インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新と見て申し訳ありませんが、ここでエピローグとさせてもらいます。

あとフライング投稿とします。


エピローグ

 一夏の家でちょっとしたドタバタな夕食があったが、修行休みであった一週間があっという間に終わった。その後は言うまでもなく、竜爺との修行だ。

 

 夏休み終了まであと数日となるも、俺と一夏は変わらず竜爺の家で修行の日々を送っている。一夏も相も変わらず音を上げずに最後までやれている事に、俺は内心嬉しかった。今まで竜爺としか修行してなかったんだが、誰かと一緒に競い合うようにやれる事に楽しく感じていた。

 

 尤も、夏休みが終われば前と同じく、俺が一夏を鍛える為の指導役をする事になるがな。それはそれで充分にやりがいがあるから別に構わない。

 

「なぁ和哉、爺さんがいきなり道場へ来いって言ってたけど、何をするんだ?」

 

「俺も知らん」

 

 それはそうと、今日の修行はいつもより早めに終わった。竜爺にしては珍しい事をするもんだと思いつつも、俺は一夏と一緒に道場へ向かった。

 

「おお、来たか」

 

 道場には既に正座している竜爺がいた。俺達が入ってきた事に気付いた竜爺が振り向きながら言うと、すぐに座るように言ってくる。

 

 言われた通り竜爺の目の前で一夏と並ぶように正座すると、それを確認したのか早速本題に入ろうとする。

 

「さて、今日二人を此処へ呼んだのは他でもない。本日を持って、夏休み中の修行はこれにて終了とさせてもらう」

 

「「……え?」」

 

 竜爺からの思いも寄らない発言に俺と一夏は思わず目が点になってしまった。

 

 おかしいな。俺が知ってる竜爺は夏休み終了の前日のギリギリまでやる。何で今回は数日前に終わらせるんだ?

 

 因みに一夏には、『修行は夏休み終了ギリギリまでやるから覚悟しておけよ』と事前に言った。なので俺が教えた内容と違ってる事に戸惑っている。

 

「ワシとて本当なら、もう少しやる予定じゃった。じゃが先日、IS学園側から連絡があってのう。織斑千冬と言う教員から」

 

「千冬姉が!?」

 

 身内の名前が出た事に一夏が吃驚する。まさか竜爺から千冬さんの名前が出た事に、俺も少し驚いたよ。

 

「ほう、やはり一夏の家族であったか。まぁそれは良いとしてじゃ。その教員から、夏休みが終わる数日前までに和哉と一夏を明後日まで学園に戻して欲しいと要請があってのう」

 

「学園に? 何でだ?」

 

「男性IS操縦者の二人は夏休み終了前に色々と確認しなければならぬ事があるそうじゃ。何を確認するのかと訊いても教えてはくれなかったが」

 

 そりゃ学園の機密情報に関する事を、一般人である竜爺に言う訳にはいかないな。まぁ竜爺を一般人と呼ぶには少々無理があるが。

 

「……和哉、お主何か失礼な事を考えておらぬか?」

 

「別に何にも」

 

 俺の考えを読んだのか、竜爺が睨むように問う。何とかポーカーフェイスで何とか誤魔化せたが、少しばかり焦った。

 

「まぁ取り敢えずワシとしては大変不本意じゃが、国の関係者から要請があった以上、日本国民のワシは従うしかない。女権団体におる小娘共の戯言は別じゃがのう」

 

 さり気なく国が絡んでる女権団体の事を蔑むように言う。自分の土地を奪おうとしたり、更には弟子の俺を殺そうと知った事で更に嫌悪感を抱いてるからな。

 

 ま、あんな連中の事は如何でも良いとしてだ。竜爺の修行が予定よりも早く終わってしまうとは予想外だったな。

 

 千冬さんがどう言う理由で俺達を呼び戻そうとする理由は分からないが、これを機に黒閃を見てもらうとしよう。未だにスリープモード中だから、早くメンテして欲しかったからな。

