フェイト~キアラがママっ?!   作:罪袋伝吉

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お偉いさんだよ!ヴラドさん!

でも、もっと偉い人ににらまれてるよ?

苦労人だから仕方ないね!

※誤字脱字修正いつもありがとうございます。

※なお、今回はある意味不快な表現があるかも知れませんが、特に特定の人々に対する批判等の意図はございません。その辺ご理解とご了承、お願いいたします。


新統括理事・ヴラド三世。

 カルデア財閥の日本本社・統括理事に就任したヴラド三世(ランサー)は、ヴルード・クリストフ・ブランと名乗っていた。

 

 なにしろ吸血鬼ドラキュラは非常に有名であり、ブラムストーカーの小説を読んだことは無くとも世界中でそのドラキュラを知らない者はいないほどなのだ。

 そして、厄介かつ不本意な事にそのモデルとされたヴラド・ドラクリヤ、すなわち彼、ヴラド三世もまた知名度が高く、もしもヴラドが本名を名乗ったりすれば、本人だとは思わないまでも大抵の人間がドラキュラを思い浮かべられてしまう。

 

 まぁ、これがバーサーカーのヴラド三世ならば、イメージ的にもそのものであるので驚かれるが、ランサーのヴラド三世だと、外国人のマッチョなゴツいオッサンとしか見られず、あー、同名の人なんだぁ、的な反応が返って来たりするだけだったりする。

 

 しかし、本来のヴラド・ドラクリヤはどちらなのかと言えばランサーの方がより本人なのである。バーサーカーは物語に括られた姿で現界しており、フィクション寄りなのである。

 

 全てはブラム・ストーカーが悪い!!と、ランサーもバーサーカーも断言しているが、ブラム・ストーカーはまさか英霊化はするまい。

 

 ブラム・ストーカーの吸血鬼ドラキュラは元々はとある人種問題や社会問題の暗喩として書かれた作品であると言われており、その辺を考察するのは、今の世界情勢からすればかなり危険である。

 

 また、当時、吸血鬼ドラキュラが書かれた英国やヨーロッパ圏の時代背景などを考察するのも非常に危険なのである。

 

 そう、けして最初に吸血鬼ドラキュラを題材にしたサイレント映画にしてその姿は原作に最も忠実と言われた『ノスフェラトゥ』の吸血鬼がなぜに嫌悪感を催すような姿であったのに対して、他の映画のドラキュラが身なりの良い貴族風かつダンディー風になったのか?という事も考察してはならないし、当時のヨーロッパ圏で大流行した疫病等の感染拡大ルートととある人種のヨーロッパ圏移動ルートを併せて見てはならないのである。

 

……そりゃあナチスが出てくるわけだ、なんてことも思ってはイケナイヨ?

 

 故に、本物のブラム・ストーカー本人の英霊なんぞ出せるわけが無いのである。ぼかして、ならどうかはわからないが。

 

……まぁ、その辺を詳しく書くとかなりヤバいのでこれぐらいにしておこう。多分、これギリギリスレスレだし。

 

 なんにせよ、最大の被害者はヴラド三世である。かなりの風評被害なので彼はブラム・ストーカーの遺族に名誉毀損で損害賠償を請求しても良いと思う。

 

 それはさておき。

 

 ヴラド三世は渋い顔、というよりもものすごいしかめ面をしつつ、加藤段蔵(アサシン)から渡された報告書を読んでいる。

 

「……許せぬな。我はあらゆる不徳、不義を許さぬ。だがこれは……」

 

 報告書には、カルデア本社の幹部の一人がその娘を何者かによって誘拐されて、その娘の身柄と引き換えにカルデア本社の社外秘の重要書類を要求されているとあった。

 

「はっ、誘拐されたのはカルデア本社の専務の一人娘。彼は善良とも言える、幹部の中では社に忠実にして信に厚い、云わば忠臣とも言える方ですが……。早くに妻に先立たれ、家族と言えばその娘のみ。しかし……」

 

「賊は何者かわかっておるな?」

 

「はっ、中華マフィア『六世会』という最近大陸より日本に来たはぐれ者達です。引き込んだのは、エルメロイがわざと残していた『生贄』の幹部達だと判明しております」

 

「不忠なる者をわざわざ残すからこのような事が起こるのだ!何が生贄よ。ただの害悪ではないか!」

 

 ヴラドは吼えるように叫び、ズドン!と木製のデスクに拳を打ちつけた。打ちつけてもなお力は収まらず、ヴラドの身体の筋肉で着ているスーツがミチッ、と音を立てる。あまりの膨張にスーツの縫い目がはじけそうになっていた。

 

 ベキベキベキ、とオーク樫の一枚板で作られた高級なプレジデントデスクが真っ二つになって砕かれる。

 

 ヴラドは怒っていた。卑劣な手段を行う中華マフィアの連中に。肉親を人質にして非道な行いをし、裏切りを強要する、犯人共に。

 

「私自ら出るぞ!段蔵っ、場所を言え!!悪漢は許してはおけぬ!!」

 

 ヴラドの目が赤く憤怒を宿す。が、段蔵は平然と

 

「落ち着いて下さい。とうに事態は解決済みです。先ほど柳生殿が誘拐された娘を救出に成功したとの事。また、天巧星・燕青殿が『六世会』のチンピラ共を始末、警備課のヘクトールが裏切った幹部達をすでに捕縛済みです」

 

 と、答えた。

 

「なんだと?!……くっ、先に言え。これでは私の怒り損ではないか!!見ろ、デスクが壊れたぞ!!」

 

「いえ、ですから、あのロード・エルメロイが誰かを危険に曝すような策や計略は立てませんし安全をまず確保した上の……」

 

