黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~ 作:マイン
話は数時間前…『霧切』たちが元いた世界に戻る。
…キキィィッ!!
バタンッ!
「ありがとうございました!これ、料金…お釣りは結構ですから!」
「え、ちょ…あんちゃん!?」
空港にて学園の異変を知った苗木は、仗助と空港で別れタクシーに飛び込み、可能な限り急がせて学園の近くに戻ってきた。ドライバーに適当に財布から引き抜いた一万円札数枚を押し付けるように渡すと、困惑するドライバーのおじさんに構うことなく学園へと走る。
タッタッタッタ…!
「…ッ、クソッ!予想通りか…!」
学園前にやって来た苗木であったが、テレビで見たのと同じ自分の知る物とは大きく異なる学園の校門は警察が既に封鎖しており、敷地の中にも警官がおり既に調査が始まっていることが分かる。そこまでなら良かったのだが、苗木が表情を歪めたのはその封鎖を取り囲むように分厚い壁と化したマスコミたちの群れであった。
「ここで正面から入って行ったら騒ぎになってしまうな…。とはいえ、正面がこのザマじゃあ裏口も張り込まれてるだろうな。…無理やり入れなくもないけど、それはそれで問題になるし、どうしたら…」
ザッ…
「ところで…どなたですか?」
先ほどから物陰に隠れていた人物に苗木が問いかけると、その人物は姿を現す。怪訝そうな顔で向き直った苗木であったが、その人物が被っていた帽子の『SPW』の文字を見てすぐに警戒を解く。
「失礼…お待ちしていました。苗木誠様」
「なんだ…SPW財団の方でしたか。でも、どうしてここに?」
「実は、天願様から連絡を受けまして…」
その頃、学園の敷地内では不気味な希望ヶ峰学園を前に、今回の調査の責任者である石丸警視を始めとした警察関係者に混ざり、異変を知って駆け付けた天願が調査の方針について話し合っていた。と、そこに
「…天願さん!」
「!おお…苗木君!帰って来たのか!」
「はい。…僕が入れるよう根回しをして頂いて、ありがとうございます」
「何…念には念を入れただけじゃよ」
天願が事前に財団と警察に話をつけ、今回の事件を『超自然現象』とすることで調査に協力することとなった財団の関係者に紛れて無事学園に入り込んだ苗木を天願が迎え入れる。会議中に子供が入ってきたことに警察関係者は眉を顰めるが、石丸が先んじて説明をしたことにより反論は出なかった。
「…それで、状況はどうなっています?」
「どうもこうも…正直お手上げじゃよ。アレが希望ヶ峰学園なのは間違いないが、何がどうしてああなったのか…さっぱり見当がつかん。おまけに、中の霧切学園長や黄桜君、日向君とも連絡がつかん…」
「突入も考えたのだが、どうも敷地や校内のあちこちに銃火器の類が多数仕掛けられているようなのだ。下手に起動させればこちらに被害が出てしまう…口惜しい限りだよ」
「成程…」
天願と石丸から現状を聞くと、苗木はまず『G・E・R』の能力で校内の『生命エネルギー』を探る。…しかし、くまなく探ってみたものの蟻の子一匹の生命反応すら確認できなかった。
「…どうやら中は完全に無人のようです。推測になりますが、あの学園は僕等の学園がああなった訳ではなく、どうやら『元から』あの状態であったものがこの場所に現れた…と思われます」
「なんと…!では、我々の学園や中の生徒達は…?」
「…おそらく、この学園が『元あった場所』に存在していると思います。突拍子もない理屈ですが、今回の現象は『別の希望ヶ峰学園』と『僕たちの希望ヶ峰学園』が『転移し合った』…ということになるでしょう」
「別の、希望ヶ峰学園…?一体、それはどういう…」
「それは今から確かめます。…石丸警視、僕をあの学園に突入させて貰えませんか?」
「なッ!?」
苗木の提案に、警官たちは元より石丸ですら目を剥く。
「…だ、駄目だッ!いくらなんでも危険すぎる!…今本庁に連絡して突入部隊を編制している。その後でも遅くは…」
「いえ、『僕一人』で行きます。同行者は不要です」
「なぁ…ッ!?」
苗木の返答に、警察一同は声も出ない。この少年は、警察ですら危険としり込みするあの魔境に、あろうことかたった一人で乗り込もうとしているのだ。正気の沙汰とは思えな
かった。
「…き、君ィ!いい加減にしたまえ!友人が心配なのは分かるが、そんな無謀なことをして最悪死んだら…」
「別に無謀とは思っていません。いろいろ考えた結果、これが一番拙速で被害の少ない方法だと思っただけです。…無論、僕は死ぬ気もありませんし五体満足で戻れる自信もあります」
「…話にならん。何を根拠にそんな馬鹿げたことを…」
警官の何人かが呆れたようにそうぼやいた時…
シュカッ!
