インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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第115話

 俺と本音、そしてシャルロットとラウラは警察に事情聴取される前に退散した。

 

 因みに俺と本音だけは退散する前にランチ代を払おうとしたが、女性店長さんが強盗を伸したお礼として無料(タダ)にしてくれた。俺はお金を払わずにラッキーと思うと同時に申し訳ない気持ちになってる際、本音はパフェを食べられなくて残念と呟いていたが。

 

「二人とも、分かってるよね?」

 

「もし口外した場合は――」

 

「はいはい、そう何度も念を押さなくても分かってるっての。お前等が執事服やメイド服を着てバイトしてた事を一夏に喋んなきゃ良いんだろ?」

 

「了解だよ~」

 

 その強盗事件から二時間後、俺と本音は急遽シャルロットとラウラと同行する形で買い物に付き合うことになり、駅前のデパートから出ていた。買い物の最中にシャルロットとラウラから何度も何度も『決して一夏に口外するな』と念押しされて少し鬱陶しかったが。

 

「しっかしまぁ、偶然とは言えお前達に会うとは予想もしなかったな」

 

「僕たちもだよ。あっ、そうだ。箒から聞いたけど、一夏を連れて修行してるそうだね。どうして教えてくれなかったの?」

 

「それは私も知りたいな」

 

「色々と立て込んでて、教える暇が無かったんだよ」

 

 教えたら教えたで自分も絶対に行くと予想してたからな、と俺は内心そう付け足す。

 

 俺の返答にシャルロットはふーんと意味深に頷いていたが、何でもないように次の質問をしてくる。

 

「じゃあ一夏と修行してる和哉が、どうして布仏さんと一緒にいるのかな?」

 

「今日は修行休みで――」

 

「かずーと遊園地でデートしてたの~」

 

「………え? デート?」

 

「ほう」

 

 俺が答えてる最中に本音が割って入るように、俺の腕に引っ付きながら言ってくる。シャルロットは目が点になり、ラウラは何故か感心するような表情になっている。

 

「あ~本音の言う事は気にしないでくれ。デートじゃなくて単に本音と遊園地で遊んでいただけだから」

 

「いやいや和哉、訂正しなくてもデートに変わりないからね」

 

「布仏、師匠とのデートは楽しかったか?」

 

「楽しかったよ~」

 

「だからデートじゃなくて――」

 

 否定してもシャルロットとラウラは全く聞いてくれなかった。

 

「でねでね~、かずーが後ろから私をぎゅーってしてくれて~、すっごく幸せだったよ~」

 

「……布仏さん、もう惚気話はいいから」

 

「何故かお前の話を聞くだけでイライラしてくるな」

 

 ウォータースライダーでの出来事を話してる本音に、シャルロットとラウラは何故か最初羨ましそうな様子だったが、段々と無表情となっていく。

 

 つーか惚気話って何だよ。俺と本音は普通に遊んでいただけなんだが。

 

「その後にはかずーと――」

 

「それはそうと和哉、今日修行が休みなら一夏は今どうしてるの?」

 

 これ以上本音の話を聞きたくないと言うような感じで、話題を変えようと俺に質問してくるシャルロット。話をしてた本音は急に遮られた為、少し剥れ顔になってるが。

 

「一夏はIS学園に戻ってる筈だ」

 

「ええ!? 何で一夏が戻ってるの!?」

 

「どう言う事だ師匠!?」

 

 一夏が学園に戻ってると知った途端、シャルロットとラウラが揃って俺に問い詰めようとしてくる。そんな事しなくてもちゃんと説明するんだが。

 

「落ち着け。ちゃんと教えるから」

 

 一夏がIS学園に戻ってる理由は当然ある。

 

 昨日の夜、一夏の携帯に千冬さんからの連絡が来た。何でも今日は一夏の専用機――白式の元々の開発室から研究員が来るから、データ取りをしないといけないので一旦IS学園に戻って来いと言われたそうだ。

 

 一夏は最初、何でそんな急なんだと千冬さんに問うと、山田先生が書類の見逃しと言うドジを踏んだらしい。んで、その見逃した書類がデータ取りの内容らしく、山田先生が千冬さんに泣きながら一夏を呼び戻して欲しいと頼まれて連絡したそうだ。

 

 その事をシャルロットとラウラに教えると、二人は呆れた表情をしていた。それは主に山田先生の行動に対してだと思う。

 

「……まぁ、山田先生らしいと言えばらしいんだけど」

 

「全く。教官の後輩でありながら……」

 

「そう言うなって。あの人は学生の俺たちと違って色々と忙しいんだからさ」

 

 さり気に山田先生をフォローする俺。何しろ俺は山田先生には大変申し訳無い事をしてる一人だからな。主に俺に関しての各国の対応とかで散々な目に遭ってるし。

 

