インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~ 作:さすらいの旅人
読者様から見れば言い訳に過ぎないかと思われますが。
とりあえずどうぞ!
さて、準備を終えた俺と一夏は玄関で待っている竜爺に会って十数分後――
「いてぇ~~! 何で初っ端からランニングなんだよ~~!!」
「ほれ! つべこべ言わずキリキリ走らんか!」
最初の朝練としてタイヤを引き摺ったランニングをしていた。言うまでもないと思うが、一夏が引き摺ってるタイヤの上に竜爺が乗って、昨日と同じくスピードが遅くなったところで鞭を打ってる。
「竜爺、少しは手加減しろよ。一夏はまだ初心者なんだから」
「何を言うとる。中途半端とは言え、お主がこの童を鍛えたんじゃから、この程度は出来て当たり前じゃ」
こんな重りと言う名のタイヤを引き摺ってのランニングはやってないんだが……何て竜爺に言っても無駄だろうな。一夏、悪いがこのまま頑張ってくれ。
「ぜえっ! ぜえっ! って言うか爺さん、何かこのタイヤ、昨日より重くなってるような気がするんですけど……!?」
「おお、気付いたか。重いのは当然じゃ。このタイヤの中には少しばかり砂を入れておいたからのう」
道理で重い訳だ。昨日の今日だってのに、もう重さを1ランク上げたのかよ。
「ただでさえキツイのに重くしないで下さいよ!!」
うんうん、一夏の叫びは至極当然だな。もし俺も一夏と同じく初心者だったら絶対に文句言いながら叫んでるよ。
だが悲しき事か、こんな文句は竜爺にとっては――
「文句を言う暇があるなら足を動かせい! あと三週はこのペースを維持したまま走り続けるのじゃ!」
ただの五月蝿い雑音程度にしか聞こえないからな。
因みに今回の朝練のランニングは竜爺の家の町内を走り回るショートカットバージョン。一周で一キロだから、あと三キロ走り回らないといけない。
「鬼だ! 俺の後ろに鬼がいる!! もし死んだら呪ってやる~~!!」
「呪っても呪い返されるのがオチだぞ、一夏」
一夏の叫びに軽く突っ込む俺は、竜爺に言われたとおりペースを維持したまま走り続けた。一夏はペースが落ちる度に竜爺からの愛の、もとい鬼の鞭で強制的に走らされている。まぁ俺がある程度鍛えた事もあってか、めげる事無く最後まで走って達成したから良かった。
☆
「ええ!? 和哉が一夏を!? それホントなの箒!?」
「ああ、昨日の夜に電話で和哉から聞いた」
場所は変わり、此処はIS学園の食堂。
昨日の夜に怒号とも言える叫び声を出して千冬にこっ酷く怒られた翌日の朝、箒は一緒に朝食を食べている鈴に一夏不在の理由を話していた。
そして――
「そうだったんだ。道理で昨日から二人がいなかった訳だよ」
「師匠、何故私を嫁と一緒に連れてってくれなかった……」
箒と鈴と一緒に朝食を同伴しているシャルロットとラウラも聞いているのは言うまでも無い。
因みにセシリアはオルコット家の当主としての仕事の都合上、夏休みを利用して本国のイギリス戻っている事は、この場にいる一夏ラヴァーズのメンバーは既に知っている。
「何でも和哉は、一夏を強くさせる為に自分の師匠の家に連れて修行させる為だそうだ」
「ふ~ん、いかにもアイツらしい理由ね。けど何だってあたし達に黙って一夏を連れてったの? 教えてくれたって良いじゃない、あのバカ」
テーブルに肘を付いて不機嫌そうに口汚く言う鈴。昨日に昼まで探し回って無駄骨を折らせただけでなく、夏休みを利用して一夏と二人っきりで何処かへ行こうとしたのを出来なくなった為、今の鈴は物凄く不機嫌なのだ。
「まぁまぁ鈴、別に和哉は悪気があって僕たちに教えなかった訳じゃないんだからさ」
「だがシャルロット、鈴の言うとおり師匠が前以て教えてくれれば、私達も一夏を捜索する事は無かったぞ」
和哉をフォローするシャルロットだったが、ラウラは鈴と同感なのか少しばかり棘を含んだように言った。弟子の自分を連れてってくれなかった事を気にしているんだろう。
