インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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ハーメルンがDoS攻撃を受けた事により遅れました。

それではどうぞ!


第12話

「見せてもらったぞ神代。ISに乗って間も無いと言うのに、あれ程の技量を見せるとは正直驚いた」

 

「どうも」

 

 ピットに戻った俺は気絶してるオルコットを医療班に任せた後、千冬さんからの賞賛らしき言葉を頂いた。

 

「それにくらべて……」

 

 そう言った千冬さんは次に俺の隣にいる一夏を見る。

 

「よくもまあ、あそこまで持ち上げてくれたものだ。この大馬鹿者」

 

「うぐ……」

 

 一夏は馬鹿者から大馬鹿者へとランクアップされた。まぁあの土壇場であんな白けた事をさせたからな。いくら俺でも今回ばかりはフォロー出来ない。

 

「武器の特性を考えずに使うからああなるのだ。身をもってわかっただろう。明日から訓練に励め。暇があればISを起動しろ。いいな」

 

「……はい」

 

 千冬さんの言葉に頷くしかない一夏。俺に大見得切ったんだから頷くしかあるまい。

 

「神代も今後訓練に励むように。いくらオルコットに勝ったからと言って、お前は初心者に変わりないからな」

 

「勿論そのつもりです」

 

 ちゃっかりと俺にも言う千冬さん。取り敢えず今後は一夏とISの訓練が出来るな。かと言って一夏にはそれ以外の訓練もやらせないとダメだが。

 

「えっと、ISは今待機状態になっていますけど、織斑くんと神代くんが呼び出せばすぐに展開できます。ただし、規則があるのでちゃんと読んでおいてくださいね。はい、これ」

 

 千冬さんの隣にいた山田先生がそう言いながら、IS起動に関してのルールブックを渡した。ってか凄く分厚いな。さっきドサッて聞こえたぞ。これは一体何ページあるんだか。

 

「和哉……俺もう……」

 

「やるしかないだろう」

 

「だよなぁ……はぁっ……」

 

 一夏が溜息を吐く。俺だってお前と同じ気持ちなんだっての。

 

「何にしても今日はこれでおしまいだ。帰って休め」

 

 はいはい、そんな命令口調で言わなくてもそうしますよ。ってか一夏。思ったんだが、千冬さんをお前が守る必要があるのか? どう見てもそんな必要は無いと思うんだが。

 

「さて一夏、お前には後で説教を……と言いたいところだが、流石にこれ以上言うのは酷だから勘弁しておいてやろう」

 

「和哉…………」

 

 一夏は救世主のように見ていたが……。

 

「その代わり、明日から本格的な訓練をしてもらうぞ。前までやってた基礎訓練以上の事をな」

 

「………………はぁっ」

 

 俺が笑みを浮かべて言った瞬間、急に暗い表情となってガックリとした。世の中そんなに甘くは無いぞ。

 

 おっと。箒がコッチを見ているな。俺がいるから話掛けにくいと言ったところか。ここは箒に一夏を任せるとしよう。

 

「一夏、俺は先に帰らせてもらうぞ」

 

「え? 帰るなら俺たちと一緒に……」

 

「ちょっと寄る所があってな。それじゃ」

 

「あ、おい!」

 

 俺は素早く箒のいるところへ近づき……。

 

「(邪魔者の俺はさっさと消えるから、一夏と仲良く帰りな。好きなんだろ? 一夏のことが)」

 

「んなっ!」

 

 そっと小声で言うと、箒は顔を真っ赤にした。

 

「か…か…かかか……和哉……! お…お前……いつから気付いて……!」

 

「んなもんとっくに気付いてるっての。そんじゃいい結果を期待してるよ、じゃあね」

 

「ま…待て! お前は一体何を期待してるんだ!?」

 

 そんなの聞くまでも無いだろう。さっさとアンタが一夏に告白して両想いになれって事だ。って言いたいところだが、流石にそれは不味いので内心で突っ込むしかないが。

 

 

『どうしたんだ箒。和哉に何か変なことでも言われたのか?』

 

『べ、別に何でもない!』

 

『そうか? その割には顔が赤いんだが……』

 

『そ、それはお前の気のせいだ! さっさと帰るぞ!』

 

 

 さ~てと、邪魔者の俺はさっさと一人で部屋に戻りますか。

 

 そして俺が一人で素早く寮へ戻っていると……。

 

「かずー! 今日はすっごくカッコよかったよ~!」

 

 ギュウッと俺の腕に引っ付いてくる布仏が現れた。

 

「布仏さんか。まだ寮に戻っていなかったのか?」

 

「かずーを待ってたの~。それより凄かったよ~。セッシーに勝つなんて~」

 

 まるで自分の事みたいに喜んでいる布仏。そんなに嬉しいのか?

