かつてファウスト博士を堕落させた彼ですが、しかしながら彼だけでは首尾良く事を進められなかったのであります。
そして意外な人物の共謀。
さらにやはりあの男が?!
なお、子安さんの声を脳内で思い浮かべながら読んでいただけると幸いですm(__)m
話は数週間前に遡る。
カルデアのあまり誰も来ない一角。ある意味嫌われ者のサーヴァント達が潜むその区画では、数人の嫌われ者というか厄介者というのか、カルデアの職員達からすればあんまり関わり合いになりたくないような、お友達になりたくないような連中が集まっていた。
【厄介者その①】ジェームズ・モリアーティ教授。
彼はかの有名なコナン・ドイルのシャーロック・ホームズに登場する悪の教授であり、そして宿敵でもあった人物であり、ホームズに匹敵する頭脳を持ち、こと犯罪計画を立てるにおいて右に出るもの無し、という非常に難儀な人物である。
なお、ネタバレになるが『新宿のアーチャー』を名乗っていた事もあり、その時のマスターを気に入ったのか、事件解決後の召喚でほぼホームズと同時期にカルデア入りしたのである。
「えーと、すまないがこの【厄介者その①】という紹介はなんだね?!老眼から涙が出てきてしまうぞぉ?!」
……無視無視。
【厄介者その②】ジル・ド・レェ(キャスター)。
かつてジャンヌ・ダルクと共にフランスを救国せんと戦ったはずの高潔な騎士の成れの果て。
全てに絶望し魔術に傾向し多くの子供達をやたらめったらと殺害したりした後処刑されたという経緯を持つ、変態ジャンヌスキー。
かつて聖杯によってジャンヌ・ダルク・オルタ(通称・邪んヌ)を生み出したり、クリスマス前にはサンタなチビジャンヌオルタを作ってしまったりした、笑えるけれど業の深いロンパリ変なエリマキ野郎である。
先に召喚されたジャンヌを追うようにして召喚されたときは先に呼ばれていたセイバーのジル・ドレェを絶望させた。
「いささか、失礼な紹介ではありますな、いやはや」
……無視無視無視。
【厄介者その③】メフィストフェレス(自称悪魔)
変態ビザール風もっこり声がテラ子安(変態)。
「……いや、テラ子安とはなんです?!中のひとは関係無いでしょう?!というか紹介になって無いでしょう?!」
……めんどくさいので超無視。というか子安さん頑張りすぎでしょう。
【厄介では無いけど呼ばれた人】パラケルスス。
現代医学の祖にして偉大なる錬金術師。
とはいえ、錬金術を薬品の合成に応用したり、四大元素云々を提唱したり、ホムンクルス作ったり、鉄や鉛を金に変えたりとなんとなく本当に現代医学なのか?と疑いたくなるけれど、現代医学の祖。
逸話は多いがサーヴァントになってからは現代医学にも精通し、名前を伏せて未だに医学論文を執筆し、貢献している人(サーヴァント)でもある。
厄介では無いけど厄介な人ではある。本名はテオフラトゥス・ホーエンハイムとか何とか言うらしい。
「……まぁ、いいか」
……良いのかよ。
何故にこの四人がこのような所に集まっているのかといえば。
「……ふむ、なかなかに興味深いがしかしそれでマスターは納得してくれるのカネ?正直なところ私は駄目だと思う」
鼻ヒゲを指で弄りながらモリアーティ教授は少ししかめっ面でメフィストフェレスを見ながら言う。
その横でうんうんとジル・ド・レェも頷いている。
「この中で一番マスターとの付き合いの長い私でも、無理なのではと、推測いたします。ええ、無理ですね」
ここぞとばかりにマスターに召喚された時期を自慢するように言うが、確かに彼が召喚されたのは『オルレアン』の後、セイバーの方のジルや聖女の方のジャンヌダルクが召喚された少し後ぐらいなので実際付き合いは長い。
「ふふふ、確かに承諾が必要ならば無理でしょうとも。そう、無理でしょうとも。ですが皆様お忘れですか?我々はそもそもからして承諾など取るような人物でしたかね?」
「む?」
「は?」
「考えても見て下さいよ、プロフェッサー。あなたはかつて犯罪を計画する前に、被害者宅に赴いて『すみません、あなたのところで今度大きな犯罪をする予定なので承諾していただけますか?』などと言った事はありましたか?ムッシュウ青髭、あなたは『お宅のお子さんを連れ去って惨たらしく殺しますがいいですか?』などとはまさか親御さんには言ったりしなかったでしょう?」
ふはははは、とメフィストフェレスは嗤いつつその目を爛々と輝かせて言った。
