フェイト~キアラがママっ?!   作:罪袋伝吉

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老いて寿命僅かなマスター。

その元に懐かしいあのロクデナシがやってきて……。

キャスパリーグさんの跳び蹴り再び。

アルテラさん来たけど、エレちゃん来ない。エレちゃん……。


マスター語り。私はこうしてハメられました。

 私は様々な所でグダオと呼ばれているが、自分では何故グダオと呼ばれているのか、よくわからない。

 

 グランドオーダーのグとダに男を付けた、という説が有力らしいが、まぁ、今更なんと呼ばれても構わない。

 

 ただ、本名はそのような名前ではない。

 

 というかよく考えて欲しいがその名前はシェイクスピアやアンデルセンなどが当時のあの大冒険をフィクションな小説として編纂した際に私の実名などを使うのは不味かったので仮に付けたもの……いや、私の本名がとても平凡過ぎたという説もあるが……であったりする。

 

 まぁ、それらはラノベにダウンサイジングされたり、マンガになったり、アニメになったりしたが、それらの主人公の名前も当然私の名前は使われてはいない。

 

 まぁ、主人公が女性に置き換えられている場合もあるが、もちろん私は男性である。

 

 というかその後作家系の連中はそれでかなり稼いだようで、私とマシュは焼肉とか寿司とか奢って貰ったりしたのだが。

 

 まぁ、昔の作品であるので覚えている人は少ないかとは思うがね。

 

 私は現在、床に伏せっている。

 

 病気ではない。老衰という奴だ。グランドオーダーの大冒険を妻、マシュとともに繰り広げたあの頃からすでに80年ほど経っており、そりゃあ歳も食うというものだ。

 

 はぁ、あの時はキツかったり辛かったり悲しかったりぐだぐだだったり、いろいろあった。様々な時代へと行って様々な人……というか英霊や神達と出会って、そして戦ったり助けられたり、助けたり一緒に戦ったり。必死で出来ることをやって。

 

 頑張れたのはみんなが居たから。そしていつも隣にはマシュがいた。そう、妻が居たからだ。

 

 そうして、妻と共に出会った英霊達は、未だにこのカルデアに居たりするのだが、いやはや毎日が賑やかだ。

 

 そう、今でも賑やかなんだよ。

 

 召喚したサーヴァント達はほとんどが残ってくれていた。

 

 グランドオーダーの終了後にダ・ヴィンチちゃんはほとんどが英霊の座に帰ったような事を言っていたが、大半が残っていた。

 

 みんな私やマシュがほっとけなかったようだ。

 

 円卓の騎士達は全員いるし、ジャンヌ・ダルクにジルドレェ、シェイクスピアにアンデルセン、ハサン達はキングハサンまで残ってくれている。あのゴルゴーンも、それに殺生院キアラ、あとは、ドクターロマン……じゃなかった、真名を呼ぶとネタバレするので言わないが彼もサーヴァントとして何故か帰って来てくれてたりする。普段はあのロマンな姿なんだけど、マシュは彼の帰還を泣いて喜んだっけ。

 

 私がこうして老いてベッドに伏せってしまってからは少々彼らも気を使ってくれているのか騒ぐのは自重してくれているようだが、毎日誰かしら来てくれている。

 

 主治医のソロ……いや、ドクターロマンにパラケルスス、専属看護士のナイチンゲールは当たり前だが毎日私の様態を診にくる。

 

 エレシュキガルは『私の冥界に来るように!』とか三蔵ちゃんは『仏の弟子になるのです!』とか言う。オジマンディアスやニトクリスは私の為のピラミッドを作っているとかなんとか。

 

 というか、ピラミッドになんて眠りたくないよ。それにミイラにもなりたくないし。

 

 なんだろう、私は死んだらどうなるのやら不安だ。というかみんな私が死んだら英霊達の座に帰ってしまうのだが正直なところそんな遺物が残された場合どうなるのだろう。つかそんな墓標は嫌だと思う。

 

 あと、ノブナガが死んだら位牌に焼香ぶちまけてやるとか言っていたが、いや死んだら君は還らなきゃいけないからね?