パシッ!
「…ッ!?な…わ、私の銃が…!」
石丸の持つ銃が独りでに動き出し、それは引き寄せられるように苗木の手に収まった。
「時間がありませんので、手っ取り早く『証明』します。…要するに、銃弾を喰らっても平気ならいいんですね?」
「な、苗木君…キミは、何を…?」
困惑する警官たちの前で苗木は若干苛立ちを感じさせる口調でそう言うと、徐に手にした拳銃を『己のこめかみ』に突き付け…
「待っ…!?」
ドォンッ!ドォンッ!
一切の迷いなくトリガーを引き、銃声が二発鳴り響いた。
「…ッ!?」
その光景に警官たちは一瞬背筋を冷やし…直後、絶句する。何故なら
シュゥゥゥ…
「……」
ほぼゼロ距離から放たれた筈の銃弾は、苗木の頭を貫くことなく硝煙を漂わせて『空中で停止していた』のだから。無論、苗木の『G・E・R』によって寸止めされたからだ。
「お返しします…これで、問題ありませんね?」
突き返された拳銃をぼんやりと握りしめる石丸を筆頭にポカンとする一同に、苗木は威圧するようにそう問う。
「…まあ、そう言う訳じゃ。言いたいことは山ほどあるかもしれんが、ここはひとつ彼を信じて貰えんか?」
一連の流れをただ黙って見ていた天願が頃合いと判断し仲裁に入る。
「て、天願さん…もしかして、彼のこれご存じだったのですか?」
「当たり前じゃ。この学園で彼の強さを知らんものはおらんよ。そもそもワシは、最初から彼に一任するつもりじゃったしの。…今回の件は、我々の手には余る」
「し、しかし…」
「お願いします、石丸さん。…僕は、今自分にできる限りことをしたいんです。こうしている間にも、皆に何が起きているか分からない。だから…!」
「……分かった。君を、信じよう…!」
こうして、責任者である石丸が折れたことで、苗木は秘密裏に一足早く学園内に侵入することが決定した。正面から入るとマスコミに嗅ぎつけられるため、手近な窓に打ち付けられた鉄板を無理やり引っぺがして内部へと入る。
「…しかし、これは一体どうなっているんだ…?外観に比べて内装は小ぎれいな癖に…あちこちから『死臭』がプンプンする。しかも所々人為的に破壊された跡があるし…ここで何があったんだ?」
内部調査用に渡されたカメラを片手に、時折壁や天井に配置された銃火器を片っ端から無力化しながら苗木は中を探索する。大まかな間取りは改装前の希望ヶ峰学園とほぼ同じであったが、そこかしこに不可解な点が存在していた。
「荒らされた学園長室、生物室の『死体安置シェルター』、そして…5階の『血塗れの教室』。まさかとは思っていたけれど、やはりこの学園の惨状は『あの騒動』が関係しているのかもな…」
そうこうしているうちに、苗木は最後の場所である『赤い扉のエレベーター』へとやって来た。
ゴゥンゴゥン…
「我ながら嫌な直感だけど、多分ここが一番重要な気がするんだよな。さて、鬼が出るか蛇が出るか…」
エレベーターに揺られ、手持無沙汰に独り言をつぶやいていると、やがて終点であろう階に到着する。
チーン…!
