インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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約一ヶ月ぶりの更新です。


第116話

 竜爺に説教された数日後。俺と一夏は再び修行の日々を送っていた。

 

 今日もいつも通りに一夏と共に軽い朝練(・・・・)を終え、今は綾ちゃんが作った朝食を食べていた。因みに朝食のメニューはご飯に葱入りワカメの味噌汁、アジの開きに揚げだし豆腐と言う純和食だ。

 

 あともうついでに黒閃は待機状態にしてるが、竜爺や綾ちゃんにはまだ部屋で寝てる事にしてる。

 

「美味い! 綾が作る料理は本当に美味いな~!」

 

「一夏お兄ちゃん、ご飯食べる度に同じこと言ってるね」

 

 和食好きな一夏にとって、今食べてる朝食はご馳走に等しいようだ。

 

 さっきの朝練で少々クタクタになっていた一夏だったが、綾ちゃんが作った料理を見た途端元気になって、勢いよく食べ始めた。今はもうご飯二杯目だ。

 

 一夏の食べっぷりに綾ちゃんが嬉しそうに見ている。自分が作った料理を美味しく食べてくれる事に嬉しいんだろう。

 

 何か、あの二人を見てると結構良い雰囲気のような気がする。もしかしたら一夏にとって綾ちゃんは癒しの存在かもしれない。

 

 何せIS学園にいる殆どは一癖も二癖もある女子(つわもの)達ばかりだからな。特に一夏ラヴァーズの連中は一夏の事になると「お淑やか」って単語が全くないし。

 

「童はほんに和食好きじゃのう。活き活きと食べておるわい」

 

修行(じごく)綾ちゃんの料理(ほとけ)ってか?」

 

「………和哉よ。お主には後で本物の地獄と言う物を体験させてやるとしよう」

 

「冗談だって。あとさり気なく修行の難易度を上げるのは勘弁してくれ」

 

 ったく竜爺め。今まで遅れた修行の分を取り戻す為に難易度を上げないでくれっての。いくら修行に慣れてる俺でもハードルを上げられたらキツい。

 

「そういや竜爺。この前の休み以降から修行を再開してるけど、女権団体の件はどうなったんだ?」

 

「む?」

 

 一夏と綾ちゃんが会話してるのを余所に、思い出したように竜爺に尋ねる俺。

 

 以前俺が殺されそうになったのを知った竜爺は、数日前の修行休みの時に何処かへ出掛けていたが、何をやったのかは敢えて訊かなかった。

 

 けれど数日も経って女権団体は前に宮本家から逃げるように去って以降、ここ数日何の動きも見せていない。あの連中の事だから権力を使った何かをやらかすと思っていたんだが、それが全く動きが無いと却って気味が悪い。

 

「向こうはそろそろ竜爺に何らかの圧力掛けてきそうな気がするんだが……」

 

「安心せい。小娘共は暫く宮本家(ワシら)に手は出さん。と言うより、今はそのような事をしてる暇など無いからのう」

 

「? どう言う事だ?」

 

「そろそろ話題になると思うが……和哉、テレビを点けてみよ。勿論ニュースの方じゃぞ」

 

「え? ニュース? まぁ良いけど」

 

 言われたとおり、近くに置いてあったリモコンを使ってテレビの電源をONにする。

 

 テレビを点けるとチャンネルは運よくニュースだった。一体何があるんだと疑問に思って見てると――

 

 

『次のニュースです。日本支部に所属する女性権利団体の女性幹部が、現在IS学園に通っている二人のIS男性操縦者のうち、神代和哉氏に殺害指示を出していた事が判明しました』

 

 

「「……は?」」

 

 ニュースキャスターが案内してる内容を聞いた俺、勢いよく朝食を食べていた一夏が箸を止めて目が点になった。

 

「あ、これって……」

 

「ほう。まさかここまで大事になるとは。これが時代と言うやつか。情報が広まるのは早いのう」

 

 綾ちゃんは何かを知っているような感じでキョトンとしており、竜爺は感心そうに見ていた。

 

「竜爺、それってまさか……」

 

「お主の殺害について、真理奈さんに話してのう。それを訊いた真理奈さんが、普段からエステに来ておる口の軽い女性幹部を上手く誘導尋問して引き出した証言内容を録音した後、インターネットとやらに流出したそうじゃ。機械に疎いワシにはいまいち分からんが、まさかここまで上手く行くとは思わなかったわい」

 

 俺達の反応を全く気にしてないように、ニュースキャスターの案内はまだ続く。

 

 

 

『政府は日本支部女性権利団体に抗議をするも、女性幹部は殺害に一切関与していないと全否定しております。しかし政府の情報機関が調査したところ、神代和哉氏を殺害しようとした実行犯が警察へ連行された際、日本支部女性権利団体が警察に圧力をかけて実行犯を強制釈放させていた事が分かりました。この事実を知った政府は「危うく貴重な男性IS操縦者を失うところでした」と憤りを隠せない様子であり、今後も女性幹部は厳しく追及される事となるでしょう。今回の件に女性権利団体の最高責任者は、「いくら女性優遇制度があるとは言え、殺人罪まで免れようとするのは決して許される事ではありません。もし事実であるなら我々は全く関与しておりません。あくまで日本支部の幹部が勝手にやったこと」だと述べております。そして日本支部女性権利団体は現在、IS学園や各国政府からの苦情や問い合わせに対応中との事です』

 

 

 

 

 

 

 本日の修行を終えた夕方頃。

 

