土の竜と幼女
4月の暖かい春の日差しを浴びながら、高校生になった海は窓際の席で外の景色をぼんやりと眺めていた。
「相変わらずぼんやりと外を眺めてるな」
「
海に声をかけた少年は、雪のように白い肌を持ち、透き通るような白髪と、まるで汚れのない純白の瞳を持つ少年。
「あんまりこっち寄らない方がいいぞ?お前アルビノで紫外線弱いんだからさ」
「悪いな、心配してくれて。ほんと、海はいつでも優しいな。俺の体がアルビノって知ったときは翌日に日傘くれたし。高校も一緒で助かったよ」
「まぁ、クラスのやつらもお前のこと受け入れてくれているし、よかったよ」
「まぁな。あ!ところでこの記事見てくれよ!」
そう言って明は懐からスマホを取り出して海にあるネットの記事を見せる。そこにはトロポスと戦っているリミットの画像がいくつもあった。
「ああ、ネットで話題の
「ここ最近よく出現するって話だ。俺も一度は会ってみたいぜ」
「謎の敵と戦っている時点で危険だろ」
「確かにな。でも男としてこう、くすぐられる何かがあるだろ?」
二人が談笑していると休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、教師が入ってきたことにより明は自分の席へと戻っていった。そしてその日の放課後、海は明と一緒に帰り道を歩いていたが、海のサーチボードからアラームが鳴り響きトロポスの出現を察知した海は明に用事が出来たと伝えてトロポスの出現した場所へと向かった。そこは楯無と出会った場所。IS学園であった。
◇
一方IS学園では突如現れた土竜のトロポス"モールトロポス"に生徒たちはパニックに陥っていた。
「皆、こっちよ!」
「はやくはやくー!」
楯無と本音は教師と共に生徒たちを避難させていたが、その中の一人が足を引っ掻けて転んでしまった。そしてモールトロポスがその女子生徒に近づいたとき、後頭部に衝撃が走りモールトロポスは地面を転がった。
「ふぅ、危ない危ない。大丈夫?」
「あ、うん。ありがと」
「さぁ、早く逃げて」
モールトロポスを蹴り飛ばした七海は転んだ女子生徒の手を引いて立ち上がらせると逃げるように言い、そのまま女子生徒は去っていった。
「さてと。兄ちゃんが来るって言ってたけど、その前に片付けるか」
そう言って七海は腕に装着しているクロスブレスを構えて、カバーを開きスワローTコアをセットし、カバーを閉じる。
《スワロー!》
「展開!」
《トロポスアップ!》
真ん中のひし形を回転させスワローTコアを左側に持ってくると音が鳴り、七海の体を藍黒い装甲が包み込み、左腕にはツバメの頭部の形状をした肩アーマーが装着され、腕にはツバメの翼のようなブレードが装着される。そして最後に同じ藍黒い仮面が七海の顔を包み込んだ。
『行くよ!』
七海は足のブースターで浮遊し、モールトロポスを掴むとそのまま開けた場所に放り投げた。モールトロポスが地面に着地すると七海は超低空飛行でモールトロポスの懐に入り込むとそのまま右手の拳でアッパーを喰らわせ、そして浮かび上がった体にミドルキックを叩き込む。モールトロポスは起き上がると七海を睨み付けながら口を開いた。
『いきなり何するの!?』
『はあ?あなたが人を襲ったからでしょ?』
『襲ってないよ!ただ、地面をのんびり掘っていたらあの場所に出てきて、女の子が倒れたから怪我してないか近づいただけだよ!』
確かによく見るとモールトロポスからは殺気を感じず、むしろ穏やかな気配が感じられるほどだった。
『あー…。ごめん…。でも不思議だよ。トロポスに変化した人は狂暴な性格を露にするのに』
『そうなんだ?でも僕は特になんともないよ。でも人の姿に戻れないのは残念だったな…』
モールトロポスがショックで肩を落としている様子を見て、不思議なことがあるのだなぁと七海は思いながら、もしかしたら今後こういうトロポスが出現するのではないかと思い、協力を持ちかけようと変身を解除して自分に敵意がないことを伝える。
「ねぇ、もしよかったらあたしたちに協力してくれない?」
『協力?蹴り飛ばしておいて?』
「それは本当にごめん…。でも今のあたしは丸腰。敵意はないでしょ?それにあなたを人間に戻せる方法もあるし」
『ほんと!?』
「うん!それで協力について…」
「天地さんから離れろぉぉぉぉぉぉぉ!」
七海が協力の内容を言おうとしたとき、空から声が聴こえ振り返ると白いISに乗った少年が持っていた刀でモールトロポスを切りつけた。
「大丈夫か、天地さん!」