「もちろん私は悪魔、契約によって動く事は動く訳なのですが、彼は善良過ぎて、しかも数多の善性の神格にも近い英霊達にこよなく愛され、かつてのファウスト博士以上にその魂を横取りされる可能性が高いのですよ、これが。そう、それには特に異論はありませんし、私とても彼が天界へ召されるというのには反対はしておりませんとも。むしろその方がお似合い」
「では何故に彼を延命しようなどと私に持ちかけたのです?メフィストフェレス。ロンドンでも仲間でしたがかつての貴方は単なる鬼畜な殺人鬼のような男だったと記憶していますが……?」
パラケルススがとても気味の悪い物を見たような目でメフィストフェレスを見る。彼もまた『ロンドン』ではメフィストフェレス同様に敵方のサーヴァントであったのだが、その時にはこの悪魔を自称するサーヴァントが人の寿命を延ばそうなどと、よもや言うようになるとは思っていなかった。
しかし、パラケルススの問いかけにメフィストフェレスは首を振って答えた。
「つまらないからでございますよ?わかりませんか、ドクターパラケルスス。このままではあまりにつまらない。ああ、我らのマスター。普通ならば忌み嫌われる者としての我らのようなサーヴァントを嫌いもせずあるがままに接し、そして我らのような極悪なる者達と友好的に接しているというのに悪にも邪にも染まらず、ついにはもう天界の門すら彼の為に開かんとする、そのような人物が、只、安らかに穏やかに死を待つばかり、そんなのは我々のマスターに相応しくない、そうは思われませんか?」
非常に屈折した事をいうメフィストフェレス。つまりコイツは何のかんの言いがかりをつけてでも自分の『お気に入り』のマスターに死んで欲しくないのだと一同は彼を分析した。
存外、かのファウスト博士を地獄へと堕ちようとする瞬間にわざと救わせたのは他でもない彼自身なのではないか?などとも疑ってしまいそうである。
しかし、言いがかりをつけたところで人の死はどうしようもない。これでは単に駄々を捏ねている子供のようである。
「いや、それは誰もが夢見る大往生なのではないかね?三蔵法師などは悲しみつつもかくあれかし、的に納得していたケドネ?」
モリアーティ教授は軽口を叩くように彼に言ってみた。聡明な悪のプロフェッサーにも、彼がなんの仕掛けも策も用意せず、無駄話をするようなサーヴァントではないととっくに分かっていた。
ただし、そんな彼であってもどのようにしてメフィストフェレスがマスターの命を長らえさせようとしているのか全く分からなかったのである。
故に面白く無い。だからつついてみたのである。
考えられるとするならば呪物か宗教関連の様式や伝説の再現を使った復活ではないか?とモリアーティ教授は推測したのであるが……。
「宗教関連のサーヴァントなんざ、ぺぺぺのペーでございます!!面白くない、つまらないと言っているのでございますのことですのよ、ぺーーーっ!!このカルデアではトラブルこそが命!マスターは酷い目にあっても最後は大団円、サーヴァントが持ち込む笑いの厄災に慌てふためき、そして最後はタハハと苦笑する。それがあのマスターでしょうとも!!……何十年我々は、あの頃のマスターのあの苦笑しつつもなんでも許すような顔を見ていないのでしょうか。また、再び見たいとは思いませんか?否、誰もが見たい!!誰もが願っているのはもう言うまでもないのですよ!!」
「……どうでもいいけど君の語り口調はなんか長くないカネ?まぁ、確かにそれはそうだけどねぇ(ふむ?宗教関連のサーヴァントの伝説再現では無い?)」
「そうでしょう、そうでしょうとも!ゆえのマスター延命計画、ゆえのカルデア再生計画なのですよ!!」
そう、この集まりはマスターを延命させてしまおうという計画をするための集まりなのであった。故に近代医学の父、現代医学の祖と言われたパラケルススも巻き込まれているのであるのだが……。
「だからといって、私には何もできませんが?如何なる現代薬品も太古の霊薬も彼には効かない。未だに彼の奥方の盾はそういう悪影響があるものや副作用があるものを防いでいるのでしょう。病を防いでいる反面、そういう物も効かないとなると、手の施しようが無い」
パラケルススは首を横に振って残念ながら、と言った。
そう、マシュがギャラハッドから受け継いだ盾は未だに健在なのである。若き日のマスターの側には常に彼女がおり、そして彼女が人並みの寿命を経て亡くなった今も彼を護るようにその盾はあらゆる害悪を未だに寄せ付けないのである。それはたとえ薬剤であれ霊的な災いであれ。
故に現代医学もオカルトも彼には効かなかったのである。或いはビーストクラスの魔力ならば突破は可能かも知れなかったが、そのような存在はそれこそとっくの昔、過去に事件を解決する際に倒してしまっていたし、協力などしないだろう。なんにせよ無理な話である。
