書いてて思ったのですが
やっぱりこういうのは書くのが難しいですね。
前置きはおいといて、4話目どうぞ!
昨日あの後、俺達は家に戻ってご飯を食べたが、鷹奈は特に言いふらす気はないらしく、小町に付き合うことは言わなかった。ご飯が食べ終わったあともいつも通りくつろいだ後に帰っていった
てか、色々とめんどくさいことになった。まさかクラスメイトだけに飽き足らず、バイト先の後輩、幼馴染とニセの恋人関係になるとは。まぁ幸いそれぞれの会う場所が違うから鉢合わせすることはないとは思うが、いかんせん不安が拭いきれない。今から学校に行きたくないまである。…それは何時もだな。
まあそんなこと考えながらすでに教室の前なんだが…
こんな経験初めてだから、どんな顔で星川と接したらいいかわからねぇよ。
まぁいきなり星川がアクションを起こすことは考えにくい。なら、星川が行動を起こすまでは何もしなくていいか。
そう結論づけて俺は教室の扉を開いた。
教室内にはチャイムギリギリなだけあり、殆どの生徒がいた。その中には星川もいて、クラスメイト達に囲まれていた。
「早乙女ちゃんかわいい~!」
「イメチェンしたの~?」
星川は今までのような地味な格好ではなく。メガネを外し。今まではゴムで結んでいただけだったのが今日は少しアクセサリーを付けて整えられている。制服も普通に着るのではなくおしゃれに着こなしている。
何時もと違う星川に見惚れてしまっていた。その俺の視線に気づいた星川と目が合ってしまった。
「あ、八幡、おはよ!」
そう言って星川はこちらに駆け寄ってきた。そしてあろう事か俺に抱き着いてきた
「は?ちょ、え?星川何して……」
「やだ、八幡。そんな他人行儀やめてよ。早乙女って呼ぶって約束したでしょ?」
星川が抱き着くのをやめて、首をかしげながら言ってきた。
「あ、ああ。さ……早乙女」
と軽く朱が差した顔を相手にみられないように顔をそらしながらいった。
「ふふ。八幡照れてる」
と、星川が笑ったところで周りのやつらが動きだした。
「早乙女ちゃん比企谷君と付き合ってるの!?」
「えー!?ねぇねぇ、どっちから告ったの?」
などなど、女子から質問が来た。
星川はそれに対してちゃんと答えていた。
「わ、わたしの方から。ずっと、八幡を見てて、不器用だけどさりげない優しさとか、いざという時の行動力とか……素敵な人だなって思って」
よくそんなスラスラ言えるな。勘違いしちゃうだろうが。
「おーっ!早乙女ちゃん、意外に大胆☆」
「今までは本性隠してたってわけか。早乙女ちゃんは磨けば輝く素材だと思ってたのよ」
現在進行形で星川は本性を隠しているが。一人称もわたしではなくボクのはずだし、平気で健全な男子高校生を脅すような奴だからな。
そういう意を込めて星川に視線を送る。
「ん?どうしたの八幡?」
すごい笑顔のはずなのに冷や汗が流れる。
……うん。皆相手に言えないこともあるよね。
これは戦略的撤退であり、けっして怖かったわけではない。
そんなやり取りをしている間も女子の話しは終わっていなかったようだ。
「そうそう!比企谷君ってさりげなく優しいよね!」
え?なんで俺を褒める流れになってんの?
「それに、入学式の日に犬を助けて事故にあったんだよね。普通そんな事出来ないよ」
ちょ、まじで辞めてくれ。慣れてないんだよ…
星川の名前を呼んだ時とは比べ物にならないぐらい顔が赤くなる。
「実はあたしたちちょっと心配してたんだよ。比企谷君って優しいけど、何て言うのかな、近づくなって感じのオーラを感じるんだよね。それでみんな近づき辛くなっちゃって。」
「うん。何度か遊びに誘ったりもしたけど。比企谷君バイトばっかりだったもんね。」
「たぶん比企谷君一人でできるとか考えて、彼女だけじゃなくて、友達とか作り損ねるタイプな気がするし」
「それあるー!」
何この人たち。めちゃくちゃ気に掛けてくれてるじゃん。まじで泣きそう。
「あ、ありがとう…」
「ん?なにがー?」
「いや、なんでもない」
そう言って俺は笑った。
「そうそう!そうやって笑ってればいいんだよ!」
「お、おお」
「それと、早乙女ちゃんを大事にしなきゃだめだよ」
「やっと比企谷君にできた彼女なんだからね」
「早乙女ちゃんがオシャレしてるのも比企谷君という彼氏ができたからでしょ?」
「う、うん、八幡にちゃんと私を見てもらいたいから」
「ほらー。彼氏の為に綺麗になりたいとか、健気じゃない。なかなか今どきいないよ?」
「それあるー!」
「わ、わかった」
女子たちがそんな話をしているうちに授業が始まりった。
授業はつつがなく進み昼休み
バイト先で厨房をほとんど一人でこなしているため料理はできるが、朝早起きしてまで弁当を作る気にはなれない俺は何時も購買でパンを買って屋上で一人で食べていた。ちなみに小町の分は母親が作っている。
今日もその限りではなく、立ち上がり購買に行こうとしたら星川に止められた。
「ねぇ八幡。お弁当作ってきたの。屋上で食べない?」
え?
