「雪~の進軍。氷を踏んで~」
「ど~こが川やら道さえ知れず~う」
と、俺と辻は長屋の中でSTG44と四式小銃の整備をしながら軍歌「雪の進軍」を歌っていた。
「それにしても暇だね大佐」
「そうだな。いたって平和だな中尉・・・・」
俺たちがこの時代に来てからもう半月が立つがあの盗賊討伐以来派手な戦とかはなくいたって平和であった。まあ、たまにねねが遊びにやってきて相手をしたり。たまに犬千代と一緒に『政宗殿の時代のお菓子が食べたい!』とか言ってねだって来て宮藤がお菓子を作ったり、たまに月島基地から燃料や予備の武器なんか届いたりとこれといって大きな事件とかは起きなかった。
戦車隊の隊長であるまほ少佐も暇を持て余して、たまに部下と一緒に戦車の整備をしたり札遊びをしたりしている。かといって訓練とかは怠っておらず海軍の月月火水木金金とまではいかなくとも激しい訓練とかはしている。だがそれを除けば結構暇だ・・・・・すると辻が
「なあ、大佐。もしかして私たちって信奈に忘れられているんじゃないかい?」
「さあな・・・・俺たちはあくまで同盟相手だし、他人の手とか借りたくないんじゃない?」
「あ~なるほどね・・・・・・でもずっとここにいるのも退屈だわ。それに蒸し暑いし空調の効いた月島基地が恋しいわね・・・・・」
「ああ、俺も月島基地のコーヒーも飲みたいし・・・・・・今度月島の連中が来たら。コーヒーサイフォンとコーヒー豆持ってくるように頼もうかな?辻も飲むだろう?」
「ん~コーヒーもいいけど。私はどちらかというとウォッカが飲みたいね~」
と、そんなたわいのないことを話していると
「失礼・・・・政宗殿それに辻殿はおりますか?」
と、そこへ珍しい客が来た。その客は織田家の家老である長秀さんだ
「あれ?長秀さん?なんか用ですか?」
と、そう訊くと
「姫様がお呼びです」
と、ニコッと笑う。あ、この笑み。絶対に断れない奴だ・・・・・俺は少し息をつき軍帽を被ると
「辻、留守を頼む。それといつでも出動できるように準備するよみんなに言ってくれ」
「アイヨ。行ってらっしゃい大佐」
辻の言葉に俺は頷き長屋を出るのであった。そして俺は長秀さんに連れられながら信奈のいる城へと向かうと
「政宗殿。なぜ、姫様に呼ばれたのかお分かりですか?」
「まあ、何となくわかる。俺と西住少佐が弟の信澄に拳骨と平手打ちをくらわしたことを抗議するためだろ?」
「いえ、そのことではありません。というよりも政宗殿と西住殿は信澄さまにそんなことをしたのですか?」
「まあな。あいつが自分の身内であり姉である信奈を馬鹿にしたとき少しむかついたからな」
「そうですか・・・・・・20点」
「20点?まあいいや。それよりも抗議じゃないならなんだ?」
「それは城に着いた時、姫様が説明します」
「そうか・・・・・・」
と、そう言い俺と長秀さんはそのまま歩き続けると長秀さんは俺の方をじっと見る
「あ、あの・・・・・何か?」
「政宗殿たちは本当に未来から来た人たちなのですね」
「ああ、そうだよ」
「ではその時代には政宗殿を待っている家族もいるのですね?」
「ああ、そうかもな・・・・・・・恐らく他の将兵たちの家族は皆、行方不明になった将兵たちの帰りを待っているのかもしれないな」
「政宗殿の家族もですか?」
と、長秀さんがそう訊くと俺はピタッと立ち止まる
「政宗殿?」
「俺は親の顔なんて知ら無いし、いないんだよ」
「え?では政宗殿は・・・・・」
「そう、いわゆる孤児ってやつさ。それで一人で当てもなく彷徨っているところを当時、天皇・・・・ここでの名は姫巫女様だけどその護衛隊長をしていた人に拾われたんだ」
「では桐ケ谷政宗って名はその拾ってくださった方が付けてくれたんですか?」
「名の政宗はそうだが、苗字の桐ケ谷は姫巫女様が付けてくれたんだ」
「姫巫女様が?」
