黄金の言霊 外伝 オーブの奇跡~希望と絶望の力、お借りします!~   作:マイン

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再掲載、8話目です。これで再掲載分は終わりです




機械仕掛けの意地

『キュォォォォォッ!!』

「…ッ!?な、何今の声!?」

「外からだ!」

 希望ヶ峰学園に響き渡った耳を劈く金切り声は、学園内の皆に戦慄を齎す。慌てふためきながら外へ飛び出した一同が目にしたのは…

 

『ギュワァァァァァッ!!』

「な…なんだありゃーッ!!?」

「ば、バケモンだぁぁぁッ!!」

 行く先の建物をなぎ倒しながら確実にこちらに向かってくる『マガイガン』の姿であった。

 

「…ッ!?あの頭の赤い輝き…まさか『マガクリスタル』…!?まさか、魔王獣が奪われたのか…!」

「あ、アレは…ガイガンじゃあねーかッ!?」

「ちょっとぉぉぉ!!シリーズ違うんですけどォォォッ!!?」

「…え、何?どういうこと?」

「あの怪獣は『ゴジラシリーズ』に出てくる怪獣だよ…。昨日のインペライザーとは出てくる作品が違うってこと」

「それの何がおかしいのですか?」

「何が…って、言われても…あり?」

「た、確かに…『怪獣』という一括りで考えればそうおかしいことではないのですが…なんというか、納得できないというか…。例えるなら『き○この山』に『た○のこの里』が混じっているような…」

 ウルトラマン作品のことをよく知らない小泉やソニアの反応に、本来ならあり得ない事態に混乱していた山田たちも、『なにがおかしいのか』をうまく説明できず首を傾げる。

 

「お、おいッ!んなこと今はどうだっていいだろうが!あの野郎間違いなくこっちに向かって来てんぞ!」

「…な、なんなんだよ…!なんであんなのがいるんだよッ!?あんなのどうすればいいんだよッ!?」

「…どうもこうも、なんとかするしかないでしょう。ここまで近づかれたら、逃げたところで無駄でしょうし…」

「へ…?」

 怪獣を初めて見たことで完全にパニックに陥った御手洗であったが、当然のようにそう言って前に出た『苗木』にポカンとしてしまう。

 

「な、『苗木』君…なんとかなるのか?」

「とりあえず、やれるだけのことは…やってみますッ!」

 『苗木』はマガイガンに意識を向けると、地面に掌を叩きつけて叫ぶ。

 

「『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』!!」

 

シュォォォォォ…!

 その声に応じるように『苗木』のスタンド『G・E・R』が現れ、同時に苗木の手から溢れた生命エネルギーが地を走る。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

 すると、ガイガンの移動によるものとは明らかに違う地響きが鳴りだす。

 

「な、なんだ…?」

「…ッ!皆、アレ…!」

 苗木が指差した先、謎の地響きに歩みを止めたマガイガンの周囲で、それは起きた。

 

バゴォッ!

ギュルルルルルル…!

 突如周囲のビルから『巨大な樹木』が飛び出したかと思うと、それは凄まじいスピードで枝や根を伸ばし、マガイガンの身体に纏わりつき、絡みとる。

 

『キュォォォォォッ!?』

「何ィッ!?」

「な、なにアレ!?」

「あれが会長のスタンド能力…最強のスタンド『G・E・R』の能力です…!」

「アレが…『苗木』の力だと!?」

 唖然とする未来機関の皆に、『苗木』は自らの能力を説明する。

 

「僕のスタンドは、『生命エネルギーを操る能力』を持っています。生命エネルギーとは、『命』を命足らしめるための根源的なエネルギー…。使い方によっては、『物』に『命』を吹き込んだり命のスピードを速めることもできます。その能力で、あのビルを『樹木』に変えて、なおかつその成長を暴走させました!年月を経た遺跡が森に埋もれるように、奴を成長に巻き込んで動きを止めるッ…!」

