※いつも誤字脱字指摘していただき、ありがとうございますm(__)m
「んっほぉぉぉっ、ひっひっふーひっひっふーっ!」
「キアラさん、まだ力むのは早い!力を抜いてっ!!そう、ひっひっふー、ひっひっふー、呼吸を乱さずにっ!!」
「ひっひっふー、ひっひっふー」
「よしっ、産道、予定通り開いてます!!ひっひっふー、ひっひっふー、」
「ひっひっふー、ひっひっふー」
「胎児の頭部を確認!ひっひっふー、ひっひっふー」
分娩室は、やたらと、ひっひっふーひっひっふー。
『ぐえぇぇぇ、なんか圧力すげぇ、あとなんかぬるぬるするぅぅぅ、にゅるにゅるひゅるぅぅぅ~っ、ひっひっふー、ひっひっふー』
妊婦と看護士と医師二人までひっひっふー、ひっひっふー。胎児まで揃ってひっひっふーひっひっふー。
みんなでひっひっふーひっひっふー。
ジルドレさんが居たら、このひっひっふーめがぁぁぁっ!!などと言うかどうか分からないがひっひっふー、ひっひっふー。
よ○ーくはー木ーをーきる~ひっひっふーひっひっふー。いや、よさ○は関係無い。
いや、みんな必死なのである。間違ってもギャグなのではない。
幼いマスターの命がかかった出産なのである。
とはいえ、キアラの出産は順調である。
キアラの出産は順調だが。
だが、その裏でもう一人。
奇跡というか、謎現象に驚愕しているサーヴァントが居たのであった。
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さて、キャスターのメディアさん(大人)は才色兼備な常識人枠のキャスターさんとしてカルデアでは通っている。
また、カルデアにおいて初期に召喚されたサーヴァントで、様々な異変においてキャスターとして活躍して来た事もあり、今でもカルデアではかなり頼りにされており、カルデアでは数少ない役職付きのサーヴァントでもあったりする。
なにしろ初期の頃はカルデアの調理場でその料理の腕を振るったり、洗濯、掃除、ドクターロマニやダ・ヴィンチちゃん達の書類処理の補助、様々な業務にその才能を発揮し、カルデアを支え続けた影の功労者とも言えるサーヴァントであり、人手不足だった初期のカルデアでは非常にありがたい人物であり、役職を与えられるのも納得できようものである。
『裏切りの魔女』などと呼ばれていた彼女だが、このカルデアでは全くそんな様子もなく、やたらと献身的に働いてくれていたわけであるが、その理由は簡単であった。
裏切らなくても良いほどにカルデアのマスターは善良であり、そして彼女がカルデアを気に入ったからなのである。
……まぁ、若き日のマスターを育成して自分好みに仕立てようとか思っていたり、マシュの可愛いさに入れ込んでいた、というのがその真相だったりもするが。
彼女の部屋には、若き日のマスター、マシュ、初期のサーヴァントとロマニ、ダ・ヴィンチちゃんが映った写真が今でも飾られている。
初期のカルデアのサーヴァントは、メディア(キャスター)、佐々木小次郎(アサシン)、メデューサ(ライダー)の三人であった。これは奇縁というべきか。
その写真立ての隣には若き日のマシュの精巧なフィギュアが飾られている。円卓の盾を持ったデミ・サーヴァントの姿のものと白衣姿に猫耳メイド姿に水着にゴスロリ、バニーガールに、魔法少女風に……。
全て、メディアの手作り、原型から何から何までオール・メイド・メディアである。
どんだけマシュ好きなんだよおい。
メディアはその写真を見ながら、はぁ~っと溜め息を吐いた。
「……一応、安産の御守りを渡しておいたけど、大丈夫かしら」
彼女は、キアラのお産がというよりはマスターの身が心配のようである。本当のところ、彼女はキアラに関してはあまり心配はしていない。殺生院キアラはサーヴァントだからである。それも強力かつ強大な、本来はサーヴァントに収まらないほどの実力を持っている。
いや、心配よりもメディアにとっては信頼が勝っていると言う方が正しいだろう。意外な話だが、実はメディアとキアラはわりと仲が良く、非常に友好的に普段から付き合いがあるのだ。
たしかに昔のメディアと殺生院キアラであれば仲が良くなるなど有り得なかっただろう。正直、相性としては最悪だったハズである。
だが、メディアもマスターやマシュと過ごした歳月の中でかなりその性格は丸くなっており、そしてキアラもかつてのSE.RA.PHでの彼女ではない。魔神柱に封印された良心や善性をキアラはサーヴァントになってから徐々に取り戻しており、その性格も常識度もある程度取り戻していた。
