聖杯戦争 in 総武高校   作:Iタク

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ジャンヌダルクピックアップなんて幻だったんだ…







7日目 決戦日

 

 一回戦七日目。

 今日まだマイルームにいるのは恐らく俺だけだろう。

 何しろ、七日目は決戦日。今頃他のマスターたちは二回戦へ勝ち進むために戦っているころだ。

 いや、もうはっきり殺し合っているといったほうがいいのか。

 

「まっず!なにこのパン、人に食べさせる気あるの!?」

 

 この戦いで100人以上だった参加者が一気に60人程度になる。恐らく大半の奴は、負ければ本当に死ぬなんて考えてないだろう。

 だからこそ、二回戦からの相手は誰であろうと油断できない。

 

 何故なら、生き残った人たちは皆人殺しだからだ。

 

「ふ~ん、まあまあだったわねこの本。…ねぇ、これ続きないの?別に気に入ったわけじゃないけど、仕方ないから最後まで見てあげるわ。」

 

 先日、初めて俺のサーヴァントであるジャンヌと戦闘を行ったが、ぶっちゃけかなり相性がいいと思う。この黒ジャンヌ、破壊力はあるが魔力の燃費が悪い。だが、俺の魔力量は魔術師並みにあるらしい。壮大な魔力を持つマスターと最大破壊力の攻撃力を持つサーヴァント。もっと実戦経験を積めば相当なタッグになるだろう。

 

 しかし、まったく落ち着いていられない。

 

 それは昨日別エリアから帰って「ねぇ何で16巻がないの?17巻以降はあるのに読めないじゃない、ちゃんと整理しときなさいよまったく!」

 

 ……………………

 

 

「…今考え事してるからちょっと静かにしてくれ。16巻なら左の棚にあるから…。」

 

「あ、ホントだ。…ってあんたが整理してないからでしょ!?」

 

「あーはいはいわかったわかった…。」

 

 

 …さて、昨日戻ってからの話だ

 

 

 ─────────

 

 ───────

 

 ─────

 

 ───

 

 ─

 

 

 

「お、お兄ちゃん……?」

 

 物置にいたのは俺の天使であり妹である小町だった。

 しかし、いつもの無邪気な様子とは違う。

 何かに怯えているようで、目は潤っていていつ泣き出してもおかしくない様子だ。

 

「小町?お前、どうしてこんなところに……?」

「お兄ちゃんも……、なんでここに…?」

 

 お互い、まさか自分の兄妹がいるとは思っていなかった。確かにこの対戦に参加していることにも驚いたが、俺はそれよりも……

 

「なんでそんなに怯えてるんだよ?」

 

 何年ぶりだろうか、妹のこんな姿を見るのは。

 以前奉仕部のことで相談した時のような頼りになる姿は、今では見る影もない。

 

「うっ…ぐすっ……そっそれは…」

 

 ホントに小町なのか?

 そう思うほど、妹の様子は豹変している。

 

「……この前、カギを取りに行ったとき…、相手の人と鉢合わせて…」

 

 カギ…、決戦に挑むためのトリガーのことか。確かエリア内での戦闘は制限時間はあるが可能だったな。

 

「その人が、ずっと殺す殺す殺すって言ってて……。校内で見かけた人たちも、どうやって殺すかとかずっと言ってて………こんなのおかしいよ…。怖い…みんなどうしちゃったの…?怖い…怖いよお兄ちゃん…」

 

 そう言って小町は涙を流した。

 恐らく本当の殺し合いだと思ってなかったのだろう。小町が心優しく、争いごとなど誰よりも嫌っていることは兄である俺が一番よく知ってる。だからこそ、ここにいることに俺は疑問を抱いている。

 

「小町…」

 

 こいつが泣いているのを見るのは小町が小学生の時以来か。どんなに立派でも所詮は中学生なのだ。怖いと思うのは普通のことだろう。

 俺は、昔のように、妹の頭を撫でてやろうとした。

 

 

 ────その時だった

 

 

 

 

「そこまでにしてもらおう。」

 

 

 

 

 シュン、と光り、小町の前に“白髪の男”が現れた。

 身長はさほど高くないが、その凄まじいオーラ故に、巨大な何かと対立している感覚。

 

 だが、一番危険だと思った要因は“その男”の眼だ。

 

 俺が誰かの目についてとやかく言うのはおかしな話だが、“その男”の眼は直視できない、出来ないほど何か力を発しているかのような、まるで眼だけで殺されそう(・・・・・・・・・)な、そんな感覚。

 そのあとすぐに、俺を守るかのようにジャンヌが俺の前に武器を構えて現れる。

 

 男を見たとき、俺は鳥肌が立った。

 

 

 

 こいつはヤバい。

 

 

 

 サーヴァントはジャンヌと“この男”しか見たことないが、こいつは恐らく別格の英霊だ。

 

 場に立っているだけでこの存在感。

 今回召喚された中で最も強いサーヴァントと言われても、俺は納得がいく。

 

 