 

「セッシーってセシリア・オルコットの事か?」

 

「そうだよー。かずーが代表候補生のセッシーをあっと言う間に倒しちゃって~、ルームメイトとして鼻が高いよ~。これは自慢しなきゃね~」

 

「何故君が自慢するのかは分からんがな」

 

 きゃいきゃいとはしゃぐ布仏に俺は何でもないように言い返す。本当にこの子相手だと調子が狂う。

 

「まぁそんな事は良いとしてだ………」

 

 俺が別の方を見ると、布仏と一緒にいた谷本と鏡がいた。

 

「お疲れ、神代くん」

 

「あのセシリアを倒すなんて凄いわね~」

 

 気兼ねなく俺に話しかけてくる谷本と鏡。

 

 この二人はアップルパイを披露して以降、普通に話せる間柄となった。彼女達を通して他にも何人か仲良くなっているが、今のところはこの二人が一番仲が良い。

 

「少しは信用してくれたか? 俺が口先だけじゃ無いってことを」

 

「あんな凄いのを見たらそりゃもう……」

 

「でも更に凄いのは神代くんが『IS学園最強』になるって言った時は驚いたわよ。それを聞いてた周りも」

 

 試合も見ていたギャラリー達も最初は俺の戯言としか受け取っていなかったみたいだな。

 

「『IS学園最強』になるって言ったのは本当だ。折角ISに乗る機会が与えられたんだからな。やっぱりここは大きな目標を立てないとダメだし」

 

 師匠に勝つ条件の一つとしてな。

 

「…………多分お嬢様の耳にも入ってるだろうな~」

 

「ん? 布仏さん、何か言ったか?」

 

「何でもないよ~」

 

 未だに俺の腕に引っ付いている布仏が何か呟いていたが、すぐにはぐらかされてしまった。

 

 その後は俺と女子三人で寮へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なぁ箒」

 

「何だ?」

 

 一夏と箒が一緒に寮へ戻っている最中、一夏がポツリと呟いた。

 

「俺、和哉がセシリアを倒すのを見て凄いと思った」

 

「突然どうした? 私も一夏と同様だぞ。まさかあれほど強かったとは……」

 

「それだけじゃない。和哉がいたから言わなかったけど……悔しかった。それも物凄く……!」

 

「………」

 

 とても悔しそうに、辛そうに言って来る一夏に箒は黙って聞いている。

 

「中学の頃からの付き合いだけどさ。和哉が結構強いのは知っていたけど、あそこまで実力差があったなんて知らなかった……」

 

「一夏………」

 

「ははは。情けないよな。いつも和哉と一緒にいたってのに、実際は和哉の事を何も分かってなかった」

 

「……………」

 

「今回の試合で、自分がどれだけ情けなく、どれだけ惨めだったことか……俺の気持ちはそればっかりで……!」

 

 一夏は立ち止まり、血が滲み出そうなほど拳を強く握って歯を食い縛り、目から涙が出そうなほど泣きそうな顔になってきている。

 

「千冬姉を守るって決めたのに、あんな無様に負けた上、和哉との力の差を見せ付けられて……俺は……俺は……!」

 

「なら今からでも強くなれば良い!」

 

「!」

 

 箒が突然叫んだ事に一夏は驚く。

 

「いつまでそんな情けない顔をしている一夏! 力の差を見せ付けられたのが何だ! お前はアイツを超えようと思わないのか!?」

 

「そ…それは……」

 

「私だってあの時、和哉と手合わせで負けて凄く悔しかった! 今のお前と同じ気持ちで情けなく思った!」

 

「………………………」

 

 本心を暴露している箒に一夏は呆然としている。いつも一夏の前では意地っ張りな態度を取っていた箒が、自身の心を曝け出しているのだから。

 

「私は誓った! 今のままで和哉を倒せないなら、更に精進して必ず倒すと! それで挑んで負けたら、また更に精進して挑む! お前にはそれが無いのか一夏!?」

 

「お…俺だってそれくらい……!」

 

「ならそれを見せてみろ! 私と一緒に剣道してた頃の一夏を! あの時のお前は貪欲に強くなろうとしていたではないか!」

 

「!!!」

 

 箒の言葉に一夏は思い出した顔になった。箒と一緒に剣道を学んでいた頃の一夏は幼馴染の箒が強くなっていくのを見て、自分も負けじと強くなろうとしていた。それによって一夏の剣道の腕は箒より上だった。

 

 しかし箒が家庭の事情によって離れ離れになったことで、一夏は剣道を辞め、中学の頃には家計を賄うためにバイトをしていた。いつまでも姉の千冬に負担を掛ける訳にはいかないと。そんな中で一夏は和哉と出会い、和哉が強いのは知っていたが張り合おうとはしなかった。

 

 だが今は違う。箒の言葉によって自身の失っていた物が戻り、今再び一夏の心に火が付き始めた。

 

「……………………」

 

「その気は無いのか? だったら失望したぞ一夏。なら私は一人で……」

 

 何も言い返さない一夏に箒は一人で寮に戻ろうとしたが……。

 

 

ガシッ!

