっかり…しなさい、霧切響子…!」

 自分に言い聞かせながら頭を振って意識をはっきりさせると、周りでは皆がさっきまでの自分と同じように気を失っていた。

 

「皆ッ…!起きて、目を覚まして…!」

「うん…きょうこ、ちゃん…?」

「あれ、先輩…?俺ら、なんで…」

 霧切はひとまずその場に居た皆を一人一人起こして回る。どうやら皆も異様な虚脱感があるようで、その寝起きは一様に緩慢であった。

 

「なんだったんだ今のは…?本当に地震か…?」

「…でも、地震の割にはモノとかなんも落ちたり壊れてたりしてないっすよね?」

「おまけのこの体のだるさ…どうにも普通じゃあなさそうだな」

 やがて思考がハッキリしてくると、先ほどの揺れや気を失っていた理由など分からないことが山積みな状況に俄かに騒ぎ出し始める。

 

「皆さん、落ち着いてちょうだい。騒いでいても仕方がないわ、まずは現状の確認をすることが肝心よ」

「…ええ。少なくとも、これだけの規模の揺れがあった以上、どこかになんらかの影響が出ている筈よ。まずはそれを…」

 冷静な東条や霧切がその場を統制しようとした、その時

 

 

 

ドドドドドドドドッ…!

ドバァンッ!!

「た、た…大変だぁーッ!!?」

「ご、ゴン太!?」

 轟音を響かせそこに飛び込んできたのは、血相を抱えたゴン太であった。

 

「ど、どうしたのゴン太君?そんなに慌てて…」

「え、ええと…!ご、ゴン太さっきまで外でちょうちょさんを見てて、そしたら空が揺れて……と、とにかく!『外』を見て!」

「外…?」

 ゴン太に言われるがまま窓の外を見て…絶句した。

 

「…こ、これって…!?」

「な、な…なんじゃこりゃぁーッ!?」

 顔を青ざめ、悲鳴染みた大声を出してしまうのも無理もないことであった。

 

 

 

 

 

 なぜなら、つい先ほどまで東京のビル街が見えていた学園の敷地の外が…赤黒い空に廃墟と化した建物の残骸が犇めく、荒廃した街並みへと変貌していたのだから。

 

「じ、盾子ちゃん…!これって…」

「…成程、『そういうこと』ね。こりゃアタシもおったまげってか…」

「「ッ!」」

 皆が愕然としている中、ぽつりとそう呟やいた江ノ島の声を霧切と澪田は聞き逃さなかった。

 

「…江ノ島さん、それはどういう意味?貴女は何か知ってるの?」

「…あら、私何か言いましたっけ?」

「恍けても無駄っすよ!唯吹イヤーにはちゃんと聴こえてたっす!『そういうこと』ってどういうことなんすか!?」

「…ちぇ、誤魔化せると思ったのになー。…正直私にも確証はないけれど、それでもいいのかい?」

「構わないわ。推測でもなんでも、今は情報が欲しいわ。…例え貴女のであってもね」

「ふうん…いーよ、教えてあげる。…おそらくこの学園は今、どこか『別の世界』に転移してしまっている。山田君の好きそうな言葉で言うと…『学園ごと異世界転移』って奴だね」

「な…なんですとぉー!?」

「じゃあ、さっきの揺れは…」

「地震ではなく、転移による空間の歪み…とでも言うべきものでしょう。ゴン太君が『空が揺れた』と言っていましたが、割と的を得た表現と言っていいでしょう」

「…ま、待て!百歩譲って学園がどこかに転移したとして、何故ここが『異世界』だと貴様に分かる!?」

「だって~!この世界って、私の『想定したまんま』の世界なんだもん!そりゃ別世界だってすぐに分かるって!」

「…『想定』、だと?先輩よ、そりゃどういう意味だ?」

「はい…。この世界は、私たちが元いた世界が『回避した光景』なのです…。本来なら、私たちの世界もこうなる筈だったんですが…苗木君が邪魔したせいで、それは阻止されたのです。なので、少なくともここは私たちが元いた世界ではないと判断しました…」

「…まさか、ここは…」

 江ノ島の言葉に、79期生を除いた皆の頭に数か月前に起きた『あの事件』の事が過る。それを裏付けるように、江ノ島が断言する。

 

「…そう。この世界は、アタシが計画した『人類史上最大最悪の絶望的事件』が成立した世界…。つまり、『アタシが苗木に勝った未来』ってワケよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、この世界の『未来機関』でも大騒ぎになっていた。

