ザ!鉄腕シンフォギア!   作:パトラッシュS
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ノイズ畑 その1

 

 二人の歌姫がステージに舞い降りる。

 

 観客は沸き、歓声を上げそれを迎える。紅と蒼の対照的な二人のその姿が鮮明に瞳に焼きつく。

 

 ツヴァイウィングという二つの翼はそれほどまでにインパクトのあるコンビであった。

 

 そう、だがしかし、その片割れは本来ならこんな風に踊ったりする様な少女ではない。

 

 ではないので?

 

 

(やっばい、めっちゃキツイ、明日、筋肉痛だわー、これ)

 

 

 当然、こうなることは目に見えて明らかだった。

 

 ーーー本業は農業系アイドル。

 

 ちなみにこれで華の女子高生という肩書きでやっているというのだから驚きである。余計なプレッシャーで変な汗まで流れ出てくるので尚更たちが悪い。

 

 

(未来照らす〜、だったよね? 確か!!)

 

 

 内心でそんな忘れ気味な歌の内容を浮かべつつ、隣で舞う蒼の衣装を身に纏う風鳴翼に視線を向ける智絵。

 

 ツヴァイウィングの天羽奏の代打で変装してライヴを繰り広げているとはいえ、彼女も慣れない歌詞に振り付けと混乱しつつある。これは危うい。

 

 本来なら、楽器持ってる他四人がいてボーカルの自分がマイク持って歌うだけだというのに今回は振り付け踊りながら歌うこのハードさ。

 

 リハは繰り返しやってきたものの、いかに自分が今まで本業をやっていなかったのかを思い知らされた気がした。

 

 振り付けをしながら歌うのは何年振りだろう? 遥か昔のことだったような気がする。

 

 そうこうしている間に曲は終わりに向かう。

 

 そして最後は…。

 

 

(…にょきっ!!)

 

 

 二人でにょきっと手を伸ばして終了。

 

 振り付けも完璧に真似できた。という一応の自信が智代にはあった。これでもアイドル歴数十年以上のベテラン、しかもボーカルを張っていただけあってやればできるものである。

 

 そんな、彼女と風鳴翼のライヴの様子を遠目から眺めていたRADIO隊員達はというと?

 

 

「あれ無理だよねー、私、最期のにょきってするやつしかできねーよ」

「よくやるよねー、若いってすごいなぁ」

「やっぱ、末っ子の智絵やっといて正解やったな」

「…一応、女子高生だけどね、私ら」

 

 

 ーーーおっさん臭い女子高生アイドル。

 

 そんな中、ライヴを終えた奏の変装をした智代は息絶え絶えに笑顔で手を振りながらファンに応える。

 

 ファンに応える彼女に寄り添って、同じく腕を組み手を振る翼。

 

 そして、そんな姿を見た一同は。

 

 

「あれ? これ昨日、私ら結成して、もう解散危機じゃない?」

「RADIOって名前、姉御に貰った数日で解散危機ですか」

「というかぶっちゃけもう解散していいよね」

「ちょっとやめてくださいよほんと」

 

 

 ーーー自分達が歌う必要があるのか。

 

 正直な話、あの姿を見てたらずっとあのまんまでいいんじゃないのか? と彼女達は思った。

 

 それなら自分達は農業や建築や開拓に力を注げるし、なんの問題もないのでは? と。

 

 しかし、そういうわけにもいかないので、致し方なくその光景を確認した一同は肩をすくめて顔を見合わせるとため息を吐いた。

 

 

「仕方ない、とりあえずなんとかなりそうなのは確認できたし、学校に戻りますか」

「デロリアン出来んの、まだ、だいぶ先になるけどねー」

「まぁ、それまであいつには頑張ってもらいましょう」

 

 

 そう言って、整備服を担ぎながらツヴァイウィングのライヴ会場を後にする四人。

 

 それから、ツヴァイウィングはしばらくの間、ライヴツアーを順調にこなし知名度をさらに大きくしていく事に。

 

 さて、我らがRADIO隊員達はそうこうしている間にもう一つの作業を行なっていた。

 

 というのも、当然ながらタイムマシン作りと並行して農作業もやるわけで、それに関して、新たな試みを行おうと考えていたわけである。

 

 それが…。

 

 

「おー、ここのノイズ畑もいい感じに耕せてきてるよねー」

 

 

 そう、ノイズの灰を使った画期的な野菜作りである。

 

 本来、ノイズは倒されれば灰になり消えてしまう。だが、このノイズの灰に目をつけたのが、RADIO達である。

 

 ノイズの灰は正直、街の人々も処分に困っていた。ノイズからは街をやられてしまい、至る箇所の修復作業に追われてしまう。

 

 当然、その作業を行う上で灰は邪魔でしかない、なので、集めて処分してしまうのが常だ。

 

 だが、彼女達はというと、これを…?

