防御不能の戦王   作:カラムイラス

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1話 レイとの出会い

□王都アルテラ 〈天上三ツ星亭〉 レイ・スターリング

 

 俺は現在自身のジョブを決めるため【適職診断カタログ】とにらめっこしている。

 

「兄貴、ちょっと聞きたい事があるんだけどさ」

 

『何クマ?』

 

 クマの着ぐるみを着ている俺の兄貴。シュウ・スターリングは軽い声で返してくれる。

 

「昨日の話なんだけどさ。戦争に参加した【超級】がいるって言っていたけどさ。その人ってどんな人なのかなって」

 

 あれは昨日の歓迎会の時。兄はがこの世界の事を教えてくれた時の事だ。その時にデンドロ時間で半年前にアルタ-王国と隣国のドライフ皇国が戦争になった事も教えてくれた。その時この国の【超級】は一人を覗いてこの戦争の参加を見送ったということも聞いた。この話を聞いた時からその人物だどんな人物なのかずっと気になっていたのだ。

 

「それは私も気になっていた。教えてくれるか?」

 

 自分の考えに俺の〈エンブリオ〉であるネメシスも同意してくれた。兄はそんな俺たちに目をくばせ、しばらく思考しているのか間をとった。

 

『レイはそれを知ってどうするクマ?』

 

 兄のそんな言葉に思わず首を傾ける。

 

「別に何もしないけどさ。けど気になるじゃん。兄貴が参加しなかったアルター王国とドライフ皇国の戦争に参加した【超級】がどんな人なのか」

 

 嘘偽りない自信の言葉が自然に口に出した。そんな俺の言葉に兄は頷きながら聞いてくれた。

 

『そうか』

 

 その言葉だけ自声で答えた兄は手に持っていたジョッキをおもむろに置いた。

 

『お前が言っている戦争に参加した【超級】というのは討伐ランキング第二位の所に名前が載っている奴クマ』

 

 兄は不意に掲示板を見るように促しながら説明を始める。

 

「討伐ランキング第二位? えっと、一位は確か【破壊王】だったから、そのすぐ下の・・・・」

 

 兄に促されたままに必死に掲示板に目を凝らす。こういう時、ランキング上位に名前があるとほんとに助かる。

 

「【戦王】とだけ乗っておるな」

 

 どうやら俺よりネメシスの方が見るのが早かったようだ。確かに【破壊王】のすぐ下には【戦王】と名が記されていた。

 

「随分と仰々しい名前だの」

 

 手にカップを持つネメシスは名前の仰々しさに顔を歪める。

 

「王が付くってまさかそれってジョブ名なの?」

 

『当たりクマ。その【戦王】が【超級】で唯一半年前の戦争に参加したやつクマ』

 

 兄はそれを言うと、ジョッキを口に運んだ。

 

『他の【超級】はみんな、驚いていたクマ』

 

「そうなのか?」

 

 ジョッキを飲み干し、テーブルにそれを置くと、兄は話を続ける。

 

『そうクマ。決闘ランキング第一位の【超闘士】無限連鎖のフィガロは苦い顔をしていたクマ。クランランキング第一位の〈月世の会〉のオーナーである【女教皇(ハイプリエステス)】は目と口を開いて唖然していたクマ』

 

 未だ顔を見たことのない二人がそんな表情をしていたのかと想像してしまう。

 

『【破壊王】は【戦王】が戦争に参加することを止めたらしいクマ。『お前が出るべきじゃない』と口にして。しかし【戦王】の意志は固かったクマ。『戦争に参加しなかったら、俺のジョブが泣く』 そう言って、あいつは戦争に参加したクマ』

 

「だが、アルター王国は敗退したぞ? その【戦王】とやらがおりながらな」

 

 ネメシスは現実を突きつけるような鋭い言葉を投げつける。兄はその言葉を耳にして、肩をすくめる。

 

『あいつはドライフ皇国の【超級】である【大教授】に嵌められたらしいクマ。その結果、アルター王国は国王と大賢者。騎士団長を失う結果となった。だが、【戦王】もただじゃ終わらなかった』

 

 勿体ぶるように、兄は態と間を空けた。

 

『戦争の結果は知っているクマね』

 

「昨日聞いた事をさすがに忘れないよ!」

 

 問いかけられ、俺は昨日聞いた事をそのまま口にする。

 

