黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~ 作:マイン
破滅魔虫 ドビシ 登場!
巨獣 ゾーリム 登場!
『パチパチパチ…!』
『…なんだ?』
インペライザーを撃破したオーブであったが、一息つこうと思った矢先に聴こえてきた『拍手』の音に首を傾げる。
『…ブラ~ボ~ッ!』
ヴンッ…!
『ッ!』
突如宙に浮く形で出現したローブを被った人物…『絶望の代行者』にオーブは思わず身構える。…が、その姿に生気を感じないことに気づくと構えを解く。
『…?これは、実体ではない…?ホログラム映像か…』
『イエース!本体の私は離れたところに居るのでね、こんな形で悪いけれどご挨拶させてもらうよ…ウルトラマン』
『…オーブだ。ウルトラマンオーブ…それが僕の名前だ』
『ほほう…ではウルトラマンオーブ、改めて自己紹介を。私は『絶望の代行者』、地球人類に代わってこの星を支配させていただく者です』
『絶望の…代行者だと?』
「…な、なんだアイツ…!?急に現れやがったぞ、しかも…で、デケェ…!」
「…いえ。あれはどうやら『映像』のようです。熱源を一切感知できませんから」
「あんな巨大な立体映像を、一体どうやって…?」
「そんなことより…今アイツ、『ウルトラマンオーブ』ってあのウルトラマンの事を呼んだよな?」
「オーブ…やはりそんなウルトラマンは知りませんなぁ。それに、今のあの姿…。タイプチェンジをするウルトラマンは歴代シリーズにもいましたが、ここまで顕著な変化をするウルトラマンは初めてですぞ」
「奴ら…何を話すつもりだ?」
インペライザーが倒された喜びも束の間、突然現れた『絶望の代行者』に再び不安を覚える皆の前で、絶望の代行者とオーブはピリピリした雰囲気の中会話を続ける。…最も、オーブの声は彼等には聞こえないのだが。
『まずは流石、と言わせてもらうよ。あのインペライザーはビートスターやチブル星人が作ったような大量生産品とは違う『オリジナル』だっていうのに、あんな足手纏いを抱えたまま倒すとはねえ…』
「なんだと…!」
「チッ…言ってくれるぜ畜生…」
あからさまに自分たちの事を貶すような物言いに支部長たちは憤るが、事実そうであったことは認めざるを得ず歯噛みするしかない。
それに対し、オーブは逆に憐れむような口調で言い返す。
『…足手纏いか。お前には、彼等の事がそうとしか見えないんだな』
『はぁ?』
『お前には永久に分からないだろうな。何かを『守る』という覚悟は、どんな邪悪にも屈しない強い力になるということを…!例え無力でも、目の前の現実に向き合い、決して諦めないことがどれほど勇気がいる事なのかということが…!お前が足手纏いと断じた彼らの勇気が、僕の戦う力になるんだ!』
『…ふぅ~ん、成程。背負うものがあるから強く有れるってワケ?かーッ!そんなくっさい台詞よくも言えるね。ご立派ご立派…』
『どうとでも言え。僕の本心だ、恥じるところなんか何一つない。…お前の方こそ、その三文芝居染みた喋り方をやめて『本性』を出したらどうだ?』
『お生憎…このキャラ思ったより気に入ってるんだよね。それに、私のお楽しみはまだまだこれからなんだから、こんなところでネタばらしなんて興ざめだよ』
互いに皮肉交じりの応酬をするオーブと絶望の代行者。その会話の中で、オーブは絶望の代行者の『正体』に感づき始める。
『…その言い回し、そしてここまで大胆な行動。やはり、お前は…』
『おーっとそこまで。ただのあいさつでそこまでサービスしてあげるつもりはないよ』
話は終わりとばかりにそう言い捨てると、絶望の代行者は再びモニター越しに世界中の人々に話しかける。