 そんなこんなで色々と話しながら歩いてる最中、シャルロットが公園を見て何か閃いたような顔をする。

 

「ねぇ皆。向こうの公園に行ってみない?」

 

「アレは確か……城址(じょうし)公園だったな」

 

「む? 師匠、何だそれは?」

 

「元々は城があった公園って意味だ」

 

「ほう、城か。それは興味深いな。確か日本の城は守りに易く攻めに難いと聞いた。城跡とはいえ、一見する価値はありそうだ」

 

「ははは。確かにラウラからしたらそうだな」

 

 軍人であるラウラの着眼点に俺は思わず笑みを浮かべる。シャルロットや本音も俺と同様の反応をしているが、口を挟むような事はしなかった。俺も二人と同じく、人の感覚にとやかく言うつもりはないからな。

 

「ところで二人とも、荷物を見て分かるが随分と買ったな」

 

「まぁね。実は店長がこっそりお給料入れてくれたから、予定よりも色々買えて助かったんだ」

 

「成程」

 

 まぁ買い物に付き合ってる男の俺が同行してる事で、男女の視線が物凄かったが。同じ女の本音は良いとして、容姿端麗なシャルロットやラウラに同行してるイケメンでもない俺がいたら視線が集中するのは当然だ。因みに今でも男から嫉妬の篭った視線が鬱陶しいが。

 

「良かったら持とうか?」

 

「いいよ。これは元々僕たちが買った物だし」

 

「師匠に持たせる訳にはいかないからな」

 

 平然と男に荷物持ちをさせるバカ女共に聞かせてやりたい言葉に俺は内心感動した。

 

 こう言う謙虚な姿勢を持った女ってあんまりいないんだよなぁ。尤も、この二人は一夏関連の事になると謙虚と言う単語が無くなってしまうが。

 

「じゃあかず~、これ持って~」

 

「それくらいは自分で持つように」

 

 シャルロットとラウラと一緒に買い物をした本音が、買い物袋を俺に渡そうとするが却下する。

 

「ぶ~。でゅっちーとぼーでんとは違う~」

 

「楽をしたいと言う君の魂胆が見え見えだったからな。ってか君は一体何を買ったんだ?」

 

「荷物を持ってくれないかずーには教えない~」

 

「そうかい。どんなパジャマを買ったのかを気になったんだが」

 

「知ってるなら訊かないでよ~」

 

「柄までは分かんなかったから、どんなのかを知りたくてな」

 

「ふ~んだ。それは絶対に教えないよ~」

 

「それは残念」

 

「でもそんなに知りたいんなら~、私をかずーの家に泊まらせてくれるなら見せてあげるよ~」

 

「何で俺の家なんだよ。ってか男の俺と寝泊りするのは色々と不味いだろうが」

 

「それ今更だよ~。前までは寮で同じベッドで一緒に寝てたんだからさ~」

 

「家と寮じゃ全然違うだろうが」

 

「ご、ゴホンゴホン!」

 

「「ん?」」

 

 俺と本音が会話してる最中、突然シャルロットがわざとらしい咳をした。しかも何故か少し顔が赤い。

 

「何だよシャルロット、いきなり咳き込んで」

 

「風邪でも引いた~?」

 

「あ、あのねぇ二人とも。そういう話は、ここでするものじゃないよ」

 

「「?」」

 

 シャルロットの言ってる意味が分からない俺と本音は思わず首を傾げる。ってかそう言う話ってどんな話?

 

「何を言ってるんだシャルロット? 仲が良くて良いじゃないか」

 

「ラウラまで……。とりあえず、公園に着いたからクレープ屋さん探すよ」

 

「うん? クレープ屋? 何故だ?」

 

「この公園にクレープ屋があるのか?」

 

 ラウラと俺の問いにシャルロットは答えようとする。

 

「えっとね、バイトの休憩時間にお店の人に聞いたんだけど、ここの公園のクレープ屋さんでミックスベリーを食べると幸せになれるっておまじないがあるんだって」

 

「あ! それ私も知ってる~」

 

 シャルロットの返答に本音が手を上げながら言う。

 

「おまじない、ねぇ」

 

 ミックスベリーのクレープを食べるだけで幸せになれるなら、一夏は女難の相から解放されるんだろうか。まぁ幸せになるにしても、一夏ラヴァーズの壮絶な戦いが待っているだろうが。

 

「ふむ、『オマジナイ』………師匠、それは日本のオカルトか?」

 

「えっと、何て言うか……一種のジンクスだ」

 

「なるほど、験担ぎか」

 

「う~ん、間違ってはいないんだけど~」

 

 理解するラウラに本音が微妙な顔をしている。 

 

