皆さん、こんにちは。後藤陸将です。
これにて拙作『機動戦士ガンダムSEED ZIPANGU』はひとまず完結となりました。しかし、この物語は未だ第一部完となっただけで、まだまだ続く予定です。第二部は年齢的に第一部に出せなかったキャラやパワーバランス的に自重した兵器も多数出演させた戦記物に近い作品にしようと思っています。
タイトルは『機動戦士ガンダムSEED DESTINY ZIPANGU』(仮)です。
ただし、SEED DESTINYと銘打っておきながら原作通りの展開は殆ど望めそうにありません。この作品でプラントは分割統治され、オーブは東アジアに占領され、ラクスは政治に全く意欲を示さない普通の女性に格下げされていますし、3隻同盟なんて影も形もありません。
細かいところで言えばアスランはカガリと面識もありませんし、アズラエルやフレイ、そしてアデス艦長は存命です。キラはフリーダムに乗ってませんし、ディアッカも捕虜になっていません。ムウさんも不可能を可能にしていません。
……SEED DESTINY第一話のアーモリーワンからまず不可能です。
あくまでSEED、SEED DESTINYの世界観や設定をお借りしたオリジナルストーリーとして第二部も楽しんでいただければと思っています。
自分はこれまで専ら読者側の人間でした。そんな自分がどうして作者側に回ろうと思ったのか。それはある友人N氏との何気ない会話からでした。
友人N氏(以下N氏と呼称)はネット上のSS等の趣味があう人物で、彼と自分はある日、自宅近くのファミリーレストランで最近のおすすめのSSについて駄弁っていました。その中で機動戦士ガンダムSEEDについての話題が出たのです。
「ウズミってバカなの?何で戦犯にならずに自決するの?」
「何でアズラエルさんが最終章から急に狂っちゃうの?」
「つーか、ラクシズってテロリスト……」
「何で連合が公式で悪扱いなんだ?明らかにザフトのが最悪だろ」
……一度話し始めたら不満が出るわ出るわ。話はそこそこ長くなりました。しかしファミレスに長居するのもあれですし、ちょうどSEEDの話題をした後ということでファミレスを出た後で自宅にN氏と戻ってHDDに録画されていたリマスター版SEEDを観賞することにしました。
「……そういえば、SEEDに日本って出ないな」
「オーブが日本っぽいキャラだからなぁ。二次では日本出てくるやつをいくつか知ってるけど」
「日本が登場するやつはそこそこあるな。でも、日本が主役になってる作品は1、2本くらいしか心当たりはないけど」
「マブラヴみたく日本中心のやつがあればおもしろいかもしれないな」
こんな会話から私は日本を主役としたSEEDの二次創作を書いてみようかなぁ、なんて思ってしまいました。しかし、ここからが難産でした。
まず、日本をどの陣営にするか迷いました。
ザフト?いやいや、日本人があんな居直り強盗に与するか?
