黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~ 作:マイン
無双鉄神 インペライザー 登場!
ウルトラマンオーブ 登場!
『……』
未来機関第一支部、今回の事態に際し各支部長並びにコロシアイ学園生活の生き残りが召集されたその一室は、不気味な静寂に包まれていた。
…否。その静寂の元凶であり、尚且つ『敢えて』空気を読まずただ一人その静寂を破る物が、一人…
「へぇ~、ふ~ん、ほぉ~…!ここが未来機関ねぇ~…マヌケ共が雁首揃えて拵えた割には大したもんじゃない!誉めてやろう!」
「じ、盾子ちゃん…!」
「だからやめとけっつったのに…」
「…こうなるとは思ったわ」
「胃が…」
『江ノ島盾子』…この世界に破滅をもたらし、苗木達の心に消えない傷を遺した張本人が目の前でピンピンしている状況に、支部長たちは驚きと恐怖が混ざった表情のまま凍りつき、一緒についてきた戦刃、日向、霧切、学園長はキリキリと痛む胃を抑えてため息を吐く。
(どうして…こうなっちゃったんだろう…?)
そんな混沌とした空間で、『こちらの世界』の苗木はこうなった経緯を思い返していた…
(…い、居づらい…)
未来機関の使者として入れ替わった希望ヶ峰学園へとやって来た苗木、霧切、十神。あのコロシアイ学園生活を生き抜いたものとして、この学園の内情を知る為に立候補したはいいが、出迎えたメイド服の女生徒に連れられた先の部屋で、居た堪れない雰囲気を味わっていた。というのも…
「じーっ…」
「…ほぉ」
「ふん…」
「……」
部屋で待ち構えていた四人。彼等から向けられる視線が、『観察』と言うには度を超えた威圧すら感じるようなものであったからだ。
…おまけに、そのうち二人が自分の両隣に居る同僚二人と『同じ顔』をしているとくれば尚更だ。今でこそ澄まし顔を取り繕ってはいるが、この二人も部屋に入って自分と同じ顔の人物が待ち構えていたのを見たときは、想定こそしていたもののやはり動揺を隠し切れずにいた。
「どうぞ、粗茶ですが…」
「あ…ど、どうも…」
先ほどのメイドが奥の部屋でコーヒーを淹れて戻ってきた。何の疑いも無く飲む苗木に対し、霧切と十神は若干警戒しつつもそれを口にし…目を見開く。
「この香り、この味は…!?おい、そこのメイド!」
「はい?」
「このコーヒーは何処の豆だ!?その辺の安物ではあるまい!」
「…いいえ、近くのコーヒーショップで買った物です。ただ…『淹れ方』は『とある方』にご教授して頂いたものですけれど」
「何…!?まさか…」
「はい。十神さん、貴方の執事をされていたアロシャニスさんですわ」
「何だと…!?アロシャニスが、貴様に…?」
「フン…驚いているな。俺も最初は驚いたぞ、まさかその辺の安物でアロシャニスの味にここまで近づけるとはな…。流石は『超高校級のメイド』、と言った所か」
「光栄ですわ」
「……」
「…お口に合いませんでした?」
「!…いいえ。美味しいわ」
「それは何より。…霧切先輩と『同じ好み』みたいで良かったです」
「ッ!?」
コーヒー一杯に翻弄され冷や汗を流す霧切と十神に対し、テーブルの向こうでは『霧切』と『十神』が優雅に東条のコーヒーを味わい、その隣では星が苦笑いを浮かべてブラックコーヒーを嘗めるように飲み、七海は我関せずといった様子で甘々のカフェオレを啜っていた。
ガラッ!
「…遅れて済まない。お待たせしたようだね」
「…ッ!!」
そうこうしている間に皆が待っていた人物…希望ヶ峰学園学園長『霧切仁』が入室した。その顔を見た瞬間、霧切の表情が見る間に凍りつき、能面のように固まった。
「き、霧切…さん?」
「……」
「……ふぅ。東条君、僕にもコーヒーを…」
「畏まりました」
そんな『娘と同じ顔の女性』の表情に一瞬複雑な表情になった学園長であったが、すぐさま動揺を悟られぬよう居住まいを正し、東条にコーヒーを求めてから席に着く。
「さて…そろそろ始めたいのだけれど、そちらはいいかな?」
「あ…えっと、霧切さん…」
「…大丈夫、よ…苗木君。まずは、未来機関としての務めを果たすわ。…私自身の事は、それからよ」
「…うん」
(『霧切さん』に『苗木君』…か。随分初々しいもんだ…俺らが入学したときにはとっくに出来上がってたのによ)