「今までの会話と魔力の質を見る限り、お前は我がマスターの兄なのだろう。妹を慰めようとしているところ悪いが、無駄な接触はやめてもらいたい。」

 

「………っ!」

 

 

 ただ、会話をしているだけなのにこの威圧。

 不良に絡まれた時のような安いものではない。

 

 

 格の違い。

 

 

 それを全身に叩き込まれているような感覚。

 俺だけじゃない。ジャンヌもかなり警戒しているようだ。

 

「待ってランサー!お兄ちゃんは大丈夫だから。」

「小町、今は聖杯戦争中だ。例え大事な身内だろうと、討たねばならない時が来る。ならば、これ以上余計な情を抱かないほうが身のためだ。」

 

 どうやらこのサーヴァントのクラスはランサーのようだ。

 しかし、クラスがわかったところでこいつに勝てるのか?仮に真名を暴いたとしても、対策を立てることができるのか?

 

 ダメだ。

 勝つイメージが湧いてこない…。

 

「八幡、ここは引いたほうがいいわ。相手もそうだけど、この時間帯に戦闘を行ったことがバレたらルール違反でペナルティを受ける可能性もあるわよ。」

 

 俺にしか聞こえない声で、ジャンヌが助言をくれた。

 たしかに、ここで戦うメリットはない。

 小町のことが心配だが……

 

「悪かったな。お前の言う通り、これ以上妹には干渉しない。これでいいか?」

「すまない、そうしてもらえると助かる。俺とて、マスターの目の前で兄を殺したくないからな。」

「お、おう。」

 

 あれ?案外話してみるといいやつなのか?ともかく、これで戦闘にならずに済みそうだ。

 

「…ありがとなジャンヌ。ひとまず霊体化しといてくれ。こっちに戦闘の意思がないことを見せつけておきたい。」

「……わかった。すぐ帰るのよ?」

 

 そういうとジャンヌはスッと消えていった。

 

「じゃあな小町。……お前は、勝ち進んでくれよ…」

「待ってお兄ちゃん!!…お兄ちゃんも、人を殺すの?あの人たちと一緒なの?」

 

 応えようとしたが、先ほどランサーと干渉しないように言ったばかりだから応えてもいいものなのか…

 そう思いランサーのほうを見ると、察してくれたようで目を伏せ小町の後ろに下がった。

 どうやら話してもいいということらしい。

 

「そうだな……、一緒といわれても否定できない。でもな小町、ここに来た以上生き残るためには勝つしかない。戦うしかないんだ。参加できたってことは、小町にも願いがあるんだろ?なら勝って叶えるんだ。もう、それしか進む道はない…。」

 

 突き放すように、俺はそう告げた。

 もう振り返らない。

 それが、小町のためになるのなら、俺は嫌われてもいい。

 

 そう決心して、俺は部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 * * * * * *

 

 

 

 部屋を出てすぐ、俺の目の前に小町のサーヴァントであるランサーが現れた。

 

「!?……ど、どうした?まだ何かあるのか?」

 

 恐る恐る聞いてみた。

 

「いや、何というわけではないが、一つ礼が言いたくてな。」

 

 ……礼?

 

「あの探索以来、我がマスターは言葉も発しないほど引きこもっていてな。だが兄であるお前と話したおかげだろう、心なしか顔色がよくなったようだ。ありがとう。」

 

 ……こういうサーヴァントもいるのか。

 まさしく主人に仕える騎士。

 全く、俺の妹は恵まれているな…

 

「敵である俺が言うのもおかしいが、一つ頼みがある。小町にじゃない、ランサー、お前にだ。無論聞き流してくれても構わない。」

「応えられるかどうかはわからないが、聞くだけ聞いてみよう。なんだ?」

 

 隣に俺はいない。

 突き放しはしたが、最愛の妹には変わりない。

 

 ならば、俺が願うことは────

 

 

「……妹を、よろしく頼む。」

「……」

 

 もう、俺が支えることはできない。

 ならばせめて、誰か頼れる奴がアイツのそばにいてくれたら……

 

 

「言われずとも、我が槍にかけて、マスターを守り抜くと誓おう。」

 

「…ありがとう。」

 

 こんなことはこれで最後だ。

 小町のことはこいつに託す。

 

 そして俺は、自分の願望を叶えるため、

 

 人殺しになる決心をした。

 

 

 

 ──────────

 

 ───────

 

 ─────

 

 ───

 

 ─

 

 

 もう思い残すことはない。

 割り切った。トーナメント次第では妹とも戦わなければならない。

 

 だが俺は迷わない。

 

 恐らく、迷いのある者にこの戦いは勝ち進めない。

 だから切り捨てた。

 

 いかに非情になれるか────

 

 それが、明日から戦いに参加する俺の課題になることだろう。

 

 

「……なにいっちょ前にかっこつけてんのよ。」

 

 ジャンヌは呆れたような顔をしながら、読んでいた漫画を置いて話しかけてきた。

 というかお前ちょっと満喫しすぎじゃね?

