フェイト~キアラがママっ?!   作:罪袋伝吉

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と言うわけで、キアラ出産、前編です。

長くなったので前後で分けました。

果たしてキアラは出産で、んほぉぉっ!!とか、あへぇぇっ!!とか出来るんでしょうか。←つかすんな!

どうあがいてもマスターの黒歴史は始まるんですけどね。←あきらめ。


出産~十月十日・前編。

 お産というものは、母子共にやはり危険が伴う事もある。

 

 これはいつの時代であっても同じであり、ドクターロマニとパラケルススは産科の最先端の医療のデータや様々な論文、文献を集めて出産方法などを検討していた。なにしろ今回のキアラの出産は、マスターの命がかかっている。絶対に失敗が許されないのである。

 

 ドクターロマニとパラケルスス、ナイチンゲール達はカンファレンス(協議、会議)を繰り返し、手順を確認、そして万全の体制で本日のキアラの出産に臨んでいた。

 

「サーヴァントが出産するというのは、他では前例がないからね。……ティアマトとかの例とかもあるけど、あれはそういう存在だったからね」

 

 ドクターロマニ(ソロモン)は手術着に着替えながらパラケルススにそう言った。

 

 パラケルススは少し考えるような仕草をしたが、おそらくティアマトの事を考えているのだろう。

 

 ティアマトはビーストIIであった。回帰の獣であり、神話ではありとあらゆる生命の母、原初の一柱である。

 

「……ビースト繋がり、ですね」

 

「は?」

 

「いえ、ティアマトはビーストII、殺生院キアラはビーストIII。しかしどちらも生殖に関係します。ビーストは何かを産み出すものという側面が、いえ、生命にまつわるもの、と考えるべきなのでしょうか」

 

「パラケルスス、それは哲学的な命題だと思うよ。だけど今は患者が優先だ。あと、その辺出して来るとはっきり言って話が別の方向に行くからね?コメディなんだよこれは」

 

 ※そう、この話はコメディです。

 

「……そうか、コメディということは暗い未来は無いんですね……。よかった」

 

 二次創作で明るい話が多い作品は、大抵原作で不幸なキャラが多かったりするのだが、さてはて。

 

「……まぁ、マスター君には黒歴史がやたらと増えそうな気はするんだけどね?」←ぶっちゃけそういう話である。

 

『……恥の多い人生を送って来ました。そしてまた増える黒歴史。はぁぁぁぁぁっ』

 

 二人の会話に割り込む念話。そう、マスターである。

 

「……太宰治だね。うん、マスター君はもっと前向きになるべきだと思うよ?」

 

 扉の向こうにはすでに分娩台に乗ったキアラがいる。十月十日をむかえて、本日が出産日である。

 

 ドクターロマニとパラケルススは扉を開き、分娩室に入った。

 

 まだキアラは破水してはいないが、陣痛の兆候が始まっている。大きい陣痛はまだ来てはいないが、おそらくは数時間の内に始まるだろう。

 

 すでにスタンバイしていたナイチンゲールがキアラについており、出産に関しての説明をしている。

 

 今回の出産は、通常の分娩で行うしか無い。サーヴァントであるキアラには陣痛促進剤も使えなければ、麻酔を使用した無痛分娩も不可能である。

 

 なにしろサーヴァントには人間に使う薬剤は効かない。故に他のサーヴァントのスキルを使った麻酔などをドクターロマニ達は検討したりもしたが、はっきり言ってリスクが高過ぎてどれも使えない。

 

 つまり、自然に普通に産んでもらうしか無いのである。

 

 もちろん、何かあった時の為に回復系の霊薬などは運び込んであるし、それにナイチンゲールのNPもその辺のサーヴァントを事前にボコってもらってマックスに上げてもらっている。

 

 今回の生贄はコロンブスだった。

 

 黒髭が大量生産した着ぐるみベビー服を強奪し、ネットで売り払おうとしたところを女性サーヴァント達に発見され、ナイチンゲールに雑菌認定されたのである。 

 

 なお、この後、黒髭氏の着ぐるみベビー服は可愛さと機能性で世のおかーさん達に大人気になり、やたらとカルデアにそのリクエストが来るようになってしまい、黒髭印のベビー服は一世を風靡する事となるのだが、それはまた別の話である。

 

 とはいえ、黒髭氏は現在、売り払われたベビー服の代わりを現在必死に制作している最中である。

 

