黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~   作:マイン

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再掲載、6話目です


伝説の鼓動、絶望の足音

「…成程。つまりこの世界には『スタンド能力を題材にした漫画』があって、この世界においてスタンド能力は完全なる『フィクション』と言う訳だね」

「う、うん…。けど、驚いたよ…。そっちの世界には本当にスタンド能力が実在してるなんて…しかも、君を含めて学園に『7人』もスタンド使いがいるんだね」

「江ノ島盾子が砲撃を回避したのも、そのスタンド能力とやらのおかげということか。…あの性悪女にそんな厄介なものまでついているとはな」

「…ひとまず、スタンド能力以外にはこちらと向こうの世界にさほど常識の差異はなさそうね。…その上で気になるのは、両方の世界において『創作の存在』であるにも関わらず、ついさっき実在したことが証明された存在…」

「…『ウルトラマン』と『怪獣』、か」

 皆の治療をしながら情報交換を終え、スタンド能力について互いの世界の常識を理解しあった未来機関と学園であったが、それ故に尚更『ウルトラマン』や『怪獣』という存在について分からなくなった。どちらの世界においても存在しないというのなら、彼らは一体どこから現れたのだろうか…。

 

「…おいカムクラ、こういう時こそお前なんか分からねーのかよ?……無茶を言わないでください創。僕が理解し、想定できるのはあくまで『現実的』なレベルの話です。ここまで飛躍した次元のことを貴方がたに理解できるほどに分析するのは不可能です。そんなことができるのなら、あの女がとっくにやっています」

「チッ、いちいち鼻に突く言い方…」

「ふぅむ…とはいえ、かつて『超高校級の希望』と呼ばれたカムクライズルを以てしても答えが出ぬ以上、一筋縄ではいかんのは確かじゃろう」

「…天願和夫、僕をそう呼ぶのは止めて貰いたい。僕にそう呼ばれる資格は有りません。…今の僕は『ただのカムクライズル』、ただの一人の…『人間』です」

「……」

「カムクラ…イズル」

「…ケッ。希望ヶ峰学園に作られた『ニコイチ』風情が、悟った様な事を言いやがって…」

「逆蔵君、そんな言い方しなくても…」

 

「…ッ!」

 逆蔵を諌めようとした雪染を…正確には、その『目』を見た時、『苗木』は微かに目を見開く。

 

「…誠君、どうしたの?」

「……いや、なんでもないさ」

「…?」

 一瞬だけだがただならぬ雰囲気を発した『苗木』に『霧切』が声をかけるが、『苗木』はいつもの笑みを浮かべてはぐらかす。

 

 と、そこに

 

 

「…うあ~、だっる…」

「あ…盾子ちゃん!」

 先ほどまで無事だったベッドで休んでいた江ノ島がよろよろと起き出した。

 

「…げ。寝起き一番に見たのが残姉ちゃんとかグレート絶望的なんですけど…いや、全然嬉しくない系のね」

「そういうの今はいいから…それより、ほら見て…!」

「あん?何イイ年こいてはしゃいで…」

 心底ウザったそうに戦刃に言われるがまま顔を上げた江ノ島は…

 

 

 

「…やあ、江ノ島さん。お疲れ様」

「……なえ、ぎ?」

 『苗木』の顔を見た瞬間、一瞬思考がフリーズ。直後、今迄のツケを清算するかの如く凄まじいスピードで現状の分析を行い…そして導き出された『答え』に、口角がほぼ90度に吊り上がった。

 

「…じゅ、盾子ちゃん?どうしたの…?」

「…ぷっ、うぷぷぷぷぷ…!」

「…?じゅ…」

「…アッハハハハハハハハッ!!!そーかそーか、『そういうこと』か!成程道理で…クッ、アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

「な、なんだべこいつ…!?急に笑い出したべ…!」

「な、何…?なんなの…」

 狂ったように笑い出す江ノ島。その様子にかつての恐怖を思い出したのか未来機関の面々がたじろぐ中、江ノ島は笑い止むと笑みを浮かべたままゆっくり『苗木』に近づき体を密着させる。

 