『さて、地球人の皆さん。非常に残念ながら、私の用意した余興はこの空気の読めないウルトラマンによって台無しにされてしまいました!…と頭のハッピーな皆さんのことですから、『ウルトラマンがきっとなんとかしてくれる』…だなんて都合のいいことを考えてるんでしょうね。うぷぷ…!結構結構、大いに結構ですよ!存分にウルトラマンを信じてくださいな!そしてその気持ちは、ウルトラマンの力になって大いなる『希望』になるでしょう。私も実に楽しみですよ…その大いなる希望をへし折ってこそ、『絶望』は美しく輝くのですから!そしてその時こそ、この私が『再び』この世界に蘇る時なのですから!!』
「…な、なんだべこいつ?ウルトラマンを応援しろって…自分が不利になることをなんで喜んでるんだべ?」
「ふ~ん…どうやら、相当に自分に自信があるみたいだね。ウルトラマンとこの星の人間全部を敵に回してでも、それでも自分が『勝つ』っていう自信がね…」
「…なんでだろう。普通なら負け惜しみにしか聞こえないんだけど…アタシには今の言葉が、単なるハッタリには思えないよ…」
「まるで、江ノ島先輩みたいだよ…」
大仰な言葉ながらも底知れない不気味さを持った絶望の代行者に、『江ノ島盾子』を知る人々はどこか彼女の面影を感じ、背筋が寒くなる。
『とはいえ…大口叩いておいて大事な手駒を木っ端みじんにされて、ハイさよなら…では私も恰好がつかない。なので、お別れの前にちょっとばかし『嫌がらせ』をさせてもらおうかな…!』
『嫌がらせだと…?』
怪訝な声を出すオーブの前で、絶望の代行者は再び『ダークリング』を取り出した。
『それはッ…!?何故貴様がそれを持っている!!』
『うぷぷ…さあねえ。じゃあ、いっくよぉーッ!!』
その存在に驚愕するオーブを嘲笑いながら…
『…ハッ!』
ギュオンッ!
ダークリングに、『自らの右腕』を突っ込んだ。
『ッ!?な、なにを…』
『さあ、この身に宿りし絶望よ…この星を覆い尽くせッ!!』
バババババッ!!
ダークリングから赤い閃光が迸り、それが輪に通された絶望の代行者の腕を灼く。すると
『ドビシ レギオン!』
グモモモ…ブワァァァァァァァッ!!
ダークリングの音声の後に、絶望の代行者の右腕が黒煙を上げながら消滅し、それと呼応するようにダークリングから『黒い光』が凄まじい勢いで溢れだした。
「な、なんだッ!?」
「奴め…一体何を…」
「…ッ!?み、皆…空が!!」
「え…!?」
いち早く『異変』に気が付いた戦刃に言われてそれを見上げた皆は、唖然とした。
ゾワワワワワッ…!
先ほどまで赤い空を覆い尽くしていた黒雲が、空のかなたからやってきた更に黒い『何か』によって塗りつぶされるように覆われていく。それによって完全に覆い尽くされた空の下は、微かな日の光すら届かない暗闇の世界となっていた。
「こ、これは一体…!?空が、こんなに暗くなるなど…」
「なんなんだありゃあ!?これもアイツの仕業だってのかよ!」
「…微かに動いている?まさか、アレは『生物』だというの…?」
よく目を凝らしてみれば微かに蠢く空を覆い犇めくその異変に、世界中の人々は半ば恐慌状態の混乱に陥っていた。
一方、学園周辺でも同じ異変が起きていた。
「な、なんだアレは!?終末を告げる蝗の群れか!?」
「蝗…まさか、ガイアに出てきたアレ…?」
「そ、そうだぜ!ラスボスの前に出てきた、あのうじゃうじゃいる奴だ!」
「…こんなものが、現実なのですか…?」
春川や百田などはその異変の正体に感づいていたが、皆はこの現実離れした光景にただただ茫然とする他なかった。
そして瞬く間に億を超え、兆を超え、天文学的数となった闇…『破滅魔虫ドビシ』の群生により地球の全てが同じ空となるのに、そう時間はかからなかった。
『これは…まさか、ガイアさんやアグルさんが言っていた『根源的破滅招来体』!?何故貴様がそれを…』
『うぷぷぷぷ…!何故何故ばっかり言ってないで自分で考えたらどう~?それじゃ、世界中の皆さん…ウルトラマンが光を取り戻してくれるまで、この仄暗い闇の世界を楽しんでいってね~!アデュー!』
そう言って、絶望の代行者の姿は掻き消えてしまった。
『待てッ…!』
思わず追い縋ろうとしたオーブであったが、そのオーブに上空から無数のドビシの群れが襲い掛かった。
ブブブブブブッ!!