「な、なんという出鱈目な…」

「あんなとんでもねえ力、俺らでも見たことねーぞ…」

 普段自制しているスタンドパワーを全開にし、苗木はマガイガンの行動を封じにかかる。

 

『ギギ…ギュワァァァァァ!!』

 しかしマガイガンも黙って拘束される訳もなく、凄まじいパワーで巻きついた枝や根を引き千切ろうとする。

 

「クソッ…やはりこの程度の拘束では完全には封じれないか…!」

「そんな…!」

 

 

 

 

 

 

「いえ、先輩!そのままヤツを抑えていてください!!」

「…誰だ!?」

「この声って…」

 突然響き渡った、学園の皆には聞き覚えのある声。その直後

 

ボシュゥゥゥゥッ!!

 学園から飛び出した何かが、白煙をあげて皆の頭上を飛び越えマガイガンの方へと飛んでいく。

 

「お待たせして済みません!『超高校級のロボ』キーボ…これより怪獣の殲滅行動を開始します!」

「き、キーボ!?」

 その正体は、普段は固く使用を禁じられている『戦闘用シルエット』を装備したキーボであった。

 

「アレは…確か、君達のクラスメイトの一人では?」

「ああ。…奴はキーボ。『超高校級のロボ』として選ばれた、我らの中で唯一の『完全なるロボット』だ」

「ろ、ロボット!?嘘…あれコスプレとかじゃなかったの!?」

 

「…おっしゃあ!お前ら、待たせたな!真打登場って奴だぜ!」

「い、入間さん!」

 キーボの後を追いかけるように、学園から目の下に隈を作った入間、左右田、不二咲がやって来た。

 

「…そういやお前ら、朝飯の時にもいなかったが…あれはお前らの仕業か?」

「当然だぜ!あの糞ダサロボットに好き放題されて、この入間美兎様が黙っているわけねーだろ!!」

「俺と入間と不二咲で、徹夜でキーボのパワーアップをしてたんだよ…!普段は政府のお偉いさんから自重するよう言われてっけど、今はそんなこと言ってる場合じゃあねーからよ!」

「二人が武器を、僕が戦闘用AIとアルターエゴによるアシストプログラムを強化したから、単純な出力は通常の戦闘モードの『5倍』、処理速度は『10倍』までパワーアップできたよぉ…!理論上なら、今のキーボ君なら軍隊にだって負けないよ…!」

「…き、君達…ちょっとやり過ぎじゃあないかなぁ…?」

「うっせーメス豚!四の五の言ってる場合じゃあねーだろ!」

「コラッ!人の事をメス豚なんて言っちゃ駄目でしょ!」

「ひゅぃぃッ!?し、仕方ねーだろ…ここまでやらねーと勝ち目が見えねーんだからよぉ…!」

「…先生、入間の言い方はともかく今は非常時だからよ…」

「……ハァ。しょうがないかぁ…」

「よっしゃあッ!行けキーボ!あのカマキリモドキに腹いっぱい弾丸喰らわせてやれぇ!!」

「立ち直り早…」

 その場のノリで暴言を吐き、雪染に窘められてビビッてヘコむといういつもの入間のお家芸の後、入間はインカム越しにキーボに指示を出す。

 

 

「…ハイ!任せてください入間さん!…飯田橋博士、こうして戦う僕を博士は喜んではくれないでしょうね。けれど、これは僕が『ロボットだから戦う』んじゃあない!僕が『ロボットだからこそ戦う』んです!皆を守る力が僕にあるのなら…僕は戦います!人々の希望を、守る為にッ!!」

 生みの親である博士に己の決意を誓い、キーボはマガイガンに向けて突貫する。

 

「キーボ、目標を狙い打ちます!!」

 

ドギュンドギュンッ!!

 キーボの腕に装着されたキャノン砲が火を噴き、マガイガンの頭部付近に命中する。

 

ドガンドガァンッ!!