女子の手作り弁当だと…。
「え、えっと、」
教室のあちこちからひゅーひゅーとはやす声、口笛が聞こえる。
「ダメ!せっかく比企谷君と早乙女ちゃんの愛のランチタイムなんだよっ!」
愛のランチタイムってなんだよ…
「邪魔しちゃ悪いでしょっ!さ、行って!星川さん」
ついてこようとする男子どもを女子が抑制する。
「ありがとう。恩に着るわね」
クラスメイトにお礼を言った星川は俺の手を取り走り出した。
俺は引っ張られるまま屋上に向かった。
屋上。そこはおれのベストプレイスである。ここは見晴らしはいいが、いかんせん風が強い。なので、わざわざ屋上で来る人はいない
「まぁ人目がない分、ボク達としては気楽だね」
そういいながら星川はシートを引き腰を下ろした。
「俺は一人が好きなんだが」
「ほら、そんなこと言ってないで八幡も来たら?」
星川はそう言いながらシートの空いているところをポンポンと叩いた。
いつまでもここで突っ立ってるのもつらいので催促されるままに座ることにした。しかし隣というのは難易度が高いのであえてシートの外に座った。
「……ちょっと遠くない?」
「俺のパーソナルスペースはこんなもんだ。それに他の人がいないのに、彼氏彼女っぽくふるまう必要はないだろ」
「別にクラスメイトに見せつけるために偽の恋人をを頼んだわけじゃないよ」
「そうなのか?」
「そうだよ。言ったでしょ?ボクは恋愛をしたときにどんな気持ちになるのかを知りたいんだよ。」
たしかそんなこと言ってたような
「はぁ、わかったよ」
そう言って俺は重い腰を上げ星川の隣に座った。その時、星川と俺の肘がぶつかった。
「あ……っ」
星川は小さく叫ぶと身を強張らせた。
軽く死にたくなった。
「す、すまん」
俺はそう言って、急いで距離を取った。
「ごめんね。自分から触るのは大丈夫なんだけど……こういうのはちょっとね。……あ、八幡だからってわけじゃないから、勘違いしないでね」
そういった早乙女は真剣な表情だった。
よかった。俺だからじゃないんだな。それにしても、あまりにも過敏だったな。何かトラウマでもあるのか?…ま、今考えてもわかることではないな。何か問題があれば、星川から話してくるだろ。とりあえず、星川と不用意に触れ合うことは避けよう。
そう考え思考をやめた。
「はい。お弁当」
「ああ。ありがとう」
受け取った2個セットになったランチボックスを開く。
片方にはご飯。おかずはウインナーに卵焼きポテトサラダにプチトマト。
……なぜプチトマトが…
「いつも購買でパン買ってるから、好きな食べ物とかわからなくて…でも、はいこれ」
そう言って星川は黄色に黒文字の缶を手渡してきた。
「こ、これはマッカン!なんでこれを?」
「好きな食べ物はわからないけど、それはいつも飲んでたからね。好きなんだろうなって思って」
「おお!ありがとう!」
「でも、流石にお弁当と一緒に飲まないでね?」
「ああ。それは大丈夫だ」
流石に折角作ってきてくれたものを激甘珈琲で流そうとは思わん。…のだが、
「ん?どうしたの?何か嫌いなものあった?」
「ん?ああ……トマトがな…」
「トマトダメなんだ…。じゃあ残してもいいよ」
星川は苦笑しながら言ってくる。
だが、
「せっかく作って来て貰ったものを、残したりはしない」
「そっか、ありがと。」
「んじゃ、早速いただくわ」
「召し上がれ」
俺は初めに卵焼きを食べた。
「うまい」
「ほんと?」
「ああ、料理に嘘はつかん」
「よかった。八幡はそのコーヒーもそうだけど、甘い方がいいのかなと思って、甘めに味付けしたんだ」
「なるほど。だから俺好みの味だったのか」
ストーカーを疑うレベルで一方的に俺のこと知られているのですが…
「好きな男の子の好みを調べて、胸をときめかせながらお弁当を作る気持ちって言うのを経験してみたかったんだ」
「そうか。で、どうだったんだ?」
「んー。悪くないかも。料理してる時も自分で食べるものを作るより、相手の事を考えるといつもよりやる気が出たし。それにやっぱりおいしいって言ってもらえるのはうれしいね」
「そうか。ならよかった」
