フェイト~キアラがママっ?!   作:罪袋伝吉

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 あけましておめでとうございます。

 まぁ、唐突に出産というのもなんですので、クッションとして。


マタニティ・ライフ。

 

 キアラのマタニティ・ライフは非常に快適そのものであった。

 

 食にあたってはエミヤ、ブーディカ、頼光達の協力で計算された栄養と滋養をとり。

 

 医療に関してはフローレンス・ナイチンゲール主導の元、パラケルススやドクターロマニが担当。

 

 病室はどこの産婦人科のVIP病室よりも快適に整えられ、さらにはマタニティ・エクササイズ、胎教に良い音楽家(モーツァルト作曲)、様々なサービスを受けつつ、それこそ豪華かつなんの不自由も無い、痒いところに手が届くようなマタニティ・ライフを送っていた。

 

 また、最初は嫉妬したり怒っていたりした女性サーヴァント達も正論を吐いたり詭弁を放ったりする様々なサーヴァント達によって説き伏せられたり、それらをボコったりして腹いせを終えたりして、協力するようになっていった。

 

 説き伏せ系はギルガメッシュやキングハサン、三蔵ちゃん、頼光、マルタ。まぁ、彼らに言われてなお暴れるサーヴァントはそんなに居なかった。

 

 しかし、ボコられ系はメフィストフェレス、ジル・ド・レェ(キャスター)、あと、エミヤ(アーチャー)やエミヤオルタなどは巻き込まれて酷い目にあったりしていた。メフィストフェレスはわかるが、ジルドレさんは単に企みの場にいただけで何にもしていない。よしんば、エミヤ(アーチャー)は、カルデア内の騒ぎを聞きつけてなんとか納めようとしただけなのに。

 

 哀れなりエミヤ(アーチャー)。まぁ、なんか昔から彼はそんな感じだったような気もするが、ネタになりやすい男よなぁ。

 

 まぁ、嫉妬云々以前に中には危険なサーヴァントも一部いるにはいたがそういうサーヴァントは自分からキアラに近づく事を自重してもらう事でなんとか決着がついた。

 

 例えば、ジャック・ザ・リッパーなどは今のキアラにとっては非常に危険である。なにしろ彼女は胎内回帰を強く望む性質を持つ。彼女の解体はその表であり、腹を裂いて戻ろうとするのである。

 

 ゆえに彼女が自重してくれるというのは非常に関係者達を安堵させた。

 

 もっとも、以前から彼女はだいたいはナーサリー・ライムやアビゲイルなどの見た目の幼いサーヴァント達と共にエミヤ(アーチャー)の周りにいる事が多い。

 

 理由は不明だが、何故かエミヤ(アーチャー)は子供に好かれやすい。

 その様を見たイシュタルやジャガーマンに『エミヤ幼稚園』と言われるほどなのである。

 

 まぁ、餌付けされているからなのかも知れない。なにしろエミヤ(アーチャー)はやたらと家事スキルが高く、オムライスやハンバーグなどはかなり子供のサーヴァント達には大人気である。

 

 まぁ、子供だけでなく大人げないサーヴァント達からも集られたりするのだが……。

 

「別にあの子達の面倒を見てもかまわんのだろう?」

 

 ジャガーマンがパンケーキを頬張りながら、エミヤの口調を真似して言った。

 

「あんたが言うな、あんたが!!つかガキ共のおやつをつまみ食いするなっ!!」

 

「ムグムグムグ……」

 

 なお、エミヤはアビゲイルのリクエストで三時のおやつにパンケーキを焼いている最中であるが、ジャガ村先生はそれをつまみ食いに現れたのである。

 

「えー?いいじゃんよー、おねぇさんにもおやつ~!」

 

「うむ、これは……懐かしい味だ」

 

 ムグムグムグ。

 

 あ、アルトリア(セイバー)さんまで。

 

「だーっ!!パクパクパクパクとっ!!お前まで食うなぁぁぁぁっ!!」

 

「士郎、お代わり」

 

「だーら、士郎じゃねぇぇぇっ!!」

 

 頑張れ!エミヤ。負けるな!エミヤ。マスターの命は君の働きにかかっているのだ!!