「ええい、それでも万が一という事もあろう!!誘拐された娘に何かあればどうする!!」

 

「サーヴァントに、普通の人間相手でそれはありません。というかあなたが荒事に出たならば、それこそ大量殺害事件になりかねません。聖杯戦争以外での殺人は御法度、です」

 

「……お前は私を何だと思っとるのだ。バーサーカーの私ならばともかく」

 

「カルデア財閥統括理事、です。荒事をやらかしてマスコミ沙汰にでもなったらどうするんですか!」

 

「うぐっ……、しかし柳生は出張っておるではないか!それはいいのか?!」

 

「柳生殿はこの手の仕事はお手の物ですので。スマートかつ隙もございません。万が一にもマスコミ沙汰にもならぬよう隠密に動ける方ですし」

 

「……まぁ、たしかにそうなのだが!そうなのだが!!なんか釈然とせんぞ?!というか私のこの怒りのやり場はどこへ持って行けばいいというのだ!!」

 

 うがーーーっ!!と、ヴラドが頭をかきむしったその時、統括理事のオフィスのドアをノックする音がし、返答も聞かずに、秘書風のスーツを着たシバの女王がタブレット端末を抱えて入って来た。

 

「「あ!」」

 

 ヴラドと段蔵は入って来たシバの女王を見て、固まった。

 

 シバの女王は確かに表向きは統括理事補佐であるが、しかし、本当の役割はヴラドのお目付役であり、監視役である。

 

 シバの女王は本当ならばイスカンダルの次の統括理事の候補として挙げられていた程に経営の能力の高い英霊である。しかしながら彼女はそれを辞退した。

 

 彼女が辞退した理由は、前統括理事のイスカンダルの路線を崩すべきではなく、さらに自分では難しいから、という事だった。

 

 だが、他の王では尊大過ぎたり、働き過ぎてセルフブラックな労働時間により過労死しかけたり、責任感からストレスを溜め込んでオルタ化しかねなかったり、毒を盛りたがったり、アツモリ踊りまくりだったりノブノブうるさい小さいのとかデカいのとか呼びまくったり、と路線を崩す以前の問題児が多かったのだ。

 

 故に、まだ人格として路線に沿って運営出来るだろうヴラド三世(ランサー)が満場一致で選ばれたわけなのだが、問題は非常に多かった。

 

 まず、ヴラド三世(ランサー)はとにかく、悪行や不正をとにかく嫌う人物であり、彼が生前に統治していたワラキアでは、確かに平和ではあったし栄えはしていたが、とにかく悪行や不正を行った貴族達が処刑される事が多く、毎日のように串刺しの刑に処されていたという。そして、また今回のように怒りのままに行動しようとする危うさも持ち合わせており、とにかくそれを諫めるためのブレーキとして彼女がマスターの名代として付く事になったのである。

 

 シバの女王は破壊されたプレジデントデスクを見て、一瞬目を丸くしたが、そそくさと秘書デスクに向かい、そして自分の椅子に座ってタブレット端末をクレイドルに差すと、

 

「はぁ、お高いデスクですのに。あ、弁償はヴラドさんのお給金から出していただきますから」

 

 と、さらりと言った。そして懐、というか豊満な褐色の胸の谷間から計算機を出し、ピポパ、と数字を打ち出すとそれをヴラドの方に向けた。

 

「ちなみにぃ~、このような金額になっておりま~す!」

 

 金額を見たヴラドの顔が、ウゲッ?!となった。

 

「な、ななな、なんとぉーっ?!」

 

「今時、オークの一枚板の無垢材のデスクなんてそうそうございません。それに、元々この部屋は理事長、つまり本来ならばマスターのお部屋。調度品もまさしく本来マスターの財産とも言うべきもの。おわかりですかぁ?」

 

「む、むむむむ、くっ、友の物であるならば、弁償も致し方ない。だが、シバの女王よ、その、せめて月賦で頼む……」

 

「はい、とりあえずマスターに謝罪してから、どうするか決めましょうか?」

 

「うぐぐぐぐ、すまぬ……」

 

 がっくり、とヴラドはうなだれ、そして心に誓った。怒りに任せて何かを破壊するのはよそう、と。

 

 なにしろ、シバの女王が見せた電卓の金額は。

 

 ゼロが8つ。そう、日本円でゼロが8つつくお値段なのである。これが黄金王や太陽王、征服王ならばすぐさま払えるだろうが、ヴラドにはいささか辛い。まぁ、どこぞの腹ぺこ王……もとい、騎士王でも頭を抱えるかも知れないが、彼女には円卓の騎士達がおり、全員で弁償しようとするだろうが、ヴラドは実質一人なのである。もう一人バーサーカーの彼もいるが、二人とも自分にはあまり干渉しあわないのだ。

 

「ええ、反省するならばよしといたしましょう。とはいえ、マスターには報告しておきますねぇー?」

 

 にっこり笑うシバの女王。マスターの名代であるだけではなく、この女王にはヴラドも敵いそうに無い。

 

 なにしろカルデアの財務省と呼ばれたサーヴァント、こと、金銭的な事ではおそらくは彼女にかなう者はそうそうおるまい。

 

 ヴラドの財布は、今後当分寂しい事になりそうだった。

 

 




英霊に出せない方々は歴史の上で様々おります。

例えばナチスのちょび髭伍長さんとか(人種差別的に)。チェ・ゲバラとか(政治的な問題で)。マリリン・モンロー(ケネディ大統領の真実的に)とか。某アメリカ産のクロネズミの作者さんとか(ハハッ!的に)。

……シモヘイヘさんとかは出てほしいなぁ。ルーデル大佐とか。舩坂弘さんとか。ハリマオとか。

無理かなぁ。うーむ。
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