「ぜぇ…ぜぇ…」
「はぁ…はぁ…」
「つ、疲れた…」
「はい、今日はここまでね。皆ここ数ヵ月で凄い成長ね。お姉さん嬉しいわ」
「「「あ…ありがとう…ございました…」」」
楯無が仲間に加わってから数ヵ月が経ち、海、七海、簪の三人は週に一度の楯無との稽古に励んでいた。トロポスとの戦いを続ける中で新たなアイテムの開発を進めていた海と七海に対し、楯無はまずは自力を上げることが大事だと教え、こうして時間を見つけてはIS学園からアジトまでやってきて稽古をつけてくれていた。なお、七海と簪はISの操縦訓練と生身の稽古を行い、海は楯無との実践を想定した生身の戦闘訓練を行っていた。戦いにはそれなりの経験があった海ですら暗部の当主である楯無には敵わず、現在もこうして打ち負かされていた。
「簪ちゃんと七海ちゃんはISの操縦にもかなり上達したし、海くんにも私が教えてあげれることは全部叩き込んだわ。なんとか一月までには間に合ったわね」
「楯無さん強すぎる…」
「お姉ちゃん容赦なさすぎ…」
「二人はまだマシだろ…。俺なんて夏のときから"私を倒してみなさい"って言われて…」
「あら?そう言いつつも今日は私の70%本気と戦えたじゃない。確実に強くなっているわ。でもまだまだね」
「そりゃどうも…」
あれでまだ70%かよと思いつつも楯無の額にも少しだけ汗が流れていた。海たちが息を切らしながらトレーニングルームの床に倒れているとドアが開き二人の女性が入ってくる。
「皆さんお疲れさまでした。お嬢の言うとおり確実に実力は上がっていますよ」
「皆お疲れだ~。これ差し入れだよ~」
「あら虚ちゃんに本音ちゃん。わざわざありがとね」
入ってきた女性の内一人は海や七海、簪の友人の布仏本音であり、もう一人の眼鏡をかけた女性は本音の姉の虚である。二人とも更識に仕える家系であり、本音は簪の。虚は楯無のメイドとして仕えているのだ。ちなみに何故アジトに居るのかというと楯無が二人をスカウトしたからである。その事を聴いた海たち三人はもう反対したが本音が海の正体を知っていたことから渋々納得し、海たちのアイテムのメンテナンスとして仲間に加えたのである。姉である虚も同じ理由である。
「それで虚ちゃん。何かトロポスについて情報は入ったの?」
「いえ、ここ最近はそれらしい情報がありませんね」
「そう…。本音ちゃんはどう?」
「えーっとねぇ~。最近海外でスーパーヒーローが現れたって話なら聴いたよ~」
「スーパーヒーロー?」
「これこれ~」
そう言って本音が取り出したスマホを見ると、そこには"正義の味方?謎の
「これって羊のトロポス?」
「それにこの戦っている
「…クロスドライバーシステムのライダーだ」
海の言葉にその場に居た全員は驚愕を露にする。だが海は冷静な表情のまま言葉を続けた。
「今までおかしいと思っていたんだよ。ISは世界中に存在するならトロポスだって世界中に居てもおかしくはない。だが、海外にも俺以外にクロスドライバーを持つ者が居たら納得できる」
「でも画像は荒いし、動画も遠くだから判別するのは難しいんじゃないの?他国がリミットを真似して造ったISかもしれないし」
楯無の言葉に海はトレーニングルームから出て、他の皆も後を追うように部屋を出る。そして海はコアを作っているモニターを操作した。
「急にモニターを操作してどうしたの?」
「前に七海がシールドのコアを造る案を出していたから、データが余っていたし造ろうとしたんだよ」
「あーそう言えば言ってたねぇ」
「それで造ろうとした結果が…」
海がエンターを叩くと画面にはERRORと表示された。
「エラー?データが足りなかったとかじゃないの?」
「俺もそのときは納得したんだよ。でもエラーはデータが足りない以外に、"同じものを造る"ときにも発生するんだよ」
「同じものってまさか!」
七海の言葉で全員が本音のスマホの動画を再び見る。そこには遠くだが右腕に茶色の盾を装備し、左腕には茶色の動物の頭部のような肩にアーマーがあり、同じ色のクローが装備されていた。
「遠くだけど盾を持ってるね…」
「それに左腕には動物…」
「武器の右腕に動物の左腕…」
「それに腰には見えにくいですがクロスドライバーと同じ色の帯が…」
「リミットと一致してるねぇ~」
五人の女子たちは納得した表情を浮かべる。
「ここまで判断材料が揃っているならほぼ確定だ。楯無さん、虚さん。忙しい所申し訳ないのですが、この動画の
「ええ、任せて頂戴。ただ、時間はかかるわよ?」
「構いません」