『くッ…!仕方がない…』
キュピン!
シュォォン…ッ!
オーブは一瞬思案した後に腕をクロスさせると、一瞬の光の後に溶けるように姿を消してしまった。標的を失ったドビシの群れはオーブが居た場所を通り過ぎると、また上空の闇の一部へと戻っていった。
「ウルトラマンが…消えた!?」
「に、逃げちゃったんすか!?」
「…いや、当然の判断だろう。あんなものに集られてはウルトラマンと言えどたまったものではあるまい」
「それに、カラータイマー…って奴か?あれがピコピコいってるっつーことは時間も残って無かったんだろ」
「しかし…とんでもないことになってしまったな」
「元々酷かったけど、それにまして今は酷いよ…。太陽どころか、空も雲も見えなくなるなんて…」
「一体、どうなってしまうんでしょう…?」
消えたウルトラマン。そして後に残された破滅の蝗に覆い尽くされた暗黒の空。それは世界中の人々の心に暗い影を落とし、江ノ島盾子の死と未来機関の存在によってようやく見え始めた『希望』を、再び陰らせるのであった。
「…ふぅ。やれやれ…面倒なことになったものだ」
姿を変えた未来機関本部…自身の居城にてホログラム通信を終えた絶望の代行者は、倦怠感たっぷりに後ろの玉座に座り込んだ。その周りには、宇宙人や魔人に変えられてしまった元作業員たちが控えている。
「私の『復活』により『時空の歪み』が生じるのは仕方がないとして、その影響で呼びこんでしまった『別の世界の希望ヶ峰学園』に、まさかウルトラマンがついて来るとはな…。『本来の力』さえ戻ればどうともでもなるが、今のこの貧弱な身体ではどうか…」
「…いかがなさいましょう、代行者様。必要とあらば、我らがウルトラマンの首をとってまいりますが…」
「あん?…チョーシこいてんじゃあないよ。今のアンタらにどうにかなる相手じゃあないっつーの。その身体の力を全て使いこなしてから言ってみな!」
「で、ですが…『アレ』を使えばあの程度のウルトラマンなど…」
「…駄目。アレはまだ『調整中』なの!迂闊に使って『本来の意識』が戻りでもしたら尚更面倒なことになるっての。私の部下ならうだうだ言わず黙って引っ込みな」
「も、申し訳ありません…」
「フン…」
右腕を失っているにも関わらず、それを気にも留めないまま代行者は力に慢心した部下を嗜めながら次の策を考える。そこに…
「…お困りのようですね」
「ッ!?」
突如聞こえてきた声に宇宙人軍団は驚くが、代行者はさして驚いた様子もなく正面を見据える。
「…誰だ?」
スゥゥゥゥ…
代行者の呼びかけに応じるように虚空から姿を現したのは、『メフィラス星人』であった。
「め…メフィラス星人!?」
「御機嫌よう、絶望の代行者殿。先ほどの挨拶、誠に感銘を…」
「見え透いた世辞なんかやめな。…メフィラス、何故ここにいる?」
「ハハハ…貴方なら既にお分かりでしょう。『宇宙の支配者』と呼ばれていた、貴方ならね…」
「…私の軍門の下ると?」
「その通りです。そもそも我らは『貴方より生まれし者』。ならば、貴方が蘇った以上貴女の元に下る…いや、『還る』のは当然の事かと…」
「どうだかな。アンタらが光の国の者どもになんと呼ばれているか、知っているだろう?」
「ええ、勿論。…なのでご挨拶代りに、少々『手土産』をお持ちしました」
「手土産だと…?」
パチン!
