東方ハーレムアリス   作:佐倉ローチ

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感情のすれ違い

 陽が落ち夜も遅くなった頃、霊夢に連れられてお風呂の時間を楽しんでいた。

 腕輪から鎖が外されたものの、外してから霊夢が私の側を離れることはなかった。魔法が使えない私が霊夢から逃げる事はまず不可能である。

 

 にしても大浴場はいいものだ。

 自宅の小さなお風呂と違って開放感がすごい。

 

「ねえアリス、背中流してあげようか?」

 

 断る意味もなく、私はそれを受け入れた。

 

「お願いするわ」

 

 何事もなく時は過ぎる。

 霊夢が私の背中を流し、私も霊夢に同じことをしてあげた。

 洗いっこというやつだ。

 その後私達は湯に浸かった。

 いつかの日に湧き出た間欠泉から引かれた超天然温泉はとても気持ちが良かった。

 

 

 

 しばらくして私達は部屋に戻った。

 再び私は鎖に繋がれる。ここで私にある考えが浮かんだ。

 霊夢は何だかんだ甘く、お風呂の時などには鎖を外してくれる。常に霊夢が近くにいるが、なんでもいいから霊夢がちょっとでも離れるように仕向けることが出来たら、博麗神社から脱出ができる。

 明日、早速策を講じてみようと私は思った。

 

「布団引くわよ」

 

 手際よく綺麗に布団が敷かれた。

 

「あれ二つ引いてるけど」

「私もここで寝るわ」

「......」

「なによアリス、私が一緒に寝たらダメなの?」

「いえ、別にダメなんて事はないわよ」

 

 夜、霊夢が寝静まった頃にどうにか鎖を壊せないか色々試してみようと思ったのだが、不可能になった。

 私達はそれぞれの布団に腰を落とした。

 

「あっという間の一日だったわ」

「アリスが居て楽しかったわ、楽しいと時間が早く過ぎちゃうのよね」

「ええそうね、私も楽しかったわ」

 

 楽しかった。今日を思い出すと静かでそれでいて華やかな記憶が浮かんだ。

 それに重ねて魔理沙が死んだ時の情景が呼び起こされた。

 

「ねぇ霊夢」

「どうしたの?」

「どうして魔理沙はあんなことしたんだと思う?」

「......」

 

 不意を突かれた質問に霊夢は言葉が出ないようだった。

 しばらくフリーズした後、霊夢は答えた。

 

「私はねアリスのことが好きなの」

 

 知ってる。私にはわかってた。

 だって同じだったから、あの時の魔理沙の目と同じだったんだから。

 霊夢の目は、私を好きになってくれた魔理沙の目と変わらない。

 

「わかってるわよ、私も霊夢のことが好きだから」

 

 好きの方向はわからない。

 どんな風に霊夢が私を好きで、どんな風に私が霊夢を好きなのかはお互いに知ることはない。

 

 ただ親友として霊夢を愛している私の心と、霊夢が私に感じている気持ちが絶対に違う事はわかる。

 そして私に対して生まれた霊夢と魔理沙の感情がほぼ同一線上にあることもわかる。

 

「アリス......私は......」

 

 空気が変わった。ただぼうっとしていただけの世界の雰囲気は、魔理沙に抱きしめられた時のように──曖昧なものになった。

 自分に意思があるのかわからない。

 霊夢は私を優しく抱擁し、その白くて美しい顔を側に寄せて来た。

 私は霊夢がどうしたいのか彼女の体温に包まれながら理解した。

 あなたの好きと私の好きは違う。

 それでも私は拒否できなかった。いやしなかった。

 刹那、今まで感じたことのない柔らかい感触を唇に感じた。ただ触れるだけの口付け。

 霊夢の口が小さく開いた。

 

「......好き」

 

 唇が触れる距離でなお消えてしまいそうな声だった。

 私はみんなとの関係を壊したくない。

 拒否したら霊夢との関係が壊れる。少しずつおかしくなってくる。

 苦し紛れの現状維持、受け入れたって関係は壊れ始める。

 それでも私はこうなるように仕向けた。

 手足の先からじんわり溶けていきそうな幸福から逃れられなかった。

 もう一度唇と唇が重なり、自然とお互いの舌が絡み合った。熱い舌の感触が気持ちよくて離れたくなかった。また頭がふわふわになって、私の世界は真っ白になった。

 ふと気付いた時、唇は離れ、呼吸を乱し、霊夢は顔を紅潮させていた。

 霊夢の蕩けた顔を見て、私達は求め合ってるんだと感じた。いけないとわかってるのに霊夢にねだってしまった。

 

「霊夢......もっとしたい」

 

 

 

 

 ああ、今日何度思っただろう。

 私はなんて悪い女なんだ。

 目先の快楽に溺れて、やるべき事も忘れて、表の意識が深い奥底に沈む。

 

「私も......」

 

 言葉と共に押し倒された私は霊夢の背中に腕を回した。

 そして私達は互いを求め合い貪りあった。

 欲望と快楽に溺れた。

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