いえ、意外にモリアーティの口調は難しいですね。
というかまぁ、やはりキアラさんの貴重な授乳シーンとか難しいですねー。なんかヤバくなって自主規制連発ですしおすし。
※誤字脱字の修正いつもありがとうございますm(__)m
古代バビロニアの神話『エヌマ・エリシュ』の冒頭はこのように綴られている。
『上にある天に名は無く、下にある地にもまた名は無かった頃。
はじめにアプスーがあり、すべてが生まれ出た。
混沌を表すティアマトもまた、すべてを生み出す母であった。
水はたがいに混ざり合っており、大地は形がなく、濡れた場所も見られなかった。
神々の中で、生まれているものは誰もいなかった』
ティアマトは母なる海、その夫となったアプスーは淡水を意味し、それは互いに混じり合う河川と海で原初の生命が生まれたという。
考古生物学においても原始生命の発生は、山の土の様々な養分を運ぶ河川の水と海のちょうど混ざり合う所で最初の細胞を持つ生命体は生まれたと考察されており、逆を言えばエヌマ・エリシュの記述の正しさを現代人は数千年もかかってようやく実証した、という風に捉えるべきなのかも知れない。
というか、メソポタミア文明とかシュメール人とか本当は宇宙人だったんじゃね?!とか、超科学文明があったとかオカルティスト達に言われているのは紀元前の書物にそういう事が載っていたりするからだろう。
まぁ、ギルガメッシュ辺りが聞いたら、「愚か者め!人類の学問や物事の本質は変わらぬ!!古代が現代に劣るというのは現代の愚物どもの驕りでしかないわ!!」などと怒るのではないかと私は予想したりなんだり思うわけなのだネ。
それはさておき。
ティアマトの話である。
ティアマトは本来は非常に寛容な性格をしていたと伝えられている。ただ、どれだけ寛容だったのかと言われれば太古の神性であり、その程はわからない。
なにしろ、時代によって寛容の物差しなどかわるのだ。例えば日本の首狩り族と名高い戦国のサムラーイ達の中での寛容な人物と、平和な近代の日本の中での寛容な人物では、その寛容さの程度は変わるのと同様だと言えば理解してもらえるだろうかネ。
いや、これは例えが悪い。別に私はティアマトを侮蔑したりするつもりは無いし、当時の神々を野蛮だとは言うつもりも無い。もちろんサムライ達もだ。異文化の精神性というのは推し量るのが非常に難しいと言っているだけなのだヨ。
……とはいえホームズめ、自分は調べることがあるから後は宜しくだの言いおってからに。事情聴取などという仕事は本来、君の仕事なんではないだろうか!!
正直言って怖いじゃないか。太古の存在というのは現代人とはその思想も思考も違っているし、人類が生まれる前どころか生命の起源にすら遡るような存在なんだぞ、このティアマトは。
つかまだ理性があるし友好的なのは見ればわかるが、それでも単体で世界を破壊出来るような存在なんだぞ。犯罪計画練ってコセコセ準備してなんとか地球を破壊するような計画をした私なんぞとはそもそもレベルが違う!!
それに私ゃ財務と法務が今の仕事だってーの!!仇敵に自分の仕事を丸投げとか何を考えてんだよっつー話でだ。なんかこう、カルデアに来てからやたらと悪の教授という私のキャラが薄らいで、ともすればマスター君の執事とかマスター君の先生とか、そういうポジにいるような気がするんだヨ。
……まぁ、その地位は、やぶさかでは無いな。というかむしろ良ポジだな、いや実に悪く無い、うん。
まぁ、今更犯罪をやらかすのはネ、マスター君の手前……いや、実のところは現在も世界中の悪の組織はそこそこ動かしてるんだけどサ?カルデアの運営を妨害するような組織を排除するように動かしてたりするんだけどサ?そういうのも、抑止力としては必要だったわけなのだよ。極力はカタギさんにゃあ、迷惑かけねぇ方針でやってますけどネ。
……あれ?やっぱり私は悪の首領だな、うむ。
まぁ、脱線ばかりしているが、悪の教授、犯罪界のナポレオンと言われた自分のアイデンティティが近頃揺らいでいる気がして、こんな風に思考をしなければ自己確認がし辛くなっているのだよ。
はぁ、近々、ちょっと敵対組織をぶっ潰すように手下を動かして憂さ晴らしでもやるかネ。そろそろ連中もカルデアにちょっかいかけてきているしネ?