「ニセと言っても形からしっかり入りたかったから、まず教室でアピールしてみんなに僕たちの関係を認識してもらう。それから手作りお弁当は欠かせないでしょ?」
「まぁ、弁当はわからんでもないが、教室で抱き着いてきたりするのはやりすぎだろ…。今時そんな事する奴いねぇだろ。余りにもバカップルすぎる」
「やりすぎだったかな?」
「ああ。恋愛の気持ちが知りたいのはわかったが、俺達はあくまで仮だ。別に教室で抱き着いたりしなくても、もっとほかの行動でも教室のやつらの反応は確認できたはずだしな」
「それもそうだね。やっぱり八幡を選んでよかったよ。他の人だとこんなに客観的にみれないと思うし」
「そ、そうか。まぁ、星川が―――」
「早乙女」
「は?」
「早乙女って呼んでよ。ボクは「ボク」と「わたし」を使い分けるくらい簡単だけど、八幡はそうじゃないでしょ?二人きりの時も下の名前で呼ぶようにしないと、ぼろが出ちゃうかもしれない」
「しかしだな、ほし…」
「往生際が悪いよ八幡。八幡には悪いかもしれないけど、これからこの関係が続くんだから」
「……そういや、この関係はいつまで続くんだ?」
「それはボクが満足するまでだよ」
「まじかよ。とんだブラックな仕事だな。まぁ、それはいい。よくないけど。さ、早乙女がどんな恋愛観を持っているのかわからないが、何時も地味目に生活してた早乙女があそこまで豹変するのもやりすぎな感じはしたな。まぁ幸い周りのやつらの反応は悪くないが。だからこそ、今から控えめな感じで行くと逆に怪しまれるからな。正直俺の心臓に悪すぎるが…」
「そっか。…不自然だったんだ……。恋する女の子は大胆になるってどこかできいたんだけどな。やっぱりまだまだだね」
「それは少女漫画だろ…。まぁ、俺から見たらだからな。ただ周りの奴らはそうじゃないからいいんじゃね?」
「んーん。まだまだだよ」
そう早乙女は寂しげに言った。
「恋愛を知らない俺らが理解できてないのは当たり前だ。んで、みんな最初は手さぐりでやってるんだからおかしな行動の一つや二つあって当然だ。彼氏彼女ができてテンション高くなる奴も当然いたんじゃねぇの?それに、早乙女のやったおかしな行動なんて、俺の黒歴史からしたら小さいもんだ」
「ありがと…。八幡って、慰めるの下手だね」
そう言って早乙女は笑った
「うっせ」
まぁ、相手が仮であろうとなかろうと、しけた顔されると、もどかしい気持ちになるからな。それにこれから手伝っていくやつがちょっとしたことで落ち込まれてたらやりづらい。
……そういえば
「訊いてもいいか?」
「ん?なにかな?」
「ニセ彼氏が必要な事情ってなんだ?恋愛する人の気持ちが知りたいのはわかったが、なぜ知りたいのかを聞かせてもらえると、手伝う俺からするとやりやすい。どうしても答えたくないならいいが」
「いいよ。話そう。八幡がボクのことを真剣に考えてくれてるみたいだし、僕も八幡の事信頼してるからね。この事を教えないって言うのは不誠実な話だし」
食べ終えた弁当箱のふたを閉じ、早乙女が静かに立ち上がった。
ちなみに俺の方はあと、プチトマトが残っている。
「ボクはね、プロなんだ」
よく通る声で、はっきりと告げた。
「プロ?」
なんのプロなのか皆目見当もつかない。
「うん。役者。ボク、プロの声優なの。週に三本、レギュラー持ってるんだ」
まじか。予想外だ。アニメなどをよく見る八幡だが、早乙女の声を聴いたことはないと思うし。星川早乙女という名前も聞いたことがない。
「今は芸名使ってるからね。『にこにこ森のぷるる』と『なかよしベイビー』。それから『たのしい大実験』」
と、誇らしげに現在出演している作品を、指を一本ずつ立てながら教えてくれた。
「それって教育番組じゃねぇの?」
「そうそう。よく知ってるね。夕方のファミリー向けと、後の二つは教育番組だよ」
「なるほどな。他の作品には出たりしないのか?俺が言うのもなんだが、綺麗な声だと思うし、最近じゃ声優が歌を歌ったりしてるだろ?」
