インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今回は2話掲載します。

それではどうぞ!


第14話

 授業が終わった放課後、俺はある所へといた。

 

「申し訳ありません。本当でしたらすぐに挨拶しに行こうと思っていたんですが、色々とありまして……」

 

「いやいや、お気になさらず。神代くんの方もまだ学園に来たばかりですからね」

 

 用務員室にて、数少ない男性用務員である轡木十蔵さんに挨拶をしていた。

 

 見た目は総白髪の頭で、顔にも年相応のしわが刻まれている。そして柔和さを感じさせる人柄でもあり、その親しみやすさから『学園内の良心』などと呼ばれているそうだ。

 

「あの方は未だにお元気ですか?」

 

「ええ、それはもう。今頃はまた何処かへ一人旅をしていると思いますよ」

 

 師匠は修行の相手をしてくれるが、俺が春・夏・冬休みの時は『修行も兼ねて旅に出るぞ』と言って引っ張り回された事があった。あの時は大変だったが、色々な経験を積んだ。海や山のサバイバル生活に、更には無人島での生活。本当に色々あったなぁ。

 

「その顔を見ると、竜さんの旅に何度も付き合わされたみたいですね。けどあの人の旅は結構ためになったと思いますが?」

 

「その言い方から察するに、もしかして轡木さんも?」

 

「はい。とても有意義な旅でしたよ」

 

「って事はもしや貴方も俺と同じく師匠の弟子なんですか?」 

 

「いえいえ、あの人とはちょっとした友人ですよ」

 

「友人……ですか」

 

 師匠の友人となると、この人もそれなりに凄い人なのかと思ってしまう。師匠の周りにいる人って結構有名な人もいるからな。もしかしてこの轡木さんが実は用務員と言うのは仮の姿で、本当はこのIS学園を取り仕切る影の支配者だったり……。って、んな訳無いか。

 

「しかし驚きましたよ。まさかあの竜さんが弟子を取っていたとは」

 

「師匠が弟子を取る事がそんなに珍しいんですか?」

 

「珍しいも何も、私が知っている竜さんは、決して弟子を取らない主義だと言うほど頑固でして」

 

「師匠がそんな事を?」

 

 あの師匠がねぇ……俺が初めて会った時は『ワシの弟子にならんか?』と言ってたんだが。師匠が轡木さんの言うとおりのだったら、どう言った心境の変化なんだろうか。

 

「まあ、あの人にも色々と事情が変わったんでしょうね」

 

「だとしても、師匠があの時に武道のぶの字を知らなかった小さい頃の俺を弟子にするなんて相当変わっていますね。武道の素質がある奴を弟子にすれば良かったのに」

 

「恐らく君のような子だからこそ、竜さんは一から教えたかったと思いますよ」

 

「そんなもんですかねぇ?」

 

「そうですよ」

 

 頷く轡木さんだが、俺にはよく分からなかった。あの時の師匠も今と同じく厳しいけど、優しいところも見せてくれる。そんな人が誰も弟子を取らなかったなんて信じられないな。

 

 轡木さんからもっと過去の師匠の事を聞きだそうとしたが……。

 

「おっと。もう休憩時間が過ぎてしまいましたね。神代くん、挨拶に来て下さって申し訳ありませんが、掃除の時間となりましたのでまた今度に……」

 

「そうですか」

 

 轡木さんが業務再開するみたいに掃除道具を持ち始めたので、俺は用務員室から出ようとする。

 

「お忙しいところ、時間を取って頂きありがとうございました」

 

「いやいや、私も君と話して大変有意義でしたよ。またいつでも来て下さい」

 

「分かりました、それでは」

 

「ええ、またいずれ」

 

 そして俺は用務員室から出て、そのまま一夏と訓練の約束をしたトレーニングルームへと向かった。

 

 

『………早く神代くんに専用…を……しなければ………せんねぇ。それ……さんに申し訳………』

 

 