 

「どうなっている!?さっきの揺れは一体なんだ!?…あの『希望ヶ峰学園』はなんだ!?」

「わ、分かりません…!何が起きたのかさっぱりで…」

「チィッ…!」

 学園を監視していたモニターが一瞬映らなくなったかと思うと、直後に物凄い揺れが襲い、それが止むと同時にモニターが再び映り…そこにはまるで『新品同然』の希望ヶ峰学園が存在していた。その余りにも異常な事態に、未来機関は急きょ各支部の支部長を学園にほど近い第一支部に招集し、状況を調べつつ対策会議を行っていた。

 

「宗方さん…荒れてますね」

「それも仕方がないでしょう。こんな不可解なことが起きるとは夢にも思っていませんでしたからね」

「どーでもいいし…さっさと帰りたーい」

「同感だな」

 支部長たちの反応は様々であったが、一番顕著だったのはやはり十四支部支部長の霧切と…今回特別に召集された苗木誠を始めとした『コロシアイ学園生活の生き残り』の面々であった。

 

「…霧切さん。一体、何が起きたのかな…?」

「分からないわ…。こんな現象、もはや理解を超えているとしか言えないわ」

 未来機関の施した処置により、彼らは江ノ島盾子によって失われた記憶を一部ではあるが思い出していた。モニターに映る希望ヶ峰学園は、紛れもなく彼等の知る『人類史上最大最悪の絶望的事件が起きる以前の希望ヶ峰学園』であった。

 しかし、彼らはどこか『違和感』を憶えていた。

 

「でもさ…なんか、ちょっと違くないかな?」

「確かに…なんつーか、うまく言えねーんだけど…」

「…妙に小ぎれいだな。俺の思い違いか…?」

 モニターに映るそれは希望ヶ峰学園には間違いなかったのだが、彼らの記憶とは少しだけ違う部分があちこちにあった。

 彼らは知らないのだが、『向こう』の希望ヶ峰学園はカムクラプロジェクトの解体と同時に校舎の一部が改装され、彼らの知る希望ヶ峰学園には無い教室や設備が増えていた。なので、外見はさほど差異は無いものの中身は半ば別物といってもいい代物になっているのである。

 

 とその時、事態は動いた。

 

「…!ねえ、誰か出てきたよ!」

 雪染の言うとおり、学園の校門が開き、敷地から何者かが出てこようとしていた。

 

「カメラを回せ!顔を映せるか!?」

「やって…みます!」

 宗方の指示にオペレーターが監視カメラをズームさせ、出てくる人物にフォーカスを合わせる。

 

 

 

「……え?」

 やがて映し出されたその顔に、苗木は掠れたような声を上げる。苗木だけではない、霧切も、十神も、朝日奈や葉隠も…この場に居ない腐川もここにいれば、同じように愕然としていたであろう。

 

 中から出てきたのは『5人』。首に短いマフラーを巻いた、苗木と同じようなアンテナの癖っ毛のある青年。キャップを目深にかぶった線の細い少年。天然パーマが特徴的な飄々とした雰囲気の少年。そんな彼らと共に…

 

「…どうして、なんで…あの二人があそこに…ッ!?」

 あのコロシアイ学園生活で『死んだ筈』の、大和田紋土と大神さくらが、そこにいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 …江ノ島の衝撃発言により今現在置かれている状況をどうにか飲み込んだ一同は、ひとまず落ち着きを取り戻すと、今後の方針を決めるべく学園長室へとやってきた。

 

「…成程。状況は理解した…到底信じがたいことではあるがな」

「まあそうだが…外があんな有様じゃあむしろその方が説得力があらぁな。第一、未遂とはいえ『元凶』がそう言ってんだから、間違いねえってこったろ…」

「…正直、言葉が出ないわ」

 霧切からの報告を聞いた学園長と教師陣を代表して聴いていた黄桜と雪染は、その余りにも荒唐無稽な事実に嘆息するしかできなかった。

 

「気を落とすだけなら誰でもできるわ。それより、これからどうするかを決めるべきでしょう」

「…響子ちゃん、ちょっと厳しくない?もう少し優しくしてくれないとオジサン悲しいナァ…」

「誠君が居ない以上、この状況は私たちだけでなんとかするしかないわ。その為にも、先生方にも協力してもらう必要があるわ。…私たちは、この世界の事を何も知らないのだから」

