インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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第114話

(何だぁ?)

 

 いきなりの怒号に俺は思わず振り向いた瞬間、男の一人が撃った銃声で店内から絹を裂くような悲鳴が上がった。

 

「きゃあああああっっ!?」

 

「騒ぐなぁ! 静かにしろ!」

 

(アイツ等の格好を見るからに……強盗だな)

 

 ジャンパーにジーパン、そして顔には覆面をして、手には銃を所持。更に背中のバッグからは何枚かの紙幣が飛び出している。多分何処かの銀行を襲撃した後の逃走犯、ってところか。

 

 ってか奴等の格好は、まるで二十世紀のマンガに出てるキャラだな。ひょっとしてそれを真似して、あんな格好をしてるんだろうか。

 

 とまあそんな冗談はさておき、銃を持っている以上は凶悪犯である事に間違いはない。店内にいる客やスタッフもソレを見て、強盗達の言う事を聞いて静かにしてるからな。

 

「君たちは既に包囲されている! 大人しく投降しなさい! 繰り返す――」

 

 外からは警察と思わしき声が聞こえた。思わず窓を見ると、そこにはパトカーによる道路封鎖とライオットシールドを構えた対銃撃装備の警官達が包囲網を作っていた。

 

 犯人を包囲するのは良いんだが――

 

「……なんか、なぁ」

 

「……警察の対応も、ちょっと」

 

「……古い……」

 

 数名の客の言うとおり、明らかに対応の仕方が古かった。

 

 そんな対応の仕方で連中が怯える訳が――

 

「ど、どうしましょう兄貴! このままじゃ、俺たち全員捕まっちまいますぜ!?」

 

 …………おいおい、地味に効いてるな。まぁこれで大人しく投降してくれれば良いんだけど。

 

「うろたえるんじゃねぇ! 焦ることはねえさ。こっちには人質がいるんだ。警察だって強引な真似はできねぇさ」

 

 あ、やはり効かない奴がいたか。あの三人の中で一際体格の男がリーダー格なんだろう。

 

 ソイツの言葉を聞いて、さっきまで逃げ腰だった他の二人も自信を取り戻している。

 

「へ、へへ、そうっすね。俺達には高い金払って手に入れたコイツがありますし」

 

 一人の強盗犯がジャキッと硬い金属音を響かせてショットガンのポンプアクションを行う。その直後、威嚇射撃なのか天井に向けてショットガンを撃った。

 

「きゃあああっっ!!」

 

 奴が撃ったショットガンで蛍光灯が破裂し、パニックになった女性客が更に悲鳴をあげる。

 

「か、かず~……」

 

「大丈夫。アレはタダの威嚇だ」

 

 向こうの威嚇射撃によって本音が怯えている為、俺はそっと震えている本音の肩の上に手を置く。

 

 すると次にリーダーの男がハンドガンを撃って、悲鳴をあげている女性客を黙らせようとする。

 

「黙って大人しくしてな! そうすりゃ殺しはしねえ。わかったか!?」

 

 その脅しに女性は顔面蒼白になって何度も頷き、声が漏れないようきつく口を噤もうとする。

 

「おい警官ども! 人質を安全に解放したかったら車を用意しろ! 勿論、追跡者や発信機なんかつけるんじゃねぇぞ!!」

 

 威勢良くそう言ったリーダー格の強盗は、駄賃だと言わんばかりに警官隊に向かって発砲する。

 

 けれど幸い、弾丸はパトカーのフロントガラスに当たっただけだが、外にいる野次馬がパニックになっていた。

 

 ったくアイツ等。自分達が優位に立ってるからって、平然と銃をぶっ放しやがって。

 

「へへっ。兄貴、やつら大騒ぎしてますぜ」

 

「平和な国ほど犯罪はしやすいって話、どうやら本当っすね!」

 

「ああ、全くだ」

 

 それは銃を持ってるから強気になれるだけだろうが。

 

 暴力的な笑みを浮かべてる強盗犯たちの台詞に、俺は内心呆れてそう思った。

 

「う、ううっ……。かず~……」

 

 余りの展開に本音が泣き出しそうになっていた。いくら本音がIS学園の生徒だからって、銃を持った相手を恐がるのは当然だ。

 

「泣くな。大丈夫、俺が付いているから」

 

「あぁ?」

 

 本音を安心させようとポンポンと片手で肩を軽く叩いてると、俺の行動を見た一人の強盗犯がこっちに近づいてくる。

 

「はっ。何いっちょまえにカッコつけてんだ、テメェ? この状況が分かってねぇのか?」

 

「……分かってるから彼女を落ち着かせてるんですが」

 

 気に食わないような目で見てくる強盗犯に、俺は刺激しないよう丁寧に言う。普段の俺だったらこう言う相手には荒い口調で伸すが、今回は人質がいるから下手に出るしかなかった。

 

 因みに俺一人でコイツ等を片付けるのは造作もない。見た目はガタイのいい体格な連中だが、ただそれだけだった。格闘技や武術などをやってる様な動作も一切無く、銃の使い方も全くの素人だから、コイツ等は銃を持って強気になってる図体だけの一般人だ。

 

「気に入らねぇな。こんな状況で余裕ぶっこいてんじゃねぇ!」 

 

 俺が丁寧に言ったにも拘らず、向こうは気に障ったのか、銃を持ってない片手を握り締めて俺を殴りかかろうとする。

 

 

 バキッ!