 用務員室から独り言が聞こえたが、途切れ途切れにしか聞こえなかった。一体何の事を言ってるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、神代、オルコット。試しに飛んでみせろ」

 

 四月の下旬。桜の花びらが完全に無くなった頃にて、いつも通り千冬さんの授業を受けていた。

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

 

 まだISを展開していない千冬さんに指摘された俺と一夏。そうは言っても俺と一夏はまだ初心者なんですけど。

 

 しかしまぁ、俺が学園から借りてる『打鉄』を呼び出す為のアイテムが左腕のブレスレットとはな。どうやらコレが操縦者の体にアクセサリーの形状で待機してるらしい。

 

 ちなみに専用機持ちである一夏は右腕のガントレットで、オルコットは左耳のイヤーカフスだ。俺としては一夏と同じガントレットが良かったな。ブレスレットなんかより何倍もマシだから。

 

「集中しろ」

 

 おっとやばいやばい。早く展開しないと叩かれそうだ

 

 俺は打鉄を呼び出す為に目を閉じて意識を集中し……。

 

(出て来い、打鉄)

 

 そう心の中で呟いた刹那、左手首から全身に薄い膜が広がっていくのが分かった。展開時間は約0.7秒。俺の体から光の粒子が開放されるように溢れ、そして再集結して纏まり、IS本体として形成された。

 

 打鉄を纏っていくと体が急に軽くなる。各種センサーが意識に接続され、周囲の解像度が上がっていく。そして『打鉄』を完全に装備した状態になると、地面から十数センチ浮遊していた。

 

 俺と同じく、一夏が『白式』、セシリアが『ブルー・ティアーズ』を装備して浮かんでいる。余談だが、俺と一夏の対戦で損傷していた『ブルー・ティアーズ』のビットは、もう完全に修復済みだった。

 

「よし、飛べ」

 

 千冬さんに言われて、俺とセシリアは即座に飛んだ。そして急上昇し、セシリアと同じ位置で静止する。

 

 ん? 一夏が出遅れたな。おまけに上昇速度も遅い。

 

「何をやっている。スペック上の出力では白式の方が上だぞ」

 

 通信回線から千冬さんのお叱りの言葉を受ける一夏。

 

「遅いぞ一夏」

 

「あのなぁ。そう言われても急上昇や急下降は昨日習ったばかりだぞ? 『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』で行うようにって言われても、全然感覚が掴めないし」

 

 俺の突っ込みに一夏が言い返してきた。まぁ確かに習ったばかりで、さっき一夏が言ったイメージだけじゃとても無理だな。

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

「セシリアの言うとおりだ。俺もイメージを変えた途端にやりやすくなったぞ」

 

「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ」

 

 一夏は白式にある二対の翼状を観察しながら見ていると……。

 

「説明しても構いませんが、長いですわよ? 反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

「わかった。説明はしてくれなくていい」

 

 説明しようとするセシリアを即座にストップをかけて断った。俺も今ここでそんな説明聞きたくないし。

 

「そう、残念ですわ。ふふっ」

 

「ってか一夏。今更そんな疑問を抱いたところで浮いてるもんは浮いてるんだから仕方ないだろうが」

 

「和哉さんはわたくしが説明しなくても理解してますの?」

 

「………セシリア、お前分かってて言ってるだろ?」

 

「あらあら、バレちゃいましたわね。ふふふっ」

 

 楽しそうに微笑むセシリア。その表情は嫌味でも皮肉でもなく、本当に単純に楽しいと言う笑顔だ。

 

 セシリアが一夏の事が好きだと気づいて以降、何かと理由を付けて一夏のコーチを買って出ている。一夏がいない場合は俺にも教えてくれている。一夏や俺にしては非常にありがたく、セシリアは流石に代表候補生だけ会って優秀だった。

 

 一夏はともかくとして何故俺まで教えていると言う理由については、『次に戦うときはお互いフェアな条件でやりたい』だそうだ。その代わり、俺もセシリアに基礎的な対接近戦用について教えている。いくら遠距離主体でも懐に持ち込まれたら話にならないからな。セシリアもあの時の試合で充分学んだから、何の反対も無く俺に教えられている。