「…ああ、その通りだ。では聞くが、まずは何をするべきと君たちは思うかね?」

「何を…って、言われてもなぁ…」

「異世界転移はオタクの夢ですが、実際なってみるとどうしたものかと…」

 

「…こういう時は、まずは『情報収集』っすね」

「あ、天海君?」

 皆が困惑する中いの一番に声を上げたのは、意外にも天海であった。

 

「俺も『冒険家』の端くれっすからね。訳の分からない土地に飛び込んでいくのは慣れっこっす。…そして、そういう時には『情報の有無』は生死を分けるっす。江ノ島先輩の話が本当ならここは東京のど真ん中ってことになるっすけど、外があんな状況では俺達の常識は通用しないと考えるのが妥当っすよ」

「な、なるへそ…流石冒険家」

「ふむ…江ノ島君、君はこの世界についてどの程度を理解している?」

「ん~?…さぁてね。アタシも苗木に計画ポシャられた時点でその先の事なんかすっかり考えなくなったからね。詳しいことは知らなーい!…けど、分かってることは一つ。今のこの世界に、『真っ当な人間』が生き残ってるとは期待しない方がいいよ」

「ど、どういうことぉ…?」

「アタシの計画では、今も部屋に引き篭もってる御手洗君の作っている『究極のアニメ』とやらを改造して、それを洗脳作用を持った『絶望のビデオ』にしてそれを起点にし、世界中の人間を『絶望化』させる…というのが筋書きだったからね。それが成功したとなると、世界中の人間が『テロリスト』になっていても不思議じゃあないかもね」

「なッ…!?て、テメー!そんな物騒な計画だったのかよ!?」

「…今更ながら、阻止できて本当に良かった…。もし成功していれば、我々とてただでは済まなかっただろう…」

 ベラベラと恐ろしいことを口走る江ノ島に、九頭竜は想像以上の内容に激昂し、石丸は心底ほっとしたように肩を落とす。

 

「しかし…そうなると情報を集めるにも苦労しそうじゃのう。戦えん連中はここで待っとった方が良さそうじゃのう」

「うん。それにここを守る人も必要だよ。この世界の人からしても、いきなり学校が現れたんだ。警戒するだろうし、狙われる可能性もあるからね」

「…人選が必要ね」

 霧切たちは調査に出る面々を話し合い、皆の中から5人を選出した。

 

「苗木が居ない分、俺達がしっかりしないとな!」

『異世界…興味深いですね。僕たちの世界とどれほどの違いがあるのか、暇つぶしに確かめてみましょう』

 実力と判断力の高さ、そして『カムクライズル』という切り札を持つ日向。

 

「先輩の分まで、僕が頑張ってみるよ…!」

 探偵としての能力に加え、『生身の戦闘能力』においては群を抜いている最原。

 

「よろしくお願いするっす、大和田先輩」

「おう!オメーもナビを頼むぜ!」

 バイクにより広い行動範囲を持つ大和田と、この手の事に慣れた天海がともに行動する。

 

「うむ…我の場合、ココに居るよりは外に出た方が役に立てそうだからな。できる限りのことはしてみよう」

 そしてその威圧感から暴徒たちもそうそう近寄らないだろうということで、大神が外に調査に出ることが決まった。戦刃も名乗り出たのだが、江ノ島に

 

『この計画ではアンタも共犯になってんのに、ノコノコ出ていくとか馬鹿なの?死ぬの?』

 …と言われた結果江ノ島と共に留守番となってしまった。

 

 教師陣は生徒が危険を冒すことに反対であったが、学園長の鶴の一声によりひとまず様子見と言うことに落ち着いた。学園長も立場上反対するべきなのだが、彼らは『超高校級』の才能を持つ若者たち…しかも苗木や日向たちの因縁に関わったことで年にそぐわぬ度胸と思い切りを身に着けてしまっている。自分たちが出張るよりもはるかに役に立つであろうことは目に見えているので、彼らを信じ全ての責任を負うことでその心意気に応えようと決めたのだった。

 そうしている間に生徒たちは調査の準備を進めていく。外に出向く5人には左右田と入間特製の『通信機』が持たされた。この通信機はなんとキーボを『中継基地』としており、特殊な電波を通じて通信先の情報をキーボにリアルタイムで伝達できる優れものであった。さらに、外の環境を調べていたキーボにより外気が汚染されていることを伝えられた罪木は大急ぎで抗生薬と防護マスクを作成し、5人だけでなく学園に居る全員にそれが配布されたのだった。

