美濃の国主、斎藤道三と尾張の当主信奈の二か国の軍事同盟が成り立つか決まるこの正徳寺会見。雲行きはさっきまでは快晴だったのに今では暗雲が立ち込めて今にも雨が降り出しそうな状態であった。緊迫した状況の中先に口を開いたのは斎藤道三であった。
「さて・・・・信奈殿。貴殿は随分と南蛮渡来の鉄砲をそろえたの?」
「これからは鉄砲の時代よ」
「南蛮のおもちゃと揶揄する連中も多くおるみたいだが?」
「そう言う大口をたたいた自称豪傑ヤロウをうちの足軽たちが一発で倒すのよ。それにね鉄砲は武士が撃とうが農民が撃とうがその威力は同じ、しかも訓練も早い。私の言いたいことがわかるわよねマムシ?」
と、信奈は一息入れそして
「つまり鉄砲さえあれば弱小と言われた織田の軍もたちまち最強になるのよ!」
と、信奈が不適の笑みでそういう。すると俺の隣にいた宮藤が
「この考えが後に長篠の戦で当時日本最強と言われた武田騎馬隊を壊滅させるんですね。大佐・・・・」
「ああ・・・・」
宮藤軍曹の言葉に俺は頷く。すると道三が
「なるほど・・・・なかなか面白い。して、わしと同盟した後はどうするのだ?そのまま今川を狙うのか?」
と、道三は何やら信奈を挑発するかのような口調と目つきでそういうと信奈は先ほどまで笑顔だった顔から真剣な目になり
「いいえ、・・・・・美濃よ」
「「「っ!?」」」
信奈のその言葉にみんなが驚く。まあ、それはそうだろう。まさか同盟した相手が侵攻するなんて思いもしないだろう。それは例えるなら数十年前の世界大戦時に起きた独ソ不可侵条約をしたドイツがいきなりソ連に侵攻したのと同じだ。すると道三は目を細め
「ほう・・・・同盟を結ぼうとする国相手に攻め入るのか・・・・・なぜ美濃に拘る?」
「マムシが美濃を取った理由と同じよ」
「む?どういう意味かな?」
「美濃を制するは天下を制する。見の刃東と西を結ぶ日本の中心部。ここに難攻不落の城を立てれば天下はもらったも同然。そこに商人が自由に商いができ豊かな国を作る。それが斎藤道三の野望だったんでしょ?」
と、信奈がそう言うと道三はクククっと笑い
「なるほど・・・・すべてはお見通しか。さすがだの信奈殿」
と道三がそう言う。
「どうやら、無事に会談は終わりそうですね大佐」
「そうだな軍曹。ここで同盟の手筒期してくれればいいんだけどな。さすがに正座は疲れたよ」
「ですね・・・私も足がしびれて・・・・」
と、小声で話すと信奈が立ち上がり
「マムシ。私は近々美濃をもらうわ。」
「そう簡単に渡すと思うてか?」
「私がマムシの遺志を継ぐと言っても?」
「なに?」
「日本を堕落させた古い制度を全部壊して、南蛮にも対抗できる新しい国に生まれ変えて見せる。 わたしが見ているのは日本だけじゃない。世界そのものよ!」
と、そう力強くそう言うのであった。その言葉を聞いて俺はふっと笑う
「(やっぱり正解だったな。・・・こいつなら天下を取らせてもいいかもしれん)」
俺がそう思う中、道三も同様な思い何か大笑いする。
「ぬははは!そなたの夢はすでに海を越えていたのか・・・・なるほどおぬしがうつけといわれる理由がよくわかったわ・・・・・・」
と、道三がそう言うそしてこう付け加えた
「そなたは正しい・・・・・正しいが。誰もその革新的な考えにはついてゆけぬだろう。うつけと呼ばれておるのがその証じゃ。そのあまりの早すぎる天才ゆえにな」
と、道三がそう言う。確かに道三の言うことも一理ある。信奈の考えていることはこの時代ではあまりにも革新的な思想だ。現代の日本人である俺たちを除いてこの時代の人間の考えだと、自分の領土やこの日本のことしかなく海外なんかの新しいことへの考えなど浮かばないだろうし誰かに言われても理解はできない。もし信奈の理想を理解する者がいるとすれば俺の予想だと戦国時代後半に登場する奥州の覇者、伊達政宗ぐらいだろう。すると信奈は
「それでも前に進むだけよ」
「立ちはだかる者を薙ぎ倒してでも、か……」
と、そう言い道三は立ち上がる
「美濃が狙いなら、わしは受けて立つぞ。信奈殿。だが老いたとはいえ『美濃のマムシ』と恐れられたこの道三。そう簡単にはやらせはせぬぞ?」
「でしょうね。この会談の話だけで美濃を取れるなんて甘い考えは一切していなかったし。望むところよマムシ」
と、何やら今にも一機触発の空気が流れる。あれ?正徳寺の会見って歴史ではこうじゃないはずだ。本来の歴史ではこの会見で道三は信奈いや本来の歴史の人物である信長公に感心するはずなのになぜか二人の意地の張り合いで開戦しそうになっている。隣にいる宮藤も
「あわわ・・・これじゃあ歴史と違う…どうなっちゃうの?」
と、少し震えている。これは何とかしないとな。俺はそう思い静かに立ち上がる。
「しょ、大佐!?いったい何を?」
「ん?ちょっと場の雰囲気を変えてくる。このままだといけないしな」
俺は宮藤にそう言い、そして・・・・
「おい、爺さん下手な三文芝居はここいら辺でやめたらどうだ?」
と、俺がそうわざとらしく大声で言うとみんなの視線が俺に向き、そしてその言葉を無線から遠くで聞いて待機していた俺の部下の歩兵たちは
