俺たちは作戦を立てた後すぐに行動を開始した。まず、五右衛門たち川並衆が各村の相場を隅々まで調べあげ、その報告書をもとに俺たちは町へ出かけて余っている商品を買い、その商品を足りていない町へ運んで売る。無論、時間が限られているうえ、勝った品の数が多いため輸送は馬ではなく、トラックを使用し、それでも乗せれない場合は陸軍のヘリを使用した。そしてそれを繰り返すうちに気が付いた時、俺たちの住む長屋ははもはや畳が見えないくらいの小判で溢れかえっていた。
元手が三千貫という巨額だったため、予想を超える途方もない金額を稼いでしまったらしい
「まさに電撃戦ね・・・・あっという間に部屋が小判の山だわ・・・・」
「そうだな・・・・」
ひゃに溢れた小判を見て俺と辻はそう言う中、部下の兵たちや協力してくれた航空兵たちは
「うわぁー!すげぇーぜ!これで一生遊んで暮らせるぜ」
「まるで黄金の部屋だわ!」
「すごい!これで間宮羊羹幾つ買えるかな?」
「すごいぜこのくらいの金あったら新型ヘリとか購入できるんじゃないか?元の時代に帰れたらの話だけど」
「確かにな~俺だったら、新型の拳銃でも購入しようかな?」
と、みんなウハウハ気分で中には小判の山の中にダイブして、じゃらじゃら〜とクロール泳ぎで小判の波をかいて泳いでみる兵士までいた。まあ気持ちはわからないでもない。
「……まるで金の亡者」
その場にいた犬千代は呆れたように言うと
「まあまあ、良いじゃないか犬千代。みんなあんだけの小判を見るの初めてだから大目に見てやれよ。あ、そうだ。協力してくれた礼に犬千代には小袖を買ってやるからさ。たまの休みくらい女の子らしく着飾って可愛く過ごせって」」
「小袖・・・・うう、断れない……」
俺がそう言ったとたん犬千代の目がキラキラ輝き嬉しそうにもじもじとする。もちろん小袖を買うのはこの小判を使うのではなく俺が信奈からもらった給金で払うつもりだ。すると
「たいしょう~私には何か買ってくれないのかい?私も一応はレディーだよ?」
と、辻が俺に寄り添ってわざとらしくそう言う
「ああ、そうだな辻には・・・・・酒でどうだ?」
「む~
と苦笑してそう言うと
「冗談さ。そうだな今まで世話になった礼に奇麗な着物買おうか。着物姿の辻も見てみたいし」
とそう言うと
「ふふ、そうかい。じゃあ、暇なときに頼むよ」
辻は嬉しそうに微笑んでそう言うのであった。するとそこへまほ少佐が入って来て
「たった数日でここまで稼ぐとはな・・・・・・」
「あ、少佐。どうも。まあ俺もさすがにここまでがっぽり稼げるとは思わなかったよせいぜいこの半分くらいと予想していたんだがな」
「そうか・・・・それはいいんだが大佐。肝心の任務である八千石の米を買うことはできたのか?」
「「「・・・・・・あ」」」
少佐の言葉に俺も含めみんなは固まる。そうだった俺が信奈に頼まれたのは三千貫の金を増やすことではなく、その三千貫をもとに八千石の米を調達する任務だということをすっかり忘れていた。
「犬千代!この仕事の期限っていつまでだったっけ?」
犬千代がこころなしか不安げに、指を折って日数を数え始める
「……分かった……期限は、今日の夕刻」
と、そう言うと辻は腕時計を見て
「夕刻・・・・今は夏だから・・・・・あと三時間半だぞ大佐!」
「まずい期限を過ぎれば大佐の首が落される!!」
「どうするんですか大佐!?」
と兵たちが慌ててそう言うと
「まあ落ち着け。俺は今から信奈の元に行って米の到着を待ってもらうように交渉する。犬千代は五右衛門の手を借りて今すぐこの金を全部米に換えてきてくれ。 時間ねぇから値切らなくていい。で、信奈のもとへ運んでくれ辻たちは犬千代と一緒に米の調達を頼む。この際だトラックやヘリを使ってくれ。スピード戦だ」
「了解。ほらほら、あんた達、座ってないでさ。さっさと行くぞ!」
「はっ!」
辻の言葉にその場にいた兵士たちは敬礼をし、すぐに作業にかかる。
「さて・・・・・ちょっと織田の姫さんと交渉でもするかな?」
と、そう言い俺は城の方へ行くのだが・・・・・・
「こ、こ、こ、このアホ〜! バカ! たわけ者〜!」