連合?いや、まぁ、ありだけど日本が弱かったら主導権が大西洋連邦にあるから原作と変化ないだろう。日本が強かったら別だが。
中立?国益が最も損なわれるパターンだなぁ。トップがまともならどっちかに加担して大戦景気で稼ぐだろうし。
悩みましたが、結局、連合寄りの中立姿勢をとるべきだろうと考えました。
しかし、日本にある程度の力が無ければ中立の立場なんて取れないだろうと次に考えました。力なき中立なんて誰も相手にしてくれませんからね。少なくとも東アジア共和国、ユーラシア連邦、大西洋連邦に対して参戦要求を突っぱねられるだけの力が無ければいけません。
……そんなことができる日本って相当チートですね。そしてそんなチートNIPPONにするにはどうすればいいか?ただのHENTAI技術だけでは到底外圧撥ね退けられるほどの国力にするのは無理です。
しょうがない。困ったときのスターシステム。日本の技術力を強化するために夕呼先生に登場していただくことにしました。ですが、技術だけチートでも外交、内政が上手くいかないと絶対開戦しちゃいます。なんせザフトのやってることってひどすぎますからね、世論が加熱してもおかしくないです。
この人類未曾有の大局を乗り切るだけの指導力のあるチート政治家が必要となりました。そこで自分が白羽の矢を立てたのが澤井総監でした。
ただ、流石にこんな大戦という難局に対し政治チートが澤井総監一人では荷が重い。科学者にしても夕呼先生一人で日本軍チートにするには無理がある。というわけでバンバン人材を多作品からもってきてしまえと開き直りました。
人材チョイスは自分の趣味です。まぁ、人類を背負い迫り来る強大な敵と戦った作品の人物というところでほぼ特撮やマブラヴから引っ張ってきましたが。
ここまで設定を造ると、ZIPANGUの日本像がおぼろげに見えてきました。……すごく…………チートです。
こんな日本なら大東亜戦争も負けなかっただろうに……というわけで国号も大日本帝国にしました。
さて、ここまで設定を造ったら次は本編を書こうということで、構想を練りました。
初期のプランでは、日本は原作のオーブ侵攻までほぼ大戦にノータッチということになっていました。東アジアによるオーブ侵攻を受けて日本がオーブ側にたって参戦し、東アジアをフルボッコ。その後アークエンジェルなどの戦力を日本がゲット。
更にパトリック独裁政権下でクーデターを企むカナーバと極秘に接触。大戦講和の仲介依頼を受けて、日本軍によるジェネシスの破壊の援助とカナーバによる政権奪取を条件にそれを承諾。結果大戦は講和で終結。そして種死へ……という流れだでした。
しかし、物足りない。折角チート人材そろえたのにほとんど出番ない。裏方の内閣のストーリーじゃないの?ってくらい現場の出番が無い。原作キャラもカナーバさんとかパトリックさんとか、政治系の人ばっか。正直、書いていて華がなさそう。
というわけでヘリオポリスのG兵器開発にも協力させるということで最初から練り直し。ただし、ゴールは初期構想と同じくカナーバクーデター政権と連合の講和と決めていました。
そんな感じで構想を練っていくと、自分の中に沸々とこみ上げて来るものがありました。
「……戦わせたい」
チート軍人とチート兵器の大盤振る舞いを考えたのに出番がジェネシス破壊と東アジアフルボッコにしかないってのはちょっと……と思いまして、のっけからザフトとの戦闘を入れてみることにしました。
そこから派生するストーリーを考えていくうちにヅラが島流し、大天使日本亡命、バルトフェルドの電撃奇襲作戦、温泉突っ切って熱中症の変態仮面……といった展開が次々と思い浮かびました。そしてそのままこの後の展開を自分の想像に任せていると、チート政治家と東アジアが一人歩きして最後にプラント分割統治という結末まで辿りつきました。
……あれ?講和はどうするの?プラント占領されたらSEED DESTINYどうなるの?駄目だ、構想練り直し!
