聖杯戦争 in 総武高校   作:Sakuya_

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意外と皆さん閲覧してくださってるようで、ありがとうございます。
キャラの口調に関してはおかしいところがあればご指摘などしていただけると嬉しいです。

あと、説明中心なのでめっちゃ長くなってしまって申し訳ありません。




黒装束と白衣

 

「さあ、契約を。」

 

 手を差し伸べてきた女性は、何というか、とにかく黒い。

 衣装もそうなのだが、雰囲気というかオーラというか、そういうのも込みで身にまとっているものが全て黒い。だがそこから恐怖などは感じない。むしろ、少し寂しさも………

 その黒さとは真逆に、白く凛とした彼女の顔は、より一層美しく見える。

 

 まあ、そんな彼女に、俺は言わなければならないことが一つある。

 

 

「いや、まあ、その前に今乗ってる机腐ってるからそのままだと……」

 

「え?ってひゃぁっ!!」

 

 

 ガシャン!

 腐ってた机が壊れ、黒い女性は盛大に転げ落ちた。なんというか…先ほどまでの雰囲気ぶち壊しですね……あっ、ちょっと見えそう………

 

「いたたた………もう、早く言いなさいよ!!」

 

 なんか怒られたんですけど……あれ、ちょっと顔が赤い?あー、これは恥ずかしさによる赤面ですねわかりますわかります。仕方ない、黒歴史において百戦錬磨の俺に……ってなんだその悲しい経験則は……。

 まあともかく、俺の優しいお兄ちゃん属性を発動させてやるか。

 

 

「早く服装を正せ、下着見えてるぞ。」

 

「何が優しいお兄ちゃん属性よ!!?やるならちゃんとフォローしなさいよ腐れゾンビッ!!」

 

 

 …やはりこれは妹にしか通じなかったらしい。ああ、小町どうしてんのかな……元気にしてたらいいんだが。

 ん、待てよ……

 

「優しいお兄ちゃん属性って、俺口に出してたか?」

 

「はぁ?私を召喚した時点で私とあなたの魔力のパスが繋がったんだから、テレパシーくらいできんでしょ。というか、変なことをテレパシーしてこないでくれる?」

 

 やだもう、私と繋がってるだなんてなんだか卑猥だわお母さんそんなこと教えた覚えないわよ……いや、そんなこと考えてたらまた向こうに伝わってしまうのか。

 ……召喚した時点で繋がったって言ってたよな?

 

「え、待て待て。じゃああれか、俺がお前を初めて見たときに……あっ」

 

 っとあぶねぇあぶねぇ…。これはあれだ、俺が余計なことを言ってまた怒られるやつだな。うん、ハチマン学習したよ。

 

「初めて見たときに、なに?」

「いやその……そう、なんか契約とか言ってただろ。それは具体的に何すればいいんだよ?」

「あっ、そうそうそれよ!あんたが余計なことばっか言ってくるから忘れるところだったでしょ!?」

 

 はい黙ってても怒られました。

 もうわかった、最後まで付き合ってやろうじゃねえかこの理不尽に。伊達にいつも部室で氷の女王からの毒舌を(一方的に)喰らってる俺じゃないぜ。

 

「ゴホン!さて、契約の続きです。この聖杯戦争の間、私はあなたのサーヴァントとしてこの戦いに参戦します。まあ、私のことは武器とでも思ってくれればいいわ。そういうことで構いませんね?」

「俺のサーヴァント、ってことは、俺がマスター…ってことでいいのか?」

 

 しかし戦争か、想像以上に規模がでかいな……。なるほど、命の保証はないってこういうことか。

 

 

「は?何を寝ぼけたことを言ってるの?」

 

 

 ……ん?えっ?

 

「え、何違うの?」

 

「あなたが私のマスター?はっ、笑わせないでくれる?なんであなたのことをマスターと思わなければならないのですか。あくまであなたは私の魔力供給源。いわゆるガソリンみたいなもんよ。とりあえず犬死しなければそれでいいわ。」

 

 …ほほう、なるほど。そういや、初めに声が聞こえてきたとき正規のマスターではないとか言ってたな。つまり役立たずは黙って見とけってことか。オーケーよくわかった。

 

「その前に、俺の右手の甲にあるこの痣みたいなのはなんだ?」

「…ホントに何も知らないのね。それは令呪、魔術師がサーヴァントと契約した証みたいなものよ。その上、サーヴァントに対しての絶対命令権でもあるわ。」

「…なるほど。」

 

 そりゃ、召喚した側にそういうものがなかったら、召喚した時点でこいつにすぐ殺されてただろうしな。

 