メフィラス星人が指を鳴らすと、空間に映像が映り込んだ。
「ここに来る道すがら、元いた世界から少しばかり『拝借』してきました。お役に立てると思いますが…」
「…これは…!」
映し出された映像…メフィラスの宇宙船の内部には、何体もの怪獣が眠りに就いたように大人しく鎮座させられていた。
そして不思議なことに、その怪獣全てにはある『共通点』があった。…頭頂部に紅く煌めく結晶体、『マガクリスタル』があったのだ。
「へぇ、『魔王獣』か。面白い物を持ってくるじゃんか」
「なかなか苦労しましたよ。封じられた魔王獣の多くは光の国の監視下にありましたからな。この『5体』を集めるのが精いっぱいでした。…して、いかがでしょう?」
「…いいよ。手土産に免じてアンタの望みどおり、私の部下に加えてあげるよ。何を企んでるのかは知らないけど…精々私を楽しませることね」
「はっ…仰せのままに」
(…これで『確信』がとれた。やはりこの方はまだ『不完全』だ。でなければ、ウルトラマンオーブに『魔王獣』をぶつけるということがどういうことなのか、分からない筈がない…)
忠誠を誓うフリをしながら、メフィラスは目の前の代行者…その『正体』について考える。
(しかし、これは私にとって幸運だった。『全知全能』と呼ばれたこの方が本調子ならば、私やウルトラマンオーブでは太刀打ちできまい。…いや、例え光の国の全戦力を以てしてもあるいは…。ともかく、これでひとまずこの世界での立ち位置は確保できた。ならば次は、あの若きウルトラマンに接触しなければならん。私が魔王獣を奪ったことで、光の国もこの世界の異変に気が付いている頃だろうからな…)
メフィラスが魔王獣を奪ったのは献上品としてだけでなく、光の国がこの世界の異変に気づくよう仕向ける為でもあった。メフィラスはその時に備え、次の行動に移るべく思考を巡らせる。
(さあ、見せて貰いますよウルトラマンオーブ…!彼らの意志を受け継いだ君は、この恐ろしい『絶望』にどう立ち向かいますか…?)
その頃、未来機関では…
「…会長!被害状況と死傷者の確認が終わりました!」
「…うむ、ご苦労」
ウルトラマンと絶望の代行者が去った後、破滅魔虫に覆われた薄闇の空の下で未来機関はすぐさま被害状況を整理し始め、生き残った人員総出で負傷者の治療や救助活動に取り掛かっていた。
「コォォォォォ…ッ!」
シュゥゥゥゥ…!
「うぐッ…?い、痛みが…」
「…ふぃ~。これでひとまず大丈夫だろ。…次の患者寄越してくれ!」
「あ…はい!」
当然日向たちも黙って見ているだけな筈はなく、日向はカムクライズルの医療関係の才能と自身の『波紋』により医療班や忌村の薬だけでは間に合わない患者を可能な限り救う。スタンド能力の酷使によりダウンした江ノ島は休んでいるものの、『霧切』も戦刃も学園長も自分の怪我をおして救助や応急手当を手伝っていた。
「…協力を感謝する。霧切学園長」
「何、構わないさ。今学園の方にも連絡をしたから、じきに罪木さんがありったけの医療品を持って来てくれるさ。大和田君も来れば瓦礫の撤去作業も捗るだろうしね」
「…こういう時に、誠君が居てくれたら…」
「むくろさん、気持ちは分かるけれどそれを言ってもしょうがないわ。今できることをしましょう」
「…この状況で苗木誠なんざ役に立つかよ…!」
「う…」
「ちょっと、逆蔵…さん!そんな言い方…」
と、苛立ちからか険悪な雰囲気になりかけた…そこに
「…呼んだかい、むくろ?」
『ッ!!?』
いきなり割って入った声に未来機関は怪訝そうに、学園側はとびきりの驚愕でその方向を向く。
そこにいたのは、黒いロングコートに身を包んだ、長い金髪を江ノ島と同じ『クマのヘアゴム』で束ねた、どこか見覚えのある顔をした少年であった。
「…え、誰…」
「…ま、『誠君』ッ!?」
「苗木君ッ!!」
「…はぁッ!?」
「やあ皆…。やっと会えたよ」
少年の名を呼び『霧切』たちが駆け寄る。一方、支部長たちは少年が呼ばれたその名に反応が追いつかず、ただただ唖然としていた。
「誠君…誠君、なんだよね…?」
「ああ、そうだよ」
「い、一体何時…どうやってこの世界に来たんだい!?」
「いや、それが…空港で学園がとんでもないことになっているのを知って、大急ぎで学園に戻ったんです。それで、天願さんにお願いしてこっそり向こうの学園の中を調べてたら、変な『歪み』みたいなものに落っこちて…それで、この世界に来たと思ったらさっきまでとんでもないことになっていて…。落ち着いてから、義父さ…学園長たちがここに居るのを知って、駆けつけたんです」
「…本当に、貴方は『幸運』なのか『不幸』なのか分からないわね。…けれど、少なくとも今の私たちにとっては、貴方が来てくれたのはこの上ない『幸運』ね」
「…どうやらそのようだね。それじゃあまずは…響子たちからだね」
「え…」
シュォォ…!