「わかったわ。それじゃあ私と虚ちゃんは先に帰るわね。…美少女が居るからって獣になっちゃダメよ♥」
「なりませんから!と言うより簪に手を出したら楯無さんにボコボコにされますよ!」
「あら?私は簪ちゃんだなんて一言も言ってないわよ?」
「なっ!た~て~な~し~さ~ん!!!」
海が顔を赤くして拳を震わせると簪が眼鏡をキラリと光らせ楯無の肩を掴む。
「お姉ちゃん…?あまり海を困らせないで」
「あ、あはは…。冗談よ冗談。だからそんなに怖い顔しないで!?」
「さぁお嬢様。帰りますよ」
「ああ!ここに救う神が!」
「簪様、お嬢様は後で私がキツ~く言っておきますから」
「悪魔だったぁぁぁぁぁぁぁ…」
そのまま楯無はズルズルと虚に引きずられながらアジトのエレベーターに乗り、地上へと向かった。
「ごめんね、お姉ちゃんが変なことに言って…」
「いや、大丈夫だ…」
「兄ちゃんのスケベ!」
「だからしないって!」
海と七見がまた騒いでいると海の携帯が鳴り電話に出る。
「烏丸さんから?もしもし?」
『やぁ君がリミットだね』
しかし電話からは烏丸の声ではなく少年のような声が聴こえてきた。海はその声に顔をしかめる。
「お前は誰だ」
『それは後で教えるよ。今から送る場所に一人で来てくれるかな?来なかったらわかるよね?』
「…わかった」
海は電話を切るとドライバーを持ちエレベーターのドアを開けた。
「どうしたの兄ちゃん?」
「…烏丸さんが拐われた。恐らく俺を狙った人物の仕業だ」
「それなら!」
「向こうは俺を指名してきた。絶対助けてくる」
そう言って海はエレベーターに乗って外へ向かった。
◇
海が呼び出された場所は使われなくなった廃工場であり、海はドライバーを巻き付け辺りを警戒する。
「約束通り俺一人で来たぞ!姿を見せろ!」
海がそう言うと風が吹き荒れ、頭に帽子を被り、緑色のシャツを着た緑色の髪をした少年が姿を現した。
「お前が電話の相手か」
「そうだよ。来てくれてありがとうね」
「それより烏丸さんはどこだ!」
「大丈夫だよ。彼女は別のところで気持ちよく眠っているよ。まぁ僕の友達が見張っているけどさ」
少年が指をパチンと鳴らすと風のモニターが現れそこには2体のトロポス監視されている烏丸が居た。
「烏丸さん!」
「大丈夫だって。君が僕のお願いを聴いてくれたら彼女は解放するよ」
「お願いだと?」
「そう」
少年がポケットから緑色の風の形をした機械を取りだす。そして眼が緑色に光ると少年の体を突風が包み込み怪人の姿に変わった。
『僕と戦ってもらうことさ』
「トロポスか!」
『正解!僕の名前はシルフ』
「シルフ…。お前もウンディーネと同じ
『またしても正解!で、どうする?戦う?』
「言われるまでもない!お前を倒して烏丸さんを助ける!」
《スタンバイ コア!》
《リミットライダーコア!》
「変身!」
《クロスアップ!ソード!ライノス!リミット ナイト!》
海はリミット ナイトシフトに変身する。
『お前のリミット、見せてもらうぜ!』
『いくよ!』
シルフは風を纏って突撃するが、直線的な動きのため海はライノスシールドでガードし、カウンターを狙おうとした。しかしシルフが指を動かすと下から風が吹き荒れ左手に持っていたライノスシールドを吹き飛ばす。そしてがら空きになった海の胸にめがけて突撃し吹き飛ばした。
『いてて…。ただの突撃バカじゃないってことか』
『ふふーん!僕は普通のトロポスとは違うからね。特性も熟知しているよ』
『意志があるってのが厄介な所だな…』
『それにしても意外だねぇ。あの攻撃で僕の肩にダメージを与えるなんてさ』
そう言ってシルフが肩を見るとそこには5㎝ほどの切り傷がつけられていた。
『普通人間って自分を守るはずなのに、君はあえて持っていた剣をガードに使わず攻撃に使った』
『相手が接近したときほどチャンスはないからな。こいつの固さを信じてあえてカウンターをさせてもらったよ』
『ふふふ。君面白いね!』
シルフが手を広げると風が集まり一つの鎌になり降り下ろしてくるが、海は咄嗟に避けて地面に転がっていたライノスシールドを回収し、ブーメランのように投げつけた。そしてドライバーを操作してソードSコアからウィップSコアへと変更する。
『アームチェンジ!』
《クロスアップ!ウィップ!ライノス!リミット パッチワーク!》
シルフがライノスシールドをかわすとすかさずクロスウィップでシルフを縛る。しかしシルフは風となりクロスウィップから抜け出し、鎌鼬となり海を襲う。
『ぐっ!このやろっ!』
《ウィップアタック!》