 

「戦いの前の覚悟ってやつをしてたんだよ。心配すんな、戦いに支障はねぇよ。」

「ふぅん…、まあ足引っ張るようなら遠慮なく殺してあげるから安心しなさい。」

「…ちょっともう一回気合い入れ直すわ……」

 

 遠慮なく殺す、か。

 つまり、生きている今の段階では大丈夫ってことだろうか。

 

「昨日会った英霊、ジャンヌはどう思う?」

「…どうって?」

 

 先ほどまで考えていた小町のサーヴァントの見解はあくまで俺の、つまり人間視点の話だ。

 同じ英霊であるジャンヌがどう思ったのか、純粋に気になった。

 

「はぁ……憶測なんて当てにならないけど、そうね…、あくまで、あくまで単純な能力値や性能だけでしか言えないけど」

 

 そこまで言うと、ジャンヌは一呼吸いれ、再び口を開いた。

 

「あのオーラは確実に神性持ち。その上、立っているだけで警戒しないといけないほど身からにじみ出てる魔力値。全てのサーヴァントを確認しなくても、私たちを除けば優勝候補の一組であることは断言できるわね。」

 

「………っ。」

 

 同じサーヴァントから見ても、やはり別格のようだ。

 ジャンヌによれば神性持ち、つまり神に関する英霊ということ。能力だけ聞いていれば勝ち目はなさそうだが……

 

「……俺たち(・・・)を除けば、か。」

 

「なに?変かしら?」

 

「いや……」

 

 

 過信しているわけではない。

 

 自信があるわけではない。

 

 ただ単純に────

 

「…俺も、そう思ってたよ。」

 

 こいつが言葉にしてくれたことが、とても嬉しかった。

 

 

「あっそ……。ならいいのよ。」

 

「おう…。」

 

 

 明日から俺たちの聖杯戦争が始まる。

 だが不思議と緊張はしていない。

 

 俺は出来損ないのマスターであることは明白だ。

 しかし、

 ジャンヌが俺のサーヴァントである限り、

 

 何故か負ける気はしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二回戦 対戦相手 ■■ ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * * * * *

 

 

 

 

 ここは聖杯戦争管理プログラム。

 ここでは、全てのマスター・サーヴァントの監視、また戦闘の記録をしている。

 セキュリティーは厳重であり、天才ハッカーでさえこのセキュリティーを潜り抜けるのは不可能である。

 

 しかし今回、稀にみる100人を超える参加者たち。

 故に、制御しきれない一部のデータが漏れている。

 

 おっと、これは一回戦を勝ち抜いた参加者のデータのようだ。

 

 

 では少し、覗いてみるとしよう───────

 

 

 

 一回戦 Winner ■崎 沙■

 

『はぁ……はぁ……』

 

『マスター、大丈夫か?汝がそこまで加勢しなくても勝てたであろうに。』

 

『そういう油断が負けに繋がるってこともあるかもしれないでしょ?まあ確かに、ちょっと横入りしすぎたかもね。』

 

『もっと私の力を信頼してもらってもいいのだぞ?』

 

『……信頼してるって。ちゃんと。』

 

『しっしかし…!』

 

『信頼してなきゃ、こんな戦いに挑んだりしない。』

 

『……マスター…!』

 

『次もお願いね、■■■ン■。』

 

 

 

 

 

 

 

 一回戦 Winner 城■ ■■■

 

『…ごめんなさい。結局はこうするしかないんだよね……』

 

『マスター……』

 

『覚悟がなかったわけじゃないの。わかってたつもりだったんだけど……やっぱり私って、最低だよね…。』

 

『そう思えるということは、あなたの中に人を想う心があるということ。少なくとも、最低などと、卑下することはありません。』

 

『ふふっ…ありがとっ。でも、やっぱり宝具は解放できなかったね…。』

 

『やはりまだ封印が解けないようです。条件を満たせば発動できると思うのですが…』

 

『…まだ思い出せない?』

 

『申し訳ございませんマスター…。』

 

『ううん、大丈夫!次も頑張ろうね、■■■ー。』

 

 

 

 

 

 

 

 一回戦 Winner ■■ヶ■ ■■

 

 

『ふぅ…、何とか勝てたね…。』

 

『お疲れさんマスター。しっかし、意外だったな。』

 

『え、何が?』

 

『いやなに、嬢ちゃんみたいなのは、こういう殺し合いとか出来ないってイメージだったもんでよ。』

 

『あーうん…、しなくていいんだったら、もちろんしたくないよ?』

 

『ほう?』

 

『けど、願いが叶うなら、仕方ないかなぁって。』

 

『………アッハハハ!なんだおい、意外と冷酷な嬢ちゃんじゃねぇか。いいねぇ嫌いじゃないぜそういうのは。』

 

『意外だったかなぁ…?私はただ、ずるい子なんだよ…。』

 

『なぁに、気にすんなよ。泣き虫なガキよりよっぽどマシってもんだ!久しぶりに良いマスターを引き当てたかもなぁ。』

 

『ありがとっ。これからよろしくね、■ー■■■■。』

 

 

 

 

 

 

 




サーヴァントの口調がイマイチ掴めないな…
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