母の愛は最強。ならばこの星最初のオカンは多分かなり強い。
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カルデアの召喚システム『システム・フェイト』は数十年前から全く機能しなくなり、それ以来全くサーヴァントの召喚が出来なくなっていた。
理由は不明ながら、おそらくは人理に危機が無くなったせいだと考えられている。
それ以降、人理継続保障機関・フィニス・カルデアは歴史観測を行うだけの機関として、ほぼ冷や飯食いと揶揄されつつも様々なサーヴァント達の能力や財力などに助けられつつも企業化することによって独立し、他の組織の干渉や横槍などをかわしつつ存続している。
それが出来ているのも、全てはマスターとサーヴァント達の血と汗と涙のおかげであった。
そう、独立するまでの道のりはとにかく資金集めに終始していた。
人理修復をしつつも様々な現代における経済活動をこなし、時には経済に強いサーヴァント達に助力を乞いつつ資金を集めたり、サーヴァント達や神話系サーヴァント達の残した遺跡の財宝をその本人達の承諾を得て発掘して資金にしたり、時には魔術系サーヴァント達の御守りや護符などの効果で世界中の宝くじを当てたりして資金を集めたり。株にFX、先物取引に油田開発、様々な事もやった。
全てはカルデアの運営の為に、である。
気が付けば、完璧に人理修復し終わって人類の未来が紡がれた後には、マスターそのものがカルデアの筆頭出資者となっていた。
幾多の世界的な事業で成功を納め、幾多の企業を手中に納め、マスターは世界有数の億万長者、いや、経済界に金字塔を築いた伝説の大金持ちになっていたのである。
マスターは得た財力でカルデア財団を全て買い取り、文字通りカルデアの党首となった。
もちろん問題が無かったわけではなかったが、その頃にはどこの如何なる組織、いかなる魔術結社、そして聖堂教会すらもカルデアの財力とそして保有するサーヴァント達の力の前に膝を屈した。
最初の内は影でマスターを『金の力で成り上がった、魔術すらも満足に使えぬ下賎の者』などと揶揄する者達も居たが、幾度となく世界はマスターによって救われ、人類は未だに霊長の座にある。その功績は如何なる者であっても認めないわけにはいかず、悪口はすぐに消え去り、彼を偉大なるマスターとして讃える声が鳴り響く事となった。
まぁ、今のカルデアの状況はさておき。
現在、休止して動かなかったシステム・フェイトが暴走していた。
システムフェイトが勝手に動き出したという事は、これは何らかの異変ではないか、とドクターロマニ、いやソロモンは普段は使うことの無い瞬間移動を使って、カルデアのシステムフェイトの前まで移動した。
システムフェイトは今は亡きマシュの宝具、円卓の盾を通じて発動する。その盾は今もマスターの部屋に飾られていたというのに、一体誰がその盾をシステムフェイトに設置したのだ?!ソロモンは何かこのカルデアに、また悪逆なる者達が入り込み、動いているのではないか、と思い魔力を解放して己のサーヴァントとしての姿に変身していた。異常事態故にそれもやむなし、正体を知られたとしてもこのカルデアを護らねばならぬ。
「くっ、マスターの死を好機と見たどこかの組織がまた動いたのか?!」
瞬間移動した先にはすでに副所長代理のダ・ヴィンチ(ロリンチ)ちゃんと、英霊として再び顕現したダ・ヴィンチちゃんが待っていた。
「ダ・ヴィンチ、状況を説明してくれ!シバの観測結果は?!」
「なんの問題も無く、異変も異常も観測されてはいない!何らかの干渉も人理的な災害も無いのにシステムフェイトは正常に作動している!!かなりの霊力と魔力が注がれている!!力の源は……紀元前……バビロニア?!」
フォン、フォン、フォン、フォン、フォフォフォフォフォーーーーーーン!!