「到着、と。ここは……『裁判所』?」
エレベーターで降りた先にあったのは、地下に似つかわしくないド派手な赤で彩られた広間であった。中央にはまるで裁判所の証人台のような台が円状に『16個』連なっており、それが苗木にこの場所が『裁判所』であると思わせていた。
「なんなんだここは…?なんで学園の地下にこんな……ッ!?」
訝しげに部屋に踏み入った苗木はふと視界に入ったものに目を見開く。
「こ、これは…!?」
部屋の中央、円状の証人台の真ん中によく目を凝らすと、その一帯の空間が不自然に『歪んでいた』。まるで蜃気楼のようなその現象に、苗木は憶えがあった。
「これは、『時空の歪み』…いや、その余波に近いな。地震の余震みたいなものか。けれど、こんなものがここにあるってことは…やはり今回の原因は時空の歪みだったか。しかも、前に僕が落ちた時より遥かに大きい…学園丸ごと時空の孔に落っこちたってことか。そしてその先の世界に会った希望ヶ峰学園と入れ替わった…そんなところ、なんだろうけど…」
時空の歪みの名残から今回の件の経緯を推理した苗木であったが、その推理に間違いはないと確信は有れど、どうにも引っかかるものがあった。
「分からない…何故こうも時空の歪みが立て続けに起きるんだ?ヒカリさんや80先生は、時空の歪みが起きる頻度は本来『宝くじの一等が当たる確率』に等しいって言ってた。…『幸運』持ちの僕が言っても説得力に欠けるけど、この広い宇宙でそんな確率は無いに等しい。それに、前回の場合にしろ歪みが起きた『原因』が不明瞭だ。何か原因が無い限り時空の歪みなんて起きる筈がないのに…」
苗木はしばし考え込んだ後、持っていた手帳のページを破くとそこにメッセージを書き綴り、続けてコートのテントウムシのブローチを一つ外しそれに生命を与えて一匹の犬を生み出すと、カメラとメッセージを書いた紙を括りつける。
「いいかい、このカメラと手紙を天願さんに渡すんだ。天願さん、もしくは石丸さん以外に渡すんじゃあないぞ。…行けッ!」
犬に指示を与えエレベーターに乗せると、苗木は歪みへと向き直る。
「さて…どこに繋がってるのかは知らないけど、確かめてみないことには…始まらないよな!」
苗木は懐から『オーブリング』を取り出し、腰の特注ケースから2枚のカードを抜きだし、スキャンする。
「セブンさん!」
『ウルトラセブン!』
「エースさん!」
『ウルトラマンエース!』
「断ち切る刃…お借りします!」
『フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ スラッガーエース!』
『デュワ…!』
苗木が変身したのは、ウルトラマンオーブ・スラッガーエース。セブンとエースの力を借りた近接戦闘に特化した姿だ。
選んだ理由としてはここが地下空間であるため、セブンのように体の大きさを自由にできる必要があり、現在のオーブの身長も本来の苗木よりちょっと高い180㎝程度であった。…ちょっと大きいのはあくまで正体を隠すためであり、苗木個人の願望ではない。…無いのだ。
そしてもう一つの理由は、もう片方のエースの持つ能力であった。
『エースさんの異次元エネルギーを操る力!その力を使って時空の歪みを切り開く!』
オーブは歪みに向けて手にした武器…ゼロの武器である『ゼロツインソード』に似た『バーチカルスラッガー』を振り上げる。
『…デリャァァァッ!!』
ザシュッ!!
気合一閃。振り下ろされたバーチカルスラッガーが歪みを断ち切ると、空間が切り開かれ学園を飲み込んだのと同じ不可思議色の空間が現れる。
『皆…今行くッ!』
苗木は迷うことなくその空間へと飛び込んでいった。そしてその直後、開かれた空間が閉じられ、その場には再び静寂が訪れたのであった。
ゴォォォォォ…!
極彩色の空間の中を、オーブは全速力で飛行する。
『この空間の感覚…ゼロさんと一緒に元の世界に帰った時と同じだ。やはりこの先は別の世界に繋がっているみたいだな…』
辺りの光景にそんなことを考えていると、やがて出口らしき裂け目が見えてきた。
『あそこか…!』
それを捉えるとオーブは速度を上げてその裂け目を飛び込んだ。
ギュオンッ!