と思ったのですが、日本をザフトと幾度も戦闘させる時点でプラント敗北⇒占領統治って結末以外は思い浮かびませんでした。理屈に合わない謎の講和とか3隻同盟まがいのこととかは論外でしたので結局はその結末にすることを決めたのです。
SEED DESTINYはもう完全に原作剥離でいいや!!って開き直りました。その方が縛りが無くて大艦巨砲な火葬戦記が書けておもしろいかもしれませんしね。
因みに武ちゃんを主人公にしたのはCVがキラと同じで面白いかなぁっていうただの思いつきでした。アークエンジェル組がそこそこ優遇されているのは、アークエンジェルにプラズマメーサーキャノンを積ませる流れを造っていたら自然とそこそこの待遇にいる様子が脳裏に浮かんだからです。
執筆の経緯についての説明も済みましたので、ここからは主要キャラの改変について少し語りたいです。
ヅラ
序盤の待遇は少し虐めたくなっただけです。個人的嗜虐心で島流しにされたある意味一番可哀想な子。しかし、島流しと父からの激励をつけた結果、後半には優柔不断キャラではなくなっていました。偉大な父の背を見つめ続けた彼には今後もまだまだ活躍してもらう予定です。
ヅラのパパ
拙作での彼のイメージはほぼ東条英機ですね。ただしカリスマにかなりの補正が入っていますが。あくまで為政者として国民の幸せを最後まで念頭において戦った人物であります。改変された人物ということで、後述の獅子(笑)の対極にいる人物でもあります。偉大な父の姿を見て育った原作よりも優れたアスランを第一部完結後に使いたかったこともあり、父としても立派な姿を描いたつもりです。
……実は最初はとある理由から彼をものすごく偉大な人物にする必要がありました。続編で使うネタですので詳しくは語りませんが。
デュランダル
とりあえず彼になんかやらせておけば物凄く胡散臭くて伏線臭いかんじになりますから、重宝しました(笑)。マブラヴでいうオルタネイティブ3の遺産――試験管生まれのESP能力者を出すことも決めていましたから、遺伝子工学関係である彼は絡ませやすかったです。
銀髪のESP美少女
日本をチートにしすぎたせいでザフトはスーパーエースクラス+核動力搭載MSでないとまともに太刀打ちできなくなってしまいました。日本側のワンサイドゲームになってもつまらないですから、それを防ぐためにザフト戦力の補強として投入したんです。
綺麗な歌姫様
単に、歌がうまい恋する普通の女の子になりました。原作のようにわけのわからない理屈で暴走させるとカオスになって収拾がつきませんし。キラとくっつけたのは、絵になるからですね。キラにとって守りたいものというポジションに置くことで、キラの戦う理由の補強にもなりました。
いいところないキシャマーの人
元々プライドしかないヘッポコですから。アスランの成長の対比ということで扱いが酷くなりました。
変態仮面
武ちゃんが絶望の中でも心に希望を灯し続けた光を体現した人物としたので、それを強調するために彼には絶望の中で闇に染まった人間として描写したつもりです。絶望の中でもがき続ける武ちゃんが最後に勝利掴み、絶望に身を任せたクルーゼが最後にそれをまぶしそうに見つめるという戦いの結末の様子が最初に浮かんだんです。
砂漠の虎
単にザフトの名将を造るの面倒くさかったから各種作戦で使っただけです。
シュライバーさん
原作種死の国防委員長。デュランダルの懐刀なイメージがあったのでESP部隊を率いてもらってました。
フレイがOOのルイスに……
彼女には憎悪を背負ったキャラになってもらいました。憎悪を剥きだしにし彼女に戦ってほしい相手がいますので。
アズラエルさんマジ商人
ブルーコスモスとしての印象を敢えて薄めました。……正直、日本見てればコーディネーターに対する僻みとかも薄れると思います。この世界の彼からみれば日本人の方がよっぽどナチュラルから遠い存在に見えそうですし。
3馬鹿が……躾けられているだと!?
