フェイト~キアラがママっ?!   作:罪袋伝吉

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出産後、です。

ぼかして表現するのがこんなに辛いとは思いませなんだ。

※誤字脱字修正いただきありがとうございますm(__)m


マスター語り~出産後~

 母子共に無事に出産は終わった。

 

 キアラは途中、「らめぇぇぇっ」とか「んほぉぉぉっ!」とか、「でりゅう、でちゃいましゅうううううっ!!」とか、なんというか最初の方はそんな発言を連発していたが、途中から余裕が無くなったのか、普通に出産を終えた。

 

 ようやく産まれた俺はナイチンゲールに産湯に浸けられ、身体を洗われている。

 

『ふぃぃ出れた、ようやく……』

 

 破水から約二時間。

 

 ロマンの話だと、これでも安産な方だという。お産って言うのは大変なものだと身を以て知ったが、人間誰でもこの世に出たものは必ずそのようにして産まれたわけなのだが。

 

 俺が産まれたのはこれで二度目となるが、本当の母から産まれた時、つまり一回目の事なんて覚えているはずもなく、それに普通、二度目も産み出される体験なんてする事なんてあるわけがない。

 

 それに二度目の赤ん坊体験なんて、このカルデアに来てから有り得ないことばかり体験してきた俺でも、これはないわー、ないわー、と思うほどの異常現象なのだ。

 

 昔の大卒フリーターだった頃ならこれは夢に違いないと頬をつねっただろう。だが、今の俺にはつねる必要も現在無かった。

 

 ぐぇぇぇぇ、としんどい。きつい。

 

 この体力を使い切ったこの辛さよ。

 

 正直な話、産まれて来るというのはあんなにキツいものなのかと思った。

 

 まず、途中で呼吸が苦しくなった時にはもう、死ぬかと思った。いや、今まで臍の緒で酸素とかもらっていたものだから、肺呼吸に切り替わって苦しい事苦しい事。

 

 そりゃあ、産まれて来るときに赤ちゃん泣くわー、そらめっさ泣くわー。

 

 しかし俺は泣かなかった。おぎゃーおぎゃーとか泣かなかったのである。精神が赤ん坊のそれでは無く、大人だったからだ。

 

 だが、それがいかんかった。

 

 呼吸していないと思ったナイチンゲールに逆さ吊りにされて尻をしばかれた。

 

 どうやら羊水で鼻や器官が詰まったと思われたようだ。

 

 「ふんぎゃああああああっ!!」とリアルでは叫んでしまったほどに痛かった。

 

 ああ、まだ尻がひりひりする。つか赤ちゃん肌はデリケートなんだぜ?お手柔らかに頼むぜナイチンゲール。つか泣きそうなぐらいまだ痛い。

 

 泣いてないけどな?!

 

 しかし産まれたての赤ん坊というのは声がまともに出ないもんなんだな、と気づく。言葉を出そうにも、んにゅ、とか、ふみゃ、とかやたらと不明瞭だ。まともに喋れないので念話を使うしか無い。目もまともに開かなくて周りが見えないので能力を使って見ている。

 

……つか、どんなチートな能力だよ。グランドマスターなんて呼ばれていたが、魔術の類もなにも才能は無かったのになぁ。つか、魔法を使えたためしなど無いのだ、俺は。令呪は使えるけど。

 

『つか、キアラは大丈夫か?』

 

 少しぐったりしているキアラに言う。

 

「……ママは大丈夫で御座います。というか、お産というものはあのように……まるでリョナ物のような……。ひぎぃ感満載な体験で御座いました……」

 

 疲れている様子ではあるが、ひどく満足げな笑顔だった。その笑顔の意味は俺にはわからない。

 

『なんだよそのひぎぃ感と言うのは』

 

 つか要らん新語を作るんじゃねぇなどと思うが、イメージ的によく分かる表現なのがまたなんとも。

 

 ひぎぃ感、なぁ。

 

「はぁ、でもやり遂げましたわ。マスター、生誕おめでとう御座います」

 

 とはいえ、必死で俺の命を助ける為に自身のお腹に入れて頑張ってくれたのだ。そこは感謝しかあるまい。

 

『……ありがとう』

 

 俺は素直にお礼を言った。

 

「いえいえ、どういたしまして。うふふふふふ」

 

 チラリ、とキアラの目が俺ではなく、どこか隅の方を見たので、俺もそちらに意識を向けた。分娩室に何か影のようなものがいるのが見えてそちらの方を見てみる。能力で見ているので、気配や姿がおぼろげであっても関係ない。どうやら俺の能力は幻術や何らかの隠行の術などを見破れるらしい。

 

……カメラを構えた百貌のハサンがそこにいた。

 

『……百貌さん?あれ、居たの?』

 

 全く会話にも加わっていなかったし、気配も消していたからわからなかったが、百貌さんはいつもの髑髏のマスクを外してにっこりと笑った。

 

「はい、マスターの大事ですから。ええ」

 

 デジタルビデオカメラを構え、俺の方を撮影しつつ。

 

……ビデオ、カメラ……?