「令呪を使用する条件は?呪文でも唱えるのか?」

「そんな大層なことになくても、令呪に命じれば発動するわよ。まあ、使う機会は早々ないでしょうけど。」

「ほほう、なるほどなるほど。」

 

 絶対命令権って割に発動は簡単なんだな。契約の証でもあったか、つまり使う回数はなるべく少ないほうがいいな。戦いが始まる前に契約破棄とかなったら洒落にならないし。まあともかくだ、

 

 

「令呪をもって命ずる。」

 

「…は?」

 

 

「俺の質問に対して嘘をつくな、サーヴァントアヴェンジャー。」

 

 

 ピカッ!と右手の甲が光り、それと同時に令呪が一つ消えた。どうやら正常に令呪が発動できたらしい。とりあえず一安心……ってわけにもいかねぇよな…。ほらぁ、目の前のサーヴァントがめちゃくちゃ怒ってるよぉ…。

 

 

「……あなた、どういうつもり?」

 

 

 これにまでない緊張感、あの大魔王はるのんが可愛く思える。常に頭に銃口を突きつけられているような、死と隣り合わせの感覚。恐らく返答次第では殺される。こいつは本気で殺るつもりだ。

 

「私が、嘘をついてると?」

 

「それを今から確かめるんだろうが。だいたい、いきなり出てきたやつの言ってくることを全部信じろって?冗談きついぞ。」

 

 ……正直やってしまったと思った。が、むしろさっきの威圧感がマシになっているようだ。だが、まだ油断できない。

 

「先に言っておくが、俺はお前を武器として扱う気もないしそう思ってもない。それにお前のガソリンになる気もないからな。確かに魔術云々の知識は皆無だが、見た感じお前あんまり頭使えないだろ。だから、俺がお前の頭脳になってやる。」

 

 うん、ダメだな。これはもう死んだんじゃねぇの俺。面と向かって頭使えないから俺が代わりになるとか言われたら流石にやばいだろ…。まあでも代わりに目になるよりマシだろ。ほら、この腐った目よりも……俺泣いていいよね?

 

「だから、提供する情報に嘘をつくな。わかったなサーヴァント?」

 

「………っ!!」

 

 これを守られなければ、どの道死ぬ。だから、強制的に嘘をつけないようにした。これで、俺の満足のいく条件はクリアされったな。

 

 

「さて、質問の続きだが、もう一つ。アヴェンジャーって本名じゃないだろ?お前の本当の名前はなんだ?」

 

 

「………わ、わた…し、は………っっ!!」

 

 なるほど。確かに嘘はつくな、とは言ったが質問に答えろ、とは言ってなかったな。そういう命令の回避はできるのか。

 しかし、何故名前を知られたくないんだ?知られることで何かデメリットが……?

 こうなると仕方ない、少しもったいないが、二つ目の令呪を────

 

 

「おや、これは驚いた。魔力を感じたからまさかとは思ったが、もう一人参加者がいたのだな。」

 

 

 聞き覚えのある声。

 

 振り返るとそこには、白衣をまとった俺の恩師が、

 

「少し特殊なマスターのようだが、歓迎しよう。ようこそ129人目のマスター、比企谷八幡。」

 

 平塚先生が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 * * * * * * *

 

 

 

 

「さて、ここなら誰にも見られないし聞かれないから安心したまえ。」

 

 サーヴァントを召喚した部室から出て、俺は先生に連れられて生徒指導室に入った。しかしその際、サーヴァントはこの部屋に入れないらしく、霊体化して外で待っているとのことだ。ていうか霊体化とかできんのかよ。リアルステルスヒッキーができるじゃねえか。

 そんなことを考えていると、先生が口を開いた。

 

「一応確認したいのだが、君は比企谷八幡で間違いないね?」

 

 ……どういうことだ?俺が偽物だと疑っているのか?

 

「む………?ああ、なるほど。君が元居た世界では、私のこの姿の人は君の知り合いなのかな?だったらこんな質問をされると戸惑うのも無理はない。先に私について説明するとだね、私はこの戦いにおけるいわゆる案内人だ。姿はランダムで作られるのだが、今回たまたま君の知り合いになっただけで、中身はただのプログラムだよ。」

 

 そういうと、先生は自分で用意したコーヒーカップに口をつける。そのしぐさも、声も表情も、見れば見るほど俺が知っている平塚静とは別人というのが信じられなかった。いや、プログラムだから別物というべきか。

 

「信じられないようだな。まあ、それならそれでも構わないさ。重要なのは私ではない。今の君の現状だ。」

 

 急に空気がシンとなった。どうやら相当やばい状況らしい。

 