 

「一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ。そのときはふたりきりで――(チラッ)」

 

 はいはい。こっちを見なくても分かってるよセシリア。お好きなように。

 

 俺がセシリアにどうぞと言うジェスチャーをしていると……。

 

「一夏っ! いつまでそんなところにいる! 早く降りてこい! それと和哉も何をやっている!」

 

 いきなり通信回線から怒鳴り声が響いた。声の主が分かって地上を見ると、そこには山田先生がインカムを箒に奪われておたおたしていた。ISのハイパーセンサーの補正がある事によって、今の俺達は望遠鏡並みの視力なのである。それによって地上二百メートルから怒り心頭である箒の顔がよく見える。これって色々と悪用されたら大変な事になりそうだな。

 

「ちなみに、これでも機能制限がかかっているんでしてよ。元々ISは宇宙空間での稼動を想定したもの。何万キロと離れた星の光で自分の位置を把握するためですから、この程度の距離は見えて当たり前ですわ」

 

 ふむふむ、流石は優等生。知識も豊富だな。

 

「それに比べて箒の説明は……」

 

「ああ、あれはなぁ……」

 

 俺と一夏は箒の説明を思い出すと……。

 

『ぐっ、とする感じだ』

 

『どんっ、という感覚だ』

 

『ずかーん、という具合だ』

 

 擬音ばかり使ってて全然分からなかった。箒には悪いんだが、正直言って本当にISを動かせるのかと疑問を抱いた。だが訓練機実習がまだ始まっていないので、箒のレベルは未だに不明だ。

 

「わたくしも流石にあれはちょっと……」

 

 セシリアも俺と一夏と同様に思い出していた。あの時のセシリアは箒の説明に突っ込んでは言い争いをしていたな。大好きな一夏の前で良い所を見せようとするセシリアに、負けじと対抗する箒。対象者である唐変木の一夏は全然気付いていなかったけど。

 

「織斑、神代、オルコット、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

 

「了解です。では一夏さん、和哉さん、お先に」

 

 そう言ってセシリアは地上に向かう。ふむ、凄いな。

 

「うまいもんだなぁ」

 

「そりゃあセシリアは俺達と違って経験豊富だからな」

 

 俺が一夏の言葉に頷いていると、セシリアは完全停止も問題無くクリアーしたみたいだ。

 

「それじゃ次は俺だ、見てろよ一夏」

 

「ああ」

 

 そして俺は意識を集中して急下降をするが……。

 

「くっ! これじゃ不味い!」

 

 完全停止が思うように出来なかった。

 

「それなら……!」

 

 確実に失敗すると思った俺は体を丸めて……。

 

 

グルグルグルグルグル!!!!

 

 

 回転する事によって急下降のスピードを殺し……。

 

「とおっ!」

 

 

ダァァァァァンッ!!

 

 

 両足を地面に付けて着地に成功した。

 

『…………………………』

 

「ふうっ、危なかったぁ。すいません織斑先生。完全停止は失敗しちゃいました」

 

「馬鹿者。誰があんな事をしろと言った」

 

 着地に成功したセシリアやクラスメイト達、山田先生も呆然としている中で謝ると、織斑先生は即座に言い返して来る。 

 

「どうもまだ慣れなくて……」

 

「………まぁグラウンドに穴を開けられるよりマシか」

 

 と、千冬さんがそう言っていたが……。

 

 

ズドォォンッ!!!