(やっぱり、『まだ』そんな関係なんだね…)
二人のやり取りにそんなことを考えている星や七海を余所に、学園長は話を切り出した。
「…いきなりだが、本題に入らせてもらう。まず、君達は『何者』だね?…ああ、もちろん君達個人の事は分かっているよ。君達が所属している組織について知りたいんだ」
「あ、はい。僕たちは、未来機関と言う組織に…」
「…成程。君達は江ノ島君が始めた『コロシアイ学園生活』とやらを生き延び、絶望の残党たちと対立する未来機関に身を寄せたというわけか」
「はい…」
「大したもんだ…。聞いただけでも寒気がするってのによ」
「フン…当然だ。俺がそんなもので死ぬものか」
「…フン」
「君たちの事は理解した。…それで、未来機関の皆さん、貴方がたの来訪の目的をお聞きしたい」
「は、はい…!僕たちは、この希望ヶ峰学園の内情の調査と、貴方たちとの対話の為に来ました」
「…今回のことについては、そちらも理解していると思います。我々はこの事態に対処すべく、情報を必要としています。…そちらで分かっていることがありましたら、情報提供を願えませんか?」
「成程…事情は分かった。とはいえ…こちらも詳しいことはまだ分かっていなくてね、今情報収集に向かっている生徒達がもうすぐ戻って来るから、そうしたら何かが分かると思うのだが…」
「…一つ聞いてもいいかしら?」
「か、構わないが…なんだね?」
「…どうして『生徒』に行かせたの?学園にはまだ教職員が居る筈よ。それなのに、何故わざわざ生徒を危険に晒すような真似をしたのかしら?」
「あ…そ、それはだね…」
「…そんなもの、アイツらの方が使い物になるからに決まっているだろう」
「え…?」
霧切に怒りの籠った視線を詰め寄られ口籠る学園長に代わって、『十神』が霧切の問いに答える。
「ここの教師陣は無能ではないが、所詮は凡人でしかない。ならば、いち早く情報が欲しいこの状況でより『有能』なものが役目を担うのは、当然の事だろう」
「で、でも…危険な事には変わりないじゃないか!」
「安心しなって苗木さんよ。アイツ等はそう簡単にやられりゃしねえよ。特に、日向先輩と最原はな」
「うん…それに、カムクラ君もいるしね」
「カムクラ…って、まさか…『カムクライズル』のこと…?」
「ええ。そちらではどうかは知らないけれど、彼は私たちの大切な仲間よ。今は日向さんの『もう一つの人格』として日向さんの中に居るわ。…腐川さんとジェノサイダー翔の関係に近い、と言ったらわかるかしら」
「…なんなんだそれは…!どうなっているんだこの希望ヶ峰学園は!?」
「う、うーん…確かにまあ、普通に考えると異常なのは『こちら』だと思うのだが…。どうしてこうなったと聞かれると…ううむ」
「…主にあの『馬鹿二人』が原因だ。俺達は基本的にお前たちと変わらん」
「馬鹿二人…?」
「日向君と苗木君だね~」
「へ…?僕?」
「…その辺りの話は後にしましょう。貴方がたも、ここで長話をするつもりはないのでしょう?」
「…ええ。私たちはあくまで現状の確認と貴方たちとの対話を求めに来ただけ。正式な談合は未来機関にて行う予定よ」
「わざわざ呼び出すとは…俺達を信用していない、ということか?」
「そ、そんなつもりじゃ…!」
「乗せられるな苗木。見え透いた挑発なのが分からんのか?」
「…フン。ネタが割れているとつまらんな」
十神同士の嫌味の応酬を挟みつつ、学園側は未来機関の提案を吞み対話の場を設けることが決まった。
「さて…。それで、こちらから出向く人選なんだが…」
『じゃ~すと、もーめーんッッッとッ!!』
「「「ッ!?」」」
突如教室に響き渡った声に、未来機関側の面々は驚く。声が聴こえたこともだが、…それ以上に、その声に『聞き覚え』があったからであった。
「…なあ、今のってよ…」
「でしょうね…」
「やはり言うだけ無駄だったか…」
「ハァ…」
動揺する未来機関側とは裏腹に、学園側の面々はその声にある意味予想通りと言った雰囲気で嘆息し、声の出所である部屋の天井の隅にいる『蜘蛛型監視カメラ』…その先でこの状況を見ている別室待機組に半ば八つ当たりの非難めいた視線を向ける。
『なんで止めれなかったの』…と。もしその心の声が届いていたなら、向こうの彼等はこう返していただろう。
『無茶言うな』…と。
ドドドドドドッ…!
ガラッ!!