 そんな中、シャルロットが店を探そうとするが、それはすぐに見付かった。部活の帰りか寄り道かのどっちかと思われる女子高生が局所的に多くいる一角に店があったから。

 

「じゃあ和哉、僕たちクレープ買ってくるから布仏さんと一緒にあそこの席を確保してくれないかな? あ、二人の分は僕が払うからさ」

 

 そう言ってシャルロットは二つのベンチを指す。

 

「え? いいの~?」

 

「いや、何もシャルロットが払わなくても」

 

「気にしないで。二人にはくちど……じゃなくてお礼をしたいからね。」

 

 ああ、そう言うこと。口止め料と言う名のお礼って訳か。

 

 シャルロットにしては何が何でも口外して欲しくないんだな。随分と用心深いな。

 

「分かった。ではありがたくお礼を受け取る事にするから、席を確保しておこう。あ、その買い物袋は俺が持っておくよ」

 

「助かるよ。じゃあラウラ、行こう」

 

「う、うむ」

 

 そう言ってシャルロットは俺に買い物袋を渡すと、ラウラと仲良く手を繋いでバン車を改造した移動型店舗であるクレープ屋に向かって行った。

 

「さて本音、俺達は今の内に席を取られる前に確保しよう」

 

「お~」

 

「あと分かってると思うが、シャルロットがクレープを奢ってくれるのは口止め料だと言う事を忘れずに」

 

「らじゃ~」

 

 俺と本音は少し広めのベンチに向かって、すぐに確保する。

 

 その数分後、両手にクレープを持ったシャルロットとラウラがこっちに来た。

 

「お待たせ、二人とも。イチゴとブドウ、どっちが良い?」

 

 シャルロットが俺と本音にクレープを渡そうとすると、本音が疑問を抱く。

 

「ねぇでゅっちー、ミックスベリーはなかったの~?」

 

「うん。今日はもう終わっちゃったみたいで」

 

「あらら、それは残念だったな」

 

 って事はさっきの女子高生がミックスベリーを買って売り切れたか。どうやら一足遅かったみたいだな。まぁ俺としてはミックスベリーじゃなくても食べるけど。

 

 俺はブドウのクレープ、本音がイチゴのクレープをそれぞれ受けとった。ってかブドウのクレープってあったか?

 

 そんな疑問を余所にシャルロットはラウラが二つ持ってる内の一つのクレープを受け取り、二人は仲良くベンチに並んでかけると、俺達は一斉にクレープを食べ始める。

 

「ふむ。美味いな」

 

「このクレープおいし~♪」

 

「んっ。確かにおいしいね!」

 

「そうだな。私はクレープの実物を食べるのは初めてだが、美味いと思う」

 

 クレープを食べる俺達は揃って美味しいと言いながら食べる。出来立てなのかクレープの皮が柔らかく、女子三人は特に声が弾んでいた。

 

「おいしー。ねぇ、せっかくだから、また来ようよ。次は皆も誘ってさ」

 

「そうか。では私は一夏と来よう。ふたりきりでな。師匠、頼めるか?」

 

「別に俺に頼まなくても良いんだが、まぁセッティングぐらいはするさ」

 

「ちょ、ちょっとラウラ! そういうのを抜け駆けって言うの。って言うか和哉まで何言ってるのさっ! もうっ」

 

 シャルロットがダメだと言わんばかりに抗議してくる。

 

「何だシャルロット、一夏と二人きりになりたくないのか? ラウラが素直に頼んでいるのに」

 

「そ、そりゃ、僕だって一夏と……って何言わせるのさ!?」

 

「自分から言ってるだろうが」

 

「でゅっちーはぼーでんと違って素直じゃないね~」

 

 顔を赤くするシャルロットに、面白いものを見てるような目で見ながらクレープを食べている本音。

 

「う~~~~っ。もう知らない! あむっ」

 

 シャルロットはもう何も言い返す気が無くなったのか、そっぽを向いてクレープに集中するようにかじり始めた。

 

 すると、さっきまでクレープを美味しく頬張っていたラウラがシャルロットの方へ視線を向ける。

 

「シャルロット」

 

「ん? なに、ラウ――」

 

 シャルロットが振り向いた瞬間、ラウラが突然彼女の唇を舐めた。

 

「なっ、なぁっ、ななななっ!?」

 

「おいラウラ、お前何やってんだ?」

 

「お~、ぼーでん大胆~♪」

 

 余りの展開に俺はラウラの行動に呆気に取られてしまう。

 

「ソースが付いていた」

 

「だ、だだ、だからって和哉と布仏さんがいる前でぇ!?」

 

「両手が塞がっているから仕方ないだろう」

 

 ラウラはそう言って、右手のクレープと左手の紙袋を持ち上げてみせる。

 