 

 

「……………」

 

 頬を殴られた俺は声をあげる事無く、無表情となって黙った。

 

 …………ふ、フフフフフフ……。人が下手に出てるってのに、コイツ等と来たら……。

 

「か、かずー?」

 

「へっ、大人しく黙って震えてりゃそんな目に遭わなかったんだよ、バカが」

 

 俺が黙った事に強盗犯は嘲笑してそう言ってくる。

 

 ………バカ? ほう。俺をバカと言うか、コイツは。そうかそうか。

 

「あ、あ、あああ……。ま、不味いよ、これ……」

 

「……あの男は選択を誤ってしまったようだ」

 

 顔を青褪めているシャルロットとラウラが何か言ってるようだが、今の俺にそんな台詞はどうでもよかった。何せ今の俺には優先事項があるからな。

 

「………………」

 

「おい、何いきなり立ってんだよ。さっさと座って大人しくしやがれ。俺に殴られて頭おかしくなったか?」

 

 そして俺はそっと立ち上がって、強盗犯は銃を突きつけながら命令してくる。

 

 俺は気にせずに右手を強盗犯の腹部に触れて――

 

「あ? テメェ気安く俺に触って――」

 

「はっ!」

 

 

 ドウンッ!!!

 

 

「がぁっ!!」

 

 寸勁(すんけい)を使った。

 

 寸勁は中国拳法の一種で、至近距離からの僅かな動作で高い威力を出す発勁の技法。呼吸法や重心移動、打突力、意識のコントロールなどを用いて最小の動作で最大の威力を出す。

 

 日本の武術を学んでる俺が中国拳法を使うのはどうかと思われるだろうが、竜爺が独自に編み出した宮本流は他国の武術も取り入れてる。それ故に寸勁を使った奥義もあるので、当然俺はそれを学んで使えると言う訳だ。尤も、威力は竜爺に比べたらまだ未熟だが。

 

「あ、が……」

 

 けど俺の寸勁を喰らった強盗犯はそのまま仰向けにバタンと大きく倒れ、両手で腹部を抑え、口からは泡を吹いて悶え苦しんでいる。

 

 突然の展開に残りの強盗犯だけじゃなく、店内にいる客やスタッフが愕然としている。

 

「て、テメエ! ソイツに何しやが――」

 

 ショットガンを持った強盗犯がこっちに向けようとしたので――

 

 

 フッ!

 

 

「そんなもん人に向けんな」

 

「なっ!?」

 

 相手との距離を詰める移動法―『疾足』を使って近づき――

 

 

 ドゴッ!!

 

 

「ごあっ!」

 

 腹部を突き刺すようなパンチを喰らわせた。しかも捻るように。

 

「あ……ぐ……」

 

 かなりのダメージだったのか、強盗犯は持ってる銃を落とし、腹部を両手で抑えながら両膝を床に付ける。

 

「ふんっ!」

 

「ごっ!」

 

 その隙に俺は両手で強盗犯の頭を掴み、そのまま顔目掛けて膝蹴りを食らわす。

 

 痛みが強すぎた為に耐えられなくなったのか、頭を放した途端に強盗犯は仰向けに倒れて気絶してしまった。因みに口に命中した事により、強盗犯の口が血だらけになって前歯が何本か折れていた。

 

『…………………………』

 

 俺が一分もしないで二人の強盗犯を伸した事に、店内全体は別の意味で静かになった。当然それはリーダー格の強盗犯も含めて。

 

「な……あ……はっ! て、テメェ! 俺の弟分達をよくもやりやがったな!」

 

 その声に反応した俺が振り向くと、リーダー格の男が俺にハンドガンを向けて撃とうとする。

 

 俺が避けると下手したら客に当たってしまうと思ったので――

 

 

 ギンッ!

 

 

「っ!? な、なんだ!? 身体が、動かねぇ……!」

 

 殺気を対象者にぶつけながら睨んで相手を萎縮させる一種の金縛り――『睨み殺し』を使う事にした。それが効いたリーダー格の強盗犯はハンドガンを撃つ姿勢のまま固まっている。

 

「どうした? 撃つんじゃないのか?」

 

 そう尋ねながら俺は殺気を出したままゆっくりと近づいて行く。

 

「ひぃっ!」

 

 俺に恐怖してるのか、何とかハンドガンを撃とうと必死に体を動かそうとするリーダー格の強盗犯。

 

 だがそれはもう叶わない。何故なら俺が強盗犯の間近にいるからな。

 

「あ……あ……」

 

「一介の学生に怯えるとは情けないな。ってか、いい大人がコレ見せびらかして強気になんなよ」

 

 

 グシャッ!