「どんなに危機的な状況でも、噓偽りなく話してください。今の俺には、情報を集めることしかできないようなので。」

 

「そうか、初めからそのつもりだったが、改めて言われるとこちらも気兼ねなく話せるよ。それに、君はこの聖杯戦争のことをあまりわかってない状態ですでに、情報の重要性を理解しているようだ。」

 

 では順に説明しよう、と言いながら先生は立ち上がり、ホワイトボードを使いながら語り始めた。

 

「君が参加したのは聖杯戦争というサーヴァントを使ったデスゲームだ。しかし、通常の聖杯戦争と違って今回は、人数の多さと参加者の平均年齢を考慮してトーナメント方式の戦いとなる。対戦相手はランダムで決まり、掲示板に掲載される。そして、決戦までには一週間の猶予があり、その間に別エリアに行き、カギを二つ獲得すれば一週間後の決戦への参加が認められる。まあその辺のことは後で資料を渡そう。総勢128人による全七回戦の戦いだ。本来ならな。」

 

「待ってください、総勢128人って、確か俺は129人目のマスターなんですよね?」

「だから言っただろ、本来なら、と。今回の聖杯戦争に君は参加できなかったはずだったんだよ。」

「……どういうことですか?貴女がプログラムなら、このゲームもプログラムによって制御されてるんですよね?何かの拍子にバグでも起こったんですか?」

 

 そう質問すると、平塚先生は少しニヤリとして説明を続けた。

 

「部室で君を見つけたとき、初めに言った私のセリフを覚えているか?」

 

 …初めのセリフ??

 

「………魔力を感じたからってやつですか?」

「その通り、魔力を感じたんだ。恐らくそれが答えだろう。」

 

 んん?話が見えてこない…

 

「わからないか?さっき説明した通り、今回の聖杯戦争はトーナメント方式だ。」

「それはちゃんとわかってますよ。通常がどんなものか知りませんが、人数の多さと参加者の平均年齢でその方式になったんですよね?」

「そうだ。では、その平均年齢はどのくらいだと思う??」

「…………………なるほど、会場が学校なのと、案内人が先生の姿というところから察するに、平均年齢が低い、つまりほとんどが子供ってことですね。」

 

 これで戦争なんて大層なものが、学校内で行われる理由がよくわかった。

 

「ああ。言い方を変えると、まともな魔術師がほとんどいない。魔術の知識はあっても、魔力量が全体的に少ないんだよ。プログラムの私たちでさえ、感知するのが難しいレベルさ。」

「それはおかしくないですか?先生が俺を見つけたのって、魔力を感じたからなんですよね?」

「全く、自分のことだと察しが悪くなるようだな…。君は確かに魔術の心得はないが、通常の魔術師と同等以上の魔力量がある。だから、こんなイレギュラーな形になってでも参加できたんだろう。」

 

 …つまり、素質だけを見ると俺は魔術師と同格ってことなのか……。そんな片鱗は見たことないが、事実俺が参加できてることを考えるとそうなのだろう。

 

「さて、君が参加できた理由はこんな感じだ。続けて本題の、君の現状だ。」

 

 やっと本題だ。いくら子供がほとんどとはいえ、これは戦争。自身の状況がどんなものか、最悪を連想してしまい、おもわず息をのんだ。

 

「まずは悪い知らせだ、今すでに一回戦が始まっている。」

 

「っ!?」

 

 それは不味い…あと何日残っているか知らないが、この時点で相手にアドバンテージがあるってことじゃないか!

 

「まあそう焦るな。君は一回戦目を免状、つまりシードという扱いになっている。」

「あっ、そっそうなんすか……。」

 

 それを先に言えよ……こっちは命かかってんだぞ…

 しかし、ホッとしてもいられないな。

 つまり俺は、ほかの人よりも実戦経験が少ない状態で二回戦を迎えることになる。ただでさえ魔術師としての知識がないのに実戦経験も少ないとなると、かなり厳しくなりそうだ…

 

「シードということ以外のもう一つ良い知らせだ。君には特別ギフトが贈られることになっている。さっきも言ったが、聖杯戦争のことやサーヴァント、魔術師などのことを記した資料だ。情報戦を重視している君にとってはこれ以上にないアイテムなのではないか?」

「それは………確かに助かりますが……」

 

 いくら何でも待遇が良すぎる。何か裏があるんじゃ……

 

「言っておくが、君を特別扱いしてるわけでも裏があるわけでもない。実戦ができないを言うデメリットがそれだけ大きいということだ。二回戦目は、覚悟しておくんだな。」

 

 ………頭ではわかっていたが、改めて言われると事の重大さがよくわかる。

 