 

 まぁ、彼の現在の日常はそんなものである。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『……むぅ』

 

『はい、マスター?どうかなさいましたか?』

 

『いや……、なんかエミヤの悲痛な叫び声が聞こえなかったか?』

 

『ああ、おそらくはジャガ村さん達がまたちょっかいを出したのでしょう』

 

 もはやいつものことと、キアラは涼しい顔でそう言っておやつとして出されたパンケーキを上品にフォークで差して口に運んだ。

 

 何故かジャガーマンはやたらとエミヤにちょっかいをかける。古代の南米の神性と未来由来のサーヴァントに何らかの接点があったとは思えないが、彼らには何らかの縁があったのかも知れない。無論、マスターはそれについて聞いたことは無い。聞くような事でもあるまいと思って今までそっとしておいている。

 

 そう言えば、エミヤ、イシュタル、エレシュキガル、ジャガーマン、パールヴァティー、そしてイリヤスフィール、エミヤ(アサシン)、あとアルトリア(セイバー)はどうも繋がりがあったと思われるような節がある。

 

『ふーむ。英霊にも何かしらあるのだな』

 

『英霊業界の裏事情、的なものでしょうか。私も存じ上げてはおりませんのでよくわかりませんが』

 

「過去の事、別世界の事、いろいろあるのだわ」

 

 エレシュキガルがそう言いつつ、キアラのベッドの隣でパンケーキを頬張っている。

 

 なお、彼女はキアラに持っていってくれとエミヤに頼まれ、その代わりにと自分の分のパンケーキをもらったのである。

 

 そう言えばこのエレシュキガルはイシュタルと双生的な関係にある。また、憑依した人間もまたイシュタルと同様らしく、それが分かれたのだという。

 

 その辺にも詳しいのかも知れないが、あえて聞かないのが良かろう。

 

『……はぁ、パンケーキかぁ。良いなぁ』

 

 その代わりにマスターは昔の若いときのように間抜けそうな声でそう言った。

 

 エミヤはやたらと料理がうまいだけでなく、日本の一般的な家庭料理に精通している。作る料理を見るに、実は英霊になる前は自分と時代的に近い年代出身だったのでは無かろうか?とかマスターは思ったりしているがそれはさておき。

 

 パンケーキは非常に豪華だった。見れば、メープルシロップに生クリーム、シロップ漬けの果物が添えられ、さらにバニラとチョコアイスまで……。

 

『くぅぅっ、胎児な自分が恨めしい!!』

 

「はいはい、生まれてきても食べられるようになるまでだいぶ先よ。ざまーみろなのだわ!」

 

 エレシュキガルはホーッホッホ、と笑った。多分、胎児になったことで死を回避したマスターへのささやかな嫌みなのだろう、なんせエレシュキガルは冥界の女神なのである。

 マスターが死んだら魂を冥界に繋ぎ止めて自分の物にするつもりだったのだ、この女神は。

 ただ、内心で死ななくてほっとしていたりもする辺り悪い人間……女神ではないのではあるが。

 

 くすくす、とキアラは笑いながら、お腹を軽くさすって言った。

 

「まぁまぁ、私が食べた物はあなたにとっても栄養でございます。味覚はともかく、一緒に食べているのも同然で御座いましょうに」

 

『……栄養はともかく、味覚は共有できないんだよなぁ。うーむむむ』

 

 現在、マスターはキアラを介さずとも、もう9ヶ月に到達した時点で外部を見たり、念話で話をしたりする事が出来るようになっていた。

 

 それは超能力というか、なんというのか。

 

 すでに生まれる前から異能に目覚めており、自分でも(ああ、人間辞めちゃったのか俺……)なんぞと思いつつも便利なので開き直って使っているのである。

 

『とはいえ、もう9ヶ月。あと一月ちょいなのか』

 

「はい、随分と長く思えましたが、うふふっ、これもまた役得でしょうか。マスターと皆様のおかげで満ち足りた妊婦生活を送らせていただいておりますわ。それに、皆様もいろいろ来ていただいて、こうしてお話ものんびりさせていただけております」

 

「みんなマスターが気になっているだけなのだわ。沈静化したとは言え、まだわだかまりも無くなったわけでは無いのですからね?」

 

「存じておりますわ。でも、どうあってもこれ以上の最良解は無いと、ホームズさんとモリアーティ教授も結論を出しましたし、私と致しましても……マスターを失いたくは無い一心で……。いえ、それも確かに有ったのですが、それだけではありませんね……」