 

 

「え! その灰! 捨てちゃうんですか!」

「これ! まだ使えますよ!」

 

 

 そう、全部、いただいてくる事に。

 

 その理由は、このノイズでできた灰に秘密があった。この灰、一見見た目は普通の灰だが実はまだ使い道がある。

 

 そう、カリウムと石灰分を含む肥料になるのだ、水溶性のカリウムが多くこれなら即効性がある肥料にも申し分ない。

 

 この灰を使うことで、本来ならノイズから荒らされた農家の畑も本来の豊かさを取り戻すに違いない。

 

 そういうわけで、我らがRADIO隊員達は翼や智絵を歌わせている間にノイズの灰集めに勤しむ事になった。

 

 歌っている翼と智絵達の戦闘シーン? そんなものは無い。

 

 彼女達は本業の方で手一杯の筈、そういった心遣いもあってか、我らがリーダー達の手にもやる気がみなぎっていた。

 

 

「やっぱ鍬持ってるほうが落ち着くな!」

「楽器よりスッゲー手に馴染むよな!」

 

 

 ーーーとりあえず歌は任せた。

 

 そう言わんばかりにノイズ畑の開拓を進めるRADIO隊員達、暇さえあれば、灰を仕入れにノイズ狩りへ。

 

 この女子高生達には果たして、ホームセンターで肥料を買うという考えはないのだろうか?

 

 これで、風鳴翼と同じようにステージに立つ自称アイドルというのだからびっくりである。

 

 

「スイカは育つかねー」

「どうかなぁ、甘さを引き出すのは得意分野だけれど」

「心配すんなよ! 私ら何年スイカ作ってきたと思ってんだ!」

「そうだねー、かれこれ何年も作ってるよね」

 

 

 そう言って、笑い声を上げながら鍬を担ぐRADIO隊員達。

 

 スイカ作り歴数十年のベテランが言うのだから間違いない、きっと美味しくて甘いスイカがこの畑にできる筈。

 

 西瓜と書いてスイカ。果実を食用にするために栽培されるウリ科のつる性一年草。また、その果実のことである。

 

 日本では夏の定番。球形または楕円形の甘味を持つ果実を付ける。

 

 果実は園芸分野では野菜とされるが、青果市場での取り扱いや、栄養学上の分類では果実的野菜に分類されている。

 

 この西瓜の収穫時期は夏。

 

 まだ季節的には先の話にはなるが、このスイカは赤い身はもちろんのことながら、外側も漬け物にして食べると実に美味、お酒のつまみにもなる。

 

 

「あれはやっぱ美味いよなぁ」

「きゅうりの漬物大好きなんだよねぇ」

「わかるー」

 

 

 そう言って、シャリっとした歯ごたえのスイカの外側を使った漬物を思い出し、彼女達のますます期待は高まる。

 

 さて、こうしてあらかた畑の種植えを終えると次なる作業へ、それはもちろん、この村で作っているタイムマシンである。

 

 シンフォギアシステムを独学で勉強し、あらゆる専門家の師の元へ彼女達は訪ねに出かけた。

 

 まずは、身近な櫻井理論の提唱者である櫻井了子さんを始め、アメリカの聖遺物研究機関F.I.S.の研究者。フルネーム、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスさん。

 

 果てにはナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ教授のところまで、一足飛びで出かけていく始末。

 

 

  ーーーフットワークが随分軽い。

 

 

 そして、いつもどおりに専門家達を前にしたRADIO達はこう告げるのだ。

 

 

「こんにちはー! 私達、鉄腕シンフォギアの者なんですけどー。実はお聞きしたいことがありましてぇ」

 

 

 そうして得た知識と引き換えに、彼女達は自分達のシンフォギアの情報を彼らに提供し、互いに損得が無い関係に。

 

 とは言うものの、彼女達の使う聖遺物自体が意味不明なため、解析分析はかなりの困難を極め、現在でも未解決のままなのである。

 