 

「そう言う訳で今日の修行は早めに終わらせた。じゃからこの後は――」

 

 竜爺が急に立ち上がると――

 

「予定より早くなってしまったが、ワシと組手をやってもらおうか。特に一夏、修行する前と今の実力を確認させてもらうぞ」

 

「え!? い、今から!?」

 

「はぁっ……。結局こうなるのか」

 

 突然の組み手宣言に一夏は驚き、俺は呆れるように嘆息した。

 

 あの竜爺が修行を早く終わらせたからと言って、予定していた事を中止にする訳がないのは分かっていた。もしやとは思っていたが、本当に最後の定番とも言える組手をやる事になるとは。

 

 まぁ良いか。俺はともかくとして、一夏が修行期間中にどこまで成長したのかを確認したいと思ってたところだ。果たして今の一夏が、竜爺相手にどこまでやれるか楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

「あ~~~……ったく。一体どんだけ強いんだよ……」

 

「竜爺は規格外だから仕方ないって」

 

 竜爺との組み手を終えた後、夕食前に身体に纏わり付いてる汗を流そうと温泉に入っていた。

 

 特に一夏は組み手をやって疲れたのか、温泉に入って早々ダラ~ッとしている。修行の日々を送ってる一夏にとって、この温泉はある意味癒しの場みたいなもんだ。

 

「和哉も和哉で、よくあの爺さんの弟子を続けているな。俺だったら途中でやめてるぞ」

 

「最初はそう思って、一発当てたら絶対やめようと決めたんだけどな」

 

 次こそは当てる、この次こそは絶対当てる、と言う事を繰り返した結果が今も竜爺の弟子をやり続けている。それにいつの間にか修行が日課になってしまい、武術を極めてみたいと考えを改めた。竜爺はまるでそうなる事を分かっていたかのように、反抗期だった俺の言葉を軽く聞き流していたんだよなぁ。

 

「にしても、一夏も随分とタフになったじゃないか。修行をやる前まではデコピンで気絶してたのに、それが今やすぐに立ち上がって挑み続けてるんだからさ」

 

「そりゃ何度も喰らい続けてたら耐性が付くさ。今も痛い事に変わりはないが」

 

 手加減されてたとは言え、竜爺のデコピンは常人が受けたら簡単に気絶してしまうほどの威力だ。それを受けて立ち上がる奴は充分に凄い。

 

 加えて一夏の身体能力も以前より格段に上がっている。夏休み期間中とは言え、一夏がここまで伸びるとは思ってなかったと竜爺も少しばかり驚いていたようだ。俺だったらニ~三ヵ月掛かってるんだが……これが才能の違いってやつなのかねぇ。

 

 もしも俺と同じ時期で竜爺の弟子になって修行をしていれば……あっと言う間に差が付けられるだろう。そうなってれば俺は惨めな気持ちになって、武術を本当にやめていると思う。尤も、そんなIFの事を考えても今は詮無い事だがな。

 

「ああ、そうそう。言うまでもないが、修行は終わりって事は、温泉もこれまでって意味でもあるからな」

 

「そうなんだよな~。俺の楽しみが~……!」

 

 この温泉に入る事が既に日課となってる一夏にとっては、物凄く名残惜しいだろう。この前あった休み後の時なんか、久々の修行を終えて早々温泉に入ったからな。一夏曰く『早く温泉に入りたい禁断症状』になっていたんだと。どんだけ温泉好きなんだよって俺は内心突っ込んだよ。

 

 まぁ、それだけ一夏はここの温泉が気に入ってるって事だ。竜爺もそれを知った時には密かに喜んでいたみたいだし。温泉がある事を知ってスパリゾートにしようとする女権団体の連中とは違って。

 

「なぁ和哉、もし休日でここに来る時は俺に一声かけてくれないか?」

 

「残念だが、泊まり込み以外で温泉に入る気はないぞ」

 