……そんな事はさておき。まぁ、話を戻そう。
ティアマトが子供達を溺愛していたのは確かだ。
夫であったアプスーに子供達が叛乱を起こした時にも彼女は子供達を愛するが故にアプスーに加勢しなかったという。
だが、その矛先が自分に向けられた時には、悲観して抵抗をみせたが。しかし、どうもその辺がおかしいのだよ。
いや、バビロニアの特異点でのあのティアマトの戦闘能力は記録で見たが、たとえ聖杯の力が加味されていたとはいえ、あんなデタラメなものに神々が太刀打ち出来たとは思えない。
神々のサンプル的な存在は正直私も知りはしないが、あのティアマトにはたとえ魔神柱が何本束になってかかって行っても敵わないだろう。かのゲーティアでさえも。
私の計算では少なくともそう出ている。
うむ、わからん!というわけでティアマトさん本人に聞いてみよう。
「ティアマトさん、本当の所その辺どうなんでしょうかネ?」
「ええーっ?それを私に聞いちゃうのぉ?というかぁ、デリカシー無さ過ぎよぉ?それ」
「いやまぁ、確かにそうですよネー。まぁ、事情聴取のついでにやはり古代の神秘の母神から話を聞いてみたい、というわけでしてネ?」
「ん~、もう、仕方ないなぁ。当たり前の話、私がいれば子供達が迷惑しちゃうじゃない?でも無抵抗に、っていうとおかーさんの沽券に関わるってモンでしょ?その辺でちょっと意地悪してみたのよ。……たしかに悲しくはあったけど!ものすごく寂しかったけど!おかーさんだもの。子供達の行く末を願わないわけはないじゃない?」
『意地悪』とティアマトは言うが、伝説の通りであるならばかなり厄介な11の魔獣を生み出して新しき神々を脅かしたという。バビロニアの異変の際、ティアマトは『ラフム』と呼称された魔獣のような者を人を再び取り込んで産み出したというが、あれでも厄介どころの騒ぎでは無かったという。記録映像とその『ラフム』のデータを私も見たが、正直、マスター君達もよくぞあれをかいくぐったものだと過去の記録ながら私は胸を撫で下ろしたものだ。
そんなのが11タイプもいたとするならば意地悪どころの騒ぎではあるまい。新しき神々が確かに人よりは強い存在だったとしてもたまったものではなかっただろうことは想像に難くない。
だが彼女の子達である新たな神々はそのとんでもない母からの意地悪を乗り越えてティアマトを虚数空間へと封印したわけだ。
「なるほど。封印されるのは最初から計画の内だった、と?」
「そうなるわね。まぁ、子供達と居られなくなるというのは私にとっては断腸の思いだったけど!つらかったけどね!……でも、ゲーティアだったかしら?ソロモンとかいう子の使い魔に、その積もり積もった思いを利用されちゃったのよね。最初のうちはなんとか理性振り絞ったけど、聖杯のすごい力に負けちゃって結局は迷惑かけちゃったのよねぇ」
はぁぁぁぁっ、とティアマトは溜め息ついて頭をうなだれさせた。この原初の母たる女神は、どれだけ子供たる我々に対しての愛情を持っているというのか。
封印されたのも子への愛故。ビーストにされても本当は自分の子達、数多の生命達を滅ぼしたくは無かったのだろう。そして、自分を討ったマスター君やマシュ君達に恨みも何も持たずに『迷惑をかけてしまった』と自己嫌悪に陥る。それも自ら育んだ生命に対する愛故。
はぁ、作者はおれども母など無き物語系、それも悪役専門の私にはなんともこの母たる女神の愛情は推し量れはしない。
まぁ、私が事情聴取をしているのは、物語のキャラクターであるからなのだ。なにしろ、地球上の全ての生命体は彼女の系譜に連なるわけだが、本のキャラクターである私やホームズ、あとはナーサリーライムなどはその影響を受ける事は無いのだ。あと、そういう伝ではフォーリナーもそういう存在ではあるが
……逆を言えば、このマザー・ティアマトの深い『愛情』から来る影響も受けることも無いのだ。
私はなんというか、非常に……。少し、ほんのちょっとだが羨ましくなってしまった。
