セイヴァー事件から早一時間。
急いで戻ってきたギンを含めて全員から質問攻めにあったが、俺もどうしてセイヴァーが出たのか分からないから色々と誤魔化してその場を凌いだ。
皆もまだ納得はしてなさそうだけど、俺自身覚者を使ってからかなり体の調子がよくないことを察してくれたのかあまり深くは聞かないでくれた。
……ランダムなのは知っていたけど、この能力はセイヴァーまで使えるのか。
つまり、ルーラーやアヴェンジャー、アルターエゴにウォッチャーみたいなエクストラクラスも召喚できるのかもしれない。
もちろんこれを嬉しいと思うがその反面懸念すべき点も山ほどある。
それを制御できる方法がないか女神様の本で調べたところ、そういうことは一切書かれていなかった。
この本に書かれてることって大体頑張ればできる云々が多いから俺の努力次第ではもしかすると変身できるサーヴァントも制御できたり、バーサーカーの狂化を抑えたり出来るのかもしれない。
……その練習をしてみたかったのだが、その直後に都合の悪い知らせが届いた。
援軍が到着してしまったのだ。
そのせいで練習することも叶わず、エリートたちと挨拶をするハメになった。
「……あんたに会うのはいつぶりだ?おっかねえおっさん。いや、ゴズキさんって呼ぶべきか」
「あんな無知でも生き延びる方法だけ知ってた子供が今じゃリーダーなんて驚きだ。クロメ、ギン、ナタラも臣具を手にして俺たちに近付いてきたんじゃねえのか?」
エリートの教官的存在であり、俺を拾った男。
帝具村雨使いにして元羅刹四鬼のゴズキ。
相変わらずこいつには生身で勝てる気がしない。
「ゴズキさん、あんたの部隊は?」
「あいつらならお前たちが持ってきた情報を頭に叩き込むためにヌカの所に向かった」
……ヌカ?ヌカって誰だ……。
いや、聞いたことはある気がするんだけど……身に覚えが全くない。
「はっちゃん、今の責任者の名前だよ」
「……すまん、責任者かおっさんってしか呼ばないから名前忘れてたわ」
俺ってばうっかりさんだな。
一応今のところは帝国の人間だし人の名前ぐらいは覚えておかなくちゃな。
……しっかし、エリートも大変だな。こんなところまで来させられて休憩する間もなく情報収集なんて。
「……んじゃ、任務は今夜にでも開始する感じか?」
「そうだな、ここに長く時間をかけるわけにもいかねえ」
ゴズキは多分俺のことを怪しんでるはずだ。
最初の出会いが他のみんなとは違うから出来るだけこいつに関わりすぎないようにしたい。
日常生活も死と隣り合わせなんて御免だな。
「そんじゃ、先ずは挨拶に行ってくるわ」
ゴズキとの挨拶が済ませ、俺たちはエリートたちのいるであろうテントに向かった。
「……お、あれじゃね?噂のエリートたちは」
あきらかに臣具って分かるの持ってる人間の集団を見てすぐにエリートだと分かった。
特にテントの奥にいる腕組み野郎は一番強そうだ。
そんでもって、情報と違って一人足りないのを見るとおそらく任務の途中で死んでしまったのだろう。
「……お姉ちゃん!!」
「!く、クロメ!?」
クロメが突然叫び出したかと思えば、あの中にいた黒髪も走り出してお互いに抱きついた。
……あー、あれが姉のアカメか。
確かにクロメと似てるな。
「よかったですね、姉に会えて」
「この任務が終わったら再開パーティーだね〜!」
「……そんな呑気な……。」
クロメは姉との再開を果たしたことで完全に話しかけにくい雰囲気を作り出した。
……まだ自己紹介済んでねえから勝手に二人の世界に入られてもなー。
「……えーっと、気を取り直して。俺がこのチームのリーダーだ。はっちゃんって呼んでくれ」
「ナハシュだ。噂には聞いていたが……」
ナハシュがこちらをジロジロと見てくる。
……あー、無理。堅苦しい会長タイプの雰囲気がしてあんまり話したくない。
「しっかりしろクソボンクラ!」
「そうです!仮にもリーダーがたじろいでどうしますか!!」
「は、はっちゃん頑張って〜!」
「ほら、リラックスして」
こ、こいつら他人事だからってー……!
でも、舐められるわけにもいかないのは確かだし……。
「……俺たちのチームはエリートと肩を並べられると思ってる。だから余計な気は使わず任務を遂行してくれ」
「言われなくてもそのつもりだ」
ごめん、やっぱこういうのは無理。
いい感じの言葉が見つからない不甲斐ないリーダーですまない、本当にすまない。
「一つだけ聞きたいことがある」
「……なんだ?」
「ここに向かう途中で見た爆発は、お前がやったのか?」
爆発と聞いて思い浮かんだのはさっきのセイヴァーでの一撃だ。
あれってそんなヤバい感じだったのか。
……てことは、エリートが今日到着したのは俺が原因だったりする?
「……能力の一部が暴走したのが理由だ。以後気をつける」
当面の目標はクラスを自分の意思で選べるように出来ることだな。
かなり難しいだろうけど不安要素は絶対に潰す。
それから他のみんなと色々話をしてみたところ、エリートたちは見たところ全員が帝国万歳状態ってわけではないらしい。
帝国に疑問を持ってる感じなのはメガネ男。
名前はグリーンで、強化組のことを怪しまれないように探っていたことからこいつもまだ確証ではないんだろう。
クロメの姉であるアカメも「投薬の話は本当か?」なんて質問してきたから「この国をどう思ってる?」と質問に質問で返したところ、動揺を隠しきれていなかった。
「……クロメたちは薬なんか頼らなくても私たちと同じくらい強くなれると証明した。なら、危険を冒してまで投薬に頼る必要があるのか?」
「今の帝国に必要なのは革命軍と戦える即戦力だ。薬で簡単に強くなれるなら、そいつがどうなろうと知ったこっちゃないのさ」
だからこそそんな非人道的行為が許されるこの国は……オネストは処刑されるべきだ。
オネストさえなんとか出来れば自然と帝国の腐敗部分も排除されていくはずだ。
「このことはゴズキには話すな。妹が大切で、自分の命が大切ならな」
「……分かった」
ゴズキにバレれば確実に俺は始末される。
俺だけじゃない。色々と調べられて教官やクロメ、最悪俺たちのチームが全員始末される可能性すらある。
……アカメは顔に出やすそうだからバレなきゃいいけど。
「よし、顔合わせは済んだな。令呪を一画使ってるから不安は残るけど、任務を開始する!」
思ってた以上の大規模な作戦になったため、エスデス将軍には周りの雑魚を任せる。
あの人が暴れたらこちらに戦力を回す余裕が無くなると予想してエスデス将軍が突入した五分後に墓守の長がいる場所に向かう。
クロメの玉梓で長を大人しくさせて楽に殺せたならそれでよし、ダメならエリートたちを援護する形で全員で仕留めに掛かる。
よし、作戦通りに進めば完璧だ。
これだけの大人数なら多少の想定外もカバー出来る。
「一気に仕留めるぞ!!敵は、プトラの墓にあり!!」
悪く思わないでくれ。
財を持ってしまったことを呪ってくれ。
そして、潔く倒されてくれ。
……こんなことを考えてしまう辺り、俺も堕ちているのかもしれないと考えつつ、プトラの墓へと向かった。