友好関係を結ぶきっかけはかなり意外な事に、実は、メディアはカルデアに来たばかりの殺生院キアラから相談を受けた事からだった。
彼女に相談を持ちかけられたときにはメディアももちろんかなり驚いた。しかし彼女の相談事がかなり深刻なものだった為に、メディアもやはり真剣に対処した。
キアラは、人間であった頃の良心が徐々に戻った事で、かつて自分がしようとした人類滅亡未遂を悔いていた。良心や善性が無い他の世界軸の自分にも恐れ、そしてそうなってしまっていた自分をも恐れていたのだ。
魔神柱が自分にした事に対する怒りも彼女の中にはあったが、たとえ魔神柱なるものが現れなくともいずれは自分もあの『殺生院キアラ』になっていたのではないか?と。
そう話し、震える彼女をメディアは忘れない。
その時から、メディアはカルデアに来たキアラが実は普通の人だった者であると認識したのである。
確かに性質的には、彼女は愛欲のビーストIIIとしての性質も持ち合わせている。アルターエゴのサーヴァントになったと言ってもやはりそうなのである。故に愛欲はかなり強い。
だが、このカルデアで彼女は布教もそのような事も全く行ってはいない。それは暴走する事をおそれているのと、そしてそれはかつて世界を滅ぼしかけた懺悔からによる。
そんなキアラをメディアはほっておけなかったのもあるが、気付けば二人は仲良くなっていた。
「不思議な話よね。はぁ~っ」
メディアもまさか世界を滅ぼしかけたビーストと親友になるなど思ってもみなかったのである。
キアラは今回のマスターの延命についての計画を他でもないメディアには事前に相談をしていた。
キアラは言った。
「マシュちゃんには悪いけれど、マスターを生き長らえさせる為にはこれしかないわ。パラケルススもナイチンゲールもバベッジもエジソンもテスラも、誰もがお手上げの状況で、私の宝具だけがこの状況を打ち破れる事がわかったのよ」
と。
メディアはそれに大反対した。
キアラとアンデルセンの事もあったし、彼女は生前、子供を産んだ事は無いのだ。そしてさらに、彼女がそれを実行したならば、マスターに恋慕している他のサーヴァント達からの恨みをかうことになる。
だが、彼女はそれでも言った。
「マスター亡き後、カルデアは滅ぼされるわ。これまでもそのような事態は何度もあったけれど、ホームズとモリアーティはそう予測している。そしてカルデア滅亡の後の人理崩壊も」
メディアは何も言えなくなった。メディアはこのカルデアにおいては秘書室長としての職務を持っており、また、カルデアのグランドマスターの秘書でもある。
立場上、彼女もその事を薄々は気付いていた。そしてマスターの命を延命させられる方法が無い事を。
「私は、人生を掛けて人類を、世界を救ったマスターが守った世界を、滅ぼされたくないのです。そして、それが私の贖罪。いいえ、それで許されるとは思ってはおりません。でも……私は、何と言われようとマスターを救ってみせます!」
メディアは、キアラの意志の固さを悟った。
故に、メディアはキアラを止められなかったのである。
「……マシュちゃん、あなたはどう思ってるのかしら。亡くなってもう五年になるけれど。許してくれるかしらね」
写真立てに向かってメディアはそこに写ったマシュに語りかける。
と、写真立てを取ろうとして、誤ってマシュのフィギュアに手が当たって、そのフィギュアが棚から落ちた。
「あっ?!」
と、メディアがそのフィギュアを受け止めようとしたときに、デミ・サーヴァントの姿のマシュのフィギュアが、まるで生きているかのように、身体を丸めて、くるくると回転し、そして床にスタッ!と着地した。
「え?ええっ?!」
メディアは面食らって驚いた。
なにしろ自分が作ったフィギュアが、それも可動モデルではなく、ただのレジンの固まりを削って作ったフィギュアが動いたのだ。それはそうだろう。
〔メディアさん、驚かせてしまってすみません。ええっと、ちょっとこのフィギュアの身体、お借りします!ああ、急がないと!〕
しかも、そのマシュのフィギュアは驚くメディアにそう話しかけると、勝手にスタタタタタタ、と走ってメディアの部屋を出て行った。
「ま、マシュちゃん?!ええーっ?!ま、待ってマシュちゃん!!」
走って行ったマシュのフィギュアを追って、メディアも部屋を出た。
わけがわからなかったが、何かが起ころうとしているのはメディアにもわかったからである。
マスターの出産から、走り去ったマシュのフィギュア。
そう、このカルデアでは、何かが始まろうとしていた。
マシュ、復活か?というわけで、引きっ!
さて、どうなりますことやら。
マシュでましゅっ!!という訳で。