「ああ、小さいころ俺と陛下は主と護衛という立場ではあったが、歳が近くて俺にとって幼馴染であり無二の親友に近い間柄だったからな。それである時な陛下に『あなた苗字はないの?』って聞かれてな。苗字が無いって言ったら『苗字が無いと不便だから私が付けてあげる』ということで俺に桐ケ谷って言う性をつけてくれたんだよ。だから俺にとってこの桐ケ谷の名は俺にとって大切な名であり誇りでもあるんだよ」
「そうだったんですか・・・・・すみません。話しにくいことを聞いてしまって5点です」
「別にいいですよ。あなたが気に病むことじゃないからな長秀さん」
とそう言うと
「そうですか・・・・それよりも政宗殿。姫様が待っております。急ぎましょう」
「ああ、そうだったな」
とそう言い俺たちは信奈のもとへ急ぐのであった。
「……へぇ、なかなか個性的な部屋だな」
長秀さんに連れられ、本丸にある信奈の部屋を見て俺はそう呟くもちろん戦国時代の建物なので和室だったのだが、広い畳の上に虎の毛皮とパンダの毛皮が並べられていたり、ムスッとした顔で上座に座っている信奈の手元に南蛮渡来の大きな地球儀が置かれていたりと、妙な組み合わせの部屋だった。
「姫様。政宗殿をお連れしました」
「デ・・・・アルカ」
と、少し不機嫌にそう言う信奈。そして俺の方をチラッて見ると
「政宗。あんた信澄を殴ったんだって?」
「殴ったていうか拳骨を一発・・・・・」
「同じじゃないそれ。まあ、それよりもさっき信澄が来てね。あんたの首をよこせって言ってきたのよ」
「で、信奈はなんて答えたんだ?」
と、そう訊くと信奈が手をぱんと打つと同時に、小姓たちが積み上げられた小判の束を持ってきて俺の足元に差し出してきた。
「この小判は?」
「そこに三千貫あるわ。期限は二週間。この三千貫米を買ってきなさい。この三千貫で、普段四千石しか買えないのを最低でも八千石は買ってきなさい。それが要件よ。もしできなければ同盟相手とは言え、あんたは打ち首にして信澄に送らなくてはならなくなるわ」
「おい、なに無茶な要求する上に物騒なこと言っているんだ?話が全然、見えないんだけど・・・・・・・長秀さん?」
俺は長秀さんの方を見て詳しい説明を訊くと
「実は先ほど、信澄さまがいらして、自分を殴った政宗殿の首を落としこちらへ届けるように要求したのです。政宗殿は日本軍の大将で同盟相手ではありますが、失礼を言いますと表では足軽という形になっています。なので普段、足軽が武将を殴れば問答無用で即死罪ですが、足軽大将なら交渉の余地があるのです。ですが足軽大将になるにはそれ相応の手柄が必要です。そのため・・・・・」
「なるほど、相場の二倍の米を調達するってか・・・・・」
「そう言うことよ。本当は私もこう言うこと言いたくないんだけど同盟の話は秘密になっているし、だからと言って不問にすると面倒なことになるのよ」
俺は長秀さんの言葉に納得し、信奈は不機嫌そうに言う。確かに足軽(仮)俺たちの時代で言うなら兵卒が佐官か将官である将校、つまり武将を殴れば死罪。ただ、中隊長つまり大尉とかの尉官レベルなら、なんとか交渉できるってわけか・・・・だが、そのためには兵卒。つまり上等兵が一気に大尉に進級するためにはそれ相応の大手柄が必要。だから信奈はこんな無茶な要求をしてきたのか・・・・・
「了解した。じゃあ、二週間後に米八千石を持ってくれば問題ないんだな?」
「ええ、そうよ。嫌かもしれないけどお願いできる?」
「ああ、任せろって。日本軍なめるなよ」
と、そう言い俺は四千石しか買えない金で八千石の米を買うという任務を引き受けるのであった。
「さて・・・・・辻たちや山下大佐たちでも呼んで会議でもするか。トラックや下手したらヘリが必要になるかもしれないしな・・・・」
お、つぶやき俺は長屋へと向かうのであった