 

「…日向君。無事で帰って来てね、カムクラ君も一緒に…ね?」

「ああ、任せとけよ!」

「最原君も、無茶しちゃ駄目だよ!…怪我とかしたら、その…嫌、だから」

「う、うん…。大丈夫…絶対、戻るから」

 

 

「…甘酸っぺぇなあ、おい!」

「リア充爆発しろ!ですぞ!」

「おだまりなさい、糞ダサアゴヒゲにメガネ豚」

「「はぐッ!?」」

 …見送りの時の雰囲気に嫉妬する者はさておき、それらの準備を整えた彼らは外の世界へと足を踏み出した。自分たちの世界が辿ったかもしれない、絶望と死の蔓延する世界へと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…むう。改めて酷い有様だな…。これではどれほどの人々が生き残っているか…」

 散策を始めた大神は、荒廃した街並みに眉を顰めながら情報の手がかりとなるものを探す。

 

ザッザッ…

 

「……」

 

…ザッ

 

 と、背後に気配を感じた大神はその場で立ち止まる。

 

「…誰だ?」

「…!」

「隠れても無駄だ。そこにいるのは分かっている。…姿を見せよ!」

 気配を感じた建物の陰に大神は叫ぶ。やがておずおずと、確かめるような足取りでその人物が姿を見せた。

 

「…ッ!?お、お主は…」

 その人物に、大神は絶句する。何故なら…

 

「…さくら、ちゃん…?」

 そこにいたのは学園で留守を預かっている筈の、自分の無二の親友である『朝日奈葵』だったのだから。

 

 

 同時刻、探索班の帰りを待つ希望ヶ峰学園にも『来訪者』が現れた。

 

「…!皆さん、校門前に誰か来ました!」

「何!」

 学園の周囲を見張っていたキーボが、皆にその存在を告げる。

 

「だ、誰だ!?江ノ島が言ってたみたいなテロリストか!?」

「…いえ、違います。『車』で来ています…しかもかなり『大勢』みたいです」

「大勢…?しかも車…もしかしたら、この世界には何かの『勢力』が存在するのかしら?」

「そいつらが接触を図って来た…と?」

「もしそうなら、良い方々だといいのですが…」

「…出てきました!全員黒のスーツで…ッ!?」

 と、来訪者の姿を報告していたキーボが突如言葉に詰まった。

 

「…どしたのキーボ?遂にバグった?」

「た、大変だぁ…!早くバグ処理しないと…」

「ち、違いますッ!そんなんじゃなく、あ…あれは…!」

「キーボ君…?」

 

 

 

「き…霧切先輩!?十神先輩まで…どうして二人が『あっち』にいるんですかッ!?」

「…ハァッ!?」

 キーボの視界には、黒のスーツ集団に囲まれた、同じく黒のスーツに身を包んだ霧切と十神。…そして、キーボは気が付かなかった。その二人の間に居る、アンテナヘッドが特徴的な『茶髪の短髪』の青年が、『苗木誠』であるということに。

 

 

 

 それから間もなく、学園からの召集を受け探索班は半ばとんぼ返りで学園へと帰還し、待っていた未来機関からの使者を見て同じように驚いた。そして、学園長と生徒を代表して数名が同行する形で、ついに未来機関との接触が決まったのであった。

 

 

 

 

 

 …同時刻、太平洋上…未来機関本部建設予定地。

 

『…ここか』

 建設中止となった『希望ヶ峰学園海外支部』を未来機関の正式な本部へと作り替える為、多くの作業員が急ピッチで建造を続けるその島に、黒いローブを纏った『謎の人物』が現れた。

 

「ん?…ちょっと、アンタ!そこで何を…つーか、なんでここにいるんだよ?ここは関係者以外立ち入り禁止だよ?」

『……』

 その怪しい風貌に見かねた作業員の一人が声をかけるが、ローブの人物は何も答えない。

 

「…ちょっと、聞いてんのか!?ここはアンタみたいなのが…」

『…五月蠅い蠅だ』

「は?」

 ぼそりと呟かれた言葉を作業員が聞き直そうとした、その時

 

ガッ

「へ?」

 

ビシャァァァァアンッ!!

