インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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更新する際にエラーが出てきて、少しイライラしてる私です。

それではどうぞ!


第17話

「ほう。ついに『IS学園最強』の更識にまで目を付けられたか。余程お前の宣言に興味を抱いたようだな。倒す目標が現れて良かったじゃないか」

 

「まぁ確かにそうなんですけど」

 

 朝の早朝。俺は朝練を終えると、いつの間にかタイミングが良いように現れた千冬さんと組み手をしていた。昨日と同じく小手調べ程度だから普通に会話が出来る。で、今は千冬さんに昨日会った出来事を話しているって訳だ。

 

「どうした? IS学園最強に会えて嬉しくなかったのか?」

 

「いや、実はあの宣言……更識先輩に対して言ったんじゃ無いんですよね」

 

「何?」

 

 俺の発言に千冬さんが手を止めて不可解な顔になると、俺も一緒に手を止める。

 

「更識に言ったのではないなら、誰に向かって言ったんだ? 私の知る限りでは更識しか思いつかんが」

 

「それは………貴方ですよ、千冬さん」

 

「学校では織斑先生と………何だと?」

 

 すぐに呼び方を指摘しようとする千冬さんだったが、宣言した相手が自分だと知ると目を見開く。

 

「