 女性サーヴァント達の監視付きで。あと、注文付き。

 

「……次はメジェド様の着ぐるみベビー服をですね」

 

「いや、可愛いか?それ」

 

「いやいや、やはり忍者風にだな?」

 

「犬耳だわん!猫耳だにゃん!」

 

「シンドバッドの着ぐるみなんて可愛いかと!」

 

「うぉぉぉん、なんで拙者不眠不休でベビー服縫わされてんのぉぉぉーっ?!」

 

 果たして今回の被害者は誰なんだろうか。そんな事を思わずにはいられない事件であった。

 

「現代医学の犠牲、嫌な事件だったね……」

 

 ドクターロマニ(ソロモン)は首を横に振りつつしみじみと言った。彼はマスターに用意されたベビー服が着ぐるみ風だとか、そういう事は知らない。

 

 単に黒髭が服などの縫製が得意だと知っていたので、おそらくはよほど出来の良いベビー服だったのだろうなぁ、という認識しかしていなかったのである。

 

 故に、マスターにもその話はまだ伝わってはいない。

 

 マスターもマスターで黒髭の特技は良く知っていたので別段におかしいとは思っていなかった。

 

 もし、コロンブスがネットで売り払ったベビー服が、着ぐるみベビー服などというやたらと可愛い物だったと知ったなら確実に全力で『コロンブスグッジョブ!!』と言っただろう。

 

 だが、知らないので呑気である。

 

(ベビー服ねぇ。まぁ、赤ん坊の姿だからそれしか着れないか)

 

 ぐらいに考えていた。

 

『まぁ、仕方ないか。コロンブスだし』

 

 何気にコロンブスにはひどいが仕方有るまい。なんせコロンブスだし。それにナイチンゲールにボコボコにされたとしてもコロンブスは反省するまい。

 

 それぐらいで反省する奴ならとっくの昔に善人になっている。なにせカルデアに来て80年ほどになるがコロンブスは何か悪事を引き起こすたびに様々なサーヴァント達にボコられたり斬られたり燃やされたり撃たれたりしている。だが、懲りない。そして諦めない。

 

 いらん事に、前向きに悪業を重ねて夢(金や利益)のためならなんだってやるのだ。諦めずに。

 

 はっきり言って、聖人であるマルタや三蔵ちゃんにも匙を投げられている。

 

 言わんやフローレンス・ナイチンゲールをや。

 

「雑菌駆除、殺菌処理で回復能力マックス。治療はおまかせ下さい」

 

 もはやNP溜めるためのサンドバックとしての認識しか無いかのようだ。

 

『……近頃は彼も大人しかったのになぁ』

 

 困ったもんだ、とマスターはそう零すが、だがキアラはなにかクスクス笑っている。

 

「マスターが死ななくて良くなったからで御座いましょう。コロンブスに限らず他の者達もマスターがお産まれになったらまた以前のように何かと騒ぎを起こしてやらかし始めるでしょうね」

 

 と、確信したように言う。

 

『うげ……?!出来れば変な騒ぎはあんまり起こして欲しく無いなぁ』

 

「うふふふふ、また退屈しない日々が始まりますわよ?マスター」

 

『退屈しない、か。はぁ……』

 

「……はぁ、またトラブルな日々がやってくるのか。悪くは無いけど気苦労がねぇ」

 

 マスターとドクターロマニは溜め息を吐いたが、パラケルススは逆に少し嬉しそうに微笑んで

 

「賑やかなのは嫌いでは無いですけれどね、私は」

 

 と、言った。

 

「意外だね?君はそういうのは苦手だと思っていたよ」

 

「……巻き込まれるのは苦手ですが、傍目で見ている分には楽しいものですよ」

 

『うわ、一番たち悪い感じだ?』

 

「誰かと一緒に騒ぐのは苦手なのですよ。それに、ああみんな元気だな、と思えますので」

 

 まぁ、サーヴァント達は基本的に病などは無い。英霊だから。あるとしてもバッドステータスぐらいだ。

 

『はぁ、しかしなんだな。お産って時間かかるもんなんだな』

 

「そりゃそうだよ。本当ならこれが当たり前なんだ。……陣痛促進剤も使えないし、それにすまないとは思うけれど麻酔も効かないから無痛分娩も無理だ」

 

「そうですね。サーヴァントのお産に人間の医療はほとんど何も出来ないですから」

 