『抜けたッ…と、アレ?』
飛び出ると同時にオーブは急ブレーキをかけて止まる。学園の地下から転移したため、おそらく向こうの学園の同じ位置…廃棄されたカムクラプロジェクトの研究施設のどこかに出ると予想したからだ。
しかし、空間を飛び出た先でオーブが見た景色は、予想外の物であった。
『…なんで学園の中から転移したのに、『空中』に出るんだ?』
裂け目が繋がっていたのは、はるか上空…雲よりももっと高い成層圏ギリギリの地点であった。
『入り口と出口が『ずれている』のか?ゼロさんが時空移動したときはそんなこと無かったんだけど…。というか、変身解かなくて良かった…。流石にここから落ちたら僕でもどうしようも…』
と、万が一の時に備えて空間の入り口を異次元エネルギーで固定しているとオーブは周囲の『異常』に気が付いた。
『…なんだ、この雲?黒ずんでて…それに空も真っ赤だ。これは、大気が汚染されているのか?…あの希望ヶ峰学園にあった資料から考えれば、アレが元あったこの世界は僕たちの世界とさほど時間的なズレは無いハズだ。なのにここまで…』
眼下で地上を覆い尽くす黒雲。そしてその影響下からか本来美しい青い光を放つ地球は毒々しい赤色の光を放っている。…その『原因』に心当たりはあるものの、ここまで環境に影響が及んでいる事態に、オーブはこの世界にいるであろう皆の安否が気がかりになる。
『まずは、行ってみるしかないか!』
作業を終えるとオーブは躊躇いなく黒雲の中に飛び込み地上に向けて飛んでいく。
…バフッ
『…ここは、東京…!良かった、場所的にはあまりズレて…』
『…なッ!?』
黒雲を抜けた瞬間、オーブは驚き目を見張る。それは見慣れた東京の街並みが無残に荒廃していたからでもなく、そんな街中で暴動を起こす見覚えのある『クマのマスク』を被った暴徒たちの存在にでもなく
ガガガガガガガッ!!
目的である学園にほど近い見慣れぬ建物に向けて、容赦のない砲撃を加える『インペライザー』の存在を見たからであった。
『馬鹿な…アレはインペライザーッ!何故エンペラ星人の侵略兵器がここに…』
ヴゥン…!
インペライザーの存在に驚いていると、ふと憶えのある感覚に気が付く。
『今のは…『キング・クリムゾン』の時飛ばしか!とすると、あの建物には江ノ島さんがいるのか!』
オーブの眼前で連続した時間消失により建物はどうにか直撃を回避していたものの、突如それが終わりを告げると共に容赦のない放火に晒される。
『マズイッ!!』
何があったのかを即座に察したオーブは光を纏い、本来のサイズに巨大化しながら現場へと急降下する
そして
『そんじゃ…アデュー!』
ドォンッ!!
「助けて…誠君ッ!!」
『…デェヤァァァァッ!!』
ドズゥゥンッ!
『ムン…!シュワァッ!』
パキャァァンッ!
ドガァァンッ!
寸でのところで砲弾の間に割って入り、弾丸を切って捨てたのである。
『ここから先は…通さないッ!!』
「な…なんだ、あの巨人は…!?」
その頃、希望ヶ峰学園のモニターにも現場の状況は映っており、インペライザーの砲撃に晒される未来機関に、生徒たちは悲鳴と怒号を飛ばしながらも何もできないことに歯噛みしていた。
…その矢先、天空より飛来しインペライザーの止めの一撃を阻止したオーブが現れたことで、悲痛一色だった雰囲気は『驚愕』と『歓喜』に塗り替えられた。
「お…おお、おおおおおおおおッ!!?」
「や、山田先輩…?どうしたの…」
「う…ウルトラマンどぅわぁぁぁぁぁッ!!!」
「わあッ!?」
「す、スゲェ…!本当に、本当にウルトラマンが来たぜ!!おい、ハルマキ!見ろよ、スゲェぞ!!」
「…デカい声出さなくても、分かってるって…。ていうか、マジ…?」
幼少期よりウルトラマンを視聴してきた山田や百田はここぞとばかりに大はしゃぎし、孤児院の子供達の付き添いでウルトラマンを観ていた春川も驚きの余りどう反応すべきか分からない。他の皆も差は有れど、怪人や鋼鉄のマシンに続いて現れた光の巨人の存在に驚きを隠せずにいた。