と、言っている間にいつの間にか霧切たちの怪我が治っていた。
「ッ!お、おお…ありがとう、苗木君」
「いえいえ。次は向こうの人たちですね」
そう言って『苗木』は負傷者たちと格闘する日向の許へと向かう。
「…ま、待て!」
そんな苗木を、思わずと言った拍子で宗方が呼び止める。
「…はい?」
「お前は…本当に、『苗木誠』なのか?」
「はい。正確には、別の世界の苗木誠…ですけどね」
「い…いやいやいや!まるっきり別人じゃあねーべかッ!?」
「顔は一緒だけど、髪は長いし、金髪だし…本当に、苗木…?」
自分らの知る苗木との余りの違いに支部長たちが唖然としていると、こちらの世界の苗木がよろよろと近づいてくる。
「…!君は…」
「…君が、『僕』…?」
「…ああ、君がこの世界の『僕』か。うん、僕は苗木誠。君と同じ、希望ヶ峰学園78期生『超高校級の幸運』の、苗木誠だよ」
「…あ、はは…!なんていうか、凄い…イメチェンだね。最初全然分からなかったよ…」
「いや、これはイメチェンしたわけじゃないんだけど…まあ、それは後で説明するよ。それより、ちょっと行かせて貰っていいかな?」
「あ、うん…」
気圧されるように『苗木』に道を譲った苗木の傍を通り、『苗木』は日向に話しかける。
「お待たせ」
「…おせーぞ苗木。こっちは専門じゃねーんだから、無茶させんなよ」
「ごめんごめん。…で、まずは誰からかな?」
「とりあえず、一番やべーのはこの人だな」
日向が示したのは、負傷者たちの仲で一際酷い状態の男性であった。その身体は生身の部分が見えないほどに応急処置の包帯で覆われ、真っ赤に染まった脚は…脛の半分から先が失われていた。本来なら罪木でも匙を投げかねない状態であったが、日向の波紋によってどうにか息を永らえさせられていた。…『苗木』が必ず来ると信じて。
「これは…酷いね。直ぐに治すよ!」
「頼む…!」
その凄惨な姿に一瞬目を凝らした『苗木』は即座にその男性の元に向かう。
「…う…あ……」
「…よく頑張ってくれました。直ぐに楽にしてあげますから…」
「…お、おい!お前、何をする気だ!?」
「黙っていてください、治療の邪魔です」
「なッ…!?テ、テメエッ!!」
「…って、治療…?」
重体患者に近づく『苗木』に警戒する支部長たちを余所に、苗木は男性に手をかざす。
「『ゴールド・エクスペリエンス』!」
シュォォォォ…!