 

 

 突如、上空から何かが降ってきて地上に激突する音が聞こえた。

 

「「……………………」」

 

 俺と千冬さんが揃って音の発信源の方を見ると、そこには巨大な穴の中心に一夏が倒れていた。原因が分かった途端にクラスメイト達がくすくすと笑い始めている。

 

「成程。判断が遅かったら俺も一夏と同じ目に遭っていたと言う事か。ありがとな、一夏。良い教訓になったよ」

 

「お、お前なぁ……それが友達に向かって言う台詞かよ……!」

 

「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」

 

「……すみません」

 

 俺に反論する一夏だったが、織斑先生には謝るしかなかった。その後一夏は姿勢制御をして上昇して地面から離れる。普通は死んでもおかしくないんだが、一夏や白式は無傷である。ISのシールドエネルギーが無かったら完全にお陀仏だったな。

 

「情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

 腕を組み、目尻を吊り上げている箒が一夏に言う。おいおい箒さん。昨日教えたって、あの擬音の事を言ってるのか? 冗談も程々にして欲しいよ。ってかアンタが冗談を言うなんて珍しいけど。多分一夏もそう考えている筈だ。

 

「一夏、貴様何か失礼なことを考えているだろう」

 

 あ、どうやら一夏も考えていたみたいだな。ってか箒も鋭いなぁ。

 

「大体だな一夏、お前というやつは昔から――」

 

 一夏に対する箒の小言が始まったかと思ったら、それを遮るようにセシリアが前に出た。

 

「大丈夫ですか、一夏さん? お怪我はなくて?」

 

「あ、ああ。大丈夫だけど……」

 

「そう。それは何よりですわ」

 

 うふふと、また楽しそうに微笑むセシリア。モテモテだねぇ一夏。ま、当の本人はセシリアの想いに全然気づいていないけど。

 

「……ISを装備していて怪我などするわけがないだろう」

 

「あら、篠ノ之さん。他人を気遣うのは当然のこと。それがISを装備していても、ですわ。常識でしてよ?」

 

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

 

「鬼の皮をかぶっているよりマシですわ」

 

 

バチバチッ!

 

 

 アハハハハ~。一人の男を巡る女の争いの始まりだぁ~。実際は出てないけど箒とセシリアの視線がぶつかって火花を散らす音が聞こえるよ。別にやるのは構わないが、せめて俺を巻き込まないでくれよ。

 

「おい、馬鹿者ども。邪魔だ。端っこでやっていろ」

 

 箒とセシリアの頭をぐいいっと押し退けて、千冬さんが一夏の前に立った。

 

「織斑、武装を展開しろ。それくらいは自在にできるようになっただろう」

 

「は、はあ」

 

「返事は『はい』だ」

 

「は、はいっ」

 

「よし。でははじめろ」

 

 千冬さんに言われた一夏は横を向く。それは人に当てない様にする為に向きを変えたのだ。正面に人がいない事を確認した一夏は、突き出した右腕を左手で握る。そしてすぐに光が溢れた後に収まると、一夏の両手には《雪片弐型》が握られていた。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 

 一夏のやった事に褒めもしないどころか、すぐにけなす千冬さん。折角一夏が一週間訓練したってのに、ちょっと酷いな。

 

「次に神代、お前も武装を展開しろ」

 

「え? 俺の武器は拳だけなんですが……」

 

「良いから出せ」

 

「……はい」

 

 取り敢えず言われた通り出しますか。俺も一夏と同じく横に向き、そこに誰もいないのを確認して右手に刀をイメージする。そしてすぐに展開し、俺の右手には刀が出てきた。

 

「ふむ。一応及第点と言ったところか」

 

「ありがとうございます」

 

 おい一夏。大して褒められていないんだから、そんな睨まないでくれ。

 

「最後にオルコット、武装を展開しろ」

 

「はい」

 

 セシリアは左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出す。一夏や俺のように光の奔流の放出する事は無く、一瞬爆発的に光っただけ。それだけで、セシリアの左手には狙撃銃 《スターライトmkⅢ》が握られていた。

 

 俺や一夏より圧倒的に速いな。しかも、銃器には既にマガジンが接続されて、セシリアが視線を送るだけでセーフティーが外れている。一秒と立たずに展開、射撃可能まで完了……ちょっと待て。

 

「なあセシリア。展開が速いのは分かるが、そのポーズはちょっと不味いと思うぞ?」

 