 

 

 呆れてる俺は強盗犯が持ってるハンドガンを奪って、そのまま握り潰す。俺の握力は竜爺程じゃないが、銃を握り潰す程度の力はある。

 

「て、テメェ……。い、一体、何もんだ……?」

 

「さっき言ったろ? 一介の学生だって。そんな事よりも」

 

「っ!」

 

 ポキポキと指の骨を鳴らした途端、強盗犯はこれから何をされるのかを理解したのか恐怖に染まった顔をする。

 

「よくも人のランチタイムを台無しにしやがって。当然覚悟は出来てんだろうなぁ?」

 

「……た、た、助け――」

 

「る訳ねぇだろうがぁ!!」

 

 

 ドガッ! バキッ! ドゴッ! ゴスッ! ゴシャッ!

 

 

「ふうっ、こんなもんか」

 

「あ、が………」

 

 リーダー格の強盗犯に恨みを込めたパンチとキックのコンボ攻撃を食らわせてKOさせる。

 

 一般人相手に暴力行為をするなと竜爺に厳命されてるが、こう言う悪人相手には容赦はするなとも教えられてるので、俺には何の躊躇いも無い。

 

 やり過ぎと思われるかもしれないが、穏便に済ませても懲りずにまた襲い掛かってくる可能性があるからな。

 

「か、和哉、いくらなんでもコレはやり過ぎじゃないのかい?」

 

 強盗犯全員が伸された事で安全と分かったシャルロットが俺に近づきながら話しかけて来る。

 

「平然と銃をぶっ放す相手にはこれ位が丁度良いさ。自分達がどんだけバカな事を仕出かしたのかを教える為に、な」

 

「それは私も同感だ、師匠」

 

 俺の理由にシャルロットが苦笑していたが、近づいてくるラウラが賛同するように頷く。

 

「いや、まあ、確かにそうなんだけど……」

 

 未だにシャルロットは何か言いたげだったが、その先からはもう何も言わなくなった。

 

 そして数十秒後、さっきまで愕然としていた店内の民間人の客とスタッフは意識を取り戻すようにハッとする。

 

「す、すげぇ……」

 

「銃を持った強盗三人を、たった一人で……」

 

「お、俺、夢でも見てたのか……?」

 

 危機を脱した事は分かってはいるようだが、まだ完全に状況を把握出来ていないようだ。何度も瞬きを繰り返し、俺の姿を呆然と眺めている。

 

 すると――

 

「かずー!!」

 

「ん?」

 

 

 ギュウッ!!

 

 

 席に座っていた本音が俺に近づいて来た途端に抱き付いてきた。

 

「恐かったよ~!!」

 

「よしよし、もう大丈夫だよ」

 

 本音を宥めるように片手で優しく抱きしめ、もう片方の手は本音の頭を優しく撫でる。

 

「……いいなぁ」

 

「……一度嫁にやってみるか」

 

 本音が俺に抱きついているのを見てるシャルロットとラウラが羨ましそうに呟いてくる。単に本音を宥めてるだけなのに、何でそんなに羨ましがられるのかは分からんが。

 

 あと何故か客やスタッフがコッチを見て暖かい目で見てるような気がするのは俺の気のせいだろうか。

 

 そして本音は漸く落ち着いたのか、俺の胸に埋めていた顔をあげて俺に問いかけてくる。

 

「ねぇかずー、ほっぺ大丈夫~?」

 

「ああ。これくらい大して……ああそうだ」

 

「?」

 

 いかんいかん。俺とした事が忘れてたよ。

 

 すぐに思い出した俺は抱きついてる本音を離し、最初に伸した強盗犯に近づく。

 

「あ、あああ……」

 

 俺が近づいても強盗犯は仰向けになったまま、未だに悶えながらも銃を取ろうとしていた。

 

 やはり今の俺の寸勁程度じゃ完全に気絶させる事が出来なかったようだな。確認して正解だった。

 

 そう思いながら俺は片足を上げ――

 

「暫く寝てろ」

 

 

 グシャッ!!

 

 

「#》《$’%《》=#《》%$’《%”)$’(%’(#)!!!???」

 

『ひいっ!!』

 

 強盗犯の股間目掛けて思いっきり踏んだ途端、悲鳴とは思えない声をあげた後、完全に気絶した。これで完全にクリアだな。

 

 因みにこの光景に店内の男性客全員が顔を青褪めながら股間を両手で押さえている。しかも内股となって。

 

「……か、和哉、君、同じ男相手に何て事を……」

 

「こ、こればかりは流石に私も……」

 

「……かずー、ほんとに容赦無いね~」

 

 シャルロット、ラウラ、本音は揃って顔が引き攣っていた。

 

「よし、これでもう悪さは出来ないな」

 

『おいっ! 悪さって何だよ!?』

 

 俺の発言に男性客全員が一斉に問い詰めるような感じで突っ込んで来たが無視させてもらう。




これを見た男性読者様は内股になったかな?
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