『キュラァァァァ…!』

「き、効いてる…ぞ!」

「スゲェ…マジで特撮みてえだ!」

 パワーアップしたキーボの攻撃はマガイガンに確かなダメージを与えており、攻撃に怯むその様子に皆も驚きと歓喜を露わにする。

 

『キュワァァァァッ!!』

 

ビィィィィッ!!

 しかしマガイガンもサンドバックにされたままではなく、バイザーのような目から赤色の光線をキーボに放つ。

 

「この程度…!」

『…キーボ!全速力でそこから離れろ!!』

「百田君!?クッ…」

 最小限の回避でそれを躱そうとしたキーボだったが、入間からインカムをひったくった百田の警告にジェットを噴かして飛び上がる。直後

 

ギュピン!

バババババババッ!!

 マガイガンの放った光線が空中で拡散し、辺り一帯に弾けるように広がった。

 

「これは…!?」

『テメ、インカム返せって…!』

『うっせぇ!ちょっと貸せって…キーボ、ガイガンのビームは拡散するんだ!ただ避けりゃいいってもんじゃねえ!ヒット&ウェイで、奴がビームを乱射できないようにするんだ!』

「…了解です!」

 映画で見たガイガンの特徴を憶えていた百田の指示を受け、キーボは接近しては攻撃してすぐさま距離を取り、マガイガンの光線を紙一重で躱しながら攻撃を続ける。

 

 

「よし、このまま攻撃を続ければ……?」

 確実にマガイガンを追い詰めているという確信を持ったキーボであったが、ふとマガイガンのやってきた方向に目を向け…そこで『あるもの』を見つけた。

 

「アレは…百田君!!」

『ん?』

 自分が見たものをキーボが通信先の百田に伝えた…直後

 

 

『…ギュオワァァァァァ!!』

 行く手を阻む宿物と蠅のように飛び交いチクチクと攻撃してくるキーボへの苛立ちが頂点に達したマガイガンの咆哮が轟き、それに呼応するように頭の『マガクリスタル』が輝く。…それはすなわち、魔王獣が自らの『固有の能力』を解き放つサインであった。

 

「う、うるせぇ…ッ!なんなんだ急に…」

「…!み、皆…ヤツが…!」

 けたたましい鳴き声に耳を塞いでいると、マガイガンから『緑色の波動』が迸った。

 

ゴゥンッ!!

「どわッ!?…って、アレ?」

「あれ、なんともない…もしかしてこけおどし?」

 波動をもろに喰らったものの特に変わった様子のないことに首を傾げる一同。…しかし、その考えはすぐに否定されることになる。

 

『…う、うわぁぁぁぁぁ!?』

「ど、どうしたキーボ!?」

『か、体の制御が…コントロールが効かない!?これは…奴に『吸い寄せられて』いますッ!』

「吸い寄せられている…!?」

 ふと見上げると、確かに全力で離れようとしているキーボとは裏腹に、その身体はマガイガンの方へと引き寄せられていた。そして、異変はそれだけではなかった。

 

ゴゴゴゴゴゴ…!

ポロッ…

「…え?あ…わ、私のメガネ!!」

「ぼ、僕のパソコンが…!」

『うぎゃああああ…!す、吸い寄せられまちゅ…』

「…ッ!」

「み、見ろ!パソコンとかだけじゃねえ…あちこちの鉄骨や自動車まで奴に引き寄せられているぞ!!」

 逆蔵の言うとおり、パソコンのような電子機器のみならず、瓦礫の中の鉄骨や鉄筋、果てはメガネのような小物に至るまで…ありとあらゆる『金属』がマガイガンを中心に渦のように吸い寄せられていく。

 

『ギャオオオオオオ!!』

「…これが、奴の魔王獣としての能力か!この現象の原因はおそらく、さっき奴が放った波動…強力な『磁場』によるものだ!さしずめ奴は『鉄ノ魔王獣』…奴は周囲の金属を引き寄せて攻撃や防御に利用することができるんだ!!」