「ウルトラマン…!マジかよ、あり得ねえだろ…!?」
「おいおい、今更何言ってんだよ!宇宙人に巨大ロボットまでいやがんだ、ウルトラマンぐらい居たって不思議じゃあねーだろ!」
「…えっと。とりあえず、あの巨人は『味方』…ってことでいいんだよね?先輩たちを守ってくれたし…」
「当たり前だろッ!ウルトラマンだぞ!」
「…でもさ、ちょっと気になるんだけど…あれ、ウルトラマン『何』?」
「へ…?」
白銀が思わず呟いた疑問に、皆も思わずポカンとしてしまう。
「いやさ…私もウルトラマンぐらいは知ってるんだけど、あんなウルトラマンなんていたっけ…?」
「そ、そういえば…あんなウルトラマン、初めてみるぜ…!」
「『カラータイマー』…って言うんでしたっけ?ウルトラマンの胸にある弱点…あんな形でしたっけ?」
「う、う~む…しかし、あの姿…どっかで見たことある気がするような、しないような…」
「ハッキリしろやこの豚がァァァッ!!」
「ブヒィィィッ!!?」
全く見たことのない姿ではあるものの、そこかしこに既視感を感じさせる見た目のウルトラマンに首を傾げていると、モニターの向こうで事態が動き出す。
「…見ろ!巨人が構えた…あのロボットと戦うつもりだ!」
「…ええい!名前なんざ今はなんでもいいぜ!行けーッ、ウルトラマン!!インペライザーなんざぶっ壊しちまえーッ!!」
『…良かった。ひとまず皆、無事みたいだ。…間に合わなかった皆さん、ごめんなさい…』
インペライザーの攻撃を防いだ後、オーブは後方の建物に居る学園長たちの無事を確認し、自分が駆けつける間に死んでしまった人たちの事を悔いつつも、ひとまずホッとする。
『…色々と突っ込みたい顔の人もいるし、けが人もいるみたいだけどそれは後にさせて貰おう。まずは…こいつを片付ける!』
建物の中に居る顔ぶれに苦笑しつつ、オーブは意識を目の前の鋼鉄の巨人へと切り替える。既にインペライザーは、標的を支部からオーブへと切り替えていた。
ガション!ゴゴゴゴゴゴ…!
『貴様を野放しにはしておけない…!切り裂け闇を、光と共に!!』
バーチカルスラッガーを構え、オーブはインペライザーへと突貫する。
キュオオオオ…!
突っ込んでくるオーブを迎撃すべくインペライザーは砲撃を放とうとするが…
『エタリウム光線!!』
ピィィィィ―ッ!!
ドガァァンッ!
オーブの額のクリスタルから放たれた虹色の光線『エタリウム光線』がインペライザーを先んじて捉え、攻撃の隙を与えない。
『デヤァァァッ!』
ギャインッ!ギンッ、ギャインッ!!
そのまま距離を詰めたオーブは一気呵成に斬りかかると、インペライザーが反撃に徹する暇を与えぬ勢いで滅多切りにする。
ピポポポ…ギュルンッ!
『シュワッ!』
しかしインペライザーもサンドバックになってばかりではなく、上半身を回転させた勢いで右手の大剣『インペリアルソード』を横薙ぎに振るうが、オーブはそれを直前に察知し飛び上がって回避する。
『ムン…!』
飛び離れて一旦距離が空いたところで、オーブは大技を仕掛ける。
『ワイドギロチンショットッ!!』
シャコォンッ!
オーブがバーチカルスラッガーを掲げると、周囲の光がウルトラホールに収束され、バーチカルスラッガーが光を帯びる。オーブがそれを振り下ろすと光が『刃』の形となってインペライザー目掛け射出された。
ヒュパァン…ッ!
ズズ…ガコォン!!
放たれた刃はインペライザーを何の抵抗もなく貫通し、数瞬遅れて思い出したようにインペライザーは袈裟懸けに切断され、上半身が地に落ちた。
「や、やったッ!!瞬殺だぜ!」
「な、なんだ…大きいだけであんまり強く…」
「…いや、まだですぞ!」
ウルトラマンに詳しくない面々はあっけなく両断されたインペライザーに拍子抜けするが、『メビウス視聴組』は油断しない。
ゴ…ゴゴ、ゴゴゴゴ…!