モールトロポスを切りつけた少年"織斑一夏"は世界で唯一ISを動かせる男。つまり男性操縦者なのだ。彼は高校受験の時道に迷い偶然あったISに触れて動かしてしまったのだ。その後世界各国で男性によるIS適性検査を行ったが、彼以外には動かせる者が居なかった。こうして彼は各国の刺客から保護するためこうして女子しか居ないIS学園に通うことになったのだ。そして彼は専用機を持ち、七海の所属する一年一組のクラス代表でもある。その経緯についてはまたの機会に語ろう。
で、その織斑一夏は自身の専用機"白式"に装備された唯一の武器"雪片弐型"を奮いモールトロポスを吹き飛ばしたのだ。
「ちょっと織斑!何しているの!?」
「何って、助けたのにその言い方はないだろ?」
「今あたしは彼との話をしていたのよ!」
「はぁ!?あんな化け物とか?」
化け物と言う言葉に七海はカチンと頭にきて言い返そうとしたが、ガラガラと音を立てながら瓦礫からモールトロポスが現れた。
『いてて…』
「まだ生きていたか!喰らえ!」
「ちょっと待ってよ!」
一夏は七海の制止を聴かずモールトロポスに再び剣を振り上げ切りつける。
『ぐぅぅぅ!いきなりないするんだよ!』
「ぐあ!」
「(不味い!あのままじゃ!)」
実はIS並びに通常兵器でトロポスを倒すことは基本可能なのだ。しかしデータを抜かなければ
「やめて!」
七海は専用機"ツバメ"を展開させ左腕のブレードで雪片を止める。
「なんで止めるんだよ!」
『いいから話を聴いて!彼は!』
「総員あの化け物を撃ち殺せ!」
突如銃弾の嵐がモールトロポスを襲う。銃声の方を見るとISを纏った数名の教師がアサルトライフルを構えていた。その内の一人が七海と一夏に心配そうな顔をして近づいてきた。
「二人とも無事ですか?」
『山田先生!』
近づいてきた眼鏡の女性は七海たちの副担任である
『今すぐ攻撃を止めたください!彼は私たちに危害を加える気はないんです!』
「ええ!?」
「何言ってるんだよ天地さん!あいつは俺を攻撃してきただろ!」
『それはあんたが攻撃したから…。っ!』
ユラリと背後からとてつもない殺気を感じ、まさかと思い振り返ると。
『…』
モールトロポスの眼が真っ赤に光っていた。つまり
「う、動けない…!」
モールトロポスは鋭い爪で教師を攻撃しようとするが、その瞬間腕を捕まれた。
『女の子…?』
腕を掴んだのは10歳より低く見えそうな茶髪の幼女であり、少女はモールトロポスの顔を覗き込んだ。
「微かに…理性が…ある…。あなた…面白い…。だから…戻す」
少女がそう呟くとモールトロポスの地面から土の壁が出現し、モールトロポスを覆うとしばらくして中からモールトロポスが倒れ出てきた。どうやら眠っているようだ。
「この子は…あなたに…預けるね…。あなた…良い人…だから…」
幼女が七海に向かってニッコリと笑みを浮かべると肩に下げていたバッグから茶色の土の形をした機械を取り出す。そして眼が茶色に光ると地面から土が盛り上がり少女の体を包み込む。そして土が崩れると先程の幼女とは思えない高身長の怪人へと姿を変えた。
「あの女の子も化け物だったのかよ…」
一夏がそう言うと幼女だった怪人は一夏の腹に拳を撃ち込んだ。その衝撃はまるで岩で腹を殴られたのように一夏は腹を押さえ胃の中の物をぶちまけた。
『私は…化け物…じゃない!私は…ノーム!化け物…じゃない!』
「くっ!総員あの土竜の化け物と土の化け物を殺せ!」
『化け物…化け物…うるさい!皆…土に…帰れ!』
ノームが両腕をあげると空に浮かんでいた教師たちを地面から盛り上がった土が多い始めた。
「ちょっ!放しなさいよ!」
「いや…いや!」
『このままじゃ先生たちが死んじゃう!』
《リミットスラッシュ!》
どこからか光の刃が飛んできてノームに当たると、ノームは少しよろめきそれと同時に教師たちを飲み込もうとしていた土が崩れた。
『なんとか間に合ったな…』
『兄ちゃん遅いよ!』
『リミット…』
現れたのはリミットに変身した海であり右手にクロスソード、左腕はイーグルアームとなっていた。どうやらイーグルTコアの能力で命中率を上げて、クロスソードの斬撃を飛ばしたようだ。
『今日は…帰る…』
ノームはそう言うと七海に指をさす。
『名前は…教えて…?』
『えっ…。天地七海だけど』
『じゃあ…七海に…この土竜さん…預けるね…』
そう言ってノームは土に埋もれて姿を消した。
『とりあえずこのトロポスを連れて帰りたいが…』
海が辺りを見渡すと先程より多いISを纏った教師たちに囲まれていた。
『あー…。この数じゃ逃げれねーな…』
海は両手を上げて降参を伝えると周りの教師たちに取り押さえられた。
今回のモールトロポスはKOYA様からのアイデアです。
が、スペックや変更点はまだ出しません。
だって全然活躍させれなかったから…。
そして次回どうなる主人公!
…アンチタグつけるか