この二人の王はわりと好きです。
特にオジマンディアス王はゲーティア戦でお世話になりました。
誤字脱字の訂正ありがとうございますm(__)m
さて、プロローグで大活躍だったメフィストフェレスは、現在、主に怒り狂った女性サーヴァント達から猛烈なお仕置きを受けている最中である。
すでにキアラをマスターの寝室に面会に行く片棒を担いでいたアンデルセンとシェイクスピアを血祭りに上げた女性サーヴァント達は次の標的としてメフィストフェレスに狙いを定めたのである。
なお、パラケルススはとっくにナイチンゲールによる制裁を受けていたのでまだマシであったり、ホームズやモリアーティ教授は『法的な手続きをせねば赤ん坊になったマスターが孤児になり、そして無一文な状態から生きねばならなくなっていた』事を免罪符に女性サーヴァント達の怒りから逃れ、キャスターのジル・ド・レェはそんなに関わっておらず、やはり免れた。
なお、マーリンはいつの間にかアヴァロンに逃げ帰っており、おそらく再びカルデアに現れたときに執念深い女性サーヴァント達にやられてしまうだろうと思われる。もしくはのらりくらりとかわすかも知れないが。
今、メフィストフェレスはカルデアの屋上の電波塔から鎖で逆さ吊りにされる真っ最中である。
なお、メフィストを縛っている鎖はエルキドゥの鎖であり、彼はキャスターの方のギルガメッシュとお茶をしている最中に怒り狂ったエレシュキガルに連れ出され、そして女性陣に無理矢理協力させられていた。
友が連れ出され、何事かとキャスターのギルガメッシュも屋上までやってきていたりするが、尊大かつほとんどの物事を見通す彼であっても今回の騒ぎはわけが解らなかった。女心というものは、古代の賢王にも解らないようである。
そうして見ているとイシュタルが何事か喚き、エレシュキガルが何故か物干し竿でメフィストフェレスの尻をぶったたいた。
乾いた音がバシーン!バシーン!と聞こえるが、とても痛そうである。
だが、本気で命は取る気はないようである。まぁ英霊なので肉体が消滅しても英霊の座に還るだけなのだが、痛めつけるだけに留めている。
「ふぅむイシュタルめとエレシュキガルがあのように協力するとは、いったい何が起こったのだ?」
彼には珍しくわけがわからない、と首を傾げつつエルキドゥに事の顛末を聞いた。
「マスターが、復活するとか言ってたよ。だけど何故彼女達があんなに怒って彼を叩いてるのかはわからないな」
「死を免れたと?だがそれであるならエレシュキガルが怒るのはまだわかるが、イシュタルめが何故、犬猿の仲のエレシュキガルと共にあの自称悪魔をシバいているのだ?それに他の連中も」
エレシュキガルは、はぁはぁと肩で息をし、気が済んだのか持っていた物干し竿をイシュタルに手渡した。
イシュタルもまたバシーン!バシーン!とぶったたき、そして何発か叩いてまた別のサーヴァント、別のサーヴァントと物干し竿を渡してまたぶったたいて、を繰り返している。
どれも怒り心頭のようだが、何故か殺さぬようにしている辺りも非常に変であった。いたぶると言うわけでは無く手加減を心掛けているというのか。
「あ、物干し竿が壊れたね」
「……うむ、ああ清姫があの悪魔の尻に火を付けたな。あれは辛かろう」
他人事のように、とはいえ実際に他人で自分に類が及ばないので何の感情も込めずギルガメッシュはそう言うと、はぁーっ、と溜め息を吐いた。
「下らん。興も乗らん」
「うん、そうだね。とりあえずは戻ろうか?」
ギルガメッシュとエルキドゥはやれやれ、とこの場を退散する事にした。
「ひゃああああ、ひゃああああ、もう止めて下さいまし!!らむぇぇぇっ!!もうらめでごじゃいまひゅううううっ!!オケツバーニングぅぅぅっ!!」
メフィストフェレスのテラ子安ボイスの悲鳴が甲高く中、屋上の出入り口へと二人が向かおうとした時。