「たしか、王国と戦争中にカルディナがドライフ皇国に進行して、ドライフ軍は急いで自国に戻ったんだ」

 

『当たりクマ。レイは記憶力が良いクマ!』

 

 昨日聞いた事を復唱しただけなのに、兄は何故か褒めてくる。ちょっと釈然としない。

 

『話を続けるクマ。自国のピンチを悟ったドライフ軍は急ぎ、自国に戻ろうとした。そこにあいつは待ち伏せていたクマ』

 

「ほう。なかなか考えて居るの!」

 

 ネメシスは感心したような声を出す。

 

『ドライフ軍はさすがの慌てたらしいクマ。何たって自国防衛の為に急ぎ、戻らないといけないその状況で【超級】による待ち伏せを受けてしまったからクマ』

 

「それで? 【戦王】はどう対応した?」

 

 俺は興味本位でそれを口にすると何故か兄は溜息を吐いた。

 

『あいつはその場にいた皇国所属のマスターをデスペナにしたクマ』

 

「・・・・・・・。強いのだな」

 

 引きつった笑みででネメシスは口にする。

 

『強いクマよ? 何せその場には皇国の【超級】で、騎士団長を倒した【魔将軍】もいたらしいクマ』

 

 兄のその言葉に俺は数秒頭が空っぽになった。

 

「それって。・・・・・冗談?」

 

 思わず思った事をそのまま口にしてしまった。しかし、兄は首を振って否定してくる。

 

『それが、【大教授】がその映像を録画していたようで、ネットにこの動画が出回っているクマ』 

 

「用意がいいんだな。【大教授】っていうのは」

 

 顔を引きつりながら的外れの事を口に出してしまう。

 

『まあ、あいつの目的は【大教授】をデスペナにすることだったみたいクマが、それは出来なかったみたいクマ』

 

「出来なかった? なんで」

 

『【大教授】は別ルートで皇国入りしていたクマ。だから運良くあいつには遭遇せずに済んだという訳クマ。【戦王】本人は【大教授】に相当切れていたクマ』

 

「自身に罠を仕掛けた奴に報復したがるのは当然と言えば当然かの」

 

 どこか分かっている雰囲気を出すネメシスはカップに口を付ける。

 

『話を続けるクマ。【戦王】はその後、残存する皇国のマスターを次々とデスペナにしていったクマ。そして、最後には物理最強と名高い【獣王】と遭遇したという。【戦王】はさすがに頭が冷え、逃亡をはかったクマ』

 

「少し、情けない気がするのう」

 

 少し悲しげな表情をするネメシス。

 

『当然【獣王】は逃げる【戦王】を追撃した。だが、あいつはその追撃から逃げ切った』

 

「逃切った! それって本当なの?」

 

『本当クマ。本人から聞いたから間違い無いクマ!』

 

 自信ありげに兄は胸を張る。

 

『物理最強から逃切る事が出来るのはあいつ位クマ』

 

「兄貴だったらどうする? もし【獣王】と遭遇したら」

 

『迷わず格闘クマ!』

 

 聞いた自分が馬鹿だった。兄の言うことが予想通り過ぎた事に呆れた。 

 

「へえ! だったら格闘してこいよ。シュウ!」

 

 不意に兄の後ろから聞き覚えの無い声が聞えた。その方向に目を向けると、赤く肩まである髪を後ろで纏めた男の姿があった。彼は体を軍人を想わせる赤と金の戦闘服を身に纏いその上からフード付きの黒のロングコートを羽織っていた。

 

『ん? 誰かと想ったらカルキクマ。調度お

 

「死ねや!」

 

 兄の言葉を遮り、男は顔を怒りで歪ませながら短剣を突き立てるように振り下ろす。しかし兄はカルキという名前らしい男の手首を取り、その動きを停止させた。

 

「今日という今日は許さねえぞ! てめぇ! いつも勝手に俺にクエスト押しつけんじゃねえ! こっちだって忙しい身なんだよ!」

 

 動きは停止されてもなお、カルキと言ういう人は無理矢理にでも件を突き立てようと力を入れる。それと同時に殺気交じる声が兄に向け放たれる。

 

『そんな忙しい身のカルキの為に癒やしを分けているクマ。感謝はいらないクマ』

 

 兄は茶目っ気たっぷりの声がその場に響く。その声を耳にしたカルキさんは顔を余計歪ませ、先程より力を入れる。

 

「感謝だと? お前にそんな優しい物を送るか! 送るのはこの殺意だけだ! 死ね!!」

 