ザフト飯マズネタの派生で彼らもネタになっただけ。特に考えがあったわけではありませんでした。
不幸なシン
原作よりはマシでしょう。それに彼は続編でがんばってもらいたいですから日本に行く流れを作るためにあの境遇にすることが必要だと思いました。
ウズミ?……ああ、あのルーピーのおともだちか
原作では
・自国のコロニー壊されてもザフトに抗議したとは思えない。(していたらアスラン達はオーブ沖で戦うときにもう少し気をつかっていたはず)
・自国民がザフトに殺されても処罰を頼んだと思われる描写皆無。(同上の理由+オーブ領海付近でザフトが戦闘していてもオーブのメディアからは危機感が感じられない=自国民が殺されたことをザフトや国民に強くアピールした形跡がないのでは?自国のコロニーを襲撃した集団が領海付近に現れれば普通は不安に思うはず)
・アークエンジェル匿っておいてそれを連合相手に政治的カードとして使った形跡がない。
・戦えば国土が焼かれることを分かっていて徹底抗戦指示+勝手に自決。終戦時に昭和天皇は自身を処罰してくれてもいいから国土が焼かれ食べるものにも困っている民衆に食糧を与えてくれとマッカーサーに頼んだそうです。それに比べて無責任すぎ。
・国の資産でありモルゲンレーテとマスドライバーを破壊。マスドライバーもモルゲンレーテもオーブの施設だから、その迅速な運用にはオーブの現地民の協力が必要不可欠。上手く使えば占領下でも占領軍からお金を地元に落としてもらえたかもしれない。その可能性すらも彼は断った。
どの陣営にも与しないという彼の意地を最後まで貫いた姿勢は一個人の姿勢としては立派だったと思いますが、為政者としては最悪なものでしかないと私は思います。オーブの動きは大体原作通りにしましたから(拙作ではオーブはあくまで中立国としました。しかし。中立であるかぎり原作以上にでしゃばる要素がないので……)ウズミも原作どおり。結果、書いててこちらが不愉快になるぐらい救いようの無い阿呆になりました。カガリの対比という役割もそれに拍車をかけましたね。
Kガリ・ユラ・アスハ亡命政権代表
愛すべきバカ。その一言に尽きます。最初は頑迷なウズミを己の信念の篭った拳でぶっとばして民を第一に考える為政者として目覚めるという構想でした。しかし、偶然某探偵漫画に出てくる空手都大会優勝者の閃光妖術を見て、こっちの方がいいなと思って閃光妖術でウズミをぶっとばすことにしました。
……想像すると、ものすごいインパクトのある光景ですね。為政者の姿じゃなくて格闘家の姿ですよ、これ。もう、この娘は体育会系で決定。
某ドイツの独裁者と被る描写をつけたのは、閃光妖術を決めた彼女の姿がものすごく光り輝いているように見えて、自分の中のお気に入りになってしまったからです。
「さすがカガリ様!おれたちにできない事を平然とやってのける。そこにシビれる!あこがれるゥ!」
ってやつですね。理屈バカを書いててウズミに不愉快さを感じていた自分はそんな心境でした。もうこれはカリスマ補正かけてあげるっきゃない!!と思いました。
政治家としてはまぁ……バカなんでまだ未熟です。しかし、民のためには頑張れる健気な娘です。いつかきっと立派な為政者になれると思います。応援してあげてください。
可哀想な飛雄馬……じゃなかった、ユウナ
体育会系カガリのキャラ付けの犠牲者にされました。ヘタレです。カガリがアグレッシブになったのでそれのストッパーということで肉体的に被害を受けることになりました。ただし優秀です。オーブ亡命政権に優秀な人いれないとおバカなカガリだけじゃどうにもならないんで。
眠らない官僚ウナト
政権トップがあれなので苦労人です。激務で胃が荒み、頭皮にもダメージが蓄積しています。種死で分かるとおり、優秀な人材ですからカガリについていかせました。休み?なにそれ美味しいの?って状態ですね。
スーパーコーディネーター
武との交流で戦いというものに関する意識が変わり、守るために戦う決意をする。当然不殺なんてしない。守るために躊躇無く殺します。まともな主人公らしくなったというべきか。
最後に、ここまで読み続けてくださった読者の皆様へ。
およそ50万字、ちょっとした読み物ほどの長丁場をお付き合い下さいました読者の皆様に厚く御礼申し上げます。
第二部は現在構想中の段階ですが、目算でも第一部の2倍近い文章量は最低限必要になりそうです。外伝共々読み続けていただければ幸いです。
この作品を書くきっかけとなったN氏へ。
N氏には何度か貴重な意見をもらいました。きっかけとなったという点も含めて感謝です。
皆様、これまで本当にありがとうございました。