「あちゃ~始まったぜ大佐の悪い癖が・・・・・」
「まったくあの小僧はバッサリ斬られても知らねえぞ・・・・」
「まあ、まあ、おやっさん。あれ?そう言えば、堀曹長。辻中尉は?」
「中尉ならさっきフィールドスコープ付けた四式半自動小銃もってどっかいったぜ」
「・・・・・なるほどな」
と、そんな会話がされていた。そして場所は戻り正徳寺、俺は本堂へと足を踏み入れるすると
「馬鹿!お前斬られたいのか!」
と、勝家が止める。すると俺は彼女の肩をポンっと叩き
「大丈夫だ自分の体は自分で守れる。それに斬られに行くわけじゃねえよ」
と、そう言い俺はその先を進む。すると信奈が
「馬鹿!政宗。下がりなさい!!」
「座興じゃ。言わせてみようぞ」
と、信奈の言葉に道三がそう言う。その中、俺はずしずしと二人のところに向かう
「大日本帝国陸軍第42連隊所属及び陸軍大佐の桐ケ谷政宗です。爺さん。俺はあんたの考えがわかるぜ。」
「ほう、枯れ草色の南蛮風の格好を着た少年。なるほど。先ほどの枯草色の服を着た集団は貴殿の・・・・・・・で、わしの考えがわかるとな?」
「ああ、そうだ」
と、俺がそう言うと道三が俺の首筋に刀を突き付ける
「ならば言うてみよ。もしでたらめを抜かせばその首が飛ぶことになるぞ」
「バカ! 蝮に詫びなさいよ。今謝れば・・・・」
「安心しな。俺はここで斬られるようなへまはしねえよ」
と、信奈の言葉に俺は振り返りそう言うと再び同Ⅾさんの方に顔を受けそしてあの言葉を言った。
「道三。あんたはこの会見の後、家臣にこういうつもりだったのだろ?。『ワシの子供たちは、尾張の大うつけの門前に馬をつなぐことになる』ってな」
「なっ!?なんと!!?」
俺の言葉に道三が驚きそしてその瞬間外で雷が鳴る。緊迫した状況の中、俺はさらにこう付け加えた
「道三。あんたにはわかっているはずだ自分の息子は信奈には勝てないってことをな。それをわかっていて変な意地を張るんじゃねえよ」
俺がそう言う中、道三は震えた声でこういう
「こ、小僧! 貴様、我が心を読んだかッ? いかなる術を使ったッ?」
「別に術なんざ使っていないよ。俺はただ知っていただけさ。信じられないと思うが俺・・・・・いや俺たちは未来から来た」
「み、未来だと?そのような面妖な事・・・・」
「あるんだよ実際にな。俺の知っているあんたが信奈に美濃を譲ることを。そうしなければ今まであんたが建ててきた計画が台無しになるからな。だがここで素直に美濃を譲ってしまっては今まで人を裏切り下克上をしてきた『美濃のマムシ』の名に傷がつく。だからさっきあんなことを言った。違うか?」
と、俺がそう言うと道三が笑い始める
「ふふふ・・・・まさか未来から来た男が信奈の部下になっておったのか・・・」
「今から約400年くらい先さ、その時代では斎藤道三は日本の歴史の有名人物の一人になっているぜ」
「なるほど・・・・・わしは後世にまで名を残せたのだな」
「ああ、あとな俺は信奈の軍隊じゃねえ。俺たちは天皇・・・・未来にいる姫巫女様の軍隊だ。織田とは現在同盟相手となっているがな」
「なるほど…通りで主からただならぬ気配がしたわけだ」
と、道三がそう言うと手に持っていた刀を下ろす
「小僧・・・・お主のおかげで子のマムシ最後に素直になれることができた。信奈ちゃんのためだここで譲り状を認めよう」
「え?マムシそれって・・・・」
「うむ。わしはそなたに…我が娘信奈に美濃を譲る」
と、それまで険しい顔であった道三の顔が緩み信奈にそういうと、信奈は
「デ・・・アルカ」
と、嬉しそうに返事をするのであった。こうして正徳寺会見は無事に終わることができるのであった。
「あ~終わったな~」
「はあ~一時はどうなるかと思いましたよ。大佐が着られると思って心配したんですよ?」
「アハハ悪い悪い軍曹」
と、会見が終わった後俺たちは信奈の支度が終わるまで寺にある大きな木の下で休んでいた。すると
「お疲れさん大佐」
と、そこへ狙撃銃を持った辻が現れた。
「おお、辻か。お前もご苦労さん」
「ええ、でも大佐。もっと行動に気をつけな。あともう少しであの爺さんに斬られるところだったんだぞ?」
「まあ、その時はお前が狙撃するつもりだったんだろ?しかも急所外して」
「あはは。わかっていたか~」
俺の言葉に辻は笑う。そう実は彼女、正徳寺についた後、俺の護衛として後方で狙撃体制をし、もし俺が危ない時は狙撃をして助けるという算段だった。因みに五右衛門も床下に隠れて俺を護衛していたのはまた別の話。すると信奈と犬千代がやって来た
「何のんきに休んでいるのよ桐ケ谷。さっさと帰るわよ。あ、それと今日は疲れちゃったし早く帰りたいからあんたの鉄の車に乗せなさいよね」
「はいはい。じゃあ、装甲車の車長に話しつけとくから」
「私も行くわ。あんたじゃ少し頼りないからね」
「はいはい。わかったよ」
と、そう言い俺と信奈は装甲車の方へ向かうのであった。それを見た宮藤と犬千代は
「なんか姫様楽しそうな顔している」
「うんそうだね・・・・・」
と、その後俺たちは信奈を装甲車に乗せて清州城へと帰るのであったのだった。