 そういうと、彼は反対の手にも短剣を持ち、それを兄に向け突き刺そうとする。その攻撃を兄は脇で挟んでそのまま締め上げる。

 

「こちとら納期開けでやっとログインしたんだぞ! それなのにログインしてみたらクエストが馬鹿みたいに溜まっているって、どういうことだ! 説明しろよ! 俺をどこまで働かせる気だと。殺す気か!」

 

 その言葉を聞いて、思わず兄に呆れた顔を見せる。

 

「鬼畜じゃの」

 

 ネメシスも同じような事を想っていたようで無慈悲な言葉が放たれた。

 

『そんなつもりは無いクマ! ただ日頃のストレスを発散出来るように分けているだけクマ』

 

 悪びれることも無く難なくそれを口にする。

 

「それがストレスだって毎回言ってんだろ! っていうか離せ! 血停まってんだよ!」

 

 彼の要求に応えて、兄はその拘束を取る。カルキという人は両手の件を落として、手の感覚を確かめるような動きを見せる。

 

「毎回言ってんだろ。クエストくらい自分で受ける事出来るって。何の嫌がらせだ」

 

 嘆くような小さな声で彼は呟く。

 

「っていってもどうせお前は聞く耳を持たないんだろうな」

 

 と勝手に納得して溜息を吐く。

 

『そ、そんな事はないクマ』

 

「それを聞いたのは何回目だか。まあいい。クエストの半分はこなしてやるから残りの半分はお前がやれよ」

 

『断る!』

 

 兄は威勢の良い声でその要求を拒否した。その言葉に、カルキさんは一瞬だけ額をひくつかせたが、すぐに諦めたような顔つきになる。

 

「で、こいつらは誰だ? 見覚えの無いマスターだが・・」

 

 カルキさんはおもむろに俺とネメシスに疲れたような視線を向けてくる。その目に思わず体が強ばってしまう。

 

『お前は知っているはずクマ。俺の弟とその〈エンブリオ〉クマ』

 

「弟? ・・・・・・。ああ、いたな。そういえば」

 

 そう呟くと、彼は徐ろに此方に近づいてくる。どうやら俺の事を知っている風な言い方が気になる。

 

「へえ! メイデンの〈エンブリオ〉か。珍しいな」

 

「ほお! 私の価値観に気付いておるのか。なかなか見込みのあるやつじゃな」

 

 カルキさんがネメシスを褒めると彼女は誇らしげに胸を張る。

 

「いけないな。自己紹介を最初にしておくんだった」

 

 そういうと、彼は気まずそうに頭を掻く。

 

「俺はカルキ・ライトロット。本名は加藤輝騎だ。約八年ぶりくらいだな、玲二」

 

「加藤輝騎さん? もしかしてテル兄!」

 

 カルキさんの本名を耳にして、俺はある事を思い出した。彼は兄の幼馴染みで、小さかった俺にいろんなお菓子をくれていた人だ。兄の大学入学を機に会わなくなった、顔見知り。

 

「おお、覚えていたか。だが、こっちではカルキさんと呼べ。で? そっちは自己紹介とか無いわけ?」

 

 カルキさんに促されると、俺は自己紹介をする。

 

「俺はレイ・スターリング。こっちは俺の〈エンブリオ〉のネメシス」

 

「よろしく頼む」

 

 ネメシスは最初会った時のようにスカートをつまんで頭を下げる。

 

 

 

 

 

□王都アルテラ郊外 カルキ・ライトロット

 

 今現在。俺はレイと共にクエストを行っている。あの後、俺は少しの間、その場に居座り、レイをクエストに誘った。少しでも溜まったクエストを消費するのに人手が必要だったから。するとレイは初心者だったらしく、未だジョブも決めていないという。俺はジョブを決めた後に共にクエストを行う事を約束し、先に王都郊外に来ていた。その間も少しでもクエストを消費しようと躍起になり、進めていると、時間は午後に成っていた。そこでようやくレイはここに姿を現した。

 

「で、ジョブは何にしたんだ?」

 

「聖騎士です」

 

「おお! 初めてのジョブが聖騎士か! それは凄いな」

 

 驚いて思わず声が大きくなる。そんな俺の声を聞いてレイは照れくさそうに頭を掻く。

 

「おぬしのジョブは何なのじゃ?」

 

 ネメシスは首を傾げながらそれを口にする。

 

「いきなりだな、君は」

 

 出来ればその話はして欲しく無かった。だが、レイも俺のジョブに興味があるらしい。

 

「戦士系の超級職だ。それ以上は勘弁してくれ」

 

 引きつった苦笑いをレイとネメシスに向ける。これの意味分かってくれるか?