そうこうしている間に遠くから何かが近づいてくる音が聞こえ、やがて扉を乱暴に開けて姿を現した。
「な、あッ…!!?」
「き、貴様は…ッ!?」
「…予想はしていた。希望ヶ峰学園が無事な以上、『彼女』もまた居てもおかしくは無いと。けれど、本当にここにいるなんて…!」
愕然とする彼らに向かい、『彼女』は嫌味なほどの笑顔で言い放つ。
「その談合とやら…アタシも連れて行きな!!」
「「「江ノ島盾子ッ!!?」」」
…その後、江ノ島に丸め込まれる形で江ノ島を含めた未来機関に向かう人選が決まり、厳戒態勢での監視下に置く、という条件の元江ノ島達は未来機関に招かれ、今の状況に至ったのである。
「…苗木誠、これはなんの冗談だ…?」
「えっと、その…冗談とかじゃなくて…」
「ふざけんなッ!なんでこの女が…江ノ島盾子が生きてやがんだよッ!?」
「それだけではありません…!亡くなった筈の霧切学園長に戦刃むくろ、おまけに霧切さんに瓜二つの女性まで…」
「ど、どうなっちゃってるのぉ~!?」
苗木達が連れてきた余りにも衝撃的すぎるゲストたちに、未来機関の支部長たちと言えど流石に混乱を隠し切れずにいた。
「…ゴホン。未来機関の皆さん、どうか落ち着いてください。皆さんのお気持ちはお察しします。話を聞く限り、そう思われても仕方のない事態でしょうから。なので、まずは我々の話を聞いてもらえないでしょうか?そうすれば、私や江ノ島君が何故ここにいるのかもお分かりになると思いますので」
「…う、うむ。では、拝聴させて貰おう」
「ありがとうございます。とはいえ、我々も見てきた限りの情報と江ノ島君の推測の下でしか現状を把握していないのですが…。まずは…」
学園長の口から、自分たちが『パラレルワールドの住人である』こと、苗木誠が中心となって江ノ島盾子、並びにエンリコ・プッチの野望を阻止したことにより自分たちの世界が『この世界とは違った歴史』を歩んでいること。そしてこの世界と共通して起きた『原因不明の空間の歪み』によりこの世界に来てしまったことが説明され、支部長たちは混乱こそ治まったものの今度はその話のスケールの大きさに理解が追いつかずにあった。
「平行世界…だと?馬鹿げたことを…と言いたいが、死人が蘇ったなどと言われるよりはまだ信じられる言い分だな」
「つーか…そっちの方がまだマシだべ。あの江ノ島盾子が生き返ったとか冗談じゃねえからよ…」
「じゃあ…あのさくらちゃんも、私の知ってるさくらちゃんじゃなくて…」
「『同じ顔、同じ名前、同じ性格をした別人』…とでも言うべき存在ね。葵さ…朝日奈さんには申し訳ないけれど」
「あ…だ、大丈夫だから!さくらちゃんはさくらちゃんだったし、響子ちゃ…えっと、霧切…さんが悪いわけじゃないし…」
「…そう、ありがとう。それと、呼び方は好きにしてもらっていいわ。そちらの私と何もかも同じと言う訳ではないのだし」
「…えっと、そのことなんだけど、一ついいかな?」
おずおずと苗木が霧切に呼びかける。
「何かしら?」
「あの…さっきそっちの僕が江ノ島盾子の計画を止めたって言ってたけど、…そっちの僕って、どうやってあの江ノ島盾子を止めたの?」
「……」
「どうやって…と言われりゃ、端的に言えば『ぶん殴って説得して止めた』…ってとこかねえ」
「……はぁ?」
「そ、そんなことで…江ノ島盾子を止めれたっていうの?」
「ちょっとー!アタシと苗木の因縁をそんなちゃっちい表現にするの止めてくれるー?」
日向のざっくりした言い方に江ノ島がケチをつける。
「仕方ねーだろ…。お前が苗木とドンパチやってるとき、俺はまだ『カムクライズルだった』んだぞ?お前の主観のことなんか知るかっつーの」
「だったらんなテキトーなこと言うんじゃねえっつの!…でも、あの時は本ッ…当に楽しかったなぁ~!アタシも苗木も、全力で殺し愛って、最後には苗木に身も心も屈服させられちゃったんだよね~。あー…今思い出しても、超絶望的~♡」
「…その、盾子ちゃんがごめんなさい」
「何姉ぶって謝ってんだよ残念!千年早いっつーのそういうの!」
「…向こうの僕って、一体どんな人なんだ…?」
思わずそう呟いた苗木に、江ノ島がニヤリと嗤って食いついた。
「えーっとね、んーとね…まず、『嫁が4人』居るわ!」
「は?……は?」
「…あ、ちょっと間違えたわ」
「…そ、そうだよね!そんなことあるわけ…」
「メンゴメンゴ!…アタシ入れたら『5人』だったわ!」
「……はぇ?」
「…勝手に自分をカウントしないでくれる?私たちはまだ貴女を許したわけでも認めた訳でもないのよ?」
「え~?もう別にいいじゃ~ん?」
「ちょ…ちょっと待ってッ!!どういうことかさっぱりなんだけれど!?」
「あん?だ~か~ら~、色々あってこっちの苗木には恋人…っつーか確定嫁が『4人』いんの!ちなみに両方の親も公認済みね。所謂ハーレムって奴?」
「は、ハーレム…!?」
「…一応聞くけど、その恋人って言うのは誰なの?」
「えーと、まず本妻がアンタ…ってか霧切でしょ?それに舞園、朝日奈、残姉ちゃん…って感じ?」
「78期の女子ほぼ全員じゃねーか!?」
「多恵子ちゃんもいいトコまで言ったんだけどねー。自分の夢を優先させて身を引いちゃったんだよね~。ま、またアレはアレでお似合いだけどね」
「な、なな…なんでそんなことになってんのさ!?そっちの私まで…絶対おかしいじゃんそんなの!」
「…仕方ない、って言い方は悪いけれど、これぐらいしか思いつかなかったのよ。あの人を…誠君を支えてあげる為にはね」
「え…どういうこと?」
