インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~ 作:さすらいの旅人
二ヶ月以上空けてしまって申し訳ありませんでした。
今回はリハビリの為、少し内容が短いですがご容赦下さい。
「いつまで寝ておる!? 早う起きんかぁ!!」
「「どわぁっ!!」」
「ひゃうっ!」
修行二日目の早朝。
就寝中の俺、綾ちゃん、そして一夏は、怒号とも言える突然のデカイ叫び声で急に目が覚めて起き上がった。
「え? え? な、何だ今のは……?」
寝起きの一夏は突然の事に眠気がすっかり覚めているのか周囲を見回している。その行動は至極当然とも言えるだろう。
けれど俺と綾ちゃんは分かっていた。叫び声を上げた犯人は――
「ほれお主等、朝練の時間じゃ。さっさと着替えんか」
俺の師匠であり、綾ちゃんの祖父である宮本竜三――竜爺が部屋の出入り口に立っているから。
しかも竜爺はもう準備万端と言うような感じで胴着姿になってて、早く修行がしたくて疼いてる様子だった。どうやら昨日の準備運動程度の修行じゃ、まだまだ足りないようだ。
「あれ、爺さん? もうそんな時間……って、まだ四時!? いくらなんでも早過ぎだろ!」
「何を言うとる、この程度の早起きなど普通じゃ。諺にもあるじゃろう? 早起きは三文の徳、とな」
と言ってる竜爺だが、俺からすれば早く修行がしたい為の言い訳にしか聞こえなかった。いくら夏休みで久しぶりの泊り込み修行をするからって、張り切り過ぎだっての。
「竜爺、いくら早起きするにしても、一夏の言うとおり早過ぎだろうが。いつもは朝五時過ぎからだろ?」
「それは和哉が入学前にいた頃の話じゃ。うぬ等は此処で修行と言っても、あくまで夏休み限定じゃからのう。ワシとしては一分一秒が惜しいんじゃ。ほれ、さっさと着替えんか!」
そんなの修行したいのかよと内心突っ込みながら、急かそうとする竜爺に向かって両手を前に出して止めようとする。
「分かった分かった。もう分かったから急かさないでくれ。今から準備すっから、竜爺は下で待っててくれ」
今の竜爺に何を言っても無駄だと分かった俺は仕方なく準備する事にした。一夏には悪いが、竜爺がこうなったら何が何でも修行を始めようとするからな。一緒に寝てた綾ちゃんにも悪いけど。
因みに綾ちゃんは竜爺の発言を聞いて、仕方が無いように苦笑していた。俺達より前に此処に泊まりこんでいたから、竜爺が相当暇を持て余していたのを知っているんだろうな。でなければ俺と一緒に文句を言う筈だし。
「なるべく早く来るんじゃぞ」
そう言って竜爺は部屋から出て行った。
やれやれ、いなくなった途端静かになったな。相変わらず嵐のような人だよ、ホント。いや、IS学園入学前までの時には、あそこまで酷くなかったかも。
「ったく、朝っぱらから騒がしい事しやがって……! 久々に修行出来るからって張り切りすぎにも程があるだろうが」
「ゴメンね。お爺ちゃんってば、和哉お兄ちゃんが戻ってくるのを聞いた途端凄く嬉しそうにしてたから……」
「分かってるよ。綾ちゃんからの電話を聞いて、多分こうなるだろうなって粗方予想はしてたからな」
だから綾ちゃんは謝らなくて良いんだよ。君は何も悪くないからね。
竜爺の行動に溜息を吐きながら、俺は未だに呆然としてる一夏へ視線を向ける。
「ってな訳だ一夏、朝っぱらから叩き起こされて早々に悪いが修行の準備するぞ」
「え? あ、ああ、それは別に良いんだが……。ってか和哉、あの爺さんっていつもああなのか?」
俺が普段の竜爺じゃない行動をしてた事に疑問を抱いていたから、一夏がそう訊いて来るのは至極当然だな。
「いや、竜爺はあんな問答無用で叩き起こす事はしない。いつもなら俺が起きる時間帯に玄関前で待ってる」
「……じゃあ何で今日に限って、あんな事したんだ?」
「それは多分……今まで俺と修行出来なかったストレスが一気に解放された反動だと思う。竜爺は弟子の俺と修行するのも生活リズムの一つに入ってるみたいだし」
「加えて、一夏お兄ちゃんみたいな人も修行して鍛える事も楽しみにしてる様子だったから、更に活き活きしてると思うよ」
「………お前等の爺さんは、どんだけ修行が好きなんだよ」
俺と綾ちゃんの説明に一夏は滅茶苦茶呆れ顔だった。その気持ちは俺も良く分かるから、何の反論も擁護もする気が一切無い。
っと、早く準備しないと竜爺が遅いとか言ってまた来るかもしれないから、とっとと準備しないと不味いな。
「一夏、取り敢えず着替えよう」
「お、おう、そうだったな」
「綾ちゃんはどうする? このまま寝てても良いけど」
「ううん、アタシも着替える。竜お爺ちゃんの声ですっかり目が冴えちゃったし」
だろうな。俺や一夏が完全に目が覚めたんだから、綾ちゃんだってそうならない訳が無い。
「よし、じゃあすぐに準備だ。早くしないと竜爺がまた来そうだからな」