皆、一同に黙りこくり、そして俯いてテーブルのクロスをのぞき込むようにした。
「……無理ですか。我々は奇跡すら起こす英霊の集団、なのにただ一人のマスターすらその命を長らえさせれない」
ジル・ド・レェはぼそりと弱音を零した。
「否、否、否否否バゥアーーーッ!!ドクターパラケルスス、あなたには延命が無理なのは良く知ってるし私も全っ然、期待もしてまっせーん!!ケケケケケ!!良いですかぁ?全然期待してまっせーん!!」
落ち込む三人、しかしメフィストフェレスのテンションは変わらない。というかなんと失礼な。
「では、何に期待すれば良いのだ?この悪魔め!!」
ジルドレが珍しく静かに怒りの瞳を向けた。彼がこのように真面目に怒るのは誠、ジャンヌダルクの事以外では非常に希有である。だが、それをモリアーティ教授が制した。
「まぁまぁ、待ちたまえよ。私が思うにこの自称悪魔のお人好しはもうとっくに解決策を用意していると見える。悔しいかな我々が思いつかなかった方法で」
違うカネ?とニヤリと笑って見据えて、メフィストフェレスに話すように促す。
「なんと?!」
ジルドレのロンパリ気味の目がギョロリと見開く。パラケルススも驚きの表情だ。
「そーうです、そのとーり!!マスターの奥方の盾は災い、呪い、毒、諸々の害悪に対してはおそらく最高クラス!!ですが祝福、加護、その他のものに対してはまーったく働かない!!そう、ではオメデタならばいかがでしょう?」
「「「は?」」」
「いえいえ、マスターは男性でもう老人です、オメデタするのは不可能ですし、オメデタさせるのもお年で機能がホレもう無理ですよもちろん。さて、皆様はとーっくにお忘れかも知れませんが、このカルデアにはかつてビーストだったアルターエゴ、しかも今回の策略にはうってつけのお方がおられます!!まぁ、最近は新しいイベントでかなーり影が……げふんげふん。ではお入りいただきましょう!!なんでも子宮にしまっちゃうよおねぇさん!!殺生院キアラさんどぇーす!!」
「はーい、アルターエゴ、殺生院キアラ、まかり越しましてございます。あと、その異名とか影が薄くなったとか言った方、後でカルデアの体育館裏、ですよ?」
「うへぁっ?!いえいえいえいえ、それはご勘弁を!?」
「……そう言えば、いたねぇ」
「うーむ、SE.RA.PH以来ですなぁ」
「まぁ、翁祭り終わってからはまた新しいイベントが、ね」
「散々な言われようですわね。こう見えてお色気とかその辺は他のサーヴァントにはまだ負けておりませんと自負しているのですが?!」
「……まぁ、じぃじの方が多分人気はあるかと。それに『死にたくない』さんとか『Ωアビゲールちゃん』とか『エレちゃん』とか色々、ねぇ」
「ああ、作者さん無課金で『シバちゃん』とか『アルテラさん』出したらしいよ?」
「ああ、『褐色ケモミミ巨乳むちむちぃ~!!』とか『銀髪美女五つ星ぃぃ~!!』などと夜中に叫んでお隣さんに朝、『はよ嫁もらえええ年こいてからに』などと言われたとか」
いや、作者の事はほっておけ。
それはともかく。
「……しかし全くわからん。確かにビーストIIIだった頃のキアラクンならば奥方の盾の防御を崩せたかもしれん。しかしだからと言ってそれでなんとかなるわけではあるまい?」
モリアーティ教授が首を傾げたその時、部屋のドアが開いた。
「崩す必要は無いのだよ、モリアーティ」
部屋に入って来たのは誰あろう、名探偵。不敵に笑いながらパイプ片手にかつての宿敵のところまで悠々と歩いて来た。
「む、ホームズ?はて、何故君がここに?」
「面白そうな悪巧みを君たちがしていると聞いてね。不穏な事なら止めさせようと思っていたんだが、なかなか似つかわしくない談義をしているじゃないか。かのモリアーティ教授が人の命を永らえさせようなんてね」
「ふむ、キミは邪魔をしないつもりカネ?君こそどんな風の吹き回しダネ?」
「なに、マスターの事を思っているのは君達だけではないということだよ、モリアーティ。それに今回、私には依頼人が居ないのだ。私立探偵は依頼人が無ければ成り立たないのだよ」
「……居なくても昔は散々人の事を邪魔していた癖に」
「何か言ったかい?まぁ、それはそうとして……。ミス殺生院。しかし本当に良いのかい?」
「ええ、女として産まれたからには、やはり人並みの幸せというものに憧れるもの。これはマスターへの思慕、そして愛。そう、愛とは躊躇わない事ですもの!」
ぐっ!とキアラは右手を握り、そして何かを決断したように気合いたっぷりにして言った。