「こっちの苗木はさ、アンタよりちょっとだけ色々と『強い』んだわ。そのせいか、頼んでも無いのに余計なおせっかいばっかりやいて、テメーが損したり死にかけたりすることもちょいちょいあんのよ」
「そんな誠君を放っておけなくて、力になりたくて…でも、誠君のいる世界には私たちではどうすることもできなくて…だからせめて、皆で誠君の『帰る場所を守ろう』と…そう皆で決めたのよ」
そう言う江ノ島や『霧切』の言葉に、嘘を言っているような雰囲気は感じられなかった。苗木は違う世界の自分に関する信じがたい情報の数々に、向こうの自分が増々分からなくなっていった。
「…そちらの苗木誠に関しては、今は置いておくとしよう。まずは、これからどうすべきか…それを話しあうための場じゃしな」
「ええ。…確認したいのですが、我々の学園が出現した場所に、この世界の希望ヶ峰学園が存在していたというのは、事実なのですか?」
「はい…。その学園を監視していたカメラが、今回の事態を全て捉えていましたから」
「うむ…となると、我々の世界には逆にこちらの希望ヶ峰学園が出現している…ということになるな」
「大騒ぎになってるかも…」
「私たちが気にしていても仕方がないわ。警察と…SPW財団に期待しましょう。誠君が帰って来ていれば、石丸警視や財団と協力して騒ぎを最小限に抑えてくれるでしょうし…」
「いっそ帰る方法も見つけてくれりゃいいんだけど…いくらアイツでも望み薄だよな。…カムクラ、お前どう思う?」
「…!」
日向がそう自分の内に問いかけると、それを聞いた天願の表情が強張り、直後…日向の人格が『日向・Z・創』から『カムクライズル』に切り替わる。
「…まずは、我々が元の世界に帰還する方法を模索することが先決でしょう。幸か不幸か、今回の一連の騒動の『理屈』は分かっています。江ノ島盾子の言ったとおり、あの地震…空間の歪みにより希望ヶ峰学園の敷地一帯が転移し合ったというのなら、『同じ現象』を引き起こせば元に戻る可能性はあります」
「…え?何コイツ、急に訳わかんないことベラベラ喋り出したんだけど?」
「…今の僕は創ではありません。僕は『カムクライズル』…希望ヶ峰学園のカムクラプロジェクトによって生み出され、今は創の二重人格として存在している者です」
「カムクライズルだとッ!?」
未来機関の支部長たちは眼前のカムクライズルを名乗る存在に再び警戒の色を示す。彼らにとってカムクライズルは、江ノ島盾子と共に世界を崩壊させた『超高校級の絶望』の中で最も危険な存在である。そうなるのも無理もないことであった。
そんな彼等を尻目に、『霧切』たちはカムクラの登場を当たり前のようにスルーし話を続ける。
「同じ現象…あの歪みをもう一度引き起こすというの?」
「それしか方法はないでしょう。…とはいえ、平行世界に関する知識は僕にもありませんので、成功する確率はごくわずか…いえ、可能性があること自体が奇跡、というレベルですがね」
「だ、大丈夫なのかね…?」
「…一応、『当て』はあります。あれほど大規模な空間の歪みが起きた以上、それが一日そこらで完全に収束するとは考えにくい。おそらく学園のどこかに、まだ空間の歪みの余波…地震における『余震』のようなものが残っているはずです」
「ハハァ…!そいつを無理やりこじ開けてまた歪みを引き起こそうってワケ?アンタも大概無茶苦茶考えるねぇ~。日向の悪いとこ感染ったんじゃない?」
「…どーいう意味だそりゃ!?」
「…創、今は黙っていてください。…自分でも馬鹿げたことを言っている自覚はあります。ですが、今我々が直面しているのはその『馬鹿げたこと』なのです。ならば、同レベルの発想でもなければ事態の解決は不可能…そうではありませんか?」
(…これが、カムクライズル…?)
苗木は目の前で自分の考えを語るカムクライズルに唖然としていた。苗木は、『この世界のカムクライズル』と二度面識があった。一度目は、各地に散らばった『超高校級の絶望』の確保作戦の最中。荒廃した街の片隅で、何をするでもなく呆けていたカムクライズルを保護したのが、他ならぬ苗木であった。その時のカムクラは碌に抵抗もせず、言われるがまま未来機関に確保され、ただじっと処断を待っていた。最初はこの世界の在り様に絶望し、自暴自棄になったと思っていた。…後に、それは間違いであったと思い知らされたのだが。
二度目は、ジャバウォック島にて江ノ島盾子のAIが引き起こした二度目のコロシアイ…『コロシアイ修学旅行』が終わった後のこと。その時に会った彼が『カムクライズル』なのか『日向創』なのかは分からなかったが、島に残り仲間たちの目覚めを待つと決めた彼はどこか寂しげで、それでもなお彼の心には確かな『希望』があったと感じたからこそ、自分たちは彼を信じ後の事を任せることができた。
…だが、今目の前に居るカムクライズルであろうその彼は、自分が見たどのカムクライズルとも違うそれであった。達観したような、どこか浮世離れした雰囲気は同じだが、その言葉には自分の知る『機械的』な物言いだけでなく、未知へと挑む子供のような探究心。そして何より、日向や霧切たちに対する『信頼』が窺えたからだ。
(…違う。ワシの知っているカムクライズルとは、決定的に違う…!人を超えた叡智を持ちながら、彼は『人の心』を理解している。もしや、彼こそが我々が望んだ…)
かつて自分たちが望み、そしてその結果生まれたものに裏切られた天願が、別の世界から来た限りなく自分の理想に近いそれに歪んだ眼差しを向けていると、ふとカムクライズルに視線を向けられ、即座に好々爺の自分に切り替える。
