インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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もうクリスマスは終わりましたが、前回の続きを投稿させて頂きます。

それではどうぞ!!


特別企画 クリスマス編Ⅱ

「はぁっ、何か疲れた……」

 

 クリスマス二日目の12月25日の昼過ぎ。俺は少々脱力気味で外をブラブラと歩いていた。

 

「おい黒閃、そろそろ喋ってくれないか?」

 

『…………お願いですマスター。私をもう暫く放っておいて下さい』

 

「……そうかい」

 

 待機状態となってる黒閃に話しかけるがこう言い返される。本音に見られた時点からこんな感じだ。

 

 あの後、正気に戻った黒閃は怒り爆発した本音を見た直後、突然らしくない行動をした。何しろ黒閃の顔が熟れたトマトみたく顔を真っ赤にしてたからな。俺は思わずショートしたんじゃないかって心配したほどだ。

 

 それから俺や本音から逃げるような感じで、即行で待機状態に戻ってずっとダンマリだった。本音からの詰問や俺が問いかけても、電源OFFになってるんじゃないかと思うほど黒閃は全く反応しない始末。マスターの俺が喋ろと命令しても無視を決め込むほどだ。

 

 いつも従順な黒閃が命令無視をする事に本当なら怒るところだが、俺は全くそうする気が微塵も無かったよ。何しろ黒閃の意外な一面を知ってしまったからな。不謹慎ながらも女の子らしく可愛いところもあるんだなぁってしみじみ思った。まぁそこから先は黒閃以上に大変な目に遭ったんだが。

 

 黒閃が全く反応しない事に諦めた本音は、次に俺を詰問し始めた。まるで浮気現場を追及するかのように。もうホントに大変だった。

 

(正直言って黒閃より本音の対応が疲れたな)

 

 本音の機嫌をどうにかしようと簡単な料理やお菓子を作って食べさせたり、ゲームの相手もした。更には一緒に風呂に入って背中流し合いをしたり、俺の部屋のベッドで抱き合いながら寝て夜を過ごした。

 

 翌日の朝には本音の機嫌は上々となり、今度は猫みたくずっと俺に甘えてくる始末だった。まぁ怒るよりはマシかと思って、幸せそうな顔をして引っ付いている本音の相手をしていたが、一時間後に状況が変わった。

 

 突然携帯から着メロが鳴って本音がある程度話した直後、お約束な展開と言うべきか本音の姉の虚さんの怒鳴り声が聞こえた。『寝泊りするとは聞いてない!』と。

 

 虚さんは本音に俺の家に遊びに行く事は知っていたみたいだが、寝泊りまでは知らないようだった。そしてこれもお約束で至急家に帰ってきなさいと虚さんからのお達しで、本音は俺から離れるのを名残惜しそうに渋々と帰るのであった。ちゃんと前以て言ってれば帰らずに済んだのに。

 

 んで、急に暇となってしまった俺は、気分転換をする為に外へ出てブラブラと歩いているって訳だ。因みに本日も竜爺が用事によりいないので、当然修行も休み。今の俺は本当に暇だ。

 

 自主トレでもしようかと最初は考えたが、竜爺から『偶にはワシに縛られず自由に過ごすと良い。ワシが連絡するまで一切の修行を禁止する』と言われたのを思い出したからすぐに止めた。

 

 自由に過ごす、ねぇ。そう言われてもあんまりやる事無いんだよなぁ。昨日はあんな事が起こるまでは家でゴロゴロしたりゲームしたり等、ダラッとした日を過ごしてたし。

 

 あ、ゲームで思い出した。久しぶりにゲーセンへ行ってみるのも良いな。あそこは体感ゲームがあるから体を動かせる。誰か連れがいたらエアホッケーもやれたんだが、相棒の黒閃はダンマリ状態だから諦めるとしよう。

 

「よし。予定変更、っと」

 