ぎゅむ…

「…やっぱ、アンタ最高だよ…苗木。アンタはアタシを本ッ当に飽きさせない…。アンタの『希望』の底が知れなくなるほどに、アタシの『絶望』はより深く、より甘美になる…。こんな快感、他に感じられるもんか…!うぷぷぷ…マジで愛してるよぉ、な・え・ぎ♡」

「……」

「う、うわうわ…!」

 蠱惑的な肢体を蛇のように『苗木』の身体に絡ませ、『苗木』の胸板に自分の胸を押し付ける。耳元で呟かれる愛の言葉はどこまでも妖艶で、例え江ノ島盾子の正体が『絶望そのもの』だと分かっていても、年頃の男子であればその誘惑には抗いがたいものがあった。現にその手の事に耐性の無い朝日奈や苗木などは顔を真っ赤にして逸らしつつも、やはり気になるのかチラチラと見ている。

 …しかし、そんな世の中の男の誰もが夢見る状況に置かれても尚、『苗木』は『苗木』であった。

 

スルッ

「…あら?」

 まるで知恵の輪を解くかのようにスルリと江ノ島を振りほどくと、『苗木』は子供をあや

す様な口調で江ノ島を嗜める。

 

「…いいから君はおとなしくしていてよ。相当無茶をしたのは分かってるんだよ?あんなスパン感覚で『キング・クリムゾン』を使うなんて、いくら君でも無理しすぎだよ」

「…そういうの、アンタにだけは言われたくないんだけど」

「それでも、だよ。人のこと言えた立場じゃあないのは百も承知だけど、それでも他人の無茶を止めない理由にはならないだろう?」

「はいはい、分かりましたよ~だ。…ハァ」

 

「…けれど、君がその無茶をしてくれなかったら、僕は間に合うことができなかった。もっと多くの人が…もしかしたら、君や響子たちが死んでいたかもしれない。そうならなかったのは、君のおかげだ。…ありがとう、江ノ島さん」

「……あーん、もう!そういう気が利くとこマジ鼻に突く~!ぶっ殺すよ~!」

「はいはい」

 

「……何これ?」

 狂気と色欲が入り混じった雰囲気から一転、バカップルの漫才染みたやりとりに、警戒していた未来機関の面々は毒気を抜かれたようにポカンとしてしまう。

 

「…まあ、こいつらの関係が理解できなきゃそうなるわな。俺らは慣れたけど79期の後輩共はまだ慣れてねーし」

「こういう雰囲気に慣れてしまった自分が、偶におかしくなってしまったのか不安になるよ…」

 その光景にすっかり慣れてしまった日向や学園長は呆れ混じりにそう呟く。…隣から発せられるドス黒いオーラに目を向けないように。

 

「も~、聞いてんの苗木~?チューしてくれないとマジぶっ殺すよ~?」

「そういうこと軽々しく言うんじゃあないの。…でないと」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

「…僕の後ろの二人が何しても僕にはどうしようもないんだからね…?」

 軽く怯えたようにそう言う苗木の背後には、嫉妬と殺意が入り混じった視線を苗木と江ノ島に向ける『霧切』と戦刃が立っていた。

 

「…あらやだ怖い。まるで叩き潰す5秒前の蚊を見るような目って感じ?」

「…そう。分かってるのなら、大人しく潰されるわよね?」

「えーヤ☆ダ」

「…お姉ちゃんは悲しいよ。こんなことで盾子ちゃんとお別れだなんてね…」

「…ねえ、これってマジなの?それともふざけてんの?」

「さあ…知らねえよ、んなもん」

「…あれが、私?…理解できないわ」

 思わず日向にそう問う忌村に対し、日向は力なくそう答えるしかなかった。霧切に至っては、嫉妬を隠そうともしないもう一人の自分の姿に信じられないといった表情のまま固まっていた。

 

 

「…皆、その辺にしておこうか。いつものノリだと未来機関の人たちが混乱するだろうし、…そもそも、『あんなモノ』が上にあるんじゃあ気も抜けないからね」

 苗木が指差した先…空を覆い尽くすドビシの軍勢を見上げたことで、皆は再び今置かれている現状に向き直ることとなった。

 