「まぁそう怒るな。ほら。私のを一口やる」

 

「で、でも……」

 

 シャルロットがこっちを見てくるので――

 

「俺は何にも見てませ~ん」

 

「私も見てないよ~」

 

 俺と本音は明後日の方向を見てそう言った。

 

「………はぁっ。い、いただきます」

 

 俺等の行動にシャルロットが呆れるような溜息を付きながらも、ラウラのクレープを食べようとしていた。その数秒後に俺と本音はすぐに視線を元に戻す。

 

「ああ、そういえばあのクレープ屋だがな、ミックスベリーはそもそもないぞ」

 

「え?」

 

「ないってどういうこと~?」

 

「ミックスベリーは売り切れじゃないのか?」

 

 ラウラの発言にシャルロットと本音と俺は一斉に振り向いて問いかける。

 

「メニューになかったんだ。それに、厨房にもそれらしい色のソースも見当たらなかった」

 

「そ、そうなんだ。ラウラはよく見てるね」

 

「だとしたら益々分からんな。ミックスベリーが元々無いなら売り切れなんておかしいだろう?」

 

「いや、私とシャルロットはミックスベリーを食べたぞ」

 

「………おいラウラ、言ってる意味が分かんないんだが」

 

「では師匠に問おう。師匠と布仏が食べてるクレープは何味だ? 因みに私とシャルロットは二人と同じ味だ」

 

「「?」」

 

 意地の悪いように問いかけてくるラウラに俺と本音は自分の持ってるクレープを見る。

 

「私はイチゴで~」

 

「俺はブドウ……ん? ちょっとまて。これってそもそもブドウじゃなくてブルーベリーじゃ――」

 

「ああっ!」

 

 シャルロットが突然何か閃いたように声を上げた。

 

「ストロベリーとブルーベリー!?」

 

「ご名答だ。だがシャルロット、師匠に問いかけていたのにお前が答えてどうする」

 

「ああ成程」

 

 シャルロットの答えに俺と本音は漸く分かった。

 

 ストロベリーとブルーベリーを交互に食べればミックスベリーになる、って事だったのか。

 

「ラウラ、シャルロットがイチゴとブドウのクレープって言ってたが、あれはどう言う事だ? これはストロベリーとブルーベリーなんだろう?」

 

「ああ、私が注文する時にそう言ったんだ。ブルーベリーと言えばシャルロットがすぐに気付くと思ってな。それに店主も私の意図に気付いていた」

 

「そういえば……」

 

 何かを思い出すように呟くシャルロットは数秒後、すぐ納得したような表情となった。

 

「そっかぁ……。『いつも売り切れのミックスベリー』って、そういうおまじないだったんだね。もう、ラウラにしてやられたよ」

 

「ははは。一本取られたな、シャルロット」

 

 そう言いながらクレープを食べてると――

 

「かずー、ほっぺにクリーム付いてるよ~。私が取ってあげるね~」

 

「ん?」

 

 本音が突然顔を近づけて、俺の頬に付いてるクリームをペロッと舐め取った。

 

「おい本音、いきなり何してる?」

 

「てひひ。ぼーでんのまねっこだよ~。はいかずー、一口あげる~」

 

「あのなぁ、こう言うのは彼氏とやるもんで、友人の俺じゃなくてだな」

 

「私はかずー好きだから全然OKだよ~」

 

「………はいはい、分かった分かった。んじゃ頂きます」

 

 今の本音に何を言っても無駄だと思った俺は、本音が持ってるイチゴ……じゃなくてストロベリークレープを食べる事にした。

 

「ほら、俺のも一口あげるよ」

 

「あ~む♪ ん~~、ミックスベリーおいし~♪」

 

「そうだな」

 

 出来れば次回は俺じゃなくて彼氏にやって欲しい、と言いたかった。けれど本音が妙に幸せそうな顔をしてたので、言うのは諦めるとしよう。

 

「……ねぇラウラ、なんか僕さぁ、口の中が凄く甘ったるくなってきたんだけど」

 

「ん? クレープを食べてるからじゃないのか?」

 

「あの二人を見てると余計に甘く感じるんだよ……。っていうか和哉、もう良い加減に布仏さんと付き合ってよ……!」

 

「いや、私にはもう夫婦としか見えないんだが?」

 

 何かシャルロットとラウラが訳の分からん事を言ってるが無視するとしよう。

 

 おっといかんいかん、俺とした事がまた大事な事を忘れていたよ。クレープを食べ終えた後、カフェでバカップルと言ってたラウラにはデコピンの刑を実行しないと。




さて、ブラックコーヒーでも飲むか……。

………あれ? おかしいな。砂糖入れてないのに、どうしてこんなに甘いんだ?
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