謎の悪魔テラ子安。
彼は果たしていかなる存在なのか。
ホームズが検証しますが、それが真実なのかどうなのか。
なお、今回は公式な設定など無視して勝手にでっち上げております。その辺、目を瞑っていただけますとありがたいです。
さて。
メフィストフェレスの正体は謎に包まれている。
これは誰もあまり掘り下げて考えたり調査したりしていないような事であるし、第一調査しようにも肝心なメフィストフェレスに聞いてもまともに答えないし、彼に関する文献もあまりなく(ゲーテのファウストぐらいである)、正直彼が何故サーヴァントになれたのかも分からないぐらいである。
確かにゲーテのファウストは有名であり、悪魔メフィストフェレスの名前もまた有名なのではあるが、もし彼が本当に悪魔であったならばダウンサイジングされての英霊化ということになる。
しかし彼がダウンサイジングされた悪魔や神格だという形跡は無い。また出典が『ファウスト』のみかつ現実的に悪魔として魔術師や錬金術師達に召喚されたという記述も文献も全く無く、そして悪魔の種別を記した研究書等にもその名前は無い。
そして彼が悪魔でないと言える証拠たるものは、ダウンサイジングされて召喚されたどの神々の英霊達もが口を揃えて『そのような悪魔の存在は知らない』と語っていることである。
つまり彼は悪魔を語る何者かの英霊である可能性が非常に高い。
ただ、それだと余計にその正体は誰なのだ?という謎が出てくるのである。
ゲーテのファウストに置ける彼の立ち位置は、錬金術師であるファウストにこの世の享楽を味わわせ、堕落させてその魂を奪わんとして、最後にはその魂をまんまと天国に掠め取られる間抜けな悪魔という役柄である。
また道化師の印象も強く、実際英霊の彼もそのような感じではある。
自己顕示欲が強く嘯くばかりの嫌われ者。おどけにおどけ、人を煙に巻く。だが狡猾、残忍、非情。しかし憎めないトリックスター。
それが彼、メフィストフェレスである。
さて。
ここからがネタ晴らしになるが、彼はその正体をかつてマスターに見せている。
小規模な異変とも夢ともつかぬが、彼は確かにあのロンドンで。
それによれば、彼をこの世に産みだしたのは、誰でもないファウストその人であった。
ファウストは彼曰わく『つまらない』『才能も無い』錬金術師であった。
おそらくはそのファウストを殺害した知性を与えられたホムンクルスないしは人造人間、もしくはオートマタ、いや、それらを合わせた全く類のない存在か。そういう造られたものだったとすれば彼が『ゲーテのファウスト』以外の文献に出てこないのも頷ける。
ホームズはそのように考え、自分で淹れた紅茶を啜る。
テーブルの上、ホームズが座る対面側にはホームズの紅茶以外にもう一つカップが乗せられている。
「……人の事を探るのは、あまりに良い趣味ではありませんよ?ディテクティブ・ホームズ」
「……ふむ、やはり来たかね、メフィストフェレス」
ホームズは先ほどまで書いていたノートを閉じると、声の主の方を向いた。
「ええ、ええ、あなたは私に来て欲しかった。故にそれに応えないのは悪魔として道化、エンターティナーとしてどうかと思いまして。くひっ、くひひひっ」
奇妙な笑い声を上げて首を傾げつつ、メフィストフェレスはホームズに無言で促されてテーブルに座った。
テーブルの上のもう一つのカップは、つまりメフィストフェレスが来ることを予期して、いや推理してホームズが用意していたものだったのだ。
しかも湯気からして来るだろう時間までも推理していたところにホームズの推測と推理の確実さがわかるだろう。
「まぁ、そうだろうとも。君とはここに来て望む望まざるはさておき、長い付き合いだ。私もそれはわかっていたのさ。ただ私らしくなく君の存在については何故か今の今まで全く調査をして来なかった」
「おや?それはあなたらしく無いですねぇ?天下の名探偵、ディテクティブ・ザ・ディテクティブ、ホームズとあろう方が?」
はて意外、さて意外、とメフィストフェレスはおどけてくひひひひひ、とあざ笑うかのように奇声をあげたが、ホームズは眉一つ動かさず、メフィストフェレスを見据えていた。