 適当にブラブラと歩いていた俺だったが、目的を見つけたのでUターンしてゲーセンを向かっていると――

 

「ん? 誰かと思えば神代じゃないか」

 

「ちふ……じゃなくて織斑先生」

 

 偶然に私服姿の千冬さんと鉢合わせた。

 

 学園ではいつもキリッとしたスーツ姿だが、私服の格好をした千冬さんを見るのは凄く久しぶりだ。

 

「今は冬休み中だから、名前で呼んでも構わん」

 

「あ、そうですか」

 

 呼び方を訂正した事に千冬さんは戻すように言われたので、俺はすぐにオフに切り替えた。

 

「千冬さん、確か一夏とクリスマスを過ごしてる筈では?」

 

「急にアイツ等が家に来てな」

 

「………ああ、そう言う事ですか」

 

 千冬さんの一言で俺はすぐに分かった。

 

 アイツ等とは箒たちこと一夏ラヴァーズの事を指している。恐らく一夏とクリスマスを過ごそうと、織斑家に来たんだろうな。

 

「って事は、一夏に適当な理由を言って出かけたんですね。箒達に気を遣わせる為に」

 

「まぁそんなところだ。私がいては、アイツ等も楽しくやれないだろうからな」

 

 不器用ながらも優しい気遣いだ。自分が周りから厳しい人だと思われてるのを分かった上での行動かもしれない。

 

「それで、今は一人寂しく適当にブラブラと歩き回ってるって訳ですね」

 

「そういうお前こそどうなんだ、神代? 私はてっきり昨日から今に至るまで布仏と仲良くクリスマスを過ごしていると思っていたんだが」

 

「……まぁ、ちょっと色々とありまして」

 

 黒閃と本音の名誉の為に敢えて言葉を濁す俺。流石に二人の恥を千冬さんに話す訳には行かない。

 

 にしても千冬さん、教えてもいないのに昨日まで俺が本音と過ごしていた事をよく分かったな。

 

「そんなの考えるまでもない」

 

 ………人の頭の中を読まないで下さいよ。全くもう、この人って実はエスパーか何かか?

 

「ところで千冬さん。何もやる事がなく暇でしたら、宜しければ少しばかり俺と付き合ってもらえますか?」

 

「………ふっ。生徒が教師の私をデートに誘うとは随分良い度胸している」

 

 一瞬面食らったような顔をした千冬さんだったが、すぐに不敵な笑みを浮かべながら言い返してくる。

 

「ただ単にゲーセンで勝負してくれないかと誘ってるだけですよ。んで、どうですか?」

 

「少しは乗ってくれると思ったんだが……まぁ良い。お前の言うとおり、丁度暇だから付き合ってやるとしよう。ちゃんとエスコートはするんだろうな?」

 

「勿論ですとも。ではこちらへ」

 

 OKが貰えた俺は千冬さんをゲーセンへと案内した。

 

 

 

 

 

 

「いやはや、流石は千冬さん。エアホッケーのルールをちょっと教えただけで達人並みになるとは」

 

「あんなのはコツさえ掴めば簡単だ」

 

 ゲーセンで一通り楽しんだ俺と千冬さんは、ちょっとした休憩を兼ねて喫茶店『AMAGI』にいる。此処は俺にとって行きつけのところだからな。

 

 此処に来る前まで、俺と千冬さんがゲーセンで一番盛り上ったのはエアホッケーだった。さっき言ったように、千冬さんがコツを知っただけで素人から達人になってしまい、接戦とも言える勝負を繰り広げた。チラッと見た客も思わず足を止めて見入ってしまうほどに。

 

「神代、今度またあそこに行くならもう一度勝負してもらうぞ」

 

「………千冬さんって本当に負けず嫌いですね」

 

 因みにエアホッケーの結果は一点差で俺の辛勝。その直後に負けた千冬さんがもう一勝負だと再戦しようとするが、客の視線に気付いたのかすぐに止めてくれた。もし再戦したら、今度は俺が負けると断言して言える。