海はベルトを操作してクロスウィップを振り回し鎌鼬を全て弾いた。そして弾かれた鎌鼬が集まりシルフの姿に戻る。
『あれを全部弾くなんて凄いね!』
『自慢の師匠に鍛えてもらってるからな!』
『でもこれで終わりだよ!』
今度は竜巻に変わり海を包み込んだ。
『動けねぇ…!』
海が拘束を振りほどこうとしてもまるで竜巻の中にいるかのように思うように動けずかなりの高さまで連れてこられる。
『バイバイ!』
そのまま竜巻は地面へと急降下し地面を揺らした。そして地面には海が倒れ伏せ、シルフはその姿を見て海に背を向ける。
『あーあ。熱くなりすぎちゃった…。せっかく楽しかったのになぁ』
『…待てよ』
『!?』
突然後ろから海の声が聴こえ慌てて振り替えると、ライノスシールドが飛んできてシルフを吹き飛ばした。
『う、うそ…』
『危なかったぜ。数ヶ月前の俺だったら負けていただろうな』
だがその姿は危なく、片足がふらついていた。
『ふ、ふふふふ…。やっぱり君は最高だよ!でもそんな足で僕を倒せるの?』
『倒せるさ』
『え?』
《スタンバイコア!》
海はドライバーを開き、ホルダーショットのトリガーを押し、中から暗めの茶色の二つのコアを取りだしドライバーのコアを入れ換える。そしてそのままドライバーを閉じた。
『アームチェンジ!』
《クロスアップ!ガン!イーグル!リミット ガンマン!》
両腕が暗めの茶色に変化し、左肩に鷲の頭、指先には鷹の鋭い爪を持つ左腕には変わり、右肩にはポンチョのような布が垂れ、右手には独特な形をした大きめのハンドガン"クロスガン"が握られた。そして最後に背中の機械の羽が鷲をイメージした巨大な翼に変わった。
『新しい姿!?』
『ガンマンシフト…。さぁ、今度はこっちの番だ!』
海は翼を広げて空からクロスガンの弾丸を浴びせる。
『ぐっ!でもこんな弾丸ISで慣れてるよ!』
シルフは突風を操り弾丸の軌道を海へと向ける。しかし海は仮面の中ではニヤリと笑う。
『そいつはどうかな?』
『何?』
《イーグルアタック!》
海がドライバーを操作すると弾丸が鷲へと姿を変え、突風に乗り旋回してシルフに突撃した。
『じ、自由に動く弾丸なんて聴いたことないよ!』
『まだまだ弾はあるぜ!』
『くっ!こうなったら!』
シルフは再び竜巻に変わり海を拘束しようとしたが、海は背中の翼を広げて竜巻の気流に乗り、一瞬の隙間を発見して脱出した。
『あれを抜け出せるなんてね…。でも今の僕は竜巻の姿!どんなに撃ってこようと当たらないよ!』
『だったらその竜巻ごと飲み込めばいい』
海はドライバーからリミットライダーコアを外し、クロスガンの窪みに挿して捻る。
《リミットチャージ!》
『はぁぁぁぁ…』
《リミットバレット!》
そしてトリガーに手をかけ一発の弾丸を放つ。それはどんどんと大きくなり最後には巨大な鷲の頭へと変化した。
『な、なにこれ!?』
危険を察知したシルフは逃げようとするが、巨大な鷲の頭から逃れられずそのまま食べられ爆発した。その光景を見終えた海は地面には降りるが足に力が入らずしりもちをついた。
『いてて…。楯無さんの言うとおりまだまだだなぁ…』
「君ってとても面白にねぇ!」
『っ!』
シルフから愉快な声が聴こえ、まさか今の一撃が効いていなかったのか思い焦ったが、シルフは少年の姿に戻っており、所々傷だらけで服もボロボロになっていた。
「僕君のこと気に入っちゃったよ!僕も強くなってまた遊びに来るよ!今度は人質なんて使わないで正面からね」
ニヤリと笑ったシルフはそのまま風と共に姿を消した。
『早く烏丸さんを助けないと…!』
『その必要はありませんよ』
海が翼を広げて飛ぼうとしたとき正面からコツコツとブーツを鳴らして何者かが歩いてくる。その姿は左腕には茶色の犬の顔の形をした肩アーマーとクローを持ち、右腕には同じ茶色のシールドを装備しており、胴体はまるで執事服のようなデザインの装甲を持った
『あのトロポスが拐った女性は私が保護し、あなた様の仲間に預けましたよ』
『あんたはいったい…』
海は少し警戒しながら目の前の
「私の名前は
これが海と誠也の出会いであり、この出会いが海の物語を加速させる。
さて、二号ライダーが出たところでこの話はここで完結です!
いや、打ち切りじゃないよ?
次回からは仮面ライダーリミットとして数ヶ月後の高校生になった海の話が始まります!
もちろん募集はまだ終わってませんし、じゃんじゃんアイデア募集してます!
※二号ライダーの名前を少しだけ変えました。
すみません。