「…ああ、その通りだ。馬鹿騒ぎをするにもまずは、空のアレをどうにかせねばならん…」

「とはいえ…どうしたものでしょうか。ヘリや戦闘機で突破しようにも、あの数が相手では集られて落とされてしまうでしょう…」

「かといって、地上からの攻撃では焼け石に水なのは目に見えているぞ」

「殺虫剤は…効かないよね」

「おまけにこの距離だから蠅みてーに見えるが、近づけば一匹一匹が相当デカい筈だ。まともに相手していたらキリがねーぞ…クソッ!あの蝗どもが…」

 対策を話し合うものの、今迄絶望の残党との数多の戦いを切り抜けてきた支部長たちを以てしても、空を覆い尽くす異形の怪物への対策はそう簡単には思いつかなかった。

 

「…けどよ、アイツら今んトコ空飛んでるだけで何もしてこねーんだし、こっちから仕掛けなくてもいいんじゃあねーか?」

「そーそー!空が暗いのなんかいつものことなんだし、あっちが何もしないんならほっとけばいーじゃんか!」

「い、いや…そう言う訳には…」

「…は?何私に意見なんかしてんの?絶望を逃がした『裏切り者』の癖にさ…!」

「そ、それは…」

 

 

「…あれが『ドビシのまま』なら、しばらくはそれでも構わないでしょう。ですが問題は、アレがいつ『カイザードビシ』になるか分からないということです」

「…え?」

 早々に思考放棄した葉隠や安藤の楽観論を苗木が窘めようとして逆に安藤に言い負かされそうになるが、それを『苗木』が一蹴する。

 

「カイザー、ドビシ…?」

「…キミは、空のアレがなんなのか知ってるの!?」

 『苗木』が口にした言葉に皆が反応するが、当の『苗木』は予想していなかったのか拍子抜けしたような顔になる。

 

「あれ…もしかして、この中に『ウルトラマンガイア』を見たことのある人いない?」

「『ウルトラマンガイア』?…あ~…、そういえば昔朝早くにやってたの見てたかも…その、弟…が…」

「…あ、朝日奈さん…」

「…そのことは、また後で聞かせてもらうよ。そういうことなら、僕の方から説明させて貰います」

 朝日奈の態度からこの世界の『義弟』の末路を悟った『苗木』はそのことを掘り下げるのを避け、元の世界に戻ってから調べたウルトラマンガイアの『設定』で分かる限りのドビシの情報を伝える。

 

「空を覆っているあの生物…おそらく、あの『絶望の代行者』とやらが生み出したアレの名は『破滅魔虫ドビシ』。怪獣としてはサイズは小さく力も強くないので、その気になれば生身の人間でも倒すことは可能です。…ですが、見ての通り奴らはとんでもない数の群れを作ります。しかもこの辺り一帯だけでなく地球全てが同じ状況ということを考えると…地球全ての火力を以てしても、殲滅は不可能に近いでしょう」

「地球全て…!?あの虫がいるのはここだけではないのか!?」

「はい。さっきスタンド能力で視覚を強化して確認しましたが、少なくとも日本全土の空はドビシに覆われています。そしてあのペースで増えていったことを考えるに、この状況が日本だけ…とは考えにくいでしょう。実際、ガイアでも同じことをやっていましたからね」

「…創作だった筈の悪夢が、現実になってしまったということか」

「そして、厄介なのが奴らの持つ『合体』…いや、『融合能力』です」

「融合…?」

「ええ。奴等は群れるだけでなく互いに融合することで『巨大化』することができます。それが数千匹単位での行われた場合に生まれるのが…『カイザードビシ』。ウルトラマンに匹敵する巨体と攻撃力を持つ巨大怪獣です。そしてカイザードビシは、『ドビシがいる限り無限に』増えることができます。もし奴らが痺れを切らして融合し、数百匹単位のカイザードビシが地上に現れることになれば…」

「…考えたくもねえな」

 つい先ほどウルトラマンと怪獣の戦いを目の前で見たおかげか、苗木の荒唐無稽ともとれるような説明にもある程度想像することができ…その結果までを想像し、一様に顔を青くする。

 