 

 

「ん?」

 

 一夏が突然箒の腕を掴んだ。

 

「…………箒、頼みがある」

 

「何をだ?」

 

「今から俺と付き合ってくれないか?」

 

「…………………は?」

 

 突然の一夏の告白に箒は呆然とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

サアアアアアアア………。

 

 

(………………………)

 

 学生寮の一室のシャワールームにて、セシリアはシャワーを浴びていた。シャワーの水滴はセシリアの肌に当たるが弾けてしまい、ボディラインをなぞるように流れていく。

 

 しかしセシリアはシャワーを浴びていると言うのに、物思いに耽っていた。

 

(今日の試合――)

 

 何故いきなり一夏のシールドエネルギーが0になったのかは未だに分かっていない。もし最後の一撃が当たっていたら、やられたか、もしくはかなりのダメージを負っていたのかもしれない。

 

(織斑、一夏――) 

 

 セシリアは一夏の事を思い出す。あの、強い意志を宿った瞳を。

 

 他者に媚びない眼差しに、セシリアは自分の父親を思い出した。

 

(父は、母の顔色ばかりうかがう人だった……)

 

 名家に婿入りした父は、いつも母には卑屈な態度を取り続けていた。幼い頃からそんな父親を見ていたセシリアは、『父のような情けない男と結婚しない』と心に決めていた。

 

 そして、ISが発表されてから父は更に卑屈した事により、母は完全に鬱陶しくなって会話自体も拒むようになっていた。

 

 だが今はその両親はいない。三年前の越境鉄道の横転事故によって他界しているから。その時は両親だけでなく一〇〇人以上の死者が出ていた。陰謀説と囁かれていたが、事故の状況によりそれは無いと否定。

 

 それによって両親は帰らぬ人となり、セシリアには莫大な遺産を相続する事になった。遺産目当てに親戚一同がセシリアに近づこうとするが、彼女は必死に守ろうとあらゆる勉強と努力をした。そして現在はIS操縦者で、イギリスの代表候補生の地位に就いている。自分はこの先誰にも負けず、誰であろうと勝ち続けると。

 

 しかし……。

 

「織斑、一夏……」

 

 一夏の名前を口にすると、不思議に胸が熱くなっていたが……。

 

「神代、和哉……!」

 

 和哉の名前を口にした途端、一夏と違い悔しい気持ちを露わにしていた。

 

(悔しい……! 誰にも負けないと誓ったなのに……あんな無様に……!)

 

 自分が和哉とかなりの力の差があって負けた事は認める。けど悔しい事に変わりは無い。これまで培ってきた力とプライドが和哉によってあっと言う間に打ち砕かれたのだから。

 

(だけどあの方は、わたくしが虚勢を張っていると分かっていながらも最後まで付き合ってくれた)

 

 和哉の一撃を喰らってセシリアは既に戦えない状態だったのだが、それでも和哉に挑もうとしていた。負けるのが分かっていても。そんなセシリアに和哉は一切の手心を加えず、全力でセシリアを倒すと言う目をしていた。自分を好敵手と認めくれたかのように。

 

(神代和哉……今回は負けましたが、次は絶対に倒します! セシリア・オルコットの名にかけて!)

 

 セシリアは決意した。更に研鑽して和哉を倒し、その次はイギリス代表を目指すと言う決意を。今のセシリアは、和哉を倒さなければ次のステップには進めないと考えているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある部屋にて二人の女性が椅子に座っていた。

 

「いやいや、今回の試合は中々興味深かったわ。思わず私ぞくぞくしちゃったし」

 

「お嬢様――」

 

「ちょっと、その呼び方は止めてって言ってるでしょ?」

 

「失礼しました、会長」

 

「よろしい」 

 

 呼び方を訂正すると、会長と呼ばれた女性はすぐに頷く。

 

「それにしても、あの神代和哉って子には驚かされたわ。まさかこの私に挑戦状を叩きつけるなんて」

 

「彼が会長の事を知っててあんな宣言をしたと?」

 

「たとえ知らなくても、私を倒さない限り最強にはなれないわ。そうでしょ?」

 

「………まぁ確かに」

 

 女性は会長と呼ばれている女性の言葉に考えながらも頷いている。彼女の言うとおりだから。

 

「本当だったら、もう少し経ってから織斑一夏と一緒に会おうと思っていたけど、ちょっと予定変更して神代和哉に会ってくるわ」

 

「ですがまだ動くべきで無いのでは? 神代和哉の評判はかなり悪く、二年や三年から多くの苦情が来ています」

 

「大丈夫よ。ちょっと会うだけだから。それにあの子は結構腕が立ってるから、もし二、三年の誰かが不意打ちを仕掛けたところで返り討ちにされるのがオチだと思うし。ま、そう言う訳だから此処はちょっと任せるわよ」

 

「…………分かりました」

 

「ふふふ……さ~て、どんな場面で会おうかしら~?」

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