インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~ 作:さすらいの旅人
夏祭りから数日後。俺と一夏は相も変わらず竜爺の修行を過ごしていた。
このところ、一夏が前以上に逞しくなっている。初めて修行をやった頃は途中でダウンしていたが、今は音を上げる事無く最後まで頑張っているよ。尤も、俺の修行内容に比べたらまだまだ軽い方だが。
けど、最後までやり続けるのは充分に凄い。竜爺の修行は屈強な成人男性でも途中で放棄したくなるほど辛いものだ。そう考えると、一夏は本当に凄い。
竜爺も竜爺で、一夏がそろそろ音を上げて諦めると思っていたようだ。最後まで諦めず、自分に名前で呼ばせる為に頑張り続ける一夏を見続けた結果、竜爺はいつの間にか『
そんなこんなで俺と一夏が竜爺の厳しい修行生活を送ってる中、突然竜爺から一週間の休みを与えられた。『自分の修行だけで夏休み全てを潰す訳にはいかないから、学生としての休みを満喫するように』だと。まぁ戻ったら、その埋め合わせをする為の修行をさせられる事になるが。
俺としては、ずっと竜爺の修行でも構わなかったが、敢えて休みを受け入れた。今回は一夏がいるからな。強くさせる為とは言え、俺が半強制的に一夏を誘ったので、これ以上束縛させる訳にはいかないし。
因みに休みを与えられた一夏は、自宅に戻っている。家の掃除とか、家に戻ってきた千冬さんのお世話をしなければいけないし。特に後者の方を。アイツはシスコンだから、今頃は千冬さんの執事か主夫みたく、献身的なお世話をしてるだろう。
そして俺は現在………一夏と同じく実家に戻っていた。一夏が休みの間は家で過ごすと言ってたので、俺も久しぶりに実家で過ごす事にした。と言っても、両親がいないから少し寂しいけど。
この数日間、俺は自分の部屋で学園から出された夏休みの宿題を黙々とやっている。IS学園が特殊とは言え、学校である事に変わりはない。それ故、定番とも呼べる宿題も当然ある。だから今は残りの宿題を終わらせようと実家でやっているって訳だ。因みに竜爺の家でも宿題はやっていた。いくら竜爺が修行を優先させてるとは言え、俺達の学業まで無視はしない。ある程度の宿題時間を設けた後、修行をやっているからな。
「あ~~~……。よし、後はこれだけだ」
宿題の山場を乗り切った事に、俺は両腕を伸ばしながら安堵の息を吐いた。
一先ず休憩しようと部屋から出てリビングに向かい、台所に設置している冷蔵庫から昨日作った麦茶を取り出す。
ピンポーン
「ん?」
麦茶を飲んでいると、突然呼び鈴がなった事に俺はすぐに玄関へ向かう。
「はいは~い」
誰も来る予定はない筈だと思いながらも、玄関の扉を開くと――
「かず~、遊びにきたよ~」
「っと、君か」
目の前には私服姿の
外には誰もいないが、もし誰かに見られたら誤解されると思って一先ずやんわりと離すようにした。
「急にどうしたんだ? 修行は暫く休みだって、この前教えただろ?」
本音には俺が修行が休みだと言う事を周知してある。にも拘らず、彼女が家に来てるから全く訳が分からなかった。
「知ってるよ~。だから今日はかずーと過ごしたいから、来ちゃった~♪」
「はい?」
俺と過ごしたいって……何故? 男の俺より、同性の友人である岸原達と楽しい夏休みを過ごそうって気はないのか?
思わず首を傾げてると、本音はそれを気にしないように言ってくる。
「あれ? 黒閃はどうしたの~? いつもなら、私に何か言ってくると筈なんだけど~」
「ああ、アイツなら……っと、まぁ取り敢えず入りな」
こんな暑い外で立ち話をするのは良くないと思った俺は、一先ず本音を家の中へ招くことにした。
リビングへ案内させ、ちょこんとソファーに座る本音を持て成そうと、冷たい麦茶を用意する。今日はいつもより暑いから、恐らく本音は喉が渇いているだろうと思って。
「ほれ、麦茶だ」
「ありがとう、かず~」
麦茶入りのコップを渡すと、受け取った本音はこくこくと飲み始める。思ってた通り、外が暑かった所為で喉が渇いていたようだ。
その為か、本音はコップの中に入ってる麦茶は一気に全部飲んだ。
「ぷは~。あ~生き返った~♪」
「お代わりはいるか?」
「じゃあ、もう一杯~」
「はいはい」
お代わりを催促しながらコップを差し出す本音に、俺はすぐに受け取って再度台所へ向かって麦茶を注ぎ足す。
そしてまた本音に麦茶入りのコップを渡すも、今度はすぐに飲まずテーブルの上に置いた。
それを見た俺は一先ず座ろうと、ソファーに座ってる本音の隣にかける。
「ねぇかず~、黒閃はどうしたの~?」
「アイツもアイツで今はお休み中だ」
訪ねてくる本音に、俺は黒閃がいない理由を話す。
黒閃はここ最近、身体……と言うか機体に少し違和感が起きているようだ。同時に毎日人間の姿になっている事もあって、エネルギーも少なくなっているんだと。その為に自己メンテと同時にエネルギー回復によるスリープモードを実行中だ。
それを聞いた俺は最初、『一度学園に戻ってメンテした方が良い』と言った。しかし、当の本人は緊急事態になっても支障はないと言って頑なに拒否された。普段は主である俺の命令に従うあの黒閃が。一応何度も学園でメンテするようにと説得したんだが、全く聞いてくれなかった。これは梃子でも動かないと思った俺は、『夏休みを終えて学園に戻ったら速攻でメンテする』と妥協案を出した。それを聞いた黒閃はやっと了承してくれたよ。
とまあ、そんな事もあって黒閃はスリープモード中って訳だ。もし何かあれば、俺が即時に緊急事態と叫んだら黒閃は目覚めるらしい。
「そっか~。道理で私がいても何も言わなかったんだね~」
理由を聞いた本音は納得するようにふむふむと頷いている。確かに考えてみれば、本音が俺に抱き着いてきた際、必ずと言っていいほど何か言ってくる。まるで何かに対抗するように。
「ま、そう言う事だ。この数日、話し相手がいなくて少し寂しいが――」
「じゃあ、それまでは私がするね~♪」
「って、おい」
黒閃が出てこない理由を聞き終えた本音は、突然俺の腕に引っ付いてきた。ゴロゴロと甘えてくる猫のように。
「全く……。何度も思ってるんだが、何で君は男の俺にそこまで出来るんだ?」
「かず~の事が大好きだから、こうしてるの~」
「だからって……」
いくら友人でも度が過ぎてると思うんだが……。と言ったところで、本音に何を言っても無駄か。
「それはそうと本音、遊びに来たって言ってたが、何で俺ん家なんだ? 岸原達と遊びの約束とかはないのか?」
「もう済ませた~。だから今日は大好きなかず~と過ごすの~♪」
俺と過ごすって……。あのねぇ本音さん、今この家には俺と君しかないんだよ?