「…ちなみに聞くけれど、その話の中でどうやってドビシは倒されたの?」

「えっと…確か、地球の怪獣たちから地球のエネルギーを貰ってパワーアップしたガイアさ…ガイアとアグルの二人のウルトラマンによって殲滅されたんだけど…」

「…けどそれ逆に言えば、テコ入れでチート化したウルトラマン二人がかりでないとどうにもできなかった、っつーことでしょ?」

「…まあ、そうだね」

「ってことは…もしかして、そもそも打つ手なし?」

「……」

 半ば分かり切っていたものの、出てしまった結論に皆は黙り込む。ただでさえ終わりの見えない絶望との闘いに疲弊していたところに、絶望的という言葉すら生ぬるい戦力差を見せつけられたのだ。戦意が喪失しかけるのも、仕方のないことであった。

 

「…だ、大丈夫だよ!きっと、僕等にも何かできることがある筈です!僕等では怪獣には勝てなくても、希望を捨てなければきっと道は開ける筈です!」

 そんな雰囲気を払しょくしようと苗木は皆を鼓舞しようとするが…

 

「…だったらテメーになにができるっていうんだよ!?むしのいい言葉をベラベラ並べる事しかできない癖に、絶望の残党共を匿った挙句逃がしたテメーなんかによッ!!」

「ウグッ!?そ、それは…」

 そんな苗木の態度が気に入らないのか、逆上した逆蔵が苗木に掴みかかって吼える。苗木は苦しそうにしながらも反論しようとするが、周囲から向けられる『視線』に二の句が出ない。…今現在、自分に懸けられている『嫌疑』が、皆の不審を未来機関における苗木の立ち位置を危うくさせているのだ。

 

「ちょっとアンタ!いい加減にしなさいよッ!!」

「黙れッ!テメーらがどんだけきれいごとほざこうが、テメーらがやったことは紛れもない未来機関に対する『裏切り』なんだよ!そんなテメーらの言葉なんざ誰が信じると…」

 度が過ぎる逆蔵の横暴に朝日奈が声を荒げるが、逆蔵は取り合おうともしない。

 

 と、そこに

 

…グッ

「…あ?」

 

グイイイッ!

「あ、がぁぁぁぁッ!?」

「うわッ!?…げほっ、げほッ…!」

 苗木を締め上げていた逆蔵の腕を『苗木』が掴むと、そのまま流れるような動作で腕を逆方向にねじりあげ、頭一つ分の体格差など関係ないとばかりにあっさりと逆蔵を組み伏せた。

 

「…ハッ!だ、大丈夫け苗木っち?」

「う、うん…大丈夫…」

「ぎあッ…!?て、テメエッ…!」

「…随分と血気盛ん…いや、手癖が悪くなったみたいですね逆蔵さん。僕の世界の貴方も以前はそうでしたけど、今では年相応には拳を弁えていますよ?…組織の重役であるなら尚更、『暴力』の使いどころには気を遣うべきではないのですか?」

「…んだとぉッ…!」

 倒れ込んだ苗木に霧切や朝日奈達が駆け寄るのを横目に、『苗木』は逆蔵に侮蔑に近い諫言を送る。逆蔵はそれに青筋を立てて怒るが、どういうわけかいくら力を籠めてもまったく振りほどけない。余りの手際の良さに宗方たちも唖然としてしまい、状況を飲み込むのが遅れてしまうほどであった。

 

「…ッ!き、貴様何をする!?」

「…失礼。そちらの事情に関わるつもりは無かったのですが、黙って見ていられるほど僕は大人でもないので。…それに、自分と同じ顔が殴られるというのもいいものではないですしね」

「痛っ…この野郎…!」

 ようやく我に返った宗方に言われて『苗木』は手を放すが、慇懃にそう謝罪するもののまるで悪びれた様子は無い。その不遜とも思えるような態度に逆蔵や安藤らは増々敵意を強め、一方で霧切たちは自分の知る苗木とのギャップに目を白黒させていた。当の苗木も、礼を言う事すら忘れて唖然としていた。

 そんなある意味『予想通り』の未来機関側の様子に『霧切』達が苦笑していると…

 

 

 

 

ブロロロロロロ…!