城に着き事情を説明した端、信奈は上座から立ち上がった信奈は、烈火の如く怒りだし回し蹴りを食らわせてきたが俺はすぐにそれを避ける
「避けるなぁ!」
「避けるよ。まあ落ち着けよ」
「落ち着いていられるわけないでしょうが!それに政宗!そんなこと言って、実は預けたお金で女遊びしてすかんぴんなんじゃないでしょうね!?それで犬千代たちに稼がせているってところかしら!?っていうか、あの子たちに変なことさせてたら、刻限なんて待たずに首晒すわよ!」
と、ぐいぐいと詰め寄る信奈に俺は苦笑し
「そんなわけないだろ?第一俺にとって犬千代はご近所さんであって友人だ。そんなことさせん」
「嘘ついてないでしょうね!?」
「ああ天皇陛下に誓って絶対に嘘は言わない。仮にお金がなくなったとしてもそんな事ぜってぇさせねぇよ」
「なら、良いのよ・・・」
信奈はそう言い上座に座り地球儀をカラカラと回す
「まあ、いいわ。期限までまだほんの少しあるし待ってあげる。と言っても私待つのは嫌いなのよ」
「じゃあ、小話でもして時間でも潰そうか?」
「それもそうね。そうだ。この地球儀であんたの知能を測定してあげるわ」
「地球儀か。面白そうだ」
信奈は手元の地球儀をゴロゴロと回しながら、とびっきりの笑顔を見せて叫んだ
「これを作った南蛮の連中は手強いわよ! 大きな海を渡って、地球を半周して日本まで来るんだから! あんたに分かる? この地球儀の意味が。世界って、平らじゃないの。この地球儀のように球体なのよ!」
「知っているさ」
「ほんと~じゃあ日本がどこにあるか当ててみなさいよ」
とそう言うと俺は地球儀に記された小さな島国を指さし
「ここが祖国大日本帝国。そして隣にある大きな大陸は中国大陸で中国やモンゴル、韓国があり北方には列強の一つのソ連。南方にはインドネシアやビルマなどの南アジアの国がある。そして信奈たちが南蛮人と言っている人たちは西の果てにいる欧州、またはヨーロッパと呼ばれる地域の人でこの時代で代表的な国はポルトガルやイスパニア、そして英国・・・・いや、イングランドにフランスといった国々が・・・・・」
政宗は地球儀に記されている国の説明をする中、信奈は
「(すごい・・・・今まで誰に説明しても信じてくれなかったのに)」
と、内心驚いていると
「ん?どうしたんだ?」
「あんた・・・・・いろんなことを知っているのね」
「別に俺の頭がいいわけじゃない。言ったろ? 俺がいた時代じゃ常識なんだ」
「そう・・・・・それにしても南蛮はすごいわ。種子島や地球を一周できる船を持っている南蛮諸国はね、本当に強いわ。今は宣教師しかやって来ないけど、いつかきっと大船団で日本まで攻めてくると思うの。だから一日も早く乱れた天下を治めて、南蛮の奴らとも対等に付き合える国を作らなくちゃダメなのよ! ねぇ政宗、わたしの言ってること、おかしい? うつけだと思う?」」
と、どこか不安そうに言う彼女に俺はふっと笑い
「いいや、正しい考えだ。むしろお前をうつけと言って馬鹿にする奴の方がお前の考えについて行けず理解もできずにそう言っているだけに過ぎないんだよ。だからお前は自信をもってお前の道を進めばいい間違った方向に進もうとするなら俺が全力で止めてやる」
と不敵の笑みでそういうと信奈は少し顔を赤くし
「な、なによ・・・・・あんた妙におべっかなんか使っちゃって・・・・・サルにそんなこと言われても、嬉しくないわね」
「なんだよ可愛くないな・・・・」
信奈の独自たぶりに俺は苦笑しそう言う。確かに彼女はどこか独自たで可愛くないところもあるがそこが彼女の魅力の一つなんだな。ある意味、陛下・・・・・いや月夜にどこか似ているな
「ちょっと正宗。何考えているのよ?言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」
「別に、大したこと考えちゃいねえよ」
「何よ。余計に気になるじゃない。いいから言いなさい」
と、二人が見つめ合ってそう話していると日が沈みあたりが暗くなる。それを見た信奈は
「……日没ね。刻限だわ」
信奈が、不意に真顔に戻った
「政宗……同盟主とは言え約束は約束よ。織田家の法に従って、あんたの首をはねるわ。座り直しなさい」