「ええい、不快な!!その声で叫ぶな!!」
バン!!と屋上のドアを乱暴に開け放ち、メフィストフェレスと同質の声の持ち主が現れた。
オジマンディアスである。
彼もまた、テラ子安であるがゆえにどうもメフィストフェレスが気に入らないようだ。
「というかニトクリス!!」
「はい!」
彼は後ろを着いてきていたニトクリスに命じた。つまりは黙らせろ、ということだろう。
「えーっと、では!」
彼女は素早く大きな布袋のようなものを取り出すとそれを被り、そして宝具を展開させた。
「穢れを漱げ、青く美しきナイル(スネフェル・イオテル・ナイル)!!ほーらさっぱーん!!」
大量の水がどっぱーんと注ぎ込まれ、メフィストフェレスの尻に着いた火が鎮火した。そして怒り狂った女性サーヴァント達の身にも水がぶっかかった。
「うわぁぁっ?!」「どひゃーっ?!」「ぎゃーーっ!?」「どへぇぇーっ!!」
などと叫び声が上がる。
なお、ギルガメッシュとエルキドゥは素早く空に待避していたので被害を受けなかったが。
「ええい、そうではない!!……いや、まぁ騒ぎは納まったか。これはこれで良い……のか?」
「はぁ、鎮火しろ、という事ではありませんでしたか?」
彼女は火が燃えていたので消せ、と命じられたと勘違いしたようである。やはりどこか抜けているがそれは彼女の常なので仕方は無い。
「まぁ、良い。結果として黙らせる事には成功したのだ。というか、黄金の(ギルガメッシュ王)。この騒ぎはなんなのだ?!」
「うむ、太陽の(オジマンディアス王)。それが我にも全く解らぬ。どうもエルキドゥが言うことにはマスターが復活するとかなんとか」
「復活?ファラオでもあるまいに。まぁ良い、今ならばそこな半裸弓乗り貧乳女神達が丁度ニトクリスの宝具を食らって伸びておる。話を聞くことにしようではないか」
オジマンディアスはニトクリスの出した宝具の攻撃を食らって伸びたイシュタルを介抱して話を聞くようにニトクリスに言った。
まぁ本気の攻撃では無かったのでイシュタルはすぐに元に戻った。
「ううう、この真冬のくそ寒い時に、水をぶっかけるなんてっ!!」
「建物の上で火を使った罰です!火事になったらどうするのですか!」
「いや、ニトクリス、そうではない。……この騒ぎはなんなのだ?この黄金の(ギルガメッシュ)がマスターの復活とか申していたが?」
「……マスターの延命は行われたわ」
「ふむ?ならばそれが失敗したので騒いでいたというのか?」
「成功よ。だけど、寄りによって、あんな方法っ、しかもあんな奴が法律的に後妻?!コイツらの企みのせいでっ!!」
イシュタルはもう、怒髪天を突くが如くにまた怒りだし、全てをぶっちゃけて言った。
そりゃあそうだろう。かつてカルデアのマスターが妻としたのはマシュ・キリエライトであったのだが、彼女だからと他の女性サーヴァント達はその結婚を許したのである。
マシュは全てのサーヴァント達からやはり愛されていたし、そして二人は堅い絆で結ばれていたことも誰からも認められていたのだ。
何より、女性サーヴァント達は彼女を無二の親友とばかりに思っていた。
だが、今回のマスターの再生復活の方法と、そしてそれに必要な悪質とも言える法的な偽造ねつ造は彼女達にとって到底許せるものでは無かったのである。
なにしろ、殺生院キアラを母胎としてマスターを赤ん坊にまで戻し、さらにマスター本人であるとはいえ、その赤ん坊をマスターの子供である事を認めさせやすいように、殺生院キアラとの婚姻届を偽造して届け出、さらにマスターが書いた遺言状を破棄して、これまた偽造した遺言状に『キアラの腹の子供は自分の子供であり、自分の遺産、権利の全てをその子供に譲渡する』と書いて受理させたのである。
マスターを慕いマシュを友とした女英霊達は、二人の愛や友情を汚されたと思い、怒っているのである。