 遠くの方から爆音のような音が聞こえてきた。

 

「…何の音だ?」

「何この音…バイク?」

「…どうやら大和田君達が来たみたいです。…あ、アレ僕の車だ。誰が運転してるんだろ」

 上空に飛ばした『G・E・R』の視界を通じて苗木が見たのは、先導きってツルハシとスコップを背負って愛車で爆走する大和田と、その後を追う学園に置いてあるはずの自分の車であった。ちなみに中には、ありったけの医療品と共に罪木が乗っており、運転しているのはなんと百田であった。

 

(百田曰く、『ウチの教師陣AT車ばっかでMT車とか運転できないって言われたんで、訓練の時に月面車運転したことある俺が運転することになったッス』…とのこと)

 

「救援が来たようだね。…どうでしょう、天願さん。ここが片付き次第、会合の続きは学園で行うというのは?少なくとも、今のここよりは安全でしょうから」

「…うむ。そうじゃな、ではお言葉に甘えさせてもらおう。皆もそれぞれの支部の様子が気になるじゃろうが、この状況で単独行動をとるのは危険じゃ。ここはしばらく、彼らの好意に甘えるとしよう」

「…分かりました」

「チッ…」

 天願の指示により方針が決まったことで、未来機関も学園側もそれぞれ準備に取り掛かる。

 

 

 

「……」

 そんな中、『苗木』はその輪から人知れず外れ、物陰に座り込むと腰のカードホルダーに手をかける。そしてそこから取り出した一枚の『ウルトラフュージョンカード』に目を向ける。

 

「…一体この世界に、何が起こっているというんだ…?何故僕等は、この世界に招かれたんだ?あの絶望の代行者が呼んだのか、だとしたら何の思惑が…。それとも単なる『偶然』か……もしかしたら、『貴方』が僕をここに導いてくれたのでしょうか…?」

 

 そのカードは、『苗木』が元から持っていた物ではない。インペライザーとの闘いの後、皆と合流しようとした『苗木』が、ふとなんとなくホルダーのカードを確認しようとして、初めて『あった』ことに気が付いたのだ。無論、そこに記されたウルトラマンから力を借り受けた憶えはなく、それどころか会ったことすらない筈であった。しかし、オーブリングを介さずともそのカードから伝わってくるかつてないほどに強大な力は本物であった。

 

 

 

「貴方は僕に、何を伝えようとしているのですか?教えてください…『レジェンドさん』」

 

 カードに記された名は、『ウルトラマンレジェンド』。あらゆる宇宙において『伝説の戦士』として語り継がれる偉大な先人に、『苗木』はその力の意味を問いかけるが、物言わぬレジェンドのカードから答えは返ってこなかった。

 

 

 

 こうして未来機関一同は学園からの救援が到着後、負傷者の治療と死者の埋葬を済ませ、共に一旦希望ヶ峰学園へと身を寄せることとなったのであった。

 

 

 

 

 …同時刻、元未来機関本部…改め、『ディスペアーパレス』。絶望の代行者の根城では動きがあった。

 

「…さて、もうそろそろ頃合いかな。またぞろ人間たちにちょっかいでもかけるとしようかぁ!」

『オオオオオオオオオッ!!』

 思い出したようにそう言い放つ代行者に、部下たちは血気盛んに反応する。

 

「んじゃあ~…誰に行ってもらおうかなぁ~?」

「代行者様、ぜひ私を!必ずや私がウルトラマンの首を獲ってみせます!」

「貴様は黙っていろ!…代行者様、この俺を!」

「ふ~むふむ…んじゃまずはスラン、アンタが行ってきな」

「ハッ!必ずや良い知らせをお持ちしましょう…!」

「うんうん。…あ、ついでにメフィラスが持って来た魔王獣も好きなの連れて行きなよ。ただの怪獣よりは強いだろうから、なんかの役には立つでしょ」

「かしこまりました。…おいメフィラス、貴様の土産を貰っていくぞ!」

「ハハッ…どうぞご自由に」

「フン…!」

 慇懃無礼な態度のメフィラスが気に入らないのか、スラン星人は鼻を鳴らすと代行者に一礼して去っていった。その背に他の宇宙人軍団が嫉妬と羨望の視線を送る中、メフィラスは代行者の傍に近づき話しかける。

 

