翌朝、体調も装備も地図も全て確認出来たところで俺を筆頭に訓練派がプトラの地へと向かった。
道中敵が来ることもなく比較的平穏だったこともあってかなりリラックスしてプトラに侵入に成功した。
そこらに死体がいくつかあったことから投薬派が先に墓に向かった可能性が高い。
……けど、これだけ大きな墓なら中にいる敵の数を多いだろう。
一階以外は未知のエリアだからここの最深部に行くには少なくても数日はかかるはずだ。
「墓に入る前にどこかで適当に一人捕獲しよう。そいつから情報を手に入れてここにある情報と一致してから突入するべきだと思う」
「別に構わないけど、投薬派が任務を終了させてたらクソボンクラの責任だからな?」
「考えすぎだったら俺の責任ってだけで済むから問題ない。数は少ない方が相手も油断するだろうからクロメと俺で敵を捕獲する」
リーダー自らってどうかと思うが多分これで問題はないはずだ。
レムスなら仕留め損ないがあるかもしれないが、基本的にこいつらは殺しかねない。
特にギンとナタラは手に入れた臣具で暴れたいだろうし。
「仕留め損なうレムスなら分かるけどどうしてクロメを?」
「ひ、酷いですよ〜!もう仕留め損なったりしませんから!!」
「……ははっ、それは置いておくとして、その臣具だからこそ試したいことがあってな。運が良けりゃ使えるかもしれない」
「私の臣具が……つまり、そういうこと?」
「そゆこと」
残りのメンバーは絶対に墓に近付けないように近くのキャンプ地に留まらせる。
勝手に動いたら変身の力を最大限使うと脅しているからそう簡単に動きはしないだろう。
……と、いうわけで俺たちは墓周辺の探索を行った。
墓にどれだけ近付けば墓守が現れるのかを探るための観察でもあるため一歩一歩慎重に動く。
「そういやさ、エリートにいる姉ってやっぱ容姿とかそっくりなのか?」
「……どうだろう。今は会ってないからもしかするとすごく変わってるかも」
つまり、昔は似てる部分はあったってことか。
……大食いの要素とか似られると困るな。
こいつの食う量半端ないからなー。
「臣具も貰ったことだし姉に会えるのも時間の問題になってきたんじゃないのか?」
「……うん、その為に私はここまで頑張ってきたんだから」
クロメの姉に対する思いは普通ではない。
これがシスコンってやつなのか。
生前の友達が妹(姉)はお前の思っているほど尊い存在じゃない、夢を持ちすぎだとか言われたがこれを見る限りそんなに悪くはないんじゃないかと思わせる。
「……何か変なこと考えなかった?」
「いいや別に?」
クロメって時々勘がいいのか悪いのか分からない時があるから心の中で考えるのも一苦労だ。
笑って誤魔化しながらお互いに戦闘態勢に入る。
……少しだけ風が強くなった瞬間。
「貴様たちも墓荒らし――」
「「うるさい邪魔」」
脚と首を斬り落として息の根を止めてしまった。
ちなみに、首をはねたのは俺だ。
……やっちまったなー!