召喚システムの光の輪が現れ、そして三つに分裂する。そして通常のサーヴァント召喚であれば有り得ない現象がそこで現れた。
三つの光の輪が、粒子を放ち、金に光り輝き、そしてまだ回って光を増している。
「くっ、反応がデカいぞ!ロマン、こんな召喚反応は未だかつて無い!!かなりのデカブツが出現するぞ!!」
ダ・ヴィンチちゃん(大)が叫ぶように言った。
「ダメです、システムフェイト、ダウン出来ない!動力を切っても勝手にエネルギーが注ぎ込まれて止められない!!くっ、魔力増大中、顕現化の余波が来る!!みんな伏せてっ!!」
ロリンチちゃん(ダ・ヴィンチ小)がコンソールをなんとか制御しようと張り付いているが、どうにも不可能のようだ。
サーヴァントの正体は不明だが、しかしその出現の余波は数値からしてこの部屋が吹き飛ぶレベルの衝撃である。ソロモンは二人のダ・ヴィンチを庇うようにして前に出ると、魔法障壁を展開しようと手を伸ばした。
と、そこに懐かしい声が叫ぶように言った。
「ダ・ヴィンチちゃん達!ドクターロマン!!下がって下さい!!」
すたっ!!と、何か小さい人型の姿が入って来て、そして言った。
「其は全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷……顕現せよ、『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)』ぉぉっ!!」
それは、メディアの部屋から逃げ出したマシュのフィギュア人形だった。
有り得ない事に、そのフィギュア人形の持つ盾の宝具が発動、そしてそれは小さいフィギュア人形が張ったとは思えない、本物の宝具が発動したかのような大きな防御壁を展開した。
「ま、マシュ?!」
「みんな、下がって!!」
完全にマシュの宝具が展開したと同時に、システムフェイトはバシュゥゥゥッ!!と最大の光を放ち……。
ズドォォォーーーン!!と衝撃波が生じた。強大な魔力の奔流が、マシュの張った防御壁に襲いかかり、圧倒的な物理的衝撃を与えた。マシュのフィギュア人形はそれに耐えようと踏ん張るが、しかしさすがにフィギュア人形の身である。
「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」
マシュが吹き飛ばされそうになったところを、ソロモンが幾つもの魔法障壁を作り出して、マシュの『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)』に重ねて展開し、マシュのフィギュア人形を庇った。
「くっ、マシュ!大丈夫かい?!」
「は、はい、くっっ……!!」
ゴォォォォッ!!
光の奔流が吹き荒れ、二人はそれをなんとか防ぐ。やがて、その衝撃は徐々におさまった。
だが、部屋のあちこちが吹き飛び、そして壁はまるで爆弾でも爆発したかのようにめちゃくちゃになっていた。
埃がもうもうと垂れ込め、そして火災警報器のブサーがけたたましく鳴った。天井のスプリンクラーが一斉に水を撒く。
「げほっ、げほっ、ううっ、しかし何が……?」
ダ・ヴィンチ大小二人が咳込む。ソロモンは召喚システムの方へ一歩進み、用心深くいつでも魔法を使えるように身構えた。
強大な魔力反応が召喚システムの円卓の上にいるのを感じて、一瞬ソロモンは身震いした。スプリンクラーの水ではない、冷や汗が知らず額から流れ落ちた。
かのソロモンであっても到底太刀打ち出来ぬほどの力を秘めた存在。
スプリンクラーの水によって瓦礫の埃がどんどん晴れていく。
召喚陣の上のサーヴァントの姿がだんだんと露わになった。
まず見えたのは、長く頭に生えた二本の角。山羊の如き角は左右に。そして面長な美しい顔と、そして両腕を交差させて胸を隠すかのような姿勢をとる、その身体。
『……我が名はティアマト。喚ばれてはいませんが、来ちゃった……。うふふふふ……って、げほっげほっげほっ、うっぷっ、なにかここ埃だらけ……ううっ、ひどいわね……げほげほげほっ?!』
そう、サーヴァントとして、有り得ない存在が、ここに顕現したのであった。
「……あの、すみません、帰って下さい」
思わず、ソロモン(中身ロマン)はジャンピング土下座して帰還を願った、という。
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母親というものは非常に厄介なものである。
例えば、遠く離れた地で一人暮らししている大学生がいたとしよう。