「…!?切断された、奴のパーツが…」
それを裏付けるように、インペライザーの切断された上半身が独りでに宙に浮きあがると
…ガッシィィンッ!!
まるで逆再生のように元あった場所に収まり、切断された跡など全く残さずくっついたのだ。
『チッ!やはり自己修復能力持ちか…』
過去にインペライザーと交戦経験のあったタロウやメビウスが言っていた通りの性能にオーブは舌打ちする。
シュコォォォ…ギュィィィィ…!
復活したインペライザーは砲台にエネルギーを溜めつつ上半身を回転させ、再び『バニシングサークル』の態勢に入る。…狙いはオーブではなく、彼の後ろにある第一支部。
『クッ…やらせるかッ!』
その意図を察したオーブは中断させるのは無理と判断すると皆を守るべく防御の構えをとる。
『スラッガーラウンドシールド!』
オーブがバーチカルスラッガーを前に突き出しウルトラ念力で高速回転させると、回転による残像でバーチカルスラッガーが『円状の盾』のようになる。その直後
ドドドドドドドドッ!!
インペライザーの全砲門が火を噴き、ビームや弾丸が再び周囲を灰燼に還さんと襲い掛かった。
「くッ…!またあの砲撃かッ!?」
「ひいいいッ!」
再びの悪夢の砲撃に未来機関の支部長たちは今度こそ駄目かと目を瞑るが…
ドガァァンッ!!
「…って、アレ?また何も…」
『ムッ…オオオオオオ!』
「ッ!?巨人が…盾になって…!」
「私たちを…守っている?」
迫りくる砲撃の嵐を、オーブは鉄壁の防御で防ぐ。正面からの砲撃はスラッガーラウンドシールドが半球状の形を生かして時に受け流し、時に受け止めて完全にシャットアウトする。時折上空から軌道を変えて落ちてくるビームは、オーブがその身を挺して支部には落とさせない。
『グウッ…させる、かぁッ!皆を…これ以上、傷つけさせてたまるかッ!!』
「…す、ごい…!」
直撃を何度も喰らっても尚不屈の闘志で立ち塞がり続けるオーブを見る苗木の瞳は、かつてヒーローに憧れた子供だった時と同じ目をしていた。
ギュゥゥゥ…、シュゥゥゥ…ッ!
やがて弾丸が尽きたのか、それともクールダウンの為かインペライザーの攻撃が止む。
『…ッ、ハァ…ハァ…!』
砲撃の全てを耐え切ったオーブは、目に見えて消耗していた。
ピコン、ピコン、ピコン…
それを証明するように、オーブのカラータイマーが赤く点滅し始める。すると…
『デュワ…』
『ヘァァ…ッ!』
オーブの身体から抜け出るように、半透明のセブンとエースが苦しそうに飛び出した。オーブのフュージョンアップが解けかかっている証である。
「ッ…!?い、今ちょろっとセブンとエースが見えなかった!?」
「しかも、なんかえらくしんどそうだったぞ…?ありゃどうなってんだ?」
「も、もしやアレは…ヒーローものの鉄板の『合体戦士』なのですかな!?」
「んなこと言ってる場合か!あのタイマーがピコピコいってるっつーことは、ピンチってことなんだろ!?」
「が、頑張れーッ!巨人さーんッ!!」
学園のそんな会話など露知らず、オーブは限界が近いことを悟り勝負に出る。
『セブンさんとエースさんの力も限界か…!なら、ここで決着をつける!』
覚悟を決めると、オーブは天高く飛び上がった。
『シュワァァァッ…!』
バーチカルスラッガーを持つ手に力を籠め、エースの『メタリウム光線』の構えのように腕を大きく引く。
『スラッガーエーススライサーッ!!』
ギュルルルルッ!!
腕を振った勢いのまま、今度はオーブが独楽のように高速回転する。そして竜巻と化したオーブはそのままインペライザーへと突っ込んでいき…
『シュワッ!!』
ザシュザシュザシュザシュッ!!
すれ違う刹那、インペライザーのボディを達磨落としの如く輪切りに切断した。
ガゴゴゴォンッ!!
ズザザザ…ッ!