「アガガガガガガッ…ガアアアアッ!!?」

 ローブの人物が作業員の頭を掴むと、その手から青白い電撃のような光が迸り、それを喰らった作業員はこの世の物とは思えない悲鳴を上げる。

 

(な、なんだ…これ…!?意識が…俺が、オレじゃ…ナク、ナ…ル…)

 やがて意識を手放した作業員の身体が、徐々に黒く染まっていく。焼け焦げていくようにではなく、まるで薄雲のような黒い靄で覆い尽くされるような、そんな変化であった。

 

「お、おい!何をやっている!?」

 そんな状況に流石に作業などしていられなくなった作業員たちが次々と集まってくる。それらが集まる直前に、ローブの人物は作業員を手放した。

 

「…おい、お前!こいつに何をした!?」

「お、おい…大丈夫かよ?」

 ローブの人物を警戒しつつ、彼らは地面にへたり込んだままの仲間の身を案ずる。すると、そんな呼びかけに応えるようにその作業員が振り返り…

 

 

「…フォ?」

「……え?」

 その顔を見た彼らは、一瞬我が目を疑った。振り返った作業員の顔…この現場で何度も見た筈の馴染み切った顔がある筈のそこにあったのは…

 

 

 

 

 『巨大なセミ』と表現するのがピッタリな、異形の顔があったのだから。

 

 

「フォフォフォフォフォフォ!」

「ひ…ひぃえぇぇぇぇッ!!?」

 作業員たちが驚きと恐怖でその場を飛び退くと共に、『元』作業員は奇声を上げて立ち上がった。それと共に明らかになったのは、変化したのは『顔だけではなかった』ということであった。

 ヘルメットの下から飛び出たのは、二股に別れたVの字型の頭。作業服を破り捨てたその身体は、昆虫と人間を掛け合わせたような不気味な肉体へと変貌していた。そして、なにより目を引くのは、5本の指がついた人間の手に代わって存在している…自分の頭ほどもある『大きな鋏』。

 

「お、お前…その姿、まさか…」

 その姿に『見覚えがあった』作業員の一人が、その名を叫ぶ。

 

 

 

「ば…『バルタン星人』…!?」

「フォフォフォフォフォ!!」

 歓喜のような声を発するその怪物は、かつてウルトラ戦士たちと幾度も戦いを…『テレビの中』で繰り広げた、宇宙忍者バルタン星人そのものであった。

 

「な、なんであいつが、バルタン星人に…!?」

『…決まっているだろう。私が『創り変えた』のだ』

「は…?」

 同僚の変わり果てた姿に愕然とする作業員の疑問に、ローブの人物がさも当然のようにそう答える。

 

『地球人の肉体は貧弱だからな…言いなりにすることなど造作もないが、すぐに壊れたのではキリが無い。故に、多少はマシな身体に『創り変えてやった』のだよ。ありがたく思うがいい』

「フォフォフォフォ!」

「創り…!?な、何を馬鹿な事言ってやがる!?それに、バルタン星人は『フィクション』…空想なんだぞ!それがなんで…」

『…確かに、貴様らにとって『我々』はあくまでフィクション…空想の産物でしかない、それが貴様らの認識だ。だが…貴様らが勝手に創り上げたその『常識』が、果たして間違っていないとどうして断言できる?たかだかこのちっぽけな太陽系すら碌に認識できていないような下等種族が、何故我々を『空想』と決めつけられるというのだ?』

「な、なんだと…」

 

『…それに』

 瞬間、ローブの人物の先ほどまでの男か女かも分からないようなくぐもった声が、明確に『女のソレ』と分かる声に変質する。

 

『この『顔』を見てもぉ~…アンタらはまだアタシが『フィクション』だなんて能天気なこといえるのかなぁ~?』

 ポカンとする作業員たちに向けて、ローブの女が頭のフードをめくり顔を見せる。

 

「…ッ!!?な、な…!?」

「そ、そんな…お前はッ!?」

『うぷぷぷ…♪いいね、いい顔だよ…『絶望してる』のがハッキリ分かる、最ッ高に分かりやすい顔だよ!じゃ…その絶望と共に、第二の人生、エンジョイしてみようかぁッ!!』

 

 

 

バババババババッ!!