「な、なんじゃとぉ!?」

「…あれ?夢野さん…いつのまにそんなに『背が高く』なったんですか?」

「んあ?お主何を言って…」

 『苗木』の推測に驚いた夢野であったが、ふと隣にいた茶柱にそんなことを言われて振り向き…気づく。

 

「…んあ?どうして転子と『目線が同じ』なのじゃ?転子、お主縮んだのか?」

「アハハー!違うよ秘密子!転子が縮んだんじゃなくて、秘密子が『浮いてる』んだよー!」

「んあー…?いやいやアンジーよ、そんなワケ…」

 と、半信半疑で目線を下に落とし…自分の足が『地についていない』ことを理解した時、夢野は重ねて驚いた。

 

「…んああああああッ!?ど、どうしてウチが浮いとるんじゃ!?」

「おー、すごいじゃん夢野ちゃん!いつのまにそんなマジックなんて憶えたのさ?」

「ウチのはマジックじゃなくて魔法じゃ!…というより、お主も浮いておるぞ王馬!」

「へ?…あ、マジだ」

「リアクション薄ッ!…って、私も浮いてる~!?」

 夢野や王馬だけではない、その場にいる全員が…体格の大きな大神やゴズ、ゴン太ですらも次々と浮き上がり、徐々にマガイガンの方へと吸い寄せられていく。

 

「まさか…奴の磁力は、『体内の鉄分』ですらも…しかも身体を丸ごと引き寄せる程に強力なのか!?これじゃあ…この地球上で奴から逃れるすべは無い…ッ!」

「か、会長―ッ!!」

「クソッ…皆、これに捕まるんだッ!!」

 

ドドドドドッ!!

 『苗木』は自身も引き寄せられながらも『G・E・R』の能力を使い、引き寄せられる皆とマガイガンの間に『壁』を作る様に巨大な樹木を何本も生やす。生み出したのは世界一巨大な樹木である『メタセコイア』に世界一重い樹木である『リグナムバイタ』の遺伝子を掛け合わせた『苗木』オリジナルの植物で、皆はそれの枝につかまったり幹にしがみつくことでどうにかその場で踏ん張る。樹木に含まれる鉄分はそう多くは無いため、その重量もあってか木々の壁はそう簡単に引き込まれずにいた。

 

「くッ…お前たち、無事か!?」

「な、なんとかね~…」

「…待って、響子ちゃんが!」

 朝日奈が指差した先には、木の枝の先端に片腕だけでどうにか捕まって堪える霧切がいた。どうやら彼女が一番強い影響を受けていたらしく、皆と比べてかなり吸い寄せられたところでなんとか枝を掴むことができたようであった。

 

「き、霧切さんッ!」

「…ッ、大丈夫…!このくらい、自分でなんとか…」

「言ってる場合じゃねえだろ!クソッ…待ってろ、今助けに…!」

 霧切の危機に黄桜が普段見せない焦りの表情を浮かべて助けに行こうとした、その時…

 

ビビ、ビ…!

「…ッ!」

ビリィッ!!

 

 …ああ、なんという不運!ガタが来ていたのか、それとも吸い込まれる砂利や鉄くずが引っ掛けたのか…枝を掴んでいた霧切の手袋が破れ、一瞬掴む力が緩んだことで霧切は枝を手放してしまい、マガイガンへと吸い込まれていく。

 

「ああッ!!」

「き、響子ちゃ…」

 

 

「…霧切さぁんッ!!」

 皆がその事実に気づくよりも迅く、苗木誠の身体は動いていた。彼女の名を叫ぶと共に自ら支柱を手放し、吸い込まれる勢いを利用して幹を駆けあがるとその勢いで枝先から霧切目掛けて跳び出した。

 

「苗木ッ!?」

「あの馬鹿…何やっている!?自殺行為だぞ!死体が増えるだけだというのが分からんのかッ!!」

「苗木っち!無茶だべ!」

 朝日奈、十神、葉隠は苗木のその行為に驚き…しかし心のどこかで『苗木ならやりかねない』という予想が的中したことに悪態を吐くが、そんな声など知ったことではない苗木は霧切の傍へと近づいて行く。