苗木の手から黄金の光が溢れ、それが男性の身体に纏わりつく。
「これ、は…?」
その光景に未来機関の面々が言葉を失う中、やがて光が治まると…
「…う…!こ、ここは…」
「…ッ!?う、嘘…」
先ほどまで指一本動かすこともできなかった男性が、ムクリと起き上がったのだ。だが、未来機関の皆が驚いたのは、それだけではなかった。
「…大丈夫ですか?まだどこか痛むところはありますか?」
「君は…?もしかして、君が治療してくれたのか?」
「ええ。ひとまず、体の怪我は全て治した筈ですが…」
「怪我…ッ!そ、そうだ…俺は、あのロボットの砲撃を喰らって…!お、俺の足が…ッ!」
「落ち着いてください。…足なら、『ちゃんとある』じゃあないですか?」
「へ…?」
『苗木』の言葉にポカンとした男性がおそるおそる自分の足先に視線を向けると…
そこには、爆発によって吹っ飛んだはずの自分の足が、『何の違和感もなくそこにあった』。
「…え、えええええええッ!!?お、俺の足が…足があるぅぅぅぅッ!!?」
「はい、そっちも治しておきました。一応、貴方の細胞から作ったので異常はないと思うんですけれど…」
「え…え、え…えええええッ!!?り、理解不能理解不能理解不能ッ!!?」
「い、一体何が…光ったと思えば彼が起き上がって、怪我も治って…おまけに足まで…ど、どうなってんのかさっぱりだぞぉぉぉッ!!」
目の前で起きた摩訶不思議な光景に、一足早くキャパシティオーバーを迎えた万代やゴズが軽く壊れる。
「何が…どうなっている…!お前は、一体何をしたんだッ!?」
混乱を必死に抑えながら問う宗方に、苗木は平然と答える。
「…僕の持つ『スタンド能力』、『ゴールド・エクスペリエンス』。その能力は『生命エネルギーを操る』こと。それを応用すれば、こんな風に肉体の治療や欠損した部位を補てんすることができます」
「…スタンド、能力?それって、『マンガ』に出てくる…あの?」
「…マンガ?」
苗木がぽつりと呟いた言葉に、『苗木』眉を顰める。
「…それ、どういうことか詳しく聴かせて貰っていいかな?どうやらこっちの世界とあっちの世界では、『フィクション』と『ノンフィクション』の境界が違うみたいだからね」
「う、うん…」
怪我人の治療と並行して、『苗木』たちは互いの情報交換を進めるのであった。
その頃、光の国では大変なことが起きていた。
「…大隊長!大変です!」
「どうした、ゾフィー?」
宇宙警備隊の司令室にいたウルトラの父の元に、ゾフィーが血相を変えて飛び込んできた。
「た、たった今…各地の『ガーディアン』達からの報告がありまして…。宇宙各地に封印されていた魔王獣のいくつかが、『消失』していたと…!」
「何…!?魔王獣が消えただと!」
「はい。無論、自然に消える筈が無いので何者かに奪われたかと…」
「むう…もしや、宇宙各所で起こっている怪獣の頻出や星の異常現象は、魔王獣を奪うためのカムフラージュなのでは…」
「私もそう思ったのですが…そうだとすれば少し『奇妙』なのです」
「奇妙…?何かあるのか?」
「はい。奪われた魔王獣から発せられている『マイナスエネルギー』が、とあるポイントに集中していると80から報告がありまして。それを辿ったところ…魔王獣を奪った犯人はどうやら『別の宇宙』に向かったそうです」
「別の宇宙にだと?」
「はい。しかも、その座標までハッキリ分かるほどに明確にマイナスエネルギーの道ができているそうです。…まるで『意図的』になぞらえたように」
「…何かの罠だと?」
「おそらくは…」
(…これほどに鮮やかな、しかし我々に明確に何かを伝えようとしている手口…。どこかで憶えがある様な…?)