「…よろしいのですか?見たところ彼は自身の力に陶酔している様子…。魔王獣などを手にすれば、よからぬことを企むやもしれませんぞ?」

「それをアンタに言われてもねェ~。…ま、どうでもいいのそんなこと。そもそも私は、こいつらなんぞに期待なんかこれっぽっちもしちゃいないんだから」

「…では、何故彼を?」

「『予感』がするんだよ…。近いうちに、この世界に大きな『力』を持った存在がやってくる。それの存在は今のこの状況に大きな『揺らぎ』を齎す。…なら、そこにちょっとばかり余興があったほうがもっと『面白い』…そうは思わない?」

「成程…彼は単なる『引き立て役』と言う訳ですか。貴方も酷いことをなさる…」

「何を今更…貴様がかつて仕えていた『ババルウ星人』も、この程度やっていただろう?…それに、『この体』の記憶によれば、この体の『持ち主』もそういうことに喜びを感じていたみたいだからね。黙って借りている手前、供養代わりにその程度の『絶望』を叶えてやるのも一興…ってことだよ」

「…御意」

 真剣さなど欠片も感じない代行者の態度に、平伏しつつもメフィラスは疑念を憶える。

 

(…この方は、今のこの体の『持ち主』の在り方に沿おうとしている。何故だ…?仮にその肉体に欠片でも魂が残っていたとしても、この方の力を以てすれば地球人の意思を捻じ伏せることなど造作もないというのに、敢えてそうしておられる。それほどまでにこの地球人と波長が合うのか…それとも、この『地球人そのもの』になにか意味があるのか…?一つ、確かめてみる必要がありますね)

 メフィラスの思惑をよそに、事態は動き出す。今再び、絶望の鼓動が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 一方、スラン星人は魔王獣を引き取るべくディスペアーパレスの一室…怪獣を収納できるほどに拡張された異空間へとやってきていた。

 

「さて…こいつが魔王獣って奴か。…見たことがある怪獣もいるが、ホントに強いのかね

ェ~?ま、いいや。さ・あ・て…どれにしようかな~?……ん?」

 魔王獣を物色していたスラン星人は、異空間の奥にぽつんと浮かぶ『あるもの』を見つける。

 

「アレは…そうだ、『アレ』も持っていくか。調整が終わったとは聞いてないけど、ココにあるのなら使ってもいいってことだろ。それにアレが使えると分かれば代行者様もお喜びになるだろう!クックック…ウルトラマン共め、『仲間同士』で殺し合うがいい…!」

 人間で在った頃では考えられないほどの力を与えられたことで付け上がったスラン星人は、よからぬ考えに笑みを浮かべる。

 

 

 

 …その手に持った『ダークダミースパーク』、そして魔王獣たちと並んで浮かぶ『4体のスパークドールズ』の内の一体を手にしながら。

 




ウルトラダンガンナビ!…という名の解説

今回は今話に出てきた伏線の単語の紹介を。大半の読者はご存じでしょうが、知らない人の為に…

ウルトラマンレジェンド…コスモス映画3作目に登場したウルトラマン、キャッチコピーは「今世紀最強のウルトラマン」。善悪を超えた神秘的な存在であり、伝説の戦士、あるいは神として崇められることもある。2つの大いなる力が合わさるとき姿を見せるとされ、映画ではコスモスとジャスティスが融合することでレジェンドとなった。(ギンガビクトリーと異なりコスモスとジャスティスが合体すれば必ずレジェンドになれるわけではない。サーガのような奇跡に近い結果である)
登場シーンは僅かだが前述の2人のウルトラマンを超える圧倒的な力を誇る。しかし、派生作品、並びにゲームやステージにおいても未だその力の全貌を明かしたことは無く、「三大チートラマン」として比べられるキングやノアに対し、未だ謎多きウルトラマンである

スパークドール…ウルトラマンギンガに登場した闇の支配者「ダークルギエル」の持つ「ダークスパーク」により、命の時間を止められたウルトラ戦士や怪獣たちがソフビ人形のようになったもの。ギンガやビクトリーの変身アイテムやダークスパークの劣化模造品である「ダークダミースパーク」を使うことで怪獣を召喚したり怪獣やウルトラマンに変身できる。ウルトラマンXにおいても設定は違うがスパークドールが登場する。ギンガ世界においてダークルギエルと共にダークスパークが葬られたことで、スパークドールが新たに生まれることは無いはずだが…?
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