「え? 何故ですの?」

 

 俺の指摘に分からない顔をしていたセシリアだったが……。

 

「神代の言うとおりだ、オルコット。確かに展開が速いのは認める。だがそんなポーズで横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」

 

 千冬さんが賛同するかのように更に指摘した。 

 

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるために必要な――」

 

「直せ。いいな」

 

「――、……はい」

 

 反論したそうな顔のセシリアだったが、千冬さんの一睨みで何も言い返せなくなった。下手に逆らったら命は無いからな。

 

「オルコット、近接用の武装を展開しろ」

 

「えっ。あ、はっ、はいっ」

 

 俺と千冬さんに対して頭の中で文句を言ってる最中に、いきなり振られた指示に吃驚して反応が鈍っているセシリアだった。

 

 セシリアは銃器を光の粒子に変換――この場合は『収納(クローズ)』だったな……。そして新たに近接用の武装を『展開(オープン)』する。

 

 だが、セシリアの手の中は未だに光を発さない状態だった。

 

「くっ……」

 

「まだか?」

 

「す、すぐです。――ああ、もうっ!《インターセプター》!」

 

 武器の名前をヤケクソになって叫ぶセシリア。それによりイメージがまとまり、光は武器として構成される。

 

 だがそれは優秀なセシリアにとって良くない行動だった。何故ならさっきセシリアがやったのは教科書の頭に書かれている『初心者用』の方法なのだ。アイツがあんな初歩的な事をすると言うことは、よっぽど俺と千冬さんに対する不満があったみたいだな。

 

「……何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

 

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません! ですから、問題ありませんわ!」

 

「ほう。織斑との対戦で初心者に簡単に懐を許していたように見えたが?」

 

「あ、あれは、その……」

 

「更には神代にも懐を許して、強烈な一撃を喰らったんじゃなかったか?」

 

「………………」

 

 俺を出すとセシリアは完全に痛いところを突かれたかのように、ぐぅの音も出なくなった。そんなセシリアに俺と一夏が眺めていると、いきなりキッと睨まれた。

 

 その瞬間、個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)送られてきた。

 

『あなたたちのせいですわよ!』

 

 んなもん知るか。ってかお前は俺の時は必死に立ち向かっていただろうが。

 

『あ、あなたたちが、わたくしに飛び込んでくるから……』

 

 そりゃ俺と一夏のISは接近戦用の武装しか無かったから仕方ないだろうが。

 

『と、特に一夏さんには、せ、責任をとっていただきますわ!』

 

 セシリアさん、アンタ何気なく一夏に告白してるんだろうけど無駄だよ。この超鈍感男にそんな遠回しな告白をしても分からないからな。

 

 ついでに俺と一夏は通信の返事はしていない。一方的に送られてくるだけである。プライベート・チャネルはセシリア戦で一夏と一緒に使ったが、お互いただ単に返事する気が無いだけだ。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」

 

 おいおい千冬さん。あの穴を埋めるのは一夏だけやらせるのかい。

 

 一夏が箒を見ると、フンと顔を逸らして手伝う気は無し。

 

 セシリアも――既にいなかった。

 

「和哉…………」

 

「………………」

 

 捨てられた子犬のように見てくる一夏に……。

 

「はいはい。手伝ってやるから、そんな目をしないでくれ」

 

「ありがとう和哉!」

 

 手伝うと言った途端、救世主のようにバンッ俺の両肩に手を置いた。

 

「元々はグラウンドに穴を開けた一夏の自業自得だが……」

 

「それでも手伝ってくれる和哉が俺の心の支えだ!」

 

「分かった分かった。ま、この際だからISを使ってさっさと片付けるぞ」

 

「おう!」

 

 どうでもいいんだけど箒とセシリア。アンタ等いくら怒っていたとは言え、自らチャンスを捨てるとは愚かだな。一夏と二人っきりで片付ければ良い展開になっていたのに。もう少し先の事を考えて欲しいもんだ。

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