と、そう言われ俺は静かに正座をした
「(辻たちは間に合わなかったようだが・・・・まあこれも運命ってやつだなこれはこれで面白い)」
俺は頭を垂れた。別に恐怖とかそういう感情はない帝国軍人として生まれたならば、どんな死でも受け入れなければならない。信奈は迷わず俺の首を斬るだろう。だがそれはそれでいい。戦国武将に解釈してもらうんだこれ以上のレアなことはない。死んだら死んだであの世にいる英霊たちのもとへ行けるしな
「任務に失敗したのは指揮官である俺の責任だ。一思いに斬ってくれ」
と俺がそう言うと信奈は
「言いたいことはそれだけ?ほかに言い残すことはないの?」
「そうだな・・・・・・・じゃあ、三千貫の金を増やした方法でも教えようかな?」
と冷静にそう言うと信奈は怒鳴り声をあげる
「そんなこと、どうでもいいのよ!もっと他に何か言うことはないの? 死にたくないとか、殺さないでくださいとか!それにあんたが死んだら日本軍はどうなるのよ!!」
「あほか。帝国軍人がそんな女々しいことを吐くか。それに日本軍の指揮官なら、まほ大尉か辻中尉がやってくれる。万が一俺が死んだ時はあの二人に指揮を任せようと思っていたしな。それに、あんたそう言うこと慣れていないんだろ?」
「……う、うるさいッ! 三千貫の軍資金を全部なくしてしまったバカな家臣なんて、生かしておくに値しないわ! あんたが斬れっていうから斬ってやるだけなんだから! 自業自得よ、バカ!」
苦しそうに怒鳴る信奈。もし俺が命乞いしたら命は助かるだろうか。そんなことを一瞬だけ思ったがそれはかえって信奈を苦しめることになる。そんな思いをさせるくらいなら、武士として・・・・いや軍人として潔い死にざまを見せないとな。
「(月夜。すまないな先にあの世で待っているぜ)」
俺は不意に幼馴染であり、無二の親友であり主でもあった彼女の姿を思い浮かび、そして覚悟を決めた瞬間。
ダァーン!!
と、銃声が鳴り信奈の手から、刀が落ちる
「なっ!?だれ!!」
と、そう言った瞬間
「姫様駄目!!」
「大佐。すまない遅れた!!」
と、そこへ辻と犬千代が息を切らして立っていた。あの銃声は辻の五六式拳銃の音か・・・・俺が少し安堵のため息をすると犬千代たちが俺の方へ近寄り
「政宗。お米買ってきた」
「ギリギリだったな・・・・・」
「辻、犬千代。ありがとう。首の皮が一枚繋がったよ・・・・・」
と、そう言うと信奈が
「それで犬千代。米俵はどこにあるのよ?」
「……今、城門から運び入れてる」
と、犬千代が外の方へ指さすと外からエンジン音が鳴り響きその音に俺と信奈が窓から身を乗り出してみると、そこには数輌のトラックとそして大型輸送ヘリの大鳳が貨物から大量の米を積み下ろしていた
「ほら、急げぇ!一俵でも落とすなよ!大佐殿の命がかかっているんだ!」
「よし、これで最後か?」
「大収穫ですぞ! 政宗殿のおかげでこんなにたくさんのお米が買えましたぞ!!」
「おうおう、これは見事じゃのこれは村雨殿の大手柄じゃ」
「爺さん。村雨じゃなくて政宗大佐な」
とうちの兵士やそして長屋の浅野の爺さんとねねが、笛と太鼓を鳴らして俵を担がされている侍衆を鼓舞して米俵を運んでいた。それを見た信奈は
「ものすごい数だわ! いくつ買ってきたの?」
「……七万五千俵」
「えっと・・・一石が二俵と半分だから……三万石ッ? 嘘ッ? ほんとにッ?」
調達する米は八千石だったから実にほぼ四倍近くになる。すると信奈が笑顔で
「政宗。喜びなさい!あんたの打ち首は無しよ!」
「そうか。それは助か‥‥て、おい!なぜ笑いながら蹴りを入れるんだ!?」
「うるさいわね! 生かしてやるんだから泣いて感激しなさいよ!」
とそう言う中、犬千代は・・・・・
「姫様・・・・・犬千代を斬る」
「「え?」」
犬千代の言葉に俺と信奈は驚いて目を丸くすると犬千代の隣にいた辻が
「少佐。ちょっと米の調達で問題が起きた」
「問題?」
と、そう言うと辻は軍帽を深く被り
「・・・・・・・米の調達中、宮藤軍曹以下、二名が信澄の兵に襲われ負傷した」
「っ!?」
俺は辻の言葉に目を丸くし驚くのであった。