そのホームズとキアラのやりとりで、パラケルススやジルドレはメフィストフェレスが考えたマスターの延命方法の正体を知った。
モリアーティ教授などは、あ~、などと額に手を当てて天井を見たが、キアラに向き直って、
「本音は?」
モリアーティ教授は胡散臭げなものを見るように言った。
「妊娠!そして出産ショー、開脚台に乗せられて、足を縛られ、あらぬ姿で……産道を通る我が子、その痛みもまた……今まで知らなかった快感でしょう、じゅるり」
モリアーティ教授はダメだこの女、と言わんばかりの視線をキアラに向けた。
概ねホームズもジルドレもパラケルススも同じ感想だったようであるが、ただメフィストフェレスだけはケタケタ笑っていた。
「……あ~チェンジで。というかゴルゴーンさんでは無理ナノカネ?」
「ティアマトと感覚を同一していた時なら或いは可能だったかも知れないけど、だけどマスターをラフム化させたいのかい?」
「……それはダメですな。しかし」
「ハイハイ、皆様静粛に!異議はみとめまっせーん!というか、もうこの手段しかございません。様々検討して参りましたが、これが最後の方法なのですよ。はい。今日集まって貰ったのは、キアラさんを云々する為では無いのです。ええ、マスターを再生した後の事を今から話したいのですよ」
「……なるほどわかった。法的な処理、すなわちミス・キアラのお腹に宿ったマスターをマスターの子供として認知させ、さらにはマスターの資産等を引き継がせ、そしてこのカルデアで育成出来るようにしろ、というわけだね?」
ホームズはニヤリと笑いつつ、初歩的な推理だよ、とモリアーティ教授を見ながら言った。そしてその後を継ぐようにモリアーティ教授が、
「書類偽造なら任せておきたまえ。なに、世の中には90歳でも子供を女性に産ませたという『オールド・パー』という人物もいたぐらいだ。それにドクターパラケルスス。あなたの診断書にDNA鑑定も付け加えれれば信憑性は格段に上がる」
と、言った。
まさかコナン・ドイルすらも予想しなかったであろう、ホームズとモリアーティ教授が手を組んで犯罪計画を共謀するとは。ワトソンもおそらく卒倒するであろう。
「……えーと、それは良いのかね?というかドクターロマーニは許さないんじゃないかな?さすがに彼もあの時ほどの力は無いとはいえ……」
「彼は今、マスターの後任となる次の所長の育成に掛かり切りになっている。法務上や事務的な手続きも今や若い職員達が行っている。それに彼は昔のように高精度での千里眼は使えない。さらに彼を欺瞞する為の人物はとっくにこのカルデアに到着しているんだよ」
ホームズはパイプを取り出して、やはりニヤリと笑った。というか本当に彼はホームズなのか?と思いたくなるが正真正銘のホームズである。
この共謀はホームズとモリアーティ教授の計算の解が同様であった為に起こった。
彼ら二人の解は、こうである。
『マスター亡きカルデアは後数十年も保たない』
最初はホームズもモリアーティ教授もどちらもそれは仕方ない。人の世では全てが移り変わるのだから、と納得しつつも諦めていたのだ。
だが、カルデアが無くなればもう人理の守護は困難になるだろう。何しろこの世界の人理を脅かすだろう事象はあのグランドオーダーの件で最後とは思えないからである。対抗出来る設備を再び作ろうにもそれこそ国家予算級の費用がかかり、さらに人員の育成だけでも途方もない。
その時にこのカルデアのマスターのような人物が出てくるとは思えなかった。
また、サーヴァント達がいなくなった後、様々な勢力によって政治的に、経済的に様々な思惑によって切り売りされたり、場合によっては悪用される危険性まであるのだ。
故の共謀、故の共闘である。
まぁ、彼らがやるのは公文書偽造、遺産相続詐欺、さらにマスターに浮気という汚名を被せるというとんでもない事なのだが、背に腹は代えられまい。
「……ドクターロマーニを騙せる人物、ですと?」
ジルドレがはて?と首を傾げた。そんな人物がこのカルデアにいただろうか?と。
「やぁ、僕だよ」
スルリ、胡散臭げな軽やかな笑みを浮かべてロクデナシ魔法使いがどこからともなく現れた。
そう、マーリン。だいたいマーリン。大抵こういう事の裏にはマーリンである。
そうして、ベィビィマスター計画は進行していったのである。
ホームズとモリアーティ教授の共謀。
これは最強でしょう。
そこへマーリンが加わったなら、もう逃げられませんね。
次回、十月十日ですっぽん!!(アヘェ)。いえ、嘘です。まだ話出来てません。
じゃんけんぐーっ。