 

 はぁ、と溜め息一つ吐いて私は妻の形見とも言えるあの盾をベッドに横たわったまま、首だけ向けて見る。

 

 壁に掛けてある盾は、亡くなった妻が使って居たものだ。これだけは残った。

 

『円卓の盾』

 

 旧姓マシュ・キリエライトは、グランドオーダー作戦発動直後に起こった爆破テロによって瀕死の大怪我を負った。その際に、彼女と融合していた円卓の騎士のギャラハッドが彼女に力を貸し、彼女はデミサーヴァントになった。

 

 彼女はいわゆるデザイナーズチルドレン、つまり人工受精やバイオテクノロジーによって作られた実験体であり、その命は長くないはずだったのだが、彼女はグランドオーダー作戦を生き延びて、そしてつい五年前まで、つまり90数歳まで生きる事ができた。

 

 その原因については私も当のマシュにもわかってはいないが、何にせよ長生きできたのだ。それは良かったと思っている。

 

 私達の間には子供は出来なかった。原因は全くわからない。英霊の現代医学の父、パラケルススにさえもわからなかった事だ。仕方は無い。

 

 子供は居なくても、それでも私は幸せだった。

 

 彼女は死後、英霊の座に逝ったらしく、もうすぐ私が赴く場所には居ないようだ。それは少し残念だが、私は悲観してはいない。

 

 またいつか逢えるという予感、いや、確信があるのだ。とはいえ状況から判断しておそらく今生ではなく転生したどこかでだろう。その時にはまたマスターとサーヴァントの関係になるのだろう。

 

「……途方もなく先の再会かね」

 

 そう独りの部屋で呟く。

 

 だが人の世はまだまだ続く。だからまた逢える。

 

「私達の守った可能性だよ、マシュ。だから、また逢えるさ」

 

 そう、盾に語りかける。

 

 この盾は、彼女が亡くなった後もなおここに残り続けている。ともすれば彼女がまだここにいるような気すらするのだ。いや、見えないだけで盾を通じて見守り続けているのではないかと思う。

 

 彼女はとても心配性だから。あとああ見えて嫉妬深いから。

 

「はぁ、とは言え次に逢えるとしたら、また人理の危機とかそういう大事に巻き込まれるんだろうかねぇ?」

 

 それはそれで厄介だと思うも、マシュと二人なら大丈夫だという確信がやけにする。

 

 なんだかんだ言っても私はいつも信頼しているんだよ。そして彼女もそう思っていると確信している。

 

 相棒にして私の専属サーヴァント。そして最愛の妻。かけがえのない私の大好きな、マシュ。

 

 何年、何十年、それこそ何百年経ってもそれは変わらないと自負している。

 

 いや、どんなけマシュ好きなんだよ?!とか言われてもそれは致し方なかろう。夫婦なんだから。

 

「ふう、さて寝るかね。お休みマシュ」

 

 私は彼女の盾とデスクの上の妻の写真にお休みの挨拶をすると、手元のスイッチを切って部屋のライトを消そうとした。

 

 と。

 

「あら、もうお休みですの?マスター」

 

「む……?」

 

 ふと、声のした方へと目をやると、いつの間にか一人のサーヴァントが私の寝床の横に居た。

 

 頭に頭巾を被った仏教の尼のような格好をしたサーヴァント。アルターエゴ、殺生院キアラである。

 

「ああ、キアラさんか。ふむ、寝るつもりだったが」

 

 彼女は私がこうして伏せってからはめったに顔を見せることなどなかった。

 

 と、言うか彼女は単体で私に面会する事を他のサーヴァント達から禁じられており、必ずアンデルセンを伴ってもう一人戦闘力の高い誰かと共に来なければならないと決められている、このカルデアでは最も危険度が高いサーヴァントなのだ。

 

 だが、何故彼女が私のところに来るためにアンデルセンを伴わねばならないか?と言えばキアラとアンデルセンの間に、かつて何かあったらしい。

 

 詳細は私にはわからない。

 

 かつて彼女が真性悪魔になった事件の時の事らしいが、その彼女と戦ったサーヴァントであるギルガメッシュは特に教えてはくれなかった。それに私も聞く気は無かった。

 

 ただ、ギルガメッシュは一言横柄な感じで。

 

「あやつらのそれは、子供の色恋沙汰よ。つまらん!」

 

 であった。

 

 確かに二人を見ていると、両者共に何故かお互いに嫌うような素振りを見せる癖にどことなくツンデレ感溢れる感じであり、素直になれない中学生のこじらせた恋愛的だったりしたので、ああなるほどと私とマシュはそっとしておいた。

 

 それにキアラもかなりの意地っぱりで、めったにアンデルセンと接触しようとしない。

 

 そこを安全装置として滅多に私と接触させないようにされた訳であるが(発案はギルガメッシュである)、しかしドアのところを見ればアンデルセンとシェイクスピア、そしてマーリンがいた。