「…とはいえ、確証も何もない思いつきの策です。歪みがいつ、どこに生じるかは分かりませんし、我々の力でそれをこじ開けることが可能かどうかも分かりません。なので最低限、この世界での生活基盤は確保する必要があるでしょう。…最悪、どれほどこちらの世界にいることになるか分かりませんから」
「…ふむ。その協力を我々に望む、ということでいいのかな?」
「無論タダとはいいません。学園の技術で必要なものがあれば提供しますし、危険なものでない限り、生徒達や我々教師陣も未来機関の活動に協力します。…お話を聴く限り、お力になれそうな生徒もこちらにはいますので」
「それに関しては嬉しい申し出なんですけど…」
申し訳なさそうにそう言う雪染に続くように、支部長達の目がある人物に向けられる。…言うまでもない、江ノ島である。
「…ちょっとな~に~?その視線シラけるんですけどー、KYKY-!」
「…今一番空気読めてねーのオメーだよ」
「やはり、江ノ島さんの存在はネックかしら…?」
「当ったり前でしょッ!そいつがどんだけのことしたか分かってんの!?」
「…生きている事すら業腹でしかない…!この場で殺さないだけ温情と思え…ッ!」
「えっと…その、この盾子ちゃんはまだ何もしてなくて…」
「黙れッ!江ノ島と『同類』の奴の言葉なんざ信じられるかッ!!」
「…そいつが、私たちの知ってる江ノ島盾子と別人なのは、分かってるつもり。…けど、そいつの存在はこの世界の人たちにとって刺激が強すぎる」
「下手に絶望の残党共にバレでもしたら神輿として担ぎ上げられかねねえしなぁ…。まあ、そう簡単には受け入れられねえよな…」
「むう…」
支部長陣の辛辣な言葉に対し、学園側も反論に困る。無論学園側も江ノ島を完全に無害と見ている訳ではなく、万が一再び世界を絶望させようものなら、学園の全ての戦力を用いて鎮圧…最悪殺すことも厭わないつもりだ。
しかし、江ノ島や戦刃も学園の大切な一員であり、何より彼女たちが生きることは苗木が望んだことである。なので例え裏切られる可能性があったとしても、その時が来るまで彼女を信じる。それが希望ヶ峰学園が決めた方針であった。
「…貴方がたとの相互援助に関しては構わない。だが条件が一つある。…その江ノ島盾子に対し、なんらかの『措置』をとってもらう。それができなければ、援助は認められない…!」
「…措置、とは?」
「決まってんだろ。…早い話が、『殺せ』っつってんだよ」
「…ッ!」
「…ふぅ~ん?」
「なッ…!?そ、そんな…乱暴が過ぎるのではないか!?いきなり殺すなど…せめて、学園から外に出さない程度に…」
「そんなもんで大人しくできるのなら、この世界は滅んじゃいねーよ!…そいつの危険性を承知の上で放置しているテメーらの神経の方がどうかしてる…!やり過ぎって言うがな、そいつはそんだけのことをしたんだよッ!!」
「し、しかし…!」
「いやいや、実際妥当な判断だと思うよ?正直アタシも学園で大人しくしてろって言われてできるとは微塵も思ってないし!」
「…なんで本人が自分への過激論肯定してんだよ…!いいからちょっと黙ってろよ…!」
「……」
江ノ島への制裁を求める未来機関と、江ノ島をどうにか擁護しようとする学園。その言い争いを、苗木を始めとしたコロシアイ学園生活の生き残りたちはただ黙って見ていた。彼等も…彼等だからこそ、江ノ島盾子という存在の異常性と危険性は承知している。しかし、この世界においておそらく江ノ島盾子という存在を最も知る彼等だからこそ、目の前の江ノ島がかつて自分達と相対した『江ノ島盾子』と同じ存在とは思えなかった。
(…どうすればいいんだ?僕は、一体彼女をどうしたいんだ…?この世界を、皆を…僕の家族を奪った原因の江ノ島盾子を、僕は許せない。でも、だからってその罪を、まだ何もしていない筈のあの『江ノ島盾子』に押し付けるなんて、そんなのは間違ってる…!でも、宗方さんや逆蔵さんたちの気持ちも分かる…何をするのが正しくて、何が間違ってるのか…僕は…)
「…苗木君」
思考の渦に囚われ、思いつめていた苗木に霧切が声をかける。
「霧切さん…」
「苗木君、迷ってはダメよ。貴方はいつだって自分が信じたことを突き進んできた。あのコロシアイの中でも、貴方は頑として黒幕…モノクマと江ノ島盾子だけを敵とし、クロとなった彼らの事を憎むことも、恨むこともしなかった。そんな貴方だからこそ、あの江ノ島盾子を倒すことができた。…だから今回も、『自分がそうしたい』と思う事だけを信じなさい。それがきっと、貴方が望んだ『希望』なのだから…」
「僕が…信じる事」
「フン…どうせ何をしようが先なんぞ無いんだ。だったら、精々貴様の『幸運』とやらに乗ってやる。だから、下らんことで迷うな」
「うんうん!前から言ってるでしょ、アタシ達…一蓮托生だって!」
「そうだべ!死なば諸共、赤信号皆で渡れば怖くないだべ!」
「皆…!」
仲間たちの後押しを受け、苗木は目を閉じ燻っていた自分の心を一旦真っ新にし、そこに『アナグラム』のように文字を宛がい自分の答えを決める。
(僕は…江ノ島盾子を…!)
『シ』 『ン』 『ジ』 『ル』
(…『信じる』!それが僕の答えだッ!)
意を決し、苗木は立ちあがって紛糾する話し合いへと割って入ろうとする。
「あの…!」
その時であった。
『ピンポンパンポーン!』
「ッ!!?」
突如部屋に…いや、辺り一帯に響き渡った声。その声によりその場は騒然となり話し合いは自然と中断される。
「い、今のって…!?」
「まさか…」
「…な、なんだ今の?」
「アナウンス…?」
声は違えど、その言葉に覚えのある苗木達は顔を青ざめ、意味の分からない日向たちが首を傾げる中
ブゥン…!