「……君の行動は非常にわかりやすく読みやすかった。君の行動原理は『面白いか面白くないか』。そして『面白い者は助け、面白くない者は率先して排除するか面白くするか』。その点、彼……マスターは非常に君にとっては非常に『面白い存在』だった。いや、このカルデアそのものが、といった方が良いだろうか。眺めているだけで君には満足だったのだろう?』
「うひっ、うひひひひっ。そうですねぇ、そうですとも。ですがカルデアが面白いのではありません。マスターが居るこのカルデアが面白い。いえ、面白かったのですよ、ホームズ」
わざわざ過去形にするメフィスト。ようするに彼としては今のカルデアは面白く無いように映っていたのだろう。その原因はマスターの死期によるものなのは明白である。
「……確かにそれは認めるよ。だから今まで君はとても安全な存在だった。わかりやすかった程に安全だったんだ。だから私は君を放置していた。君が『気に入ったものを壊す』ような存在では無かったからね。故に失念していたのさ」
「ほう?あなたのような方が私の思惑に……いえ、そんな思惑は無かった!あははは、まぁ、どうでも良いですけれど。それがどうしてまた、あなたの興味の対象に?今更危険認定?いや、間違っても私は無害ではございませんけれども!」
「……いや、単に『何故』だよ。今回のマスターの一件だよ。単刀直入に言おう。パラケルススや他の誰も、マスターの延命や若返りについて、散々、様々な角度から検証して無理だという結論に達した。しかし君だけが確実な方法を出し、そしてそれは成った。だからなのだよ」
そう、ホームズの興味はそこにあった。つまりは単なる探求心と好奇心で彼はメフィストフェレスについて調べていたのだ。
けして高度な知性など持っていなさそうなこの自称悪魔が、誰も考えていなかった解を如何にして出したのか、それが知りたかった。
実際、体細胞の再生などはパラケルススなどの医療系の英霊達によって考察はされていた。
だが、それをするための機材などはホムンクルスなどの精製に使われる物の発展型であり、つまりは科学や化学では無い。それらの機材を使おうとするとどうしてもマスターの亡くなった妻であるマシュの宝具、円卓の盾がその効果を発揮して機材の術式や錬金術的な基盤が壊れ、無効化されてしまい、不可能であったのだ。
「ああ、あの程度で?あの程度の簡単な解決方法で?それはそれは」
メフィストフェレスはそう嘯く。
「君はどうやってミス・キアラにあのような事ができると知ったんだね?私は今回の件は裏でマーリンが糸を引いていたと思っていたが、彼が現れたのは君が解決策をとっくに持ってモリアーティ教授達と話していた後だ。つまり今回の発案はマーリンのものではない。どう考えても君の発案によるものだ」
「……というか、とっくにあなたは答を、解を出してるのにそれを聞きますかぁ?名探偵。あなたの想像通りなのに。それはつまらない。解っている答ほど面白く無いものは無いのに。しかし推理というものは間怠っこしいものだとは知ってますが、実はそれが一番早いという。いやはや」
「……君は、まるでライフウォッチャーの側面を持っている。まるで神の視点のようだ」
「ふむん?観察が好きなだけですよん?そう、私も推理しただけの事。キアラ嬢のあの宝具は、とても具合良さげで面白そうだったのですよ。仏教の変な側面の最たるものでしょう?なんだっけか?何流?男女の交わりで悟りを開くとか開かないとか。まぁ、一部開くんですけどね?股間がくぱぁーっと。くひひひひひ」
「……まぁ、私も話に聞いてひどく驚いたものだけどね、あれは。原罪の形というのは正直なところ予想をはるかに超えていたけれども。それで?」
「いやぁ、中に吸い込むなら出せるでしょ?って本人に直接聞いて、あれこれと吹き込んだだけ。いやぁ、ビーストって言うからちょっと危険かな?とか思っておりましたけど、なかなかにノリが良いお方で。ああ、お相手は拒否されましたけど?というかそもそも私にはそっちの欲はまーったくございませんけれども!」
「……胎蔵、という括りで術式の知識を君は彼女に説いたのか?!」
「……まぁ、そうなりますなぁ。そうなりますとも。こう見えて錬金術の下らない知識は昔の愚かなマスターのせいで見知ってましたので!!というかそもそもホムンクルスとはこの世の真理を語るものでございましょ?出来損ないでは無理でしょうし、語っても相手が馬鹿なら理解出来ないけどね!!」
やはりホムンクルス!!