 

「へえ! 超級職なんだ。やっぱり初期勢は凄いジョブなんだな」

 

「教えてはくれないのか」

 

 レイは感心したように頷いてくれる。ネメシスは少し残念そうな顔つきをしてくる。

 

「お前もすぐになれるだろうよ」

 

 そんな事を話している間に、狩り場に着いた。

 

「クエストはリトルゴブリンの掃討。難易度は掃討だから3だな。取り敢えず、ばらけて倒していくか」

 

「そうですね。ネメシス」

 

「心得た」

 

 レイのかけ声でネメシスは大剣に変化して、レイの右手に収まった。

 

「じゃあ、俺はあっちに行ってきます」

 

「相手は低級だ。初心者のレベル上げにはぴったりだな。頑張ってあげて行けよ」

 

『おぬしも頑張るのだぞ』

 

「誰に言ってんだ、黒ロリ」

 

『ロリではない!』

 

 割とマジな声で反論してくる。

 

「そんな事より二人とも。俺の為にがんばってくれよ!」

 

『おぬしも鬼畜の部類か!』

 

 俺は手を振りながら、レイ達の姿を見送る。

 

「もう行ったぞ。第三形態で出てこい。ラクシュミー」

 

『承知いたしました。カルキ』

 

 俺はレイの後ろ姿を見ながら、自分のエンブリオを呼びかける。すると、左手の紋章が光り、そこから武器が出て来た。出て来た武器は全体的に赤く、刃の所だ黄金で出来た三叉槍。俺はそれを手に為る。

 

「ネメシスはお前と同じ括りっぽいな。まるで姉妹のようだ。嬉しいか? 妹が出来て」

 

 レイ達とは違う方向に足を進めながら、自身の〈エンブリオ〉であるラクシュミーに話しかける。

 

『お戯れを。私にはそのような願望はございません』

 

 淡々と彼女は俺の戯言を否定してくる。彼女の言葉を聞いて、俺は残念そうに溜息を吐く。

 

「お前は、つまらない奴だな。生真面目で空気を読みすぎる。その上、お喋りだ。全く、誰に似たんだか」

 

『カルキの〈エンブリオ〉なのですから、きっとカルキに似たのでしょう』

 

「くっ!」 

 

 ぐうの音も出ない正論を突きつけられ、息を詰める。

 

「レイの〈エンブリオ〉は面白そうなやつだったな」

 

 わざと嫌味風に口を走らせる。

 

『彼女はレイ殿の〈エンブリオ〉なのですから、面白いのはレイ殿のおかげだと』

 

「確かに、そうかもな。お前はレイは面白いと想うか?」

 

『そうですね。そう想います』

 

 ラクシュミーの言葉に俺は驚く。

 

「お前も面白いと想うのか。なんか意外だな」

 

「侵害です。私は別に感情が欠如している訳ではありませんよ。戦闘に感情の揺れは命取りになるので普段から抑制の訓練をしているだけです』

 

「面倒な奴。まあ、いい。それで? どういう所が面白いと想った?」

 

 割と、興味津々な俺は彼女を問いただす。

 

『面白いと想ったのはただ一つですね。彼が私と同じメイデンの〈エンブリオ〉を生み出した』

 

 

「なんだ。それだけか」

 

 落胆の声が自然と出た。

 

「まあ、メイデンを生み出すマスターは貴重っちゃ貴重だな」

 

『そうですね。・・・・・。彼は潰れないでしょうか』

 

 ラクシュミーは憐れむような声を出す。

 

「生意気だな、お前」

 

 不意にその言葉が口に出た。

 

『分かってますよ、主君。私達が言えた義理じゃありませんからね』

 

「分かってんじゃねえか。それにあいつは多分潰れねえよ。何たって、あの【破壊王】の弟だぞ? そんな柔な奴のはずが無い」

 

『そうですよね。忘れてしましますが、シュウ殿は【破壊王】でしたよね』

 

 そうだと呟き、俺は立ち止まる。話している内に俺たちは森に入り、大きめの洞窟の前にいる。

 