 俺は部屋で祭りに行く前の準備をしてる一夏と綾ちゃんをゲームしながら待っていた。一夏は修行の汗を流す為に温泉へ。綾ちゃんは祭りに行かない竜爺の夕飯を作っている。

 

 因みに今は格ゲーの代表作『IS/VS』をやっている。対戦者は何と黒閃だ。

 

「まさかネットを使って流出するとはな。女権共が隠蔽してた情報があっと言う間に広がったら、もうオシマイだな」

 

「綾の母親は考えましたね。一般人が使う全世界共通のインターネットで情報流出さえすれば、それを完全に遮断するのは至難の業です」

 

 俺の隣にいる人間状態の黒閃が感心するように言う。

 

「………最初から俺が黒閃にそう指示すれば、竜爺達の手を煩わせる事は無かったかもな」

 

「それを言うなら提案しなかった私にも非があります、マスター。申し訳ありませんでした」

 

「いや、別に黒閃に非は無いんだが……」

 

 どうも俺の相棒は俺のミスを自分のミスと捉えてしまうな。別に黒閃は何も悪くないし。

 

「それはそうと黒閃。お前このゲームやるのは初めてだって言ったよな?」

 

「はい。それが何か?」

 

「だったら何でこんなに上手くなってんだよ。イギリスのメイルシュトロームを使いこなすって相当テクニックが必要だぞ?」

 

「入力方法とキャラの戦い方を理解すれば造作もありません。私は元々ISですし」

 

「そう言う問題かねぇ」

 

 いくらISだからって、素人から突然に玄人へランクアップするっておかしいだろ。

 

 って言うか、俺より操作上手くて、あともう少ししたら負けそうなんだけど。

 

「ですが、私はマスターに対して少々不満があります。マスターは黒閃(わたし)と言う専用機がありながら、他のISを使うなんて……」

 

「あのなぁ……。このゲームには黒閃(おまえ)がいないから仕方ないだろ」

 

 使えるならとっくに使ってるが、俺としては他のIS(キャラ)使いたい。所詮はゲームなんだし。

 

「むぅ……。では黒閃(わたし)を使えるよう、このゲームに少しばかり改造しましょう。これのプロテクトはそこまで大した事は――」

 

「止めんか! 俺に改造ゲームをやらせようとすんな!」

 

 ってかコイツ、ゲームを改造する事も出来るのかよ。本当に色々な意味で高性能だな、おい。

 

 何だかんだで黒閃とのゲームを楽しんでると、準備を終えたと思われる一夏と綾ちゃんが部屋に入ってきた。

 

「遅くなって悪い」

 

「お待たせ~。もう準備出来たよ~」

 

「おう。待ってたぞ……って綾ちゃん。浴衣着たんだ」

 

 綾ちゃんが花柄の浴衣を着てることに、俺は思わず目が止まってしまう。

 

「うん。折角のお祭りだから、着て行こうかなって」

 

「俺も見た時はちょっと驚いた。余りにも似合ってたから、思わず見惚れちまったよ」

 

「もう~、一夏お兄ちゃんったら~」

 

 …………嘘。これは天変地異の前触れか?

 

 あの一夏が。唐変木オブ唐変木の一夏が。千冬さん以外でしか見惚れなかった一夏が! 綾ちゃんの浴衣姿に見惚れただと!?

 

「? どうかしたか和哉? 何か驚いたような顔してるけど」

 

「………いや、何でもない」

 

 余りにも予想外な台詞を言った一夏に思わず固まってしまった、等と言ったところで当の本人は全く気付かないだろうな。

 

 まぁ確かに一夏が綾ちゃんの浴衣姿に見惚れるのは分からんでもない。今の綾ちゃんは浴衣を着てることで、幼さがありながらも大人っぽい感じの浴衣美人になってる。尤も、綾ちゃん自身はそんな気は全く無いがな。

 

 しかし、何で一夏はああ言った台詞を箒達に言わないんだろうか。綾ちゃんにあんな台詞を言えるなら、ちょっとは箒達に言ってやれよ。そうすればアイツ等も多少は報われるんだからさ。

 

「はぁっ……。取り敢えず行くか」

 

「? 何で溜息吐いてんだ?」

 

「?」

 

 俺が嘆息しながらゲームを中断して片付けてる中、一夏と綾ちゃんは揃って首を傾げる。この二人、案外似たもの同士かもしれない。

 

「気にすんな。それで一夏、今日はどこの祭りに行くんだ? 商店街のか?」

 

「いや。今日は箒が神社に戻ってるそうだから、そこへ行こうと思ってな」

 

「……え? 箒?」

 

 何だろう。急に嫌な予感が……。

 

「ち、因みにその神社の名は……?」

 

 俺が頬を引き攣らせながら恐る恐る尋ねると――

 

「篠ノ之神社だ」

 

「………………」

 

 当たって欲しくない返答に俺は一瞬頭が痛くなった。

 

 やっぱり篠ノ之神社かよ! 何でよりにもよって綾ちゃんがいる時に行こうとする!?

 

 もし一夏が綾ちゃんと一緒に歩いているところを箒が見たら……絶対に誤解して問い詰めること間違いない!

 

 それに箒の事だから一夏を問い詰めた後、今度は俺に狙いを定めてとばっちりを喰らうのが容易に想像出来る……!

 

 あ~くそ! 何でこのバカはよりにもよって、箒が戻ってる時に篠ノ之神社へ行こうとすんだよ! ちったぁ空気読めよ、この唐変木!

 

「む? 和哉、何か俺の事をバカにしてるような感じがするんだが?」

 

「………気にすんな」

 

 どうしてその鋭さを女の方へ向けてくれないんだよ、コイツは……。はぁっ……。

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