「はっちゃん、言ってることとやってることが違うよ」
「す、すまん!!」
後ろを振り返ると新たに三人ほどいる。
よし、こいつらは生け捕りにしないとリーダーとしてのメンツがない。
「一人で突っ込んだあいつが悪いけど、瞬殺か……!」
「最初から全力で行くぞ!!」
墓守たちの姿が変わり、半人半獣のようになる。
これは教官の教えてくれた通りの内容だ。
「その技術は帝具や臣具でも利用されてるもんだ!帝国が何も対策をしていないと思うなよ!!」
「援護お願い!」
俺が敵の攻撃を捌きつつクロメに攻撃を行わせる。
敵もワンパターンの動きじゃなくて空飛んだり跳ねたりして鬱陶しいが、一撃一撃は重いものではない。
「クロメ!今だ!!」
「臣具玉梓、お願い!」
俺を足踏み場にし、一瞬のうちに敵全員に一撃を喰らわせる。
そのどれもはただのかすり傷で敵は余裕の笑みを浮かべているが、これでいい。
「よし、命令しろ!!」
「……お座り!」
クロメはそう命令すると敵は一斉に座り始める。
敵は何が起こったのか分からず、一瞬固まってしまった。
これが臣具玉梓の能力。
死体と人間以外のどんな生物でも一度斬りつければ解除しない限り自由に操れる臣具。
本来なら人間には利用できないのだが、大昔に帝具ライオネルを所持していた帝国軍人との戦闘で完全とは言えないが危険種の力を得ている人間は操れるということが分かっている。
「くっ、バカな!?なぜ、我々が……」
「次の命令、ここの情報を全て教えて」
「誰がそんな……っ」
「は、墓の内部にあるトラップと内部の構造を教えればいいんだな?」
酷く歪みきった顔だが、時間がない。
さっさと吐き出させておこう。
「――以上が、墓の情報だ」
「全員同じこと言ってるし、何回か命令をキツくしても同じことしか吐かなかった」
つまり、メモに書き込んだことを全て持ち帰れば任務も本腰を入れて開始できる。
ただ、罠の数も多いからレムスが引っかからないように注意しておいたほうがいいな。
しかし、墓守にいるのに下っ端は知らないことも多いな。
結局敵の情報は分からないままか。
「……最後に、ここに来たやつは全員どうなっている」
「奴等は貴様たちの仲間か。……その殆どは死んだ、中にいる墓守は俺たちよりも遥かに強いぞ」
それだけを聞くとクロメに指示を出し、一人ずつ気絶させていく。
多分俺たちが話すだけじゃ手柄の横取りだのなんだのと煩い連中もまだいるだろうから責任者に引き渡すためだ。
大勢いた投薬派のメンバーが殺されたとなると敵はかなりの数がいるか、ずば抜けて強いやつが数人ほどいる可能性が高い。
救援要請も出してもらえるように責任者に話をしてみてもよさそうだ。
「長居してると敵も湧いてきそうだな。さっさと撤退するか」
運べるだけ連れて行き、運べなさそうなのは全て気絶させておいてなんだか殺しておく。
なんとか捕虜は責任者たちに任せておけた。
中には墓から命からがら逃げ出してこれたやつも存在していて、その情報から責任者も慌てて増援を要請してしまったらしい。
提案する手間が省けたのは嬉しいが、そんな強いやつらにはたして全員で勝てるのか?
やっぱ全員臣具持ちとかの方がよかった気がしなくもない。
そんなこんなでプトラ遠征一日目が終わってしまった。
焦っても仕方ないとはいえ、さすがに森でバーベキューはどうかと思う。
あと、クロメには極力食う量を抑えてもらいたい。
危険種を絶滅危惧種にでもする勢いで狩ったのを食っていきやがるな。
「……それで、明日はどうするの?」
「明日も自由時間だ。動くのは援軍が来てからになる」
まあ、欲を言うのならもうちょい数が欲しかった気がせんでもない。
なにせ敵は危険種とかに変身するんだから厄介なのは確かだ。
「……あ、いっそのことエクスカリバーとか使って墓ごと破壊する手も」
「ダメだよ、何するか分からないけどあの墓の中には盗まれた財宝が沢山あるんだから」
ダメかー。
まあそうだよな、そもそも宝具の全力開放出来るのかな?
……あ、アーラシュはダメ。死ぬから。
「はっちゃん。援軍って誰がくるの?」
「多分選抜組だ。つまり、クロメの姉と会える可能性も高い」
それに加えてあの男も来る。
……まあいいか、数よりも質は圧倒的なのは確かだ。
それに、責任者のおったんの慌てようからして他にも呼んだに違いない。
可能性としては帝国云々だから羅刹四鬼とかか?
それとも……いや、それはないか。
「……はっちゃん、早くしないと肉なくなりますよ?」
「へ?……あー!!クロメそれ俺が取っておいた美味そうな危険種の肉ー!」
……まあ、今後のことは増援が来てから作戦は立てればいいか。
それまではリラックしておかないと無駄な神経ばかり使っても仕方ないしな。
このしばらくの休日を楽しむとしましょうか。
□ □
帰還途中に走ってくる男を見つけて何事かと問いただした。
どうやらプトラの遠征が思いの外難航しているらしい。
プトラ……そういえばそこの任務には面白い男がいるはずだ。
噂では奥の手を使えば私を超える強さだと聞いた覚えがある。
たしかその名は……
「……ハチ、だったか」
折角だ、私も向かうとしよう。
この帝具の力ももっと試してみたい。
そして、隙あれば……
一度、その男と一戦交えてみたいものだ。