いくら俺達が学生だからと言っても、両親がいない家で年頃の男と女がいたら不味いと思うんだが……。
……まぁ、それはもう今更か。短い期間だったけど、前に学園の寮で一緒に同じ部屋で過ごしていたし。
取り敢えず、以前みたくルームメイトとして過ごす事になったと思えば良いか。
「はいはい、分かった分かった。何して遊ぶ? それとも腹減ってるなら、何か食べるか?」
本音の性格を考えると、久しぶりにアップルパイを食べたいと強請ってくるだろう。
「じゃあ~……かず~の部屋を見たい~♪」
「俺の部屋って……」
予想外とは言え、何でよりにもよって俺の部屋を見たがるんだよ。いくら本音が友人でも、自分の部屋に女子を招くのに抵抗があるんだが。だから前に本音が家に来た時、俺の部屋に来させないよう黒閃と一緒にリビングで待機させた。
「ダメ、いくら君でもこればっかりは無理」
「え~良いじゃん~、別に減るもんじゃないんだから~」
拒否する俺の返答に本音は引き下がろうとしなかった。
「じゃあ訊くが本音、もし俺が君の家に遊びに来て、君の部屋を見たいって言われたらどうする?」
「へ? …………か、かず~なら良いよ~」
「って良いのかよ!?」
途中で静かになった本音だが、少し頬を赤らめながらOKを出す。
「と、とにかく、ダメなものはダメだ。と言うか、そろそろ離れてくれ」
「やだ~。かず~が部屋を見せてくれるまで離れない~」
「おいコラ……っと!」
俺が離れろと言っても本音は離れなかった。それどころか、凭れ掛かるように身体を押し出してくる。
少し気を抜いてしまった所為か、本音にもたれかかってしまった所為で俺は彼女と一緒に倒れてしまう。俺達が座ってるソファーは少し大きめだが、外側にいる本音が身体をずらしたら落ちてしまう。
「てひひ、かず~を押し倒しちゃった~」
「おい本音、悪ふざけもいい加減に……」
俺がその気になれば本音をどかせる事は出来るが、そうすればケガをしてしまう恐れがあるので敢えてやらなかった。だから何とか離れるよう説得している。
「じゃあじゃあ~、かず~が私をぎゅ~ってしてくれたら見ないであげる~♪」
「は?」
ぎゅ~って……それはつまり、抱きしめろって事か?
俺が相手のやりたい事を何となく察してると、本音は次に俺を覆いかぶさるように抱き着いてくる。
「かず~、早くぎゅっ~てして~」
「ったく。どうして君は意味不明な事をしたがるんだよ」
そう言うのは恋人にしてくれよと内心突っ込む俺。
取り敢えず部屋に来ないなら良いかと諦め、両腕を使って本音を優しく抱きしめる事にした。
「はう~、かず~にこうされると幸せになる~♪」
「そうなのか? 俺には全く分からんが」
幸せそうな顔をしてる本音に俺は不可解そうに言うも、当の本人は全く気にしてなかった。
それどころか――
「ぐ~……ぐ~……」
「もう寝てるし! ってか寝るの早いな!」
数分しない内に本音が眠ってしまった。いくら何でも無防備過ぎだと思うんだが。
寝てるんなら何とか離れる事が出来ると思った俺は、そっと抱きしめていた両腕を放そうとするが――
「ぐ~……離れちゃ、やだ~……」
ギュウッ!
実は起きてるんじゃないかと思うほど、本音が逃さないように強く抱きしめてきた。
こうなった本音に何をやろうとしても無駄だと悟った俺は――
「………はぁっ。俺も寝るか」
急遽、本音と一緒にソファーで昼寝をする事にした。
因みに俺達が眠ってる間、俺の部屋に置いてある携帯に一夏から連絡があったのを気付いてないのは言うまでもなかった。
久しぶりに本音とのイチャイチャ話を書きました。
と言ってもグダグダな内容ですが。