異様な手口に奇妙な『既視感』を憶えるゾフィーを余所に、ウルトラの父は重々しく考える。
「うむ…。魔王獣を奪えるほどの力の持ち主だ。むやみに調査に向かわせるのは危険やもしれん…」
「ですが、静観と言う訳には…」
「…だったら、俺達が行くぜ!」
「「!」」
威勢よく司令室に入って来たのは、ウルトラマンゼロと彼の仲間の『ウルティメイトフォースゼロ』の面々であった。
「ゼロ…!」
「ここでごちゃごちゃ考えてたってしょうがないぜ。俺らがひとっ走り見てきてやるよ!」
「しかし…」
「まあそう難しく考えなさんな。俺らはゼロと一緒にどんな無茶だって乗り越えてきたんだ、これぐらいいつものことよ!」
「敵の狙いが不明な以上、迂闊な戦力の分散は付け込まれる恐れがある。宇宙警備隊の戦力はこの世界に留まるべきだろう」
「光の国の皆さんには、この宇宙を守る使命があります。ここは、比較的身軽な我々にお任せください」
「ご心配なく。我々は必ず戻ってきます」
グレンファイヤーが、ジャンボットが、ミラーナイトが、ジャンナインがゼロと共に決断を促す。ウルトラの父はしばし考えた後、首を縦に振る。
「…分かった。ゼロ、この調査は君達に任せる。ただし、無理はするな。何か分かり次第、ウルトラサインを送ってくれ」
「おう!」
「…ゼロ」
「ッ!親父…」
そこに、パトロールから一旦帰還したセブンがやって来た。
「行くのか?」
「ああ」
「…気をつけろよ。以前にも言ったが、私も皆も、いつでもお前の事を信じている。そのことを決して忘れるな。仲間と共に、必ず帰ってこい」
「…ヘッ、本当に親父は心配症だな。任せとけって!」
「うむ…」
「…よっしゃあ!行こうぜ皆!」
『応!』
こうして『UFZ』は本拠地であるマイティベースと共に、マイナスエネルギーを辿って別の宇宙へと飛び立っていったのであった。
そして同時刻、また別の世界では…
ドゴォンッ!
『うわッ!?』
一人のウルトラマンが、大地に叩きつけられた。ウルトラマンとしては異質な、妖しく歪んだ青い目を持つウルトラマン。その名は…『ウルトラマンジード プリミティブ』。ウルトラマンベリアルの『息子』にして、この世界を守るウルトラマンである。
『大丈夫ですか、『シュウイチ』?』
『なんとか…。『レム』、アレは一体なんなんだ!?』
ジードのサポートAIである『レム』から『シュウイチ』と呼ばれたジードは、先ほど自分を叩き落とした上空にいる『それ』を指差す。
「オァァァァアァァァァァ…!!」
遥か上空にて唸り声を上げるそれ。暗雲が渦巻く空の中心より顔だけを出し、しかしてその顔だけでもジードの凡そ10倍はあるであろう大きさから、全体像は計り知れない巨体であろう龍。それが現在ジードが相対している敵であった。
『…怪獣のデータを検出。名前は、『巨獣ゾーリム』。根源的破滅招来体によって生み出された、ワームホールに生息する怪獣です』
『根源的破滅招来体…?な、何それ…?』
『こことは異なる世界の地球にかつて出現したという、星の文明及び生命体を滅ぼすことを目的とした概念的エネルギーの総称です』
『そんな奴が、どうして地球に…!?まさか、ベリアルの影響…?』
『それは不明です。…ですが、現在分かっていることは、このままでは確実に押し負けてしまうということです』
『それは分かってるって…うわッ!』
ボガァァンッ!!
ゾーリムが口から放った巨大な火球を、ジードは間一髪のところで躱す。
『シュウイチ、あの巨体ではほとんどの攻撃は通用しません。あの怪獣を倒すには、一撃で倒すつもりの攻撃が必要です』
『…そういうことなら!』
レムの報告を受けたジードは、ゾーリムを倒すべく力を解放する。
「融合!」
「I GO!」
「Here we GO!」
『フュージョンライズ!』
「守るぜ、希望!!ハァッ…ハッ!!」
「ジ――――ドッ!!」
『ウルトラマンゼロ!』
『ウルトラの父!』
『ウルトラマンジード! マグニフィセント!』
『ハァ…ッ!』
ジードが新たに変身したのは、『ウルトラマンジード マグニフィセント』。ゼロとウルトラの父の『ウルトラカプセル』の力を融合させた、強大な力を秘めた姿である。
「オオオオオオッ!!」
その危険さを感じ取ったのか、ゾーリムは鳴き声を上げると再び火炎を吐き出した。
『ジードクロー!!』
それに対しジードは武器である『ジードクロー』を手に火炎に向かって飛び上がった。
『コークスクリュージャミング!!』
ギャルルルルルルッ!!