それに気付いてるシャルロットが苦笑しており、三人の反応を見ていた箒は思ったとおりの反応をしていると内心溜息を吐いていた。
(もしかしたら和哉の奴、こうなる事を予想して敢えて私達に黙っていたのかもしれないな)
昨日の夜は色々と遭って和哉の言葉をそのまま鵜呑みにしていた箒だったが、冷静に考えている。もし自分と同じく理由を知ったら、適当な理由を言って和哉の師匠の家に行ってるかもしれないと。
(尤も、行ったら行ったで一夏と同じ地獄を見る羽目になりそうだが……)
臨海学校で鈴達にやったペナルティを軽く凌ぐ訓練を、和哉の師匠曰く“軽い準備運動”で虫の息状態となってる一夏を想像する箒。それだけで顔を青褪めていた。
「こうなったら今から和哉に電話して……ちょっと箒、アンタ何いきなり顔青褪めてんのよ?」
「いや、ちょっとな……。ところで、鈴は和哉に電話する気なのか?」
「当たり前よ。和哉のせいで色々と予定が潰されちゃったんだから、ちょっと文句言わないと気がすまないわ」
予定と言うのは恐らく夏休みで一夏と過ごす為のプランなのだろう。それを聞いた箒は、自分も鈴と同じ立場だったらやってるかもしれないと内心頷いている。好きな人と過ごすプランを壊されたら誰だって怒ると思っているから。尤も、箒はもうそんな気など微塵も無いが。
「あ~……今電話しても多分出ないと思うぞ。あの二人の事だから、和哉の師匠と修行してると思う。電話するなら夜にした方が良い」
「夜って、そんなに凄い修行してるの?」
「ああ。以前臨海学校で鈴達にやったペナルティの10倍近い修行をやってるそうだからな」
「じゅ、十倍だと……!?」
シャルロットの問いを答える箒に、聞いていたラウラは驚愕する。軍人の自分が筋肉痛となったアレ以上の内容をやらせる事に驚いているのだろう。
そして鈴やシャルロットは聞いた途端に箒と同じく顔を青褪めていた。慣れている和哉はともかく、あの地獄だったペナルティ以上の修行を一夏がやっている事に。
極めつけは――
「もし一夏の所に行くなら、参加される事を覚悟しておいた方が良いぞ。恐らく和哉の事だから、自分の師匠に言ってお前達に見合う修行内容を課すと思うからな」
「「「…………………………」」」
危険地帯へと向かう自殺志願者とも言うような宣告に、鈴達は一斉に顔が真っ青となりながら無言となった。
三人は臨海学校で和哉にペナルティを課されて漸く筋肉痛から解放されたが、箒の言葉を聞いた瞬間に何故か再び身体にズキンズキンと痛みが走り出してきた。ISの過酷な訓練に耐える事が出来る代表候補生達であるが、生身だけでの地獄修行だけは耐えられないようだった。
「あ、あたし、やっぱ電話するの止めとくわ……なんか急に身体が痛くなってきたし」
「ぼ、僕も電話しようと思ってたけど……遠慮しとこうかなぁ」
「くっ、私は軍人だ。師匠の修行の一つや二つ……だが何故だ? 何故私の身体がこうも拒否反応を示すんだ……!?」
身体を摩りながら撤回する鈴とシャルロット、辛い修行に耐えようと決意するも臨海学校で味わったペナルティの恐怖を思い出しているラウラ。
三人の反応を見た箒は呆れたり、言い返す事は一切しなかった。自分もペナルティを味わっていたら絶対に目の前の彼女達と同じく身体が拒否反応を示していたかもしれないと思っているから。
一先ず彼女達はこう結論する。修行している和哉と一夏の邪魔はしないでおこうと。
そしてこうも考える。一夏が帰省した日には、労わる為に優しくしようと。
☆
早朝の朝練と、綾ちゃんの手作り朝食後に本格的な修行の午前を終えると、
「あ、あああ……」
「これこれ童よ、この程度で倒れてどうする。昼以降もやるんじゃからな」
「竜爺、いくら修行したいからって、これは飛ばし過ぎだっての」
二日目で早々にダウンしてる一夏に俺は介抱しながら竜爺を非難していた。
今回はIS学園側メインの話でした。