「ッ!?モニターが…勝手に!?」
『…地球人の皆さん、御機嫌よう。これから少しだけ、私の話にお付き合い願いたい』
消えていた筈のモニターがいきなり点いたかと思うと、画面に映ったのは薄暗い空間に佇む黒いローブを纏った人物であった。
「なんだこいつは…どうなっている!?おい、誰がモニターを点けた!?」
「そ、それが…誰も操作していないんです!まるで一人でに点いたみたいに、勝手に…」
「…!き、機関長!たった今報告が…ここだけでなく、未来機関の全支部…いえ、世界中のパソコンやテレビのモニターにも、『同じ映像』が映っているそうです!!」
「なんだと…!?」
「馬鹿な…『世界中』に『同じ映像』が流れているだと…!?」
「そんな…こんなの、あのコロシアイみたいじゃんか!」
かつて江ノ島盾子がやったのと同じような事態に、皆の混乱がますます増す中、ローブの人物は整然とした口調で話し始める。
『さてさて皆さん…世界中に私の姿が映って驚いている頃だろうけれど、こんなもの私にとっては児戯に等しいこと。この程度で騒がず私の話を聴いてもらいたい』
「これが児戯…!?何モンだよこいつ…」
『まずは自己紹介を。私は…あー、訳有ってまだ私の顔や名前を教える訳にはいかない。なので、そう…『絶望の代行者』とでも名乗らせて貰いましょう』
「絶望の、代行者…?」
「チッ…結局絶望の残党かよ…」
『…ちょっと、今私の事を絶望の残党とか言った貴方。…そこにいる筋肉ダルマ、アンタの事だよ!』
「なッ!?」
「こちらの状況が、分かるというのか…!」
「まさか、どこかから監視されている…!?」
モニター越しに逆蔵の悪態を指摘され、皆はカメラの類がないか辺りを探るが、それらしいものは見当たらない。
『カメラなんか探したって無駄だよ。私には全てが視えている…貴方がたの居る未来機関の中であろうとね』
「おいおい…まるで千里眼だな」
『おお、いいこと言った。大体そんな感じと思ってください。…さて、そろそろ本題に入りましょう。では…地球人の皆さんにお伝えします。これより私、この星を『支配』させて頂きます。簡単に言えば私、『地球征服宣言』を勝手ながらここに誓わせて貰います!』
「…は?」
ローブの人物の言い放った言葉に、世界中の人々の口から同じ声が漏れる。
「こいつ…やっぱ頭イカレてんじゃねえか?」
「真面目に聴いて損した…アホくさ」
『…どうやら皆さん、信じてないみたいですね。では私が本気である『証拠』をお見せしましょう。…今私が居る場所、どこだと思います?』
「場所…?」
『んフフ…分かりません?分かりませんかぁ~?…正解は、現在建設中の『未来機関本部予定地』なのです!』
「な、なんだとッ!?」
『とはいえ、もうここはそう呼ぶべき場所ではありませ~ん。…未来機関の設計は私には地味すぎてつまらなかったので、私好みに『リフォーム』させてもらいましたー!』
「リフォーム…?」
『では皆さん、ご照覧あれ!劇的!ビフォーアフター!!』
その声と同時に、モニターの画面が切り替わった。
切り替わった画面に映ったのは、完成間近の未来機関本部の姿。
『私が来た時には、こんな滅びる前の東京に羅列していたありきたりなビルだったのが、匠の手によって…』
次の瞬間、画面に一瞬砂嵐が走ったかと思うと…
ドンッ!!
モニターに映ったのは、先ほどの面影などまるで存在しない、禍々しいとしか表現できない、建物と言うには余りにも現実離れした物体であった。
『…なんということでしょう!このようなサイコでデンジャラスな絶望的建造物へと早変わりしました~!』
「…なッ、あ…!?」
それはまるで、植物と建物が無理やり合わさったような酷く歪な代物。土台部分からは毒々しい根のようなものが隆起し、僅かにビルだった名残がある外壁は直径10mはあろう巨大な蔦のようなものに覆われ、建物の中心には赤紫色に輝く発光体があり、それが建物全体を禍々しい光で包んでいた。
「ば、かな…!本部が、俺が創り上げた本部が…こんな…」
宗方は愕然とするしかなかった。人類史上最大最悪の絶望的事件が起きる以前から、自分の拠点として設計段階から携わり、ようやく完成するはずだったそれが、このようなものに変えられてしまったのだ。もはや怒りを通り越し、喪失感と虚無感により呆然とするしかなかった。
『うぷぷ…!いいねいいね、皆の顔に絶望の色が浮かんできたよ!ではさらに、私の忠実なる僕の紹介といこうか!カモン、エブリバディ!』
再び画面に映ったローブの人物の呼び声と共に、その後ろから異形の面々が姿を現す。
『ザ・バルタン星人!』
「フォフォフォフォフォ…!」
『ザ・バット星人!』
「キャキャキャキャキャ!」
『ザ・ヤプール!』
「ウォォォォォ!!」
『ザ・ゼブブ!』
「ファファファファファファ…!」
『ザ・スラン星人!』
「フフフ…」
『そして…ザ・ババルウ星人!』
「ヘェアアアアアッ!」
「……は?」
世界中の人々の声が、再び重なった。やはりこれは何かの夢であろうか、何故絶望の残当らしきコイツの部下として…『フィクションの産物』でしかない『ウルトラマンの世界の宇宙人』たちが出てきたのだ。
『…始めに言っておくけれど、こいつらはCGでも着ぐるみでもないよ。正真正銘、本物の宇宙人軍団さ!こいつらは強いゾォ~!…まあ私ほどじゃあないけどね!』
「…は、ハハ…!ふ、ふざけやがって…何が本物だ…!あんなもん本当に居るワケねえだろうがッ!!」
「じ、じゃあ…さっきの本部も、全部ハッタリ…?」
「そ、そうだよ!そうに決まって…」
『あー!やっぱり信じてないな?なら、その証明も兼ねて…この私の『復活祝い』の祝砲代わりに、世界中の人々の希望の拠り所である未来機関…その第一支部をちょうど集まっている支部長たち諸共『木っ端微塵』に破壊してあげようじゃあないかッ!』
「はぁ?ここを…破壊?」
ローブの人物はそう宣言すると、手に赤く輝く輪…『ダークリング』を持ち、もう片方の手に『カード』のような物を持つ。そして
『…『インペライザー』!』
『インペライザー!』
ピカァッ!