だが、マスターの命を伸ばす方法がこれしか無いというのも理解している。ホームズやモリアーティ教授が言った通り、生まれて来るマスター本人を露頭に迷わすわけにもいかないのも。
だが、この怒りは納めようが無かったのである。
故のこの集団リンチなのである。
「……なんとも、まぁ」
ニトクリスは口をあんぐりと開けて絶句した。
オジマンディアスは非常に詰まらん!という顔をした。
ギルガメッシュは「ふむ、なるほどな」と何か合点が行ったようだった。
エルキドゥは無表情だったが、友の態度が理解出来なかったようであり、ギルガメッシュに「なにが、なるほど、なんだい?」と聞いた。
「なに、未来を見たのだが、あのマスターが赤ん坊になっていた。我はいつか転生するのだな、とばかりに思っていたのだが……。転生ではなく今回の事であったか。なるほどしたりしたり」
「はぁ、ギルガメッシュ王がそのような未来を見られていたということは、マスターはまだまだ死なない、ということですね。それは良い事ではありますが」
「ふん!それでは我らがあそこに築いたピラミッドが全くの無駄ではないか!!無駄無駄無駄無駄ぁっ!!」
杖の先で指した方角には、ずどぉぉぉん!と雪山には全くそぐわないピラミッドが。
「魔力をかなり使ってせっかく作ったのですが、仕方ありません、オジマンディアス王」
「……ふん、詰まらん。部屋に帰るぞニトクリス」
「……ふふっ、わかりました。ではギルガメッシュ王、エルキドゥ。それではまた」
エジプトのファラオと女王コンビはまた屋上の出入り口から去って行った。
「……二人とも嬉しそうだったね?」
「うむ、しかしなんともひねくれておったな。太陽の(オジマンディアス王)は」
自分の事を棚に上げて、とか言いたくなったがエルキドゥはそれを言わず。
「女性サーヴァント達には少し悪いけど、僕は嬉しいよ。どんな風でも生きて付き合っていけるのなら、そんな嬉しい事はないから。君はどうだい?ギルガメッシュ」
「む?我か。我は……。悪い気はしないがな」
ギルガメッシュはニヤリと笑った。そして、イシュタルに向かって言った。
「奴の名誉も人の名誉よ。だが我ぞ知る。お前も知る。余人が如何に言おうが、我は奴を知る者。女神たるお前が知る、奴はいかなる者か?だ!とはいえお調子者の慌て者の粗忽者のお前が起こす騒ぎはいつも通りだな!」
「ぐっ、言わせておけばっ!!……いや、あんたの言うとおりね。アイツは……。ずっとマシュを愛して他の女には目もくれなかった。マシュが逝ってからもね。私達が怒る事は無いのよね」
「ほう?しおらしいでは無いか。……いや、その通りなのだ。まぁ、そこで伸びているエレシュキガルの怒りは、もっと複雑か。死んだ後も自分の冥界に奴を繋ぎ、一人勝ちするつもりであったのだろうからな」
「……それを考えたら、アイツが赤ん坊になったのも悪く無い、というかグッジョブじゃない!!コイツの野望を阻止出来ただけ良かったってこと?!」
「あー、我は知らん。というか我も部屋に戻る。詰まらん余興であった。ふう、茶を飲み直そう。エルキドゥ、戻るぞ」
「うん、そうだね」
ギルガメッシュとエルキドゥはあーつまらぬなどと言いながらも足取り軽やかに帰って行った。
とはいえ。
「あのー、私このままですかぁ?つか、誰か鎖外して、ってかエルキドゥさんが解いてくんなきゃ、ずっとこのままなんですけどぉ?!ひひぇっ」
哀れなりメフィストフェレス。女性サーヴァント達はイシュタルが話をしてなんとか納まり、そして各々部屋に帰って行ったが。
彼がその鎖から解かれたのは二日間後であったという。
合掌。
哀れなりメフィストフェレス。
いえ、ですがあまり可哀想にも思えない私です。
出産を書くのが難しいので間の話をはさみつつ書いていこうと思っております。
次回、お葬式かな、多分。