■アカメ視点■
私は、どうするべきなのか分からなくっていた。
プトラの墓守を葬る今回の任務。
強化組が苦戦しているというこの任務のお陰で妹のクロメと再開を果たすことには成功した。
……成功したのだが、クロメから発せられた言葉は全て帝国の闇の部分だった。
クロメたちを育てた教官は隠れながらの反帝国主義者であり、クロメたちのリーダーのハチも昔から教官と同じ考え方だったらしく、クロメも帝国の異常さを私に語ってくれた。
……たしかに貧困の差を見た時に少しおかしいと感じたことがなかったわけではない。
クロメの口から迷いのない言葉が発せられたのなら間違いない。
だが、まだ私の心は迷っている。
疑惑が確信には変わりきっていないのだ。
クロメが騙されている可能性だってある。
だから、任務が終わって暫く休みが出来た時には……。
「――■■■■■■■!!」
「……!これは……」
墓全体に届くのではないかという雄叫びと共に壁が壊れる音が聞こえてくる。
仲間がやられている可能性が高い。
まだ誰とも合流していなかったために不安が大きくなる。
「……こっちか!」
声のする方角に駆けつける。
クロメ、無事でいてくれ……!
「■■■!」
「ぬぅ!まともな思考と言語能力を失って力を得たか……!」
私が辿り着いた時には既に戦闘は激化していた。
あの叫び声は敵のものではなく、様子がおかしいハチから発せられたものだと知る。
ただ目の前の標的だけを狙い続けるその動きに無駄は多く、しかしその一撃は受け止めることすら不可能と思えるほど力強い。
もし、ただの兵士がこれを見れば彼を理性を失った狂戦士と呼ぶのかもしれない。
……だが、私はそんな彼を見て『復讐者』のように思えた。
「こうも硬いと呪い殺すのが手っ取り早そうじゃのう!」
「――■■■■■!!」
逃げ続けていた足を止め、杖を投げ飛ばしてハチに斧を手放させる。
「■■■■■■!!」
それにと引き換えにハチの強烈なラッシュが墓守を襲い、頭部を狙った懇親の一撃で吹き飛ばした。
「■■■!!」
「まさか……ハチがダメージを受けているのか!?」
墓守が反撃をした様子もなかった。
だというのにハチは全身から血を出して膝をついている。
「これが呪いじゃよ。強ければ強いほど呪いはよくキク……貴様もあの男みたいなタフそうじゃから確実に殺すけのう」
「くっ……」
今助ければ間に合うかもしれない。
……だが、呪いの攻略法が分からないのにどうやって対処すれば……!
「■■■……ぶ、だ……」
ハチが起き上がるが、今にも死にそうだ。
なのに大丈夫なんて……。
「……今、言葉が……」
「心配、すんな。俺の体が別のものに書き換えられそうだけど……、あと十回ぐらい死ねる……っ!!■■■■■!!!!」
突然ハチの傷が感知したと思えば、再び理性を失ったように叫び始めた。
その姿を見て驚いたのは私だけではない、墓守もだ。
「バカな!?なぜそんなピンピンしちょる!!」
「■■■!!」
……それから、二人の戦いは激化する事は無かった。
墓守の攻撃は最初こそ効いている様子だったが次第に攻撃を受けても平気そうに墓守を殴り殺そうとする。
「ぬっ……呪いの効果は……」
「■■■!!」
「ちっ!」
呪いで致命傷を受けてもハチが死ぬ様子はない。
もはや一方的な暴力に墓守が耐えるかハチが力尽きるかの状態になった。
腕の骨を折り、頭を潰し、なのにあえて敵を斬らず、心臓を潰さず一方的に殴り続けた。
それが三回続き、その頃には既に墓守は立っているのがやっとという状態だった。
「……■■……■■……はぁ、俺自身三度も死ぬとは思わなかった……」
「ゴフッ……化物、め……」
ハチも力が解除されたのか最初に出会った時のように笑ってみせた。
体はボロボロで動いてるのがやっとのように見えるが、しっかり生きている。
「我等の負け、か。あの女子も他の墓守を倒しに行ったし、上では別の化物が暴れ回っとるけのう……。化物一人相手ならまだしも、こんなの二人は手に負えんわ」
「……墓守、死ぬ前に教えろ。俺たちはお前たちが帝国から盗んだものを取り返しに来た正義か?それとも墓の財宝を奪いにやってきた悪か?」
「……答えは一つ。お前たちは、大悪党じゃけぇ」
ハチから出た質問にしっかりと、迷いのない怒りの言葉が突き付けられる。
だが、ここの奴等は帝国から財宝を盗んだと聞いていた……。
「……殺したのはあんただけど、そもそも帝国が腐ってなきゃ死ぬことすらなかった命ってことか。……笑えねえよ……」
「……」
私は何も言えなかった。仲間を失った気持ちは痛いほどよく分かる。
でも、どうしてハチはこうもあっさり墓守の言ったことを信じたのだ?
「ハチ、どうして墓守の言うことをそんなに……」
「初めから帝国のことなんざ信用してねえからな。帝国がここの財宝欲しさに俺たちを利用したにすぎないだろうさ……奴らからすれば、俺たちの命なんて駒みたいなものだ。なんとも思っちゃいねえ」
「なんじゃと?なら何故帝国側に……」
「……少し前まではどうするか決めかねてたんだ。でも、今回の件で答えが出た」
ハチが奥に進むと一人の死体を抱き抱えて戻ってきた。
……レムスだ。
おそらく、呪いで死んでしまったのだろう。
「俺は、革命軍には入らん。ここにいる誰かと敵対なんて、出来ない」
……もし、ハチのいない世界が存在していたのだとすれば、私はどうしたのだろうか?
クロメと革命軍に入っていたのか、それとも暗部に残る決断をしていたのか。
「俺は将軍になる。将軍になれば色々と使える権限は増えるだろうからな」
私には分からないし、もしもの話なんて必要はない。
「そして、諸悪の権化であるオネスト大臣を葬り、民が笑顔になれる……いや、そんな大きくなくてもいい。大臣に利用されて苦しめられるやつらがいない帝国を作り上げてみせる!!」
だが、一つだけはっきりと言えることがある。
「アカメ!民の為なんて言わない。仲間が裏切られない、笑って明日を迎えれるような国を作るために、手を貸してくれないか!!」
私は、クロメと笑いあって明日を迎えられる世界を望んでいる。
だから、ハチの差し出した手を握った。
もしこれを断っていたとしても、もう私は父と以前のように接することは出来なかっただろう。
おそらく、これは運命なのだ。
ならば、それを受け入れよう。
……それが父を裏切る行為だとしても。