「さて、ちゃっちゃとその【破壊王】に押しつけられたクエストを消費して、俺の時間を作るか」

 

『カルキ。第三形態で大丈夫ですか?』

 

 俺を案じてくれているのだろう。ラクシュミーは心配の声を掛ける。俺はその言葉を鼻で笑う。

 

「心配ないだろ。さっさと終わらせて、早く街に帰るとしようぜ」

 

 それを口にし、俺たちは洞窟の中に入っていく。

 

 

 

 

 

 

□王都アルテラ郊外 聖騎士 レイ・スターリング

 

「おっ! またレベルが上がった」

 

 リトルゴブリンを倒していき、俺は順調に倒していき、俺はレベルを上げていた。

 

『のう? 先程から、此方に向ってくる人影が見えるのだが」

 

 ネメシスが不思議そうな声を出す。ネメシスの声に従うように俺もその方向に目をやる。

 

『私にはつい、三十分くらい前に分かれたカルキに見えるのだが、これは目の錯覚か』

 

「そんな、まさ・・・・・」

 

 ネメシスの行った通り、此方に足を進めてくる人物はつい三十分前に別行動を取っていたカルキさんだった。俺は想わず自身の目を疑い、何度もこする。

 

「俺にも、そう見えるよ」

 

 足を進めてくる、カルキさんは肩に赤い三叉槍を担いで、ずんずんと、此方に向って来ている。

 

「まさか。な」

 

 俺はそこである予想を立てる。それが間違いであってくれと願うばかりだ。

 

「よう、励んでいるか?」

 

 そうこう考えている間に、カルキさんは近くまで来ていて、軽い声を掛けてきた。

 

「励んではいる。だが、なんのようだ? こちらはまだ、目標討伐数に達していないのだが?」

 

 ネメシスが武器形態から戻り、カルキさんに怪訝な顔を見せる。

 

「俺はもう終わった。今日の所はこれから返る所だ」

 

「えっ! もう!」

 

 素っ頓狂な声を出してしまう。カルキさんと別れて三十分しか立ってないのに、彼は猛このクエストを終了したという。

 

「お前らがここいらのリトルゴブリンを掃討したら、このクエストは終了だ。だからお前らの様子を見に来た」

 

「あの、本当に終わったんですか?」

 

 些か信じられずに、そのことを伝える。

 

「ああ、終わったぞ? 超級職だと、このくらいは余裕だな」

 

 軽い声を上げながら、彼は三叉槍で二回ほど肩を叩いた。

 

「それが、カルキさんの〈エンブリオ〉ですか?」

 

「ん? ああ、そうだぞ。俺は運が良かったみたいでな。とてもレア物の〈エンブリオ〉だ」

 

 レア物という言葉にネメシスが何故か胸を張る。

 

「その言葉。あまり期待はしないがな。この私より、レア物など、そうそうにいるわけが無いしな!」

 

 レア度で勝ち誇ったような顔をするネメシス。彼女の言葉にカルキさんは何故か溜息を吐いた。

 

「だそうだぞ?」

 

 おもむろに手に持っていた三叉槍に反しかける。すると、その槍は突如光り出し、その姿を変えた。

 

「ま、さか!」

 

 その変化を目にして、ネメシスは焦った様に口を開ける。

 

「貴方の言葉を肯定いたします。確かに貴方ほどのレア物の〈エンブリオ〉はそうそう見つかる物でも無いでしょう」

 

 三叉槍は髪を靡かせる人型になり、女性の声がその場に響く。

 

「ですから、貴方と同型でしたら相当なレア物である事は間違い無いですね」

 

 声の主は赤い軍服を皆に纏った金髪の少女だった。外見年齢は十五歳くらいだろう。そんな彼女がカルキさんの隣に降り立つ。

 

「初めまして、私はTYPEメイデンの〈エンブリオ〉。【戦域隣妃 ラクシュミー】。以後、お見知りおきを」

 

 彼女は胸に手を当て、柔和な笑みを浮かべながらそっと頭を下げた。 

 

「私のレア度が!」

 

 ネメシスはがっかりしたように肩を落としている。そんな彼女を見て、カルキさんは悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「サプライズ成功だな」

 

 それを口にすると、声を上げて笑い出す。

 

「まさか、こんな近くに同じTYPEの〈エンブリオ〉を持つ人がいるなんて」

 

 カルキさんの〈エンブリオ〉に目をやりながら、俺は驚いた声で呟いていた。

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