 

 つまり、彼女は話し掛けたく無いと言っていたアンデルセンに話し掛けてまで私に会いに来たのだろう。

 

 彼女はなんというか義理硬い一面がある。またけして情の無い人間……サーヴァントではない。

 

 だが彼女が私のところへ来るということは、もうすぐ私の命は尽きてしまうということなのだろう。

 

 いや、というかそれはもう確定なのだろう。何故ならサーヴァントではない、最果ての塔の引き籠もり魔術師本人がここに来ているのだから。

 

「というか、マーリン?!何故あなたまで?!最果ての塔に居るんじゃ無かったのか?!」

 

「いやぁチャリで来た!徒歩だと辛いしね?」

 

「……いや、最高峰の魔術師がチャリで来るなよ。つかチャリでどうやってこの雪山登って来たんだよ」

 

 カルデアは険しい雪山の山頂付近にあるので、はっきり言ってチャリで登るのは無理である。つか、今は冬なのだ。山の麓につく前に自転車ごと雪に埋もれてしまうだろう。

 

「なに、今はもう上に登るためのロープウェイあるからね」

 

「いや、今の季節はロープウェイも止まってるからね?!」

 

 そう、冬真っ只中の険しく高い雪山なのだ。ロープウェイがあってもこの季節には止まっている。なによりもう夜なのだから止まっているはずだ。

 

 あはは、と彼は笑ったがおそらくは最果ての塔からこちらに空間を繋げて無理矢理に直通で来たのだろう。それもこのカルデアの厳重な魔法防壁や空間防壁をすり抜け、監視網にも引っかからずに、だ。

 

 なんでもありだなこの人も。

 

「フォーッ、マーリン死すべしフォーッ!!(ドカッ!!)」

 

「ぶへぁっ?!あいたたた、君、僕を見ると跳び蹴りして来るの、止めないかな」

 

 マーリンは部屋のどこかに居たフォウさんに跳び蹴り食らわされた。どうもフォウさんはマーリンの事が嫌いらしい。

 

 フォウさんは幻獣であり、後で聞いた話だが、人の悪い感情などを食らって大きくなる存在だとか。

 

 とはいえ、フォウさんは今も昔も大きさは全く変わっていない。あのままの姿である。

 

 やっぱりかなりの知性あるんじゃないか?とか思ってしまうがフォウさんはフォウさんだから気にしない。妻が亡くなってからもフォウさんはいつもずっと私の側のどこかに付いて居てくれている優しい子なのだ。

 

 私は苦笑いしつつ私は上げた頭を枕に落とした。

 

 いや頭を上げるのだって辛いんだよ、この身体は。なんてったって100歳越えてるんだよ。

 

「そうそうたるメンツだねキアラさん」

 

「ええ、アンデルセンはどうでもいいというかむしろ見劣りしてますけれど。シェイクスピアはヘタレなアンデルセンが締め切り間際の彼を無理矢理連れ出してきたのですわ。マーリンさんはお部屋の前でお会いしましたけれど」

 

……相変わらずのツンデレだね、この人。

 

「俺も締め切り間際というか、俺達はもう執筆出来る時間が限られてるんだ。書き残したいものはまだまだ沢山あるのに、この女が泣きついてきて『マスターに会いに行かせて下さいまし』などと……」

 

「誰が泣きつきましたか!」

 

 アンデルセンの毒舌もいつもの調子だ。昔、初めて会ったのはたしかロンドンだったと記憶しているが、その姿と声のギャップに驚いたものだ。

 

 私は目を細めて二人を見る。お互いに気があるのは傍目から見てもよくわかるのになぁ。というかキアラが現代でアンデルセンが執筆した新しい童話を買って、そのファンレターを楽しそうに出したりしているのはみんな知ってるのに。

 

 あと、それをキアラからだとわかってて嬉しそうにその返事をアンデルセンが書いて出してるのもみんな知ってるのに。

 

 というかもうお前ら結婚しちまえよ。

 

「はぁ、犬も食わないとはこういう事ですかな、マスター。というか正直なところマスターにはまだまだ長く生きていただきたいものです。モーツァルトとコラボした歌劇映画のシリーズもようやく最終シーズンに突入、撮影もとうに始まっておるところなのですがねぇ」

 

 シェイクスピアはそういって嘆く素振りをした。その手にはつい先ほどまで執筆をしていたのだろう、ペンのインクがついている。

 