 

「霧切さん!」

「苗木君…!?貴方、何をやっているの!自分が何をしているのか分かってるの!?」

「…分かってるさ。僕なんかが来ても、どうにもならない…。僕じゃ君を助けられないかもしれない…無駄な努力かもしれないって…!」

「だったら、どうして…」

「でもッ!それでも…僕は君を見殺しになんかできないッ!!僕はもう、ただ見ているだけでいたくないんだッ!!あの時霧切さんが助けてくれたように、今度は僕が君を助ける!何もできないかもしれない、何の意味もないかもしれない…でも、今はッ…!僕は、君だけを守りたいッ!!」

「苗木、君…」

「うおおおおおおッ!!」

 自らを燃やし尽くす様な雄叫びを上げながら、精一杯に伸ばした苗木の手は…

 

 

…ガシッ!

 霧切の手袋が破けた手を、確かに掴んだ。

 

「届いた…ッ!もうこの手を、離すもんかッ!」

「…本当に、馬鹿ね…貴方は。普段は頼りない癖に、こういう時にはとんでもないことをするんだから」

「…あ、はは…」

「…でも、そんな貴方だから信じられる。そんな貴方を信じれたから、私はここまで戦うことができた。…私は、貴方に出会えてよかったわ」

「霧切さん…」

 

『…キュィィィィィッ!!』

「…ッ!ふ、二人とも!危ないですッ!!」

「「ッ!」」

 キーボの悲鳴に顔を上げると、既に目前にまで近づいていたマガイガンがその手の鎌を振り上げ、今にも苗木と霧切目掛け振り下ろそうとしていた。

 

「…無粋な怪獣ね。最期くらい水を差さないでほしかったわ」

「クソッ…!せめて、霧切さんだけでも…」

「…苗木君。最期に一つ、言っておきたいことがあるの。…私は、きっと貴方の事が…」

 

 

 

 

 

 

「悪いけれど霧切さん、その続きは『後』にして貰うよ」

「「「ッ!!?」」」

 突如苗木達の背後から聞こえた声に振り返ると、そこには何時の間にか『苗木』が居た。

 

「せ、先輩!?どうやってここまで!?」

「そっちの僕と一緒さ。あそこの木を駆けあがって、枝からジャンプして…違うのは、最後にスタンドパワーで跳んだからここまで追いつけたんだよ」

「ど、どうして君まで…?」

「…見せて貰ったよ、君の想い。そして改めてハッキリした。君も霧切さんも、この世界に『必要』な存在だ。そんな君たちをこんなところで死なせるわけには…いかないッ!!」

 

『ギャオオオオッ!!』

 一人増えたことなどお構いなしに、マガイガンの鎌が苗木達目掛け振り下ろされた。

 

「二人とも、僕に掴まれッ!」

「何を…」

「…『ベリアルさん』!!」

 二人を強引に手元に引き寄せると、『苗木』は腰のホルダーから『ウルトラマンベリアル』のフュージョンカードを取り出し、ベリアルの名を叫びそれを右手で握りこむ。

 

 

…ズォォォォォォオ…ッ!

「WRYYYYYYYYYYッ!!」

 すると、ベリアルのカードから黒い光…否、『闇』が噴き出し、それが『苗木』の右半身に纏わりつく。そして『苗木』が右腕を掲げて獣のような雄叫びを上げると、右目の瞳が金色からベリアルと同じ『赤橙色』に輝き、右手を覆う闇はまるでベリアルのような巨大な『鉤爪』の形を成す。

 

「なッ…!?貴方、それは一体…」

「話は後だッ!…無駄ァァァァァッ!!」

『キュィィィィィィッ!!』

 振り下ろされた鎌に、『苗木』は闇の鉤爪を力の限り叩きつけた。

 

ガコォォンッ!!