「分かった」
「は~い」
俺達は揃って布団から出て立ち上がり、先ずは着替える事から始めた。
だが――
「って、ちょ、ちょっと待て綾! お、お前何やってるんだ!?」
「? 何って、着替えようとしてるんだけど?」
綾ちゃんが此処でパジャマを脱ごうとしてる事に、一夏が急に焦ったような声を出して狼狽していた。因みに綾ちゃんはパジャマを着る時はブラを着けないため、今はノーブラ状態だ。
「お、俺が言ってるのはそうじゃなくてだな! 綾は女子なんだから、普通別の部屋で着替えるだろ!?」
そう言えば昨日綾ちゃんに言い忘れてた。今日は一夏がいるから着替える時は別の部屋にするようにって。にしても流石の唐変木な一夏でも、綾ちゃんの着替えを意識してしまうみたいだな。昨日の夜には綾ちゃんに抱きつかれて意識してるような発言してたし。
因みに俺は綾ちゃんの着替えは全く気にしない。と言うか綾ちゃんとは兄妹同然に過ごしてきたから、妹分の着替えを見て欲情するなんて微塵も無いし。
「アタシは子供だから別に見られても平気だけど?」
「い、いや、た、確かに綾は小学生だが……って待て待て! そのまま上着を脱ぐんじゃない!」
あれま、上着を脱いで胸が丸見え状態の綾ちゃんに一夏が顔真っ赤になっちまってる。普段一夏ラヴァーズがさり気なく色仕掛けしても大して気付いてないけど、自分のスタイルに全くの無自覚で服を脱ぐ綾ちゃん相手だと話は別のようだな。
と言うか、綾ちゃんも年頃の女の子なんだから、いい加減そういう所を自覚して欲しいもんだ。見慣れてる俺や初心な一夏ならいざ知らず、これがどこぞの性欲魔だったら間違いなく襲ってるだろうな。
まぁ取り敢えず綾ちゃんには別の部屋で着替えてもらうとしよう。一夏にはまだ刺激が強すぎるからな。
「はいはい綾ちゃん、君はそこにある服を持って隣の部屋で着替えようね」
そう言って俺は綾ちゃんが脱いだ上着を再度着せて胸を見せなくする。それのお蔭もあってか、さっきまで取り乱していた一夏が漸く落ち着き始めた。
「和哉お兄ちゃんも? いつもは一緒に着替えてるのに」
「今日は客人の一夏もいるからな。いくら年上のお兄ちゃんだからって、他人に自分の着替えを見せちゃダメだよ。君は一夏を困らせたいのか?」
「う~………分かった、隣で着替えてくる」
俺の手短な説得に渋々と言った感じで服を持って部屋から出て行く綾ちゃん。これで一夏は普通に着替えれるようだな。
「た、助かった……」
「悪かったな、一夏。あの子は気配りは良いんだが、自分の事は全く無頓着なんだ。しかもスタイルが良い事にも全くな無自覚だから、兄としては困ったもんだよ」
着替えを再会しながら俺は綾ちゃんの行動を代わりに謝罪していた。
「兄って……お前普段から綾と一緒に着替えてるのか? その……裸とかも見てたのか?」
「一応な。まぁあの子のお蔭とも言うべきなのか、スタイルの良い美少女とか見ても、そんなに大して劣情を催したりしないんだよ」
ある意味綾ちゃんに感謝だよ。もし綾ちゃんがいなかったら、俺はIS学園でルームメイトだった本音に良からぬ事をしてたかもしれないからな。主にセクハラとか。そんな事してたら俺は絶対本音に嫌われてるだろうし。
「………道理でのほほんさんに抱き付かれても、そうならない訳だ」
おいおい、そんな呆れた風に言わないでくれよ。劣情を催してないとは言え、俺だって一応男なんだからな。
(まぁ夏休み前まで千冬さんの部屋で過ごしてた時には、あの人のあられもない姿を見てちょっと興奮した事があったけど……)
「ん? おい和哉、お前の顔を見た途端に何故か凄ぇ殺意が湧いたんだが、何か変なこと考えなかったか?」
「……訳の分からんこと言ってないで早く着替えろ」
あ、あっぶねぇ~~! 口に出さなかった良かったけど、俺が千冬さんと同室だった事は一夏にはタブーだって事をすっかり忘れてた!
確か俺が千冬さんと同室になるのを聞いた瞬間、アイツ凄い勢いで猛反対してたんだった。もうついでに釘を刺されたが、あの時は呆れてスルーしてたけど。そしていざ千冬さんと同室になって汚い部屋を掃除したのは良いが、その後千冬さんの風呂上り姿や下着姿や寝顔を間近で見て興奮した、などと一夏には口が裂けても言えない。あの人プライベートはだらしないけど、それでも大人の女性だから何度もドキッとしたんだよなぁ。
その後は一夏が『和哉、今日も千冬姉に変なことしてないだろうな?』って一日過ごすごとに詰問してたし。それは俺だけじゃなく、箒たちもかなり呆れてたが。あ、そういや千冬さんを敬愛してるラウラも時々一夏と同じ事を俺に詰問してたんだった。
って、何で俺はどうでもいい事を考えてるんだろうか。さっさと着替えて部屋から出ないと、また竜爺が来ちまうから急ぐとしよう。
内容がいまいちかと思われますが、どうかお許しを。