 そういえばシェイクスピアは様々な芸術系のサーヴァント達やエジソンやテスラなどの技術系のサーヴァント達と組んで現在、映画監督として活躍していたりする。

  

 私もその映画は今まで見て来たし楽しみにしていたが、最終話まではもう見れないようだ。それは少し残念だ。

 

「ふぅむ、出来るだけは生きていたいが、こればかりはどうしようもない事だから」

 

「……はぁ、本当に君は欲が無いってもんだね。悟りなど開いてもいないのに悟ったような事を言う。いかなる偉人でも足掻いたり不死の霊薬を探したりしてきたというのに。他でもない、このカルデアのグランドマスターが、だよ?ギルガメッシュ王や不死伝説にまつわるサーヴァントも一人や二人では無いというのに、何故それをしないのかな?」

 

 マーリンはそう真顔で言う。

 

「不死伝説に出てくる人物達も今はサーヴァント、つまり英霊になっている。そういう事さ。それに私に悔いは無いよ。マシュも見送れた。子供は出来なかったが、だが人の未来は紡げた。このカルデアも若者達が維持して行くだろう。私は役目を終えて逝くべき所へ行くだけだよ、マーリン」

 

「……本当に君は美しい人生を織っている。ずっと覗いて見て知っているけれどね。だが敬愛すべき我が友よ。それではあまりに悲しい。そして納得が行かない者達もかなり多いのもわかってくれたまえ。そう、視聴者サービスというものが全く最近無いのが僕には不満だったとも付け加えておこう」

 

 げしっ!げしっ!とフォウくんがマーリンを蹴りつづけているが、彼はお構いなしにペラペラとろくでもない事を言い続け……いや、本当にろくでもないな、この人は!

 

「いや、人の事をテレビか何かの番組みたいに言わないでくれ。というか私にどうしろと言うんだよ。もう死にかけの老人なんだよ、私は」

 

 と、よく考えてさっきから会いに来たのに静かなキアラの方から何か不穏な物を感じて振り向くと。

 

 キアラが、静かにぶつぶつと念仏というか呪文というのか、つまりようするに、アレである。

 

 しかも何か大股を開いて、つかパンツ履いてねぇ?!

 

「……ブツブツブツ。大悟も解脱も我が指ひとつで随喜自在。行き着く先は殺生院。あぎとの如き天上楽土」

 

「なんとぉぉぉっ?!つか殺す気満々?!つかマーリン!!いや、アンデルセンっ!!シェイクスピアっ?!なんじゃこりゃああああああっ!!」

 

 くぱぁ。何かが開き、有り得ないほどに裂けた。

 

「ああ、大丈夫だよ。また十月十日(とつきとおか)後、新たな君の誕生日にまた会おう」

 

「うっふふ。マスター、私に還りなさいませ?記憶を頼りに、優しさと夢の源へ……?」

 

「それ、途中から某エヴァの主題歌やがなぁぁぁっ!!裏切りやがったな、マーリン!!」

 

「いやぁ、僕はどちらの味方でもないって昔言ったよね? それにボクは悲しい別れとか大嫌いだ。意地でも死に別れなんかするものか、ともね。だから彼らの計画はとても好都合だったんだよ。そう、僕は君のファンだからね」

 

「チッキショーメェ!!つか、吸い込まれるぅぅぅっ!!」

 

「着床、なさいませ?快楽天・胎蔵曼荼羅(アミダアミデュラ・ヘブンズホール)。孕み孕み孕みQ~っっ!!」

 

「うっぎゃあああああああああああっ!!」

 

 吸い込まれる最後に、マーリンの声が聞こえた。

 

「ああ、安心したまえ、父親は君でもう登録してあるし、法的にも遺産相続や様々な手はずはモリアーティやホームズ達がしているからねー?元気にまた産まれてくるんだよ~?」

 

「てめぇ、覚えておけよぉぉぉっ!!つか、ぎゃああああああああああっ!!」

 

 すっぽん!と、私はキアラの中にずっぽりハマって意識を失ってしまった。

 

 というか、なにこの現象っっ?!

 

 

 




 というわけで、キアラさんめでたく妊娠、マスターそのものを。

 胎蔵曼荼羅ですし、仕舞っちゃうだけじゃなくてきっと産めるに違いない、という考えだけで書いてしまった話ですが、女の人って神秘だな~。←をい。

 というかどうなんでしょうね?大丈夫なんでしょうか、こんな話。

 次回、悪な人々の悪巧みの回。

 じゃんけんぱーっ。
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