 

 キアラは自分のお腹に手を当ててそれを慈しむようにさすった。

 

 マスターはどうせ出産ショーとかそういうとんでもない事を言い出すのでは?!とか身構えた。いや、胎児なので脳内で、だが。

 

 しかしキアラは意外に真面目に語った。

 

「私の生前の心残り。この世で最も強いものは母の愛。そう、私はこのような女では御座いますが、やはり憧れておりました。いつか母となり子供を育むのだろうと思っておりました。他の世界軸の私はどうか知りませんが、あの魔神柱……ええっと、何でしたっけ?名前。まぁ、どうでもよろしいですわね、今更……に良心も何もかも封印されましたが、でも、その想いは残っておりました」

 

 哀れなり魔神柱ゼパル。とはいえ彼女からすれば、いや、彼女と戦うはめになったマスターやサーヴァント達からすればそうとも言えないが。

 

 だが、この世界のキアラは海洋油田施設で働く善良なセラピストだったという。あのゼパルが月の裏側のムーンセルのキアラの情報と彼女を連結させたり、彼女の良心などを封印したりしなければあの事件は起こらなかっただろう。だが、あのゼパルの介入が無ければ今のアルターエゴ・殺生院キアラも存在する事は無かったのである。

 

 良かったとは言い難いかも知れないが、現在を見るに悪かったとは言い切れない。

 

 もっともマスターとしてはあのような心底肝が冷えるような危機は二度とごめんである。今でもあの時の絶望感と恐怖は思い出しても震えが来るほどである。

 

 生来の楽天家のマスターでも、あれはトラウマであった。

 

「……はぁ、ビーストIII・殺生院キアラにそんな願望があったなんてね。いいえ、それは人だった頃のあんたの切望と言ったところかしら」

 

「……人ならぬ身になって、愚かな事を、と思っておりましたが、マスターのおかげでこのように願いが叶いましたわ」

 

『……そうかね。良かったね、というべきかなんと言うべきか。私としてはどうなんだろうなぁ。もちろん死ななくて良いというのは感謝すべきなのだろうけどね』

 

 流石のマスターでも、自分の人生でまさかアミデュられてしまう日がこようとは思わなかったわけであり、さらに胎児としてキアラのお腹で生育されるなどゆめにも思わなかったわけで。

 

 とはいえ。

 

『というか。このやたらに魔力とか変な力満載な状態で産まれても大丈夫なんだろうか?』

 

 そう、念話は出来るわ、千里眼とまでも行かないが遠く離れた所も意識を集中すれば見れるわ、多少の念動は発揮出来るわ。普通の人間の範疇ではない。

 

「普通の人間の魔術師、もしくは超能力者程度ですわ。まぁ、英霊のマスターとしては充分な能力かと」

 

「まぁ、昔の人間だった頃のギルガメッシュにも遠く及ばないわよ?大丈夫なのだわ」

 

 古代の神と人間の間に産まれた王と一緒にするな、と言いたい。ここは現代であり普通の人間だったのだ。

 

「それに、成長して多少力が強くなってもサーヴァントには遠く及ばないのだわ。……とはいえ間違っても死んで英霊になんてならないように気をつけなさい?それはある意味、キツい事だもの」

 

 エレシュキガルはそういうと、食べ終わったキアラのパンケーキのトレイを片付けると。

 

「それに、あんたの魂は死んだ後、私が予約済みよ。冥界で丁重にもてなしたげるわ!」

 

 そう言って出て行った。

 

『……いや、今から予約されてもな』

 

「まぁ、マスターは果たして死ねるでしょうか。何となくですが、次は私ではなく、別のサーヴァントの誰かが同じ事をしそうな気がしますわ」

 

『……エンドレスライフっ?!』

 

 そう、それはある意味、不死を定められたようなものである。というか英霊達ならばやらかしそうな気がして、産まれる前からものすごく不安になったマスターであった。




 福袋ガチャ、バーサーカーばっかし出ました。

 ゴールデンさんとヴラドさん、清姫、圧制者大好きさんの四人。四騎士じゃなくて四バーサーカーでした。

……じぃじとキアラさん狙いだったのに。

 なお、召喚符もらったので引いたら葛飾さん一発で来られました。

 運が良いのか悪いのか。

 次回、出産……でしょうかね。
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