『…イィィィィ!!』

 衝突した二つの刃は銅鑼のような音を立て、しかし僅かに力勝ちしたマガイガンの鎌が鉤爪を押し返した。

 

「だ、駄目か…ッ!」

「…いいや、『計算通り』!…狛枝さん、今だッ!!」

「え…?」

 

「…待ちかねたよ。『キラークイーン』…第一の爆弾ッ!」

 

カチッ…

 

ボゴォォンッ!

『キュィア!?』

 弾き返した『苗木』に追撃をかけようとしたマガイガンの頭上、マガクリスタルのすぐ近くで突然『爆発』が生じた。その正体は、マガイガンの吸い寄せられた瓦礫に混ざっていた『キラークイーン』の能力で作られた『爆弾』であった。狛枝はマガイガンの能力を把握すると同時に、手近な鉄骨を『キラークイーン』で爆弾に変えて瓦礫に混ぜてマガイガンの元に送りこんでいたのだ。それを事前に聞いていた『苗木』は、攻撃が弾かれたこのタイミングを狙ってそれを起爆させたのである。

 至近距離での爆発を喰らったマガイガンは目に見えたダメージこそ殆ど無いものの、弱点であるマガクリスタルへの攻撃により一瞬機能が停止してしまい、それにより磁場が一時的に『消失』した。…それが『苗木』の狙いであった。

 

「くッ…!」

「わああッ!?」

「きゃあ…ッ!」

「せ、先輩ッ!」

 引き寄せる力が消えたことで『苗木』たちは先の攻撃の反動をもろに受け、物凄い勢いで地面に目掛け吹っ飛んでいく。磁場から解放されたキーボがジェットを噴かして追いかけるが、間に合いそうにない。このままでは地面に叩きつけられるのは自明の理である。しかし、『苗木』に抜かりはなかった。

 

「七海さん…!」

「分かってるよ…『ハイエロファント』!」

『承った!『エメラルド・ネット』!!』

 七海の指示を受けた『ハイエロファント・グリーン』は自身の身体を紐状に解き、周囲の瓦礫やビルに巻きつけるようにしてそれを張り巡らせ…やがて、苗木達の落ちてくる場所に、『ハイエロファント』の身体でできた蜘蛛の巣のような『ネット』が完成する。

 

ボスゥゥゥンッ…!

 背後に展開した『G・E・R』で衝撃を緩和しながら、3人は『エメラルド・ネット』の上に落下し、かろうじて無傷で助かったのであった。

 

「うわぁッ!?」

「ッとぉ…なんとか助かったか。七海さん、ありがとうございます」

「どういたしまして」

「響子ちゃん!大丈夫か!?」

「…黄桜さん?…ええ、なんとかね」

「苗木っち無茶し過ぎだべよ…」

「うん…でも、霧切さんが無事で良かった」

「…苗木君の癖に、生意気よ。…ありがとう」

 

 

『ギュワァァァァァ!!』

「!」

 苗木達が無事だったことにホッとしたのも束の間、奇襲による動揺から立ち直ったマガイガンは怒りの咆哮を上げて進撃を再開しようとする。

 

「や、やべー…アイツマジギレしてんぞ!」

「どーすんのさ!?キーボもダメだったし、おにいたちもまだだし…」

「…万事休すか」

 

「……」

 迫りくるマガイガンを前に、『苗木』は腰に手をかけながら…しかして時折周囲を気にしながら未だ『決断』をしかねていた。

 

「…誠君」

「響子…」

 そんな『苗木』の肩に手を置きながら『霧切』が声をかける。

 

「…行ってきなさい。それが、貴方が今やるべきことなのでしょう?」

「…ッ!響子…気づいていたのか?」

「気づくも何も…きっと皆も、同じことを考えていた筈よ」

「え…?」

 ふと周りを見渡すと、未来機関の面々とゴン太や西園寺、ソニアといった『お約束』を知らない組を除いた全員が、『霧切』と同じ目で『苗木』を見ていた。

 