ローブの人物がカードに記された名を呼びながらカードをダークリングに通すと、輪の中から生じた光が飛んでいき、やがて第一支部の近くにまでやって来た、その瞬間。
キュオオオオオ…!
光が膨張し、『機械の駆動音』のような音と共に、それは現れた。
ドズゥゥゥンッ!!
カシュ、カシュ…ギュオオオオオオッ!!
「……何、あれ…?」
モニターに現れたのは、二本脚で直立する巨大なロボット。両肩、そして顔に巨大な砲塔を持ち、右腕には分厚い刃が装備されている。一見頭でっかちにも見えるものの、そんな気持ちなど微塵も抱かせないような頑健さと、機械ならではの冷たい殺意が見るものを震え上がらせる。それこそが、かつて宇宙の帝王と呼ばれた『エンペラ星人』が侵略の先兵として使っていた自律型戦闘ロボ、無双鉄神『インペライザー』であった。
『さて、それでは未来機関の皆さん。出会って間もないですが…さようなら』
ガシュン!キュォォォォ…!
ローブの人物の指示を受け、インペライザーが両肩のビーム砲にエネルギーをチャージし、未来機関の皆が動揺から立ち直る前に
ドギュオォンッ!
一切の慈悲なく、それを第一支部目掛け発射した。
「『キング・クリムゾン』ッ!!」
ドォーンッ!
…ドガァァンッ!!
「…ッ!?」
『後方』から聞こえた爆音を受け、ようやく皆は我に返った。
「な…なんだ、何が起きた!?」
「あ、あれ…?私たち、生きてる…もしかして、外れた?」
「…ちげーよ、バーカ。アタシが当たる瞬間の時間を『消し飛ばした』だけだっつーの」
「時間を…消し飛ばした?な、何を言って…」
「お、お前…『キング・クリムゾン』を使ったのかよ?」
「しょうがないっしょ…あんなもん喰らったらアタシだってどうしようもないんだから」
「『キング・クリムゾン』…?」
江ノ島のスタンド能力によりどうにか回避したものの、江ノ島の表情は険しいままであった。江ノ島の超分析能力が、自身のスタンドを以てしてもアレにはどうすることもできないという、絶望的な結果を弾きだしてしまっていたらである。本来なら絶望的な状況はバッチコイな江ノ島であるが、自分の与り知らないところで何もかもを勝手に決められるというのは癪であった。
「…江ノ島さん。まさか貴女に助けられるなんてね…」
「そりゃどうも。…けど、生憎次は防ぎきる自信は無いよ」
誰かを守るという、今迄の江ノ島なら考えられないことをした彼女に、こんな状況ながらも誇らしげな笑みを浮かべる『霧切』と、その笑みに若干不機嫌になった江ノ島の前で、インペライザーは次なる攻撃手段に出る。
『ほぉ~…今のを躱すとかやるじゃん。流石は『別の世界の…』っと、危ない危ない。それなら…その手品がどこまで通じるか、試してやろう!インペライザー、全てを焼き尽くせ!!』
ギュオオオオオッ…!
ドドドドドドドドドッッ!!
インペライザーの上半身が回転すると共に、頭と両肩の砲台が火を噴き、辺り一帯を無差別に砲撃し始める。インペライザーの殲滅攻撃『バニシングサークル』である。
「チィッ…!『キング・クリムゾン』!!」
ドォーンッ!!
最悪の攻撃に舌打ちしつつも江ノ島は『キング・クリムゾン』による防御を敢行する。狙いもへったくれもない無差別攻撃であるため、当然こちらばかりに攻撃が来るわけではない。江ノ島は直撃コースになる砲撃だけに意識を絞り、己の超分析能力をフル稼働させ時間消失のタイムラグを最小限にさせ、可能な限り連続で時間を飛ばして砲撃を躱す。しかし…
ツー…ッ
「じ、盾子ちゃん!?」
「う…がほッ!」
「江ノ島さんッ!!」
流石の江ノ島と言えど無理が過ぎたのか、合計で1分時間を飛ばした辺りで遂に限界を迎え、江ノ島は目と鼻から血を流して倒れ込む。
ドガァンッ!ドガガガァーンッ!!