 それに一夏の休日を二人っきりで過ごそうと考えてる一夏ラヴァーズに何を言われるか分かったもんじゃない。この前一夏の家で夕飯食べた後、俺が泊まると聞いたアイツ等から嫉妬されたし。まぁアイツ等からすれば、ずっと一夏と一緒にいる俺が羨ましいと思っているんだろうが……それでも要らん誤解されそうで勘弁して欲しい。

 

「次は冬休みを予定してる。当然修行をする事になるが、その時にまた声を掛けようか?」

 

「う~ん、爺さんの修行は辛いが……温泉に入れるなら頼む」

 

 大好きな温泉の為なら敢えて修行をやるか。ま、竜爺は許可すると思うから大丈夫だろう。一夏は見所あると言ってたから、俺の修行ついでに面倒見ると思うし。

 

 すると、温泉場にある出入り口の扉が開く音がした。

 

「二人とも、先に入ってるなんてズルいよ~」

 

「綾、お前また……!」

 

「あのなぁ綾ちゃん。前から言ってるけど、年頃の女の子が男と一緒に入るのはダメだって言ってるだろうが」

 

 綾ちゃんが素っ裸で温泉に入ろうとしてる事に、俺は呆れた表情で同じ事を言う。一夏は綾ちゃんの裸を見た途端に多少慌てているが、これでもマシな方だ。

 

 修行期間中に綾ちゃんが今みたく温泉に入ろうとしたり、一緒に寝ようとする機会が何度もあった。それによって一夏はラッキースケベ的な展開に遭った事もあって、女性……と言うより綾ちゃんの裸を見ても多少の耐性が身に付いた。

 

 相手が女子小学生とは言え、スタイルの良い女の子とそんなハプニングと遭遇し続けたと一夏ラヴァーズが知れば……一夏が地獄を見る事になるだろう。ついでに俺も巻き添えで。

 

 それに加えて、一夏は綾ちゃんの手料理も結構気に入ってる。もしも一夏が箒達の前で『綾の手料理が食いたくなってきたなぁ』と口にした瞬間……先ほど言った同じ展開になる事は間違いない。

 

 俺達の反応を余所に、身体を一通り洗い終えた綾ちゃんは即座に温泉へ入った。しかも俺達の間に。

 

「竜お爺ちゃんから聞いたよ。お兄ちゃんたち、今日で修行終わりだって。明日には帰るってことも」

 

「……ああ、それで一緒に入ろうとしたんだな」

 

「うん。お兄ちゃんたちと一緒に入れるのが今日までだから」

 

「だからって、何も俺と和哉が一緒の時に入ろうとするなよ……」

 

 納得する俺と、綾ちゃんの裸を見て顔を赤らめながらも指摘する一夏。

 

「って事は、今夜は俺達と一緒に寝る気だな?」

 

「うん♪ アタシが真ん中で、お兄ちゃんたちが左右で川の字で寝るの」

 

「ちょ、マジか!?」

 

 とんでもない不意打ちだと言わんばかりに驚く一夏だが――

 

「諦めろ一夏。こうなった綾ちゃんを止める事が出来ないのはもう知ってるだろ? 綾ちゃんの手料理で世話になってるんだから、それくらい大目に見てやれよ」

 

「う……。あ~分かったよ。綾、言っておくが今日だけだからな」

 

「ありがとう、一夏お兄ちゃん♪」

 

「お、おい綾! いきなり抱き着くなって! お前、今は裸なんだぞ!?」

 

 綾ちゃんに抱き着かれてドギマギするのであった。

 

 もしこの光景を箒達が見たら殺意全開でブチ切れるのは確実だな。全員揃ってIS展開して一夏を殺そうとする程に。

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 俺と一夏は竜爺の家を出て実家へと戻り、そこで一通りの準備を終えた後にIS学園へと戻った。今はもう夕方だ。

 

 俺達が学園に戻って来ると聞いた箒達は早速と言わんばかりに、すぐ一夏へ詰め寄って尋問……もとい、談笑を始める事になった。前以て綾ちゃんの事は言わないようにと伏せているから大丈夫な筈だ。