ジードクローを突き出したジードが、凄まじい勢いで回転する。それと同時にジードの頭の『スラッガーホーン』から稲妻が迸り、回転するジードに纏わりつきその威力を上げる。
『はぁぁぁぁぁぁッ!!』
回転するジードはそのまま火炎に突っ込み、火炎を弾き飛ばしながらなおも進み、そのままゾーリムの口の中に飛び込んだ。
「ゴアアアアアアッ!!」
飛んで火に居る夏の虫、とばかりにゾーリムは口内のジードを噛み砕こうとするが…そこに入られた時点で、ゾーリムは既に『敗北』していた。
『ビッグバスタウェイ!!』
キュィィィィィィッ!!
口が閉じられる直前、ジードは極太の光波熱線をゾーリムの体内に向かって放ち、果てしなく続くゾーリムの胴体を内側から焼き尽くす。
「ギャオオオオオッ!!」
ドガァァァァンッ!!
苦悶の断末魔を上げ、ゾーリムは内側から弾け飛んで爆散したのであった。
『よし…!これで…』
爆発の直前に飛び出したジードはゾーリムの消滅を確認しホッとする。
…その時、『異変』が起きた。
ギュォォォォォオ…!
ゾーリムが顔を出していたワームホールが突如その勢いを増し、物凄い力で周囲の物を吸いこんでいく。ジードもまたその力に巻き込まれ、吸い込まれていく。
『な、なんだこれッ!?レム、何が起こってるんだ!?』
『ワームホールを出現、固定させていたゾーリムが消滅したことで、再び不安定な状態になったワームホールが消えようとしています』
『じゃあ…この力は…ッ!?』
『ワームホールを広げていた巨大な質量…即ち、ゾーリムが消えたことでワームホールの元に戻ろうとする力が過剰に働いた結果です』
『リバウンド…って、訳か…!』
『シュウイチ、すぐにそこから退避して下さい。ワームホールに飲み込まれれば、どこへ飛ばされるか分かりません。最悪、戻ってこれない可能性もあります』
『簡単に言うけど…これは、かなりキツイよ…!』
マグニフィセントのパワーを以てしてもワームホールの吸引力には抗いきれず、ジードはジワジワと吸い込まれ続ける。
『くっ…こうなったら…!』
現状を打開すべくジードは自身の持つ『最強の力』を使おうとする。…しかし
ババリィッ!!
『うわッ!?』
ワームホールからプラズマが生じ、それをもろに喰らってしまったジードは、思わず使おうとしていた『ウルトラカプセル』を落としてしまった。
『しまった…カプセルが!』
ジードから零れ落ちたカプセルは淡い光を放ちながらワームホールへと吸い込まれてしまった。そしてその直後
『うわぁぁぁぁぁ…ッ!!』
カプセルに注意が向いてしまったことで力が抜けてしまったジードは遂に耐え切れず、カプセルと共にワームホールへと飲み込まれていった。
『シュウイ…ガガ…おうと…い、シュ…ち…!』
ウルトラダンガンナビ!…という名の解説
今回は各世界の時系列を説明します
光の国の世界…ウルトラゼロファイトの内容が終わった辺り。陛下は復活したが未だ潜伏中
黄金の言霊世界…最原たちが入学して1か月ぐらい経った頃
原作未来編世界…スーダン2の本編終了時、苗木の処断が決定するまでの空白期
ジード世界…現在非公開、後々明かされる。ベリアルとの因縁は決着済み
今回ガイアの怪獣が多いと思うかもしれませんが、これはちょっと伏線なのです。というのも、今作では公式で未だ不明瞭なままの「根源的破滅招来体」について僕なりの答えをだして見ようかと。独自設定も含んでますのであまり深くは考えないでくださいね