母の愛を受けられぬというのはいささか悲しくはあるが、ドンマイ!ジェームズ・モリアーティ。
つか、アラフィフがママンが恋しいなど、それも悪の組織の首領が?ははは、私のキャラではないサ。
再び気持ちを切り替え。
「ふぅむ。とはいえあなたはカルデアにお越しになった。マーリンはマシュ嬢を再びカルデアに復活させる為だと言ってましたが……」
私はティアマトに話しかけた。
「ええ、あの盾の子ね。あの子はとても頑張っていたわぁ。怖かっただろうに、必死にみんなを守ろうとして戦っていたわ。あんないい子だもの。そりゃあなんとかしてあげたいって思うじゃない?」
なるほど。確かにあのマシュ嬢は様々なサーヴァント達に気に入られ愛されていた。彼女はいつも健気で必死に戦っていたのだ。
もちろん、新宿では直接、彼女は戦ってはいない。その頃は彼女は戦える身体では無かったらしいから。
だが、あのジャンヌオルタに非常に評価され、そしてアルトリアオルタにもそうだった。
そして、その『彼女』を語るあのとんでもなく黒いお嬢様方の顔と言えば。
最愛の友を自慢する、親友の如き表情だったのだ。信頼と友情、そして愛にあふれていたのだ。信じられるかね?あの闇落ちして救いようの無い、アヴェンジャーやセイバーオルタが、だ。
私は目を疑ったんだヨ。
どこが闇落ちしたって言うんだ?そんなにいい顔して友を語る復讐者に闇落ちセイバーなんぞ、聞いたこと無い。
まぁ黒セイバーはマシュ君に宿っていたギャラハッドなる英霊を語っていたわけだが、それでもだ。
ようするに、だ。
マシュ君は愛されていたのだ。闇に落ちた者達が誇るぐらいに、何ら黒い感情も持てない程に。
そんな子をティアマトが愛さないはずは無かろう。なにより、生まれは人工であれ彼女は人から産み出された者なのだから。
「……なるほど。ところでここからが本来の質問なのですが。もしもマシュ君をあなたが再生するとして、その……『ラフム』とかそのような魔獣とかになったりしないでしょうね?」
私は、一番肝心な質問をした。
そう、マスター君の妻があんな姿になったならば彼は最悪の不幸に落ちてしまう。
我が雇い主にして自慢の教え子、マシュ君とどっこいどっこいなほどに底抜けな善人にして、愛されるべきお人好しの新たな人生の前に不幸を置くのは、如何に私が悪の首領だとしても許しはしない。
「ああ、マーリンにも聞かれたけど、最初から霊基を持っていたら普通に再生出来るわよ?黒化も能力の暴走で起こってたけど、今なら完全に制御出来るしね。ただ、そうね、魔力が増幅されるぐらいかしら。パワーアップするのは仕方ないかも」
……なるほど、私の心配は杞憂のようだ。
「ふむ、ならば大丈夫、ですかネ。まぁ、後はここの所長代理のドクターロマニや専属医師のパラケルスス達とその事をお話いただければ宜しいでしょう。ハハ、またカルデアにも明るい希望が戻って来ますな!ああ、本当に喜ばしい事ですなぁ!」
そう、本当に喜ばしい。いや、悪役一筋で生きてきたが、どんな悪事を達成したとしてもここまで喜んだ事は私の人生……いや、出演作というべきか?……でも無かった事だ。
ああ、これだからマスター君のサーヴァントはやめられないんだナァ。本当に、ホームズのライバル役よりもなによりも私は今の自分が大好きなんだナァ。
素晴らしきかなカルデア人生!一度やったらやめられないんだこれが。
私はティアマトの手を取ると、心の底から礼を言った。信じられるかい?冷酷非情とうたわれたこの私がだゼ?他人の為に喜び、他人と自分の為に礼を言う。
ハハハ、自分でもびっくりだが存外悪くないと来てる。おお、大いなる全ての者の母よ、感謝します!ときたものだ。
いやはや、カルデアは最高だよネ?
まるでモリアーティ教授が善人のようじゃないか。
でも、裏では対立組織などを自分は動かずに手下を使って粛清とかしてますけど。
さて……マーリン生きてるかなぁ?