『……あのな、ふと思ったんだけどな。宝具でキアラのお腹の中に入ったんなら、宝具で出れないものなのか?』

 

「「え?」」

 

 医師二人がピタリと固まった。おそらくは二人とも全くその可能性について思い当たらなかったのだろう。

 

 医師として二人は常識に捕らわれすぎていたのだ。

 

 だが、もう一人固まった人物がいた。他でもない殺生院キアラ本人だった。

 

「…………いえ、無理です」

 

 固まりながらもキアラは不自然なほどの笑顔でそう言った。

 

『今、一瞬の間があったよね?』

 

「無理で御座います。何をおっしゃるやら、ほほほほほ。胎蔵曼陀羅は私の内宇宙に取り込んで解脱させる宝具。出した事など今まで御座いましょうや?」

 

『いや、その笑い方がやたら怪しい。かなーり怪しい』

 

「なんとっ?このママが信じられないのですか?産まれて来る前から母親不信なんて……よよよよよ、ママ悲しい」

 

『いや、ママとか言われてもな?つか、俺、キアラにアミデュられただけだし?』

 

「ええい、私の子宮に宿りながら子ではないわけがありません!!そう、私の子宮を犯して成長しておきながら、なんたる言い草でしょう!!反抗期?まだ産まれていないのにもう反抗期なのですか?!」

 

『いや、反抗期も何も百歳超えたジジィなんだけどね?元々は』

 

「うううっ、ママは悲しいです!!そんなにママのお腹から出たいなら、子宮から産道を通って、赤ちゃん出口から、ごっぼぉぉっ!と出てこんにちは赤ちゃんしたらいいじゃない!!」

 

『いや、だからな?宝具で出せないのか?と聞いてるんだが……』

 

「むーりーでーすぅ~っ!!ママにも出来ることと出来ない事があるんです~っ!!」

 

 キアラは駄々っ子のように、いや、そのもので否定するが、その態度から宝具を使えばすぐにもマスターを外に出せるとバラしているも同然だった。

 

『いや、出来るんじゃないか?というか出産にはかなりのリスクがあると言うじゃないか。俺もそうだがキアラの身も心配だから言ってるんだよ』

 

「……ああっ、そのようにママの事を想ってくれていたのね?なんと優しい子!!酷いこと言っちゃったママを許して?大丈夫、ママ頑張って産んであげるからね?ごっぼぉぉっ!と、赤ちゃん出口からずっぼぉぉっ!!とね?」

 

『ええい、生々しい擬音を加えるんじゃねぇぇっ!!だから、宝具で出せぇぇぇっ!!』

 

「くっ……流石はマスター、誤魔化せませんか。しかし、もう遅い!!我、出産の覚悟完了っ!!胎蔵界・理拳印!!」

 

 ふぁぁぁん、と何かが発動する音が聞こえた。

 

 そして微かにプチっ、という音が聞こえ、キアラから何か水のようなものが流れでる。

 

「ふふ、ふふふふふふ、破水しましたわ。こうなればもう、マスターは私の赤ちゃん出口から出てくるしか御座いません!!」

 

「なんとぉぉぉっ?!パラケルスス、いけないこうなったら普通に予定通り出産させるしか無いよ?!」

 

「くっ、なんということなのでしょうか?!殺生院キアラ、あなたはこれを狙って我々の前では普通の妊婦を装って油断させていたのですね?!なんと狡猾なっ?!」

 

「おーほほほほほほ、そうです、そうなのです!!私は普通に出産するためにまるで普通の妊婦を装い、マスターを自然分娩するためにこの日を虎視眈々と狙っていたので御座います!!そしてそれは成った!!おーほほほほほほ、おぐぅっ!?ぐっ……この陣痛は……き、きつい、でもママ頑張る……、ぐふぅぅっ」

 

「……あ~、まぁ、そりゃあそうなるよね。まぁ、頑張って産もうね?うん、考えてみれば、宝具で出てくるのも自然分娩で出てくるのも、マスターが無事ならいいや」

 

「……そう言えばそうでした。まぁ、予定通りということで」

 

 二人の医師は、冷静にキアラの出産に取りかかった。

 

 なお、なぜキアラが自然分娩をしたがっていたのか。まぁ、それは次回で明らかになる。

 

つづく。

 




……実は宝具で吸い込んだのですから、出せると思います。

アミデュラれ、着いた先は殺生院。出て行くときは、赤ちゃん出口から。字余り。
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