「そこなんだよ。今まで幼児番組中心でやってたんだけど、仕事の幅を広げろって言われてるの。顔出し解禁して、年相応のヒロイン役にチャレンジしろって。それなら恋する気持ちとか恋人同士の振る舞い方とか経験した方がいいし、若い男性声優との絡みも増えるでしょ?」
「なるほどな、それでこの関係か」
「うん。ボクは役者をやめたくない。絶対に、声優を続けていきたい。そのために乗り越えなくちゃいけない壁があるのなら必ず乗り越えてみせる!」
早乙女は拳を握りしめながら、高らかにそう告げた。
「まぁ、そういう理由なら協力させてもらう。まぁ俺も恋愛初心者だから手伝えることはそうないだろうが」
そう言いながら、最後まで残っていたプチトマトを口の中に放り込んだ。
………まずっ…
「ごちそうさま。うまかった。トマト以外」
「お粗末様。好き嫌いはだめだよ」
早乙女は笑いながら言ってくる。
「そういやさ。なんで地味なふりをしてたんだ?役者なら人間関係とか多く持ってた方が勉強になるだろ?もし地味なキャラを演じるというのが練習ならいいんだろうが」
毎日教室で自分を押し殺すのは辛くないのだろうか。
「ボ、ボクの声は商品だからね」
今までの芝居がかった態度とは違う。早乙女の声がわずかに強張った
「そ、その、つまり……声でギャラをもらってるんだから、そう簡単にタダで人に聞かせる訳にはいかないのさっ!」
……これは嘘だ。声が強張っているのもそうだが、表情がさっきと違って、早乙女は笑顔を作っているつもりだろうが、無理しているのが丸わかりだ。
早乙女のような人が無理して地味に見せる必要があるのだろうか。何のために?まぁだいたい予想はつくが。
早乙女は可愛い部類に入るだろうそれのトップレベルの。なら、それに嫉妬してくる奴らも出てくるはずだ。そしてそういう奴らは総じて相手を蹴落としにかかってくる。早乙女もその被害にあったのかもしれない。
もう一つは早乙女が役者、もとい声優という点で考えた場合。こちらは可能性は低いがプロというだけあって、俺が知らないだけで結構な人に知られているわけであって。…それに伴いストーカーの被害にあった可能性もある。肘が触れ合ったときのあの反応を鑑みるとこちらの線の方が有力かもしれない。
「まぁ、その反応で事情は分かったが…」
「え!?」
早乙女は俺の言葉が信じれないようだ。
「え!?じゃねぇよ。恋愛の勉強もいいが、隠し事の勉強もしないとな…」
「本当に分かったの?」
「まぁ殆ど勘みたいなものだけどな」
「そうなの?」
「まぁ、人間観察が趣味みたいなもんだからな。それなりにわかる」
「そうなんだ…」
「イジメかストーカー被害にでもあったんだろ?」
「よくわかったね…そんなところだよ」
「まぁ、深くはきかねぇよ。諸々の事情は分かったし、早乙女がラブシーンを問題なくこなせるようになったら俺はお役御免てことでいいんだな」
「概ねそんな感じだね」
「了解。それまでは手伝う」
「助かるよ。八幡も本命の彼女ができた時の練習と思ってくれればいいし。ボクの勉強が済んだら、本当の彼女ができるように協力してあげる」
「あ……そういう後始末もあるんだな」
そうだった。いくら仮で付き合ってるとはいえ、周りの奴らからしたら本当に付き合っているわけであって…
「まぁ、こっちの我儘で付き合ってもらっている訳だし、終わりにするときはボクが貧乏くじ引くよ。っていっても、八幡は自分を犠牲にして終わらせそうだけど…」
「俺は効率のいい方を選ぶだけだ。何が起ころうとも、それは俺が選んだことの副産物にすぎん」
「八幡って本当に捻くれてるよね」
「そんな事実はない」
「まぁ本当に終わったときはボクが泥をかぶるよ。これから本気で恋愛する予定ないし、悪女って評判がたっても大丈夫」
「いや、仕事にかかわってくるだろ」
「まぁそこもなんとかするよ」
「そうかい。んじゃ何とかしてくれ」
「任せたまえ」
そう早乙女は笑顔でいった。
恋人がどうとか、練習がどうとかは置いといて、少し歪だが、こんな青春も悪くはないかもなと、早乙女の笑顔を見ながら思った。
読んでくださりありがとうございます!
よろしければ感想、指摘などなどしてもらえると嬉しいです!
宜しくお願いします!