 

 因みに千冬さんも一緒にいたが、俺に用があったのか、すぐに別の部屋へと連れて行った。

 

「全く。黒閃に異常が起きてたなら、何故すぐ学園に報告しなかった?」

 

「すみません。黒閃がどうしてもと言うもので……」

 

 待機状態(ブレスレット)になっている黒閃について話した後、しかめっ面で言う千冬さんに申し訳ないように謝る俺。

 

 言うまでもないが、黒閃はもう既に渡している。今頃はスリープモードから目覚めて、俺が傍にいない事に驚いているだろう。

 

「それに黒閃の奴、本音と一緒の時には結構感情的になったり、急に俺に甘えて来る事もあって色々と……」

 

「……主に忠実なISな上に、女としての感情が徐々に芽生えてきてると言う事か」

 

「女としての感情云々についてはよく分かりませんが、俺としては娘みたいな感じですよ」

 

「……お前もお前で相変わらずだな」

 

 今度は呆れた顔になる千冬さんだが、俺には全く分からなかった。何が相変わらずなんだ?

 

「まぁ良い。取り敢えず、お前には悪いと思うが、黒閃は完全に直るまで暫く此方でメンテをする」

 

「是非ともお願いします。もし黒閃が文句を言った場合は俺に言って下さい」

 

 こっちは何度も学園に戻った方が良いんじゃないかと言っても、当の本人が俺の傍にいたいと言ったからな。約束通り学園に戻ったので、黒閃が完全修復するまでは一切の我儘は聞かない事にすると決めている。

 

「あと他には――」

 

「愛しい大事な弟の修行結果でしたらぁっ!」

 

 久しぶりに少しからかおうとする俺に、千冬さんが速攻で正拳突きを放ってきた! 当然、即座に両手を使って千冬さんの腕を掴んで阻止したよ!

 

「ち、千冬さん……前にも言いましたが、それくらいは軽く流して下さいよ……」

 

「此処では織斑先生と呼べ。あとこれも前に言った筈だ。私はからかわれるのは嫌いだと」

 

「は、はい……そうでしたね」

 

 いくら図星だからって正拳突きは……いかん。これ以上は止めておこう。今度は全力の正拳突きをされそうだ。

 

「それにしても……手加減したとは言え、私の正拳突きを片手で止めるとはな。この前は両手で防いだと言うのに」

 

「一応、これでも師匠のところで鍛え直しましたからね。言いそびれましたが、一夏も以前と比べてそれなりに上達してますよ」

 

「ほう」

 

 興味深そうに目を細める千冬さん。

 

「良かったら今度手合わせしてみたらどうですか? アイツの事ですから、喜んでやると思いますよ」

 

「生憎、私はそこまで暇ではない。お前と手合わせするだけで手一杯だ」

 

 一夏に聞かれたら絶対に嫉妬される台詞だなぁ。アイツはただでさえ、俺が以前に千冬さんと二人っきりで部屋を過ごしてただけでも過敏に反応するシスコンだし。

 

 ま、元でも世界最強の千冬さんと手合わせしてくれるなら、俺としては大歓迎だ。

 

「では明日の早朝、早速お手合わせしても良いですか? 俺の成長を是非とも織斑先生に披露したいので」

 

「……ふっ、良いだろう。私も最近事務仕事ばかりやってて、久しぶりに身体を動かしたいと思っていたところだ」

 

 すまん一夏。またしてもお前に内緒で大好きな千冬さんと手合わせさせてもらう。

 

 内心そう思った後、千冬さんと一通り話した俺は、一夏がいると思われる食堂へと向かう事にした。

 

 夏休みは残り数日となるも、新学期が始まるまでは学園で過ごす事となった。

 

 因みに翌日以降、一夏や箒達とプールへ行く事になるのだが、それは別の話とさせてもらう。




これにて完結としますが、あとは番外編として『一夏の想いで』を更新する予定です。
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