ホームズは自分の推理通りの答だったのだが、最も有り得ないと思っていただけに驚いた。いや、有り得ないでいて欲しいとさえ思った解だったのだ。
完全なホムンクルスは誰も知り得ない知識を持っているという。そしてそれを得るために錬金術師達は最大にして至高の実験、最終点として完全なるホムンクルスの精製を目指すという。
この世で完全なるもの、真のホムンクルスを精製出来たと伝えられる錬金術師はパラケルススのみと伝えられているが、まさかファウスト博士が到達していたとは!!
「言っときますけど、ファウストはただの愚物の三流でしたからね?単に偶然の失敗で私が出来ただけですとも。それも『悪魔』の介入があっただけ』
「……それでも君は、産まれた。しかし悪魔の介入とは?」
「……ここだけの話ですよ?それが私、メフィストフェレスだったのです!!あーっはっはっは、あーっはっはっは!!まぁ、私は悪魔と様々な要素で構成されたサーヴァントですから、当然その本質は様々、それこそ錬金術のように混ざり合っているのですよ。……信じる信じないかはさておき。というかまさかそんな事は信じませんよね?つーか信じてない、ソーデスカ」
メフィストフェレスはテーブルのカップの、少し冷えた紅茶を流し込むようにして一気に飲み干すと、席を立った。
「そもそも、私は錬金術師は大嫌いでしてね。あのパラケルススなどは非常に面白くない。私を見て全く驚きもしない。とはいえ、マスターが絡むと面白くなるものですから生かしてやっているのです。まぁ、英霊ですから死ぬかと言えばシナナーイ。どうでもいいですけどね!あ、お茶ご馳走様でした」
などと言ってぺこりと礼をすると、メフィストフェレスはドアを開けて出て行った。
「しまった、煙に巻かれてしまったか。……肝心なところが全く分からない」
ホームズは苦笑して、そういうと懐のペン型のICレコーダーを出した。
近頃では彼も文明の利器をよく使うのだが、それはいつの間にか壊れていた。使う前にきちんと動作確認はしておいたというのに。
「この私に気づかれずに壊すとはね。まぁ、それぐらいはしてのけるか。『あの』メフィストフェレスだから」
あの悪魔的な道化師は見た目以上にしたたかで狡猾なのだ。失敗したりへまをしたように見えている時は必ずワザとそうしており、行動は確実なのだ。
そして、何かしら自分に関する記録や記述を残される事をどうやら嫌っているらしい。
なにしろ『ファウスト』のみなのだ。彼の詳しい行動や思考、そして嗜好を書き記したものは。
それはある意味製作者だったファウストに対する何かの想い入れ故だったのか、それとも。
ホームズはノートをまた開いた。
予想通り、メフィストフェレスに関する考察を書いたページは黒いインク塗れになって文字など全く塗り潰され、もはや読める代物では無くなっていた。
「……本当に悪魔なのかも知れないな、彼は」
仕方なくホームズはパイプを取り出し、そして火を付けた。
煙草は特に何もされておらず、ホームズは少し安心した。
ホームズですら煙に巻く。
まぁ、ホームズも何らかの依頼で調べていたわけではありませんので、こんな感じです。
まぁ、書いている私のところに最初に来たサーヴァントが彼でしたので何かしら思い入れがありまして。
なお、次がフェルグス兄貴、ジルドレさん(ロンパリ)でした。
未だに女性サーヴァントが極端に少ないのは、運が無いからでしょうかねぇ(汗)