「きゃあああッ!!」
「み、皆さんッ!」
「響子ッ!」
唯一の防御手段を失った未来機関に砲撃の雨が降り注ぎ、爆撃と共に支部の区画が吹き飛び、悲鳴が響き渡る。
「くッ…『タスク』ッ!」
『オラオラオラオラオラオラァッ!』
「グオオオオオッ!!」
支部長たちの居る部屋にも当然砲撃の余波はあり、衝撃により崩れた天井や壁の瓦礫から日向やゴズが皆を守るが、もはや焼け石に水に近く瓦礫は皆に襲い掛かる。
「ぐううッ…!」
「が、学園長!?」
「…ッ!アナタ…!」
「お父さんッ!」
そんな中、二人の『霧切』を守る様に苗木が前に出…更にそれを守る様に学園長が覆い被さって瓦礫の雨を一身に受ける。
「させん…!もうこれ以上、俺の『大切なもの』を…失ってたまるものかッ!!」
「…ッ!」
「……」
そんな父の姿に『霧切』は歯噛みし、もう一人の霧切は想像もしなかった『霧切仁』の姿に呆然としてしまう。
『…はーい、一旦やめー!』
そうしていると、ローブの人物の指示によりインペライザーの砲撃が停止する。
『どらどら…おろ?半分ぐらい吹っ飛んだけど支部長たちは全員生きてるね。悪運の強いことだねぇ~!』
「クッ…この、化け物め…!」
「ぐ、むう…!」
茶化すような物言いにも、満身創痍の支部長たちは悪態も儘ならない。もはやどうにもならないことは、分かり切っていた。モニターは壊れたものの、砕けた壁の向こうに見えるインペライザーに、皆はただただ恐怖するしかなかった。
『さーて…んじゃもう飽きちゃったし、とっとと終わらせちゃおうか!』
ガション!
インペライザーのガトリングガンが半壊した本部に向けられる。もはや防ぐ手段は、無い。
「…あーあ。アタシとしたことが、最後の最後に正義の味方ぶって死ぬなんて、超絶望的なんですけど…」
「そんな…こんな、こんな形で終わりなの…!?」
「…違うッ!まだ…まだ諦めないッ!僕たちは、『希望』は、こんなところで終わらないんだッ!!」
「苗木っち…けど、もうどうしようもないべ…」
「くッ…!」
苗木が皆を奮い立たせようとするが、圧倒的な力の前にはどうしようもなかった。苗木は心の底から悔いた。自分に、何かができる『力』が無いことに。
『そんじゃ…アデュー!』
ドォンッ!!
そして彼らに止めを刺すべく、インペライザーの砲撃が放たれた。迫り来る死を前に、霧切は思わず祈り、叫んだ。
「助けて…誠君ッ!!」
キュピン!
その刹那、空に一筋の光が煌めき、それは猛スピードで弾丸と支部の間へと割って入った。そして…
『ムン…!シュワァッ!』
パキャァァンッ!
ドガァァンッ!
割って入った光が回転すると、その光に触れた弾丸が真っ二つに『切り裂かれ』、支部へと直撃する前に爆発した。
「……え?」
何時まで経っても痛みも衝撃も無いことに恐る恐る目を開け…そしてそのまま見開く。インペライザーの砲撃を防いだであろう、支部を守る様に仁王立ちするその存在に。
「こ、これは…!」
「まさか…ッ!?」
「…アッハァ。そりゃあさ、宇宙人がいるってんなら、『これ』も居るかもとは思ってたさ。けどさ…こんなの、予想外過ぎる展開ってやつでしょ…!」
光が治まった場所に居たのは、インペライザーと同じぐらい大きな『巨人』。赤、黒、銀の三色カラーの体色に、肩の部分にはプロテクターのような物を纏っている。切れ長の黄色い目にまるで刃のような頭の突起物が印象的だ。そしてなにより目を引くのは、その手に持った身の丈ほどもある得物。弓のように湾曲した刃はなんでも切り裂けそうなほどに鋭く、弦に当たる部分が持ち手になっており、その付近には不自然に空いた穴…『ウルトラホール』が存在している。
『貴様は…!』
「アレは…!」
ローブの人物、そして世界中の人々がその名を呼ぶ。誰もが知っている、光の国の勇者の称号たる、その名前を。
『ウルトラマンッ!!』
『ここから先は…通さないッ!!』
遂にこの世界へとやって来た『苗木誠』…『ウルトラマンオーブ・スラッガーエース』は、眼前のインペライザーに向け、己の決意を叫ぶのであった。
ウルトラダンガンナビ!…という名の解説
苗木が所持しているウルトラカードですが、原作と異なり苗木は光の国に赴いているので、魔王獣を倒す必要なくほぼすべてのウルトラマンから力を譲り受けています。なのでフュージョンファイトに登場する形態にすべて変身可能です。
もちろん最近父親になったあのお方のカードも持っていますが、それが必要なのはオーブだけではないようで…?
ちなみにこのシリーズですが、テレビシリーズに未登場のフュージョンアップを中心に使っていこうと思っています。ただ、ゲーム内では必殺技しか出てこないためデータが足りないので、ウルトラファイトオーブのエメリウムスラッガーのようにここオリジナルの技も出す予定です。個人的に「こういうのできそうじゃね?」的な思いつきの技なので、大きいお友達の妄想と思ってご覧ください