「…もしかして、皆も分かってたの?」

「分かってたっつーか、なんつーか…お前なら納得だ、って思っただけだよ」

「と言うより…あのタイミングで貴様が現れた以上、その可能性を考えるのは当然だろう」

「ま、『お約束通りの展開』なら、苗木先輩が一番妥当だって思ったからね。にしし!」

「皆…」

 桑田や十神、王馬の言葉に一様に頷く。

 

「ど、どうでもいいから…さっさとあんなバケモノブッ飛ばしてきなさいよ!アンタなら、できるんでしょ?」

「ん~…この絶望的展開は嫌いじゃあないんだけど、いまいち釈然としないものがあってね…。それが解決するまでは、死ぬに死にきれないんだよね。…だから苗木、いつものアンタらしくこんな絶望払ってみせなよ…!」

「…信じてますから。誠君が、必ず勝って…帰って来るって、信じてますから!だから…負けないで」

「…ああ!」

 舞園の言葉に力強く頷き、その一瞬を見届けようとする視線と、今のやり取りの意味を把握しきれない視線を背に、苗木は腰の『オーブリング』を手に取る。

 

「この学園は、僕が守る!!」

 苗木がオーブリングを掲げると、リングから光が迸った。

 

 

 

 

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「光の力…お借りします!」

 

『フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン!』

 

 

 

 

「…う、ん…?」

 光が治まった後、そこに『苗木誠』の姿は無かった。…代わりにそこに立っていたのは、自分達に大きな影を落とす『巨大な存在』。

 

「これは…ッ!?」

 

 スラリとしたフォルムに、赤、黒、紫、銀を主体としたカラーリング。肩から胸にかけて銀の縁取りがされた金色のプロテクターを身に着けたその姿は『ティガ』を髣髴とさせるが、その胸の『円状のカラータイマー』がその真の名を示していた。

 

 

 その名はオーブ。ウルトラマンオーブ、スペシウムゼぺリオン。『苗木誠』のもう一つの姿、遥か彼方『O-50星』に語り継がれる伝説の戦士。そのオーブが誇り高き光の国の戦士である『ウルトラマン』と、かつて一度は闇に染まったが、人の心に触れ光の巨人となった『ウルトラマンティガ』の力を借りた姿である。

 

 

『僕の名はオーブ!闇を照らして、悪を撃つ!』

 今再び、オーブと魔王獣の戦いが幕を開けた。

 




ウルトラダンガンナビ!…という名の解説

今回はマガイガンの能力とキーボのパワーアップについて


マガ磁力…マガイガンの魔王獣としての能力で、「強力な磁場を創り出し、周囲のあらゆるものを吸い込む」ことができる。いうなれば、超強力な「メタリカ」である。かつてマガイガンが降り立った地では、周囲一帯の建造物から岩盤、水、生物に至るまでのあらゆるものが空に巻き上げられ、マガイガンが去った後は更地と瓦礫の山しか残らないほどであった。
ただしこの能力には欠点があり、それが能力発動中はマガイガンは「その場から動けない」というものである。なのでマガイガンが戦闘中にこの能力を使うことは殆どない。


改造キーボ…もともと希望ヶ峰学園は、キーボの入学に際して開発者である「飯田橋博士」から万が一の事態に備えて用意していた「戦闘用シルエット」を預かっていた(原作V3にて才囚学園を破壊した時のあの武装である)。普段は使用を禁じられていたが、今回の事態を受け学園長が特例で使用を許可し、それを入間、左右田、不二咲によって「対怪獣仕様」にパワーアップしたのが今作のキーボである。
元々改造前でも現行兵器を超える性能であったが、パワーアップにより相手からの反撃さえ考慮しなければタイマンで怪獣を撃退、撃破することが可能である。性能でいえば科学特捜隊のジェットビートル程度のスペックがある。
今回こそ相性が悪いために倒せなかったが、今後も活躍の期待は大いにある…だろう?

次回はオーブとマガイガンとの戦いです。そして皆さんお待ちかね、あの宇宙一うるさいウルトラマンも登場です。
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