 そんな彼女達の使うシンフォギアは一部の専門家の方々、主に櫻井了子をはじめとしたシンフォギア研究の学者の頭を大いに悩ませる事となり。彼女達からこう名付けられる事になった。

 

 

 ーーーその名もダッシュギア。

 

 

 どうやら歌だけではなく、農業やその他類のものをするだけでシステム数値が上がる事からそう名付けられる事に。

 

 ちなみに電車に対して全員でリレーをしたり刑事100人と鬼ごっこしたりするだけでも対ノイズへの力が上がるという原因不明、意味不明なシステムだ。

 

 そもそも、武器がまな板、土器や漁船や重機や大工道具である事からしてすでにお察しだと言えるだろう。

 

 

 と、話は変わってしまったが、このように彼女達は無事にノイズ退治で畑を作りながら並行してタイムマシン作りも行う事が出来ていたわけである。

 

 

「シンフォギアって奥深いよねぇ…」

「作るのはやっぱまだ難しいよ、あれは」

 

 

 ーーーアイドルなら、シンフォギアくらい自作で作れ

 

 そんな風な言葉が果たして彼女達には聞こえているのだろうか? とは言え、本来の目的はもちろん奏を取り戻す為のタイムマシンである。

 

 わざわざ、中東まで飛んで石油を貰ってきたのだ。形にしなければならない、そこは彼女達にも譲れないプライドがある。

 

 

「シンフォギアの装者にもたらす特性は、身体機能上昇、音波振動衝撃によりノイズの侵食を防護するバリアコーティング機能、更にはノイズの在り方を調律し人間界の物理法則下に強制固着させて攻撃を有効化する、位相差障壁の無効化の3つだったよね? 確か」

「つまり?」

「衝撃の緩和に留まらず宇宙空間での活動、大気圏突破、再突入できるくらいの装甲があるんだそうで、つまり、すんげー堅い車ができるって事だな」

「おー、なるほど」

「てか、私らのやつは櫻井先生がシンフォギアじゃなくてダッシュギアって言ってたよ?」

 

 

 そう言って、シンフォギアに関して専門家である櫻井先生の言葉を思い出しながらそう告げる国舞。

 

 本来、シンフォギアは装者らの戦意に共振・共鳴して旋律を発生、それに合わせて装者が歌唱することによってその力を高める機構となっている。

 

 故に装者は歌いながら戦う必要があり、ダメージなどによって歌唱が中断されると力は一時的に弱まるとされているのだが、彼女達の場合は途中で歌詞は間違えるわ、別のことをしはじめるわと普通なら力が弱まる事を平然と戦闘中にやっている。

 

 だが、至って特にパワーダウンなどは見られない、なぜなら、この歌を補う形で別のものが共振、共鳴しているのである。

 

 

 それが、第一次産業をはじめとした農業。

 

 

 つまり、彼女達のシンフォギアはシンフォギアであってシンフォギアではないのである。

 

 というわけで櫻井先生から付けられた彼女らのフルセットの名前はダッシュギア。

 

 別名をフルセットRADIOIII、スズメバチ駆除もできる素晴らしいシンフォギア、もとい、ダッシュギアなのである。

 

 と話が逸れてしまったが、このシンフォギアの性能を聞いた彼女達はというと?

 

 

「なるほど、なら、超スピードで時空ぶっ飛んでも装甲がぶっ飛ぶ事はないと」

「そういうことやね」

 

 

 我らが兄貴、棟梁、山口多津音はそう言ってコンコンとデロリアン車作りに使う特殊な装甲を金槌で叩いていた。

 

 時速140km以上のスピードで世界を越えるタイムマシン作り、これで、奏をこちらで回収して智代と入れ替えればみんなハッピー、事なきを得れる。

 

 だが、これを作るのは大掛かり、人手が欲しいところ。

 

 

「2年くらいはかかるんじゃね? 目安だけど」

「そっかーそんくらい掛かるかーやっぱり」

「まぁ、大丈夫やろ」

 

 

 来年には、ノイズ畑のスイカの収穫もある。

 

 そう言うことで始まったデロリアン作り、RADIOのメンバーは果たして天羽奏を回収する事ができるのだろうか?

 

 この続きは! 次回! 鉄腕シンフォギアで!

 

 

 今日のRADIO。

 

 

 1.ノイズを肥料に使う。

 

 2.歌いながら戦わないアイドル。

 

 3.ノイズ畑完成。

 

 4.にょきっとするところだけは出来る。








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