バラバラになったインペライザーが地面に散らばった音を背に、オーブは地面に着地する。
「今度こそ…!」
先にも増して酷い状態のインペライザーに今度こそ倒したと皆が確信したが、…甘かった。
ゴゴゴゴ…!
もはや見る影もない残骸と成り果てながらも、インペライザーは尚も己を修復し始めた。
「あ、あんな状態からも自己修復できるんですか!?同じロボットとして、あり得ませんよ!!」
「クソッ!また振り出しかよ…ッ」
その異常なまでのしぶとさに世界中の皆が絶望しかけたが…この男は、そんなことは織り込み済みであった。
『…今だァッ!!』
インペライザーのボディが修復を始めた瞬間、オーブはその時を待っていた。そして、『止めの一撃』を決める姿にその身を変じる。
『覚醒せよ、オーブオリジン!』
ピカァッ!
突如、オーブの身体を眩い光が包む。
「うわッ!?」
「な、何…?」
モニター越しに戦いを見ていた皆の目がくらんだ、その時。
♪~♪♪~
(…え?)
光の中から聞こえてきた、聞き覚えのあるメロディのハーモニカの音色に、『霧切』はハッとする。
「この、メロディは…」
そして光が治まった瞬間、『霧切』は今度こそ愕然とした。
『銀河の光が、我を呼ぶッ!』
「…あの姿、は…ッ!」
そこに立っていたのは、身の丈ほどもある大きさは同じでも先ほどとは違う『直剣』を持ったウルトラマン。赤、黒、銀のカラーリングは同じだが先ほどよりもシンプルな体格をしており、よりウルトラマン『らしい』姿をしていた。
新たなウルトラマンの出現にざわめく周囲を余所に、『霧切』はポケットから今朝引っ張り出したあの紙を取り出す。そして、そこに描かれた絵と目の前の巨人の姿が『同じ』ことを確信した時、『霧切』の目から一筋の涙が零れる。
「間違いない…あの巨人は、お母様の…!」
「響子…?」
娘の異変に怪訝そうな顔になる学園長。そんな中で、オーブは最後の一撃を放つ。
『解き放て、オーブの力!』
『オーブスプリームカリバーッ!!』
オーブが手にした大剣『オーブカリバー』のリング部分を回転させ、天高く掲げてぶん回すと、軌道が虹色の光となって円を描き、その光がオーブカリバーに収束する。そしてオーブがそれを振り下ろした瞬間、溜め込まれたエネルギーが光の奔流となって放たれた。
ガガガガガッ!!
それは修復中のインペライザーの残骸へと狙い違わず直撃する。高い自己修復能力のあるインペライザーはバラバラにした程度では倒しきれない。しかし、バラバラにした残骸が元の戻ろうとする瞬間、散らばった破片が『一か所』に固まった時ならば、さしものインペライザーとてひとたまりもない。
ドガァァンッ!!
虹色の光線に塗りつぶされるように、インペライザーは再生しきることなく爆発し、跡形もなく消滅したのであった。
ウルトラダンガンナビ!…という名の解説
今回はこの話で出てきたオリジナル技の説明をば。
エタリウム光線…オーブの額のクリスタルから放つ光線。技名の由来は「エメリウム光線」+「メタリウム光線」。2つのパターンがある技で、構えと溜めをしてから放つことで高い威力を有する「チャージバージョン」と、威力は低いもののモーションなしで打てるため牽制になる「ラピッドバージョン」がある。今回使ったのは後者
ワイドギロチンショット…武器「バーチカルスラッガー」のウルトラホールにエネルギーを集め、光刃を形成してそれを敵に放つ技。技の由来は「ワイドショット」+「ギロチン・ショット」。切断力はエースのバーチカル・ギロチン以上で、射出するだけでなく直接敵を切り裂くこともできる。
スラッガーラウンドシールド…「バーチカルスラッガー」をウルトラ念力で高速回転させ、丸い盾状にして攻撃を防ぐ技。受ける側が半円状になっているため、光線や弾丸の類を受け流すことができる。
個人的にスラッガーエースはセブンとエースの「格闘、物理技」に特化した姿だと思うので、光線技は控えめにしてみました。どっちかっていうと二人とも光線技の名手なんですけどね