 

「まぁそれより、敗者の千冬さんには約束通り罰ゲームをしてもらいましょうか」

 

「……この喫茶店のコーヒーは美味いな」

 

 俺がこんな事を言っている理由は、千冬さんとエアホッケー勝負する前に、負けたら罰ゲームをしようと俺が提案したからだ。

 

 最初から勝とうと思っていた千冬さんは、余裕そうな笑みを浮かべて了承したが、まさか負けてしまうとは思わなくて今は凄く見苦しい行動をしている。

 

「確かに此処のコーヒーは美味いですけど、それで誤魔化そうとしないで下さいね。安心して下さい。罰ゲームって言っても、そんな大したこと無いものですから」

 

「因みに何をやらせる気だ」

 

「もうちょっと待てば分かります」

 

「お待たせしました。クリスマスバージョンのシフォンケーキでございます」

 

 俺が内容を言おうとするが、喫茶店の店長が俺が頼んだ注文の品を持ってきた。そして店長は忙しいのか「どうぞごゆっくり」と言って、すぐにカウンターへと戻って他のお客の対応をする。

 

 あの店長とは知り合いだから少しだけ話をしたかったが、今日は無理そうだな。まぁ仕方ないか。クリスマスの今日はカップル客がいっぱいいるからな。

 

「さ~て千冬さん、俺からの罰ゲームは……さ、ア~ンして下さい♪」

 

「き、貴様……! 私にそんな恥ずかしい真似をしろと言うのか……!?」

 

 フォークでシフォンケーキの一部を切って刺し、そのまま千冬さんの口へと持っていく。そして俺の行動に千冬さんは頬を引き攣らせている。

 

「罰ゲームでも何でもやってやるって言ったのは千冬さんでしょ? ほら、食べて下さいよ。ここのシフォンケーキは凄く美味しいですよ? あと今回の事は一夏に内緒にしときますから」

 

「…………………」

 

 凄く恥ずかしそうに顔を赤らめてワナワナと震わせている千冬さんだったが、覚悟を決めたかのように俺をキッと睨む。

 

「………神代、今度組み手をやるときに覚えていろよ……!」

 

「ハッハッハッハ。楽しみにしておきます。さ、口開けてください」

 

 後は恐いが、こんな面白い千冬さんを見れるなら安いもんだ。今までの敗北が一気に清算されるような気分だよ。

 

 そして千冬さんは約束通り、俺の罰ゲームをやろうと、恥ずかしげな表情で口を開けてくれた。そして俺はそのままニッコリとシフォンケーキを食べさせる。

 

 その時に俺と千冬さんは気付かなかった。この光景が偶然テレビで生中継されていた事を。

 

 

 

 

 

 

 クリスマス・パーティーをしている織斑家に異変が起きていた。

 

 それは――

 

「おい! 何だよコレ!? 何で和哉と千冬姉が映ってるんだ!? ってか和哉の奴、千冬姉に何やってやがんだ!!」

 

「か、和哉が千冬さんに……アイツ、布仏がいると言うのに何て事を……!」

 

「かかか和哉さん!? 織斑先生と何をなさってるんですの!?」

 

「ってか、千冬さんが凄く恥ずかしそうな顔で和哉にケーキを食べさせられてるし……」

 

「ぼ、僕、ある意味和哉を尊敬するよ……」

 

「ズルイぞ師匠! 織斑教官にあんな事をするなんて!」

 

 偶然にテレビで和哉と千冬が理想のカップルと言う風に中継されてる事に、一夏と一夏ラヴァーズの面々が信じられないような顔で食い入るように見ていた。特に一夏は和哉に殺意を抱いてるように睨んでいる。

 

 このテレビを見た一夏は……言うまでも無いので割愛させて頂く。




織斑千冬のキャラ像がおかしいと思われる人がいるかもしれませんが、そこはどうかお許しを。

以上、クリスマス企画でした。
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