『ぎゃあああああッ…!』

 

 

 

 

 

 …島に響いた悲鳴が治まった後、ローブの女は目の前で屯する異形の軍勢に満足げに胸を張った。

 

『うぷぷぷ…まあとりあえずはこんなもんかな。よかったねー君達、前よりずっと男前になってるよ~!』

『■■■■■■■―ッ!!』

 ローブの女の呼びかけに応えるように、異形の者達は鬨の声を上げる。その姿は、『地球人』としての彼らの面影など欠片も無かった。

 

 

宇宙忍者『バルタン星人』

 

触角宇宙人『バット星人』

 

異次元人『ヤプール』

 

破滅魔人『ゼブブ』

 

高速宇宙人『スラン星人』

 

そして…暗黒星人『ババルウ星人』

 

 それらはすべて、ローブの女の術によって『創り変え』られてしまった、作業員たちの成れの果ての姿であった。

 

『…ま、『ガワ』だけで中身は空っぽだけど、その内馴染んで使い物になるでしょ。さて、次は…』

 ローブの女は宇宙人軍団と化した元作業員たちを余所に、建設途中の本部の前に立つ。

 

『うぷぷ…本当に立派だねぇ。きっとこれから、ここを中心として世界中の絶望を打ち払うための戦いが始まろうとしたんだろうねえ。いやあ、感動的だなぁ…』

 

 

 

 

『だが無意味だ』

 女は冷たくそう言い、両手を広げる。すると本部が赤い光に包まれると共に徐々に姿を変えていく。元の美しい、まさしく『希望』を象徴する外観とはかけ離れた、禍々しい『絶望』そのものと言ってもいい代物に。

 

『アンタ達が創り上げようとした象徴…利用させてもらうよ。このアタシの『復活』の場に相応しい、絶望の新たな居城としてね…!うぷぷ、うぷぷぷぷ…!さあて、再びおっぱじめようか!人類史上…いいや、『宇宙史上最大最悪の絶望的事件』の幕開けだ!!うぷぷ…アーッハッハッハッハ!!』

 狂ったような高笑いをする女。

 

 

 その広げた右手の先には、魔王獣との闘いの中で失われた筈の『ダークリング』が、赤く妖しい輝きを放ち、その女の顔を祝福するように照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に破滅と絶望を振りまいた女と、『全く同じ顔をした』、その女の顔を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これは、大変なことになりましたねぇ」

 その凶行の一部始終を、地球の外…宇宙空間に存在する『宇宙船』の中から見ている者が居た。

 

「さて…私はどうすべきでしょうか。私ではまかり間違ってもあの者に勝てるとは到底思えません…。やはりここは、いち早く恭順を願い出るのがベストな選択でしょうねェ」

 その女の力と、その奥底に秘められた恐ろしい『悪意』を感じ取った『彼』は、逆らうという選択肢を早々に切り捨て、彼女の下に就くことを決める。

 

 

「…とはいえ、彼女の言いなりになりっぱなしと言うのも癪な話です。彼女といい、彼女の『内にいる者』も、既に『この世に在ってはならないモノ』です。そんな『過去の存在』に今あるこの宇宙の全てを委ねるというのは…あまり気分がいい物ではありませんからな」

 しかし、その選択とは裏腹に決意の籠った声でそう呟いた彼は、ふと虚空に顔を上げる。

 

 

「貴方もそう思いませんか?『ドリュー』…」

 かつて死の間際にほんの少しだけ心の通じ合ったあの誇り高き武人にそう問いかけ、彼は宇宙船の進路を地球へと向ける。

 

「今再びこの世に蘇った『宇宙の王』よ。精々今はその生を楽しむと良いでしょう。…だが、私には分かります。例えこの世界に『彼等』が居なかったとしても、それでも『彼等』はやってくる。それが、私があの闘いの中で理解した『彼等』の誇りなのですから…!光の国よ、ウルトラマンたちよ…急がねば、もう時間はありませんよ…!」

 悪質宇宙人『メフィラス星人』は遠く光の国へとそう忠告し、混沌渦巻く地球へと降り立っていったのであった。

 




ウルトラダンガンナビ!…という名の解説

今作の光の国の設定は、正史とSTORY0世界のミックスとなっています。時系列的にはこんな感じです

プラズマスパークエネルギー誕生(26万年前)→ババルウによる星間連合との戦い→ウルトラマンベリアルの反乱(ウルトラ大戦争)→ウルトラマン第一話へ

ダンガンロンパ世界では正史がウルトラマンシリーズとして放送されていましたが、メビウスを最後にテレビシリーズは一旦終了し、その後に人類史上最大最悪の絶望的事件が起き、ウルトラシリーズはそこで終わってしまったため、苗木たちはゴライアン達はもとよりゼロ、ベリアル以降のウルトラマンの存在を知りません

ジードに関しては…まだ内緒で。一応、出番はあるかもね
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