学費を稼ぐための深夜のバイトからアパートに疲れ果てて帰ったら寝よう、もうダメ、休まないと……という感じで部屋に帰ったら、郷里からオカンがやってきていて勝手に掃除していて、秘蔵のエロ本が山積み、そんで説教くらいながら正座させられて……的な厄介さである。
いや、その程度のスケールで収まらない厄介さなのだ。
なにしろ生きとし生けるもの全てのおっかさんが押し掛けて来たのである。
しかも、かつてメソポタミアにおいて戦った事のある、ビーストIIにして強大な力を持つ創世神の一柱、女神ティアマトなのである。
そのティアマトはソロモンにお説教をかましていた。
「いいですか、まったくあなたは反省しているのですか?!あなたの下僕の悪魔だとかなんだとかは、目上の者に対して……云々……、そもそもこの星の全ての生命の母たる私にろくでもない……云々……そもそも、あんな醜い姿に変えられて……云々……聞いているのですか?!」
「はい、全くその通りです!私のしつけがなっていなかった為に、始祖神様にあらせられましては非常に御迷惑をお掛けいたしました!!これこの通り、魔神柱の不始末は私の不始末、誠に申し訳ありませんでしたぁ~っ!!」
ソロモン・ロマニ・土下座右衛門・アーキマン、という新たな称号を得てしまうかのような見事な土下座。
これがかつてのソロモン王だと思いたくない土下座っぷりであった。
『えーと、これ、一体どうなってんの?』
とりあえず警戒態勢が解除され、ダ・ヴィンチ(大)に呼ばれて応接室に来てみれば、ティアマトに土下座するソロモン王という何かろくでもない事態がそこにあった。
「はい、先輩。メソポタミアの一件でビーストにされた苦情をドクターロマニに言って糾弾している最中です……」
はて?何かとても懐かしい声がどこからかしたぞ?とキアラに抱き抱えられているマスターは念視で辺りを見回した。
『……俺、どうかしたんだろうか。今、妻の声がしたような気がしたんだが?』
辺りを見回せど姿は見えず。念視は気配を消そうが光学ステルスを発動しようが、霊の類だって捉えられる。
なのに、声の主はいない。
「いえ、ちゃんと私はここにいますよ?先輩」
『……いや、見えない。ダメだキアラ。産後の疲れとか緊急事態とかで疲れてるみたいだ。あとマシュが好き過ぎて幻聴まで……』
「いえ、マスター。テーブルの上です。ほら、そこに小さいマシュさんが……」
「はい、お久しぶりですね、キアラさん」
『……あ、いた。って、いやいやいや、それはメディアが作ってたマシュのフィギュアじゃないか?!つかなんでまた……。いや、俺を担いでもなんにもならんよ?……はぁ、というかなんて悪戯だよ』
「いえ、悪戯ではなくてですね、異変というかカルデアにかなり大きな魔力の塊が召喚されてこちらに来そうに……まぁ、それはあちらのティアマトさんだったんですけど……その魔力の余波でなんとかこの人形サイズなら霊器を発現出来たので駆けつけたのです」
『……へ?じゃあ、そのフィギュアん中身はマシュ?マジ?俺の奥さん?愛妻?俺のマシュ?』
「……あの、まだそのように思っていただけて、少し恥ずかしいというか……。ええ、はい、私です。マシュ・キリエライト・藤丸、でしゅ、っと舌噛んじゃった、ええ、マシュです」
『……その舌の噛み方、確かにマシュ!!』
「はい、霊器の反応も確かにマシュちゃんで御座います。小さくなっておりますけど……」
キアラも困惑していた。
ティアマトが無理矢理召喚システムに介入して来るわ、マシュはティアマトが過去からこちらに放出していた魔力を利用してフィギュアに乗り移って来るわ、マスターは赤ん坊だわ、しかもマシュは赤ん坊になってるマスターにも関わらずツッコミを入れないわ、ソロモン王はティアマトに土下座してるわ、ダ・ヴィンチちゃんは二人いるわ。
もう読んでいる方もこのカオスな状況にわけがわからなくなっているだろうことは想像に難くない。
そう、書いている人もノリだけで書いてて、だんだんわけがわからなくなっている。
そう、ティアマトがカルデアに来た理由もわからなければ、マシュがフィギュア人形の中に入った理由もわからない。
故にその辺はまた次回に持ち越す、そういう引きである。
ではまた次回っ!!←おざなり過ぎ。
クレーマーなモンスターオカン。そして土下座するソロモン王。
キアラママに抱き抱えられている赤ん坊になったマスターと、フィギュア人形になったマシュ。
カオスは加速する。
なお、メディアさんはまだあちこちでマシュフィギュアを探していましたとさ。