 

「ええ、キアラ殿の要望で。きちんと出産シーンはばっちり、頭が出てくるところから、ズームでマスターの産毛の毛穴までしっかりと高画質でくっきりと」

 

『……ちょっと待て、おい、動画撮ってるなんて聞いて無いぞ?!ちょ、おい!!』

 

「現代では出産シーンを映像に残して、子供が大きくなった時に親と一緒に見るのだとか。母と子の絆をそうやって共に再確認する……それは実に感動的な事だと思い、その重大なお役目、ええ、この百貌のハサンがここに完遂いたしましたぞ!」

 

 ははははははは、と百貌のハサンはじぃぃぃーっと俺の顔をカメラで撮ると「編集作業に回しますので!でわ!!」と、片手をシュタッ!と上げて颯爽と分娩室から走り去って行った。

 

 おそらく、彼女は俺に何か言われる前に逃げたのだろう。

 

『ちょまっ?!何てモン撮ってやがんだぁーっ?!』

 

「うふふふふ、出産の一部始終をノーカットで高画質。感動の映像ですわ」

 

『いや、というか絶対あの、らめぇぇぇ!、とか、おほぉぉぉっ!、とかはカメラで撮られてるの意識してただろ?つか、途中から苦しさとかで演技する余裕が無くなっただけで!!』

 

 何てモン撮ってくれたんだよ、おい。

 

「まあまあ、キアラは初産なんだ。やっぱり記念に残しておきたいっていうのはわかるしね?」

 

 ロマニは苦笑しながらそう言ったが、いや、多分全然違うと思うぞ?キアラの思惑は絶対違う。

 

 パラケルススは、

 

 「サーヴァントのお産は非常に珍しいので、医療データとして残させていただきます」

 

 などと言っている。正直な話やめてくれと言いたい。

 

「んふふふふ、後でママと一緒に見ましょうねぇ?」

 

『いや、遠慮する……』

 

 つーか、自分が産み出された映像なんて見たくも無い。そんなもん記録に残されたら一生の黒歴史だと思うんだ、俺。

 

 俺は頭を抱えたくなったが、抱えようにも残念だがまだ手足が上手く動かない。小さく手足がパタパタ動くのみで、ナイチンゲールに

 

『動かないで下さい。まだ産湯で洗っているでしょう?』

 

 と優しく叱られた。

 

『あ、すみません……というか、あの、ナイチンゲールさん?つか俺の足っつーか、どこ見てんの?』

 

「いえ、股関節テストは不要ですね。ドクター、股関節脱臼等の心配は無いようです。あと、確かに男の子です」

 

 ああ、そう言えば産まれてきた赤ちゃんの中には、産まれてくる段階で股関節脱臼を起こしている子が出ることもあるのだとか。まぁ、それは無いようだが、つかどこを見て男の子だと確認してんだよ、つか人の股間マジマジ見んな。

 

「ふふっ、そのうち前しっぽは立派になります。大丈夫」

 

『あのな、そういう事じゃないんだよ。つか前しっぽ言うな?!』

 

 だが、俺の言うことなどまるで無視してナイチンゲールは優しく産湯から俺を引き上げると、てきぱきと柔らかなタオルで俺の身体を拭いて、そして布でくるんだ。

 

『ふおっ?』

 

 布でくるまれた為に手足の動きが制限され、思わず呻くが、

 

「おくるみで包むのはまだ首が据わっていないのと、体温が下がらないようにするためですよ」

 

 と、ナイチンゲールが言った。

 

 なるほど、確かに頭が定まらないので不安だったがこれなら安定する。それに布地もほわっとした感じで暖かい。

 

『なるほど』

 

 と、感心していると、ナイチンゲールは俺をキアラにほいっと手渡した。

 

 キアラは俺を受け取ると抱っこして俺を覗き込んだ。まるで慈母のような雰囲気満載だ。なにこの優しげな笑みは。

 

 しかしまぁ、アップで見るとデカいなぁ。俺が小さくなったせいなんだが。

 

『……赤ん坊の姿だと、みんなまるで巨人みたいだよなぁ』

 

 俺はキアラに抱かれつつ、そう言った。

 

「ふふふっ、産まれたばかりですから。私には小さく感じますわ。赤ちゃん出口から出るときは大きく感じましたけど」

 

『……赤ちゃん出口とか……、いやなんでもない』

 

 やぶ蛇をつつくのはよろしくない。そう、ぼかした言い方をしてくれているのだ。医学的な名称とか一般的な言い方とか、するといかにもヤバいからもうそれで良い。

 

「……マスター入り口、もしくはマスター出口」

 

『やめれ』

 

 言うと思ったが、あんたそんなキャラ……いや、そんなキャラだった。殺生院キアラはそんなサーヴァントだった。なんかいつもと雰囲気違ったように感じたが、通常運転だわ、こいつ。

 

「マスター専用孕み袋穴?」

 

『めっさ人聞き悪いから止めなさい!』

 

 はぁ、つか疲れているだろうに、無理矢理下ネタは止めなさい。

 

「はぁ、話をしてなければ普通に幸せそうに赤ちゃん抱いてる母親に見えるのになんだろう、君達ホント、シュールな会話してるよねぇ。仲良いのは良いことなんだろけど」

 

『俺だってんな会話したくねぇわっ!!』

 

 と、ロマニに叫ぶようにそう言った時。

 

 ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

 と、けたたましくカルデアの警報が鳴った。

 

〔ロマニ!!サーヴァント召喚システムが暴走してる!!〕

 

 館内のスピーカーからダ・ヴィンチ(ロリンチ)ちゃんの声が響いた。

 

『はぁ?!召喚システムが?』

 

「なんだって?!ここ数年以上、何度やっても作動しなかったのに?!」

 

 ロマニは手術着とマスクをばっ!と脱ぐと、

 

「パラケルスス!後は頼む!何が起こっているかわからないけど、念のためマスターとキアラを安全な場所へ!!」

 

 そう言って、ソロモン王の姿にその身を変えると、一瞬でテレポートして消えていった。 




召喚システムの暴走。

果たして誰が来るのか。

そして、フィギュアのマシュはどこ行った?!

次回、ママもう一人(嘘)。こう御期待下さい!!

なお、誰がママになるんだよぉぉっ?!的なアンケートしてますが、皆さんティアマトさん好きですね。つか新サーヴァントにティアマトさん欲しい。


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