「さて、説明は以上だ。ああそうそう、君の部屋は二年F組の教室だ。マイルーム出はこの部屋同様、他のマスターからの干渉は受けない。サーヴァントと密談や作戦会議などするときは利用するといい。もちろん、聖杯戦争中の寝床もその部屋だぞ。」

 

 とりあえず二回戦までどうするか、あの黒いサーヴァントと話し合うため、資料をもらい、生徒指導室を後にした。

 

 

 

 

 * * * * * * * * 

 

 

 

 

「……………………」

 

 平塚先生に言われた通り、二年F組に入って貰った資料を読んでいた。最初は机が並んでるだけの普通の教室と思っていたのだが、中はなんと俺の部屋と同じだった。もちろん俺の部屋は教室よりも小さいし扉は一つしかないのだが、教室の前後ろ両方の扉から入っても俺の部屋に繋がっていた。何でもありだな魔術。

 さて、沈黙しているのは俺ではない。現在俺はもらった資料を見ながら頭に叩き込むためにぶつぶつと言っている。ほら、英語とかもそうやって覚えるだろ?だから気持ち悪いとか思わないでね?

 そう、沈黙してこちらを睨んでいるのは俺のサーヴァントだ。ていうかそこ俺のベッドなんですけど。枕を抱きしめてながら睨まないで?その枕俺使えなくなるでしょ?

 

 まあ怒っているのも仕方がない。召喚した直後に令呪を使い、嘘をつけないようにしたのだ。信頼関係などまっぴらごめん、と普段の俺なら言うところなのだが、資料を読む限りそうも言ってられないらしい。

 

「…あ~その、なんだ…」

 

 自分から話しかけるということをしてこなかったつけか、言葉が出てこない。うん、八幡頑張ってるからそんな睨まないで?

 

 

「あの時は、その、ありがとな…」

 

「……何のことですか?」

 

 

 謝罪ではなくお礼。

 俺は令呪を使ったことに関しては罪悪感はない。むしろ必要な措置だと思っているまでだ。

 

 

「あの時、お前本名……いや真名って言ったほうがいいか。あの場で真名暴露してたら誰かに聞かれる可能性があった。あれは俺が軽率だったが、お前のおかげでそうならずに済んだ。だから、ありがとう。」

 

 サーヴァントとは、人類史に名を遺した英霊であり、聖杯戦争において相手のサーヴァントの真名を暴くことこそ勝利への道となる。逆を言えば、バレてしまうと過去の伝記から弱点などが知られてしまうかもしれない。

 

 

「……………別に、そういうつもりで言わなかったわけじゃ…」

 

 え、違うの?じゃあなぜなのか、そう問う前にサーヴァントは答えた。

 

「この姿で私の真名を知ると、あなたはきっと失望する……」

 

 これは本音かわからない。なぜなら嘘をつけないのは俺の質問に対してだけだから。だが、その言葉には嘘が感じられなかった。

 

 

「まあ、別に今すぐ言わなくても「言うわ。」…え?」

 

「だから、真名を教えてあげるって言ってるのよ。それを聞いて失望するといいわ!!」

 

 そういって高らかに笑う。枕を抱きしめている腕が震えていたのは笑っていたからなのか、それとも…

 

「んじゃ、教えてくれよ。ああ、俺は比企谷八幡だ。俺のことをマスターとして見たくないらしいからな、呼ぶときは名前で呼んでくれ。」

 

「あっそ、八幡ね。まあどうでもいいけど。」

 

 どうでもいいって言ってる割に早速名前で呼んでくれるんですね。ちょっと嬉しく思ってる自分がいる。

 

「では今度は私ね。私は──」

 

 …実は、サーヴァントが名の知れた英霊ということを知ってから大体の予想はついていた。確かに伝記からのイメージとは違う。だが、大きな旗に綺麗な女性。さらに憎しみや憎悪を感じさせる黒装束。何より俺が想像していた通りの姿。彼女は────

 

 

「私は竜の魔女、ジャンヌダルク。この世全てに憎悪し、この度はアヴェンジャーのクラスで召喚されました。あの時の契約がまだだったわね。私とともに勝ち抜きなさい八幡。」

 

 そういうとジャンヌは手を差し伸べてきた。俺は迷いなくその手を取る。

 確かに俺は俺の願いのために戦う。それは彼女も同じだろう。

 しかし、少なくとも俺は、この戦いの間だけは、この見惚れた彼女の綺麗な顔を、出来る限り守っていこうと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

「だっ、だから…!…変なことを考えるなって言ってんでしょ!?バカ!アホ!ハチマン!!」

 

 

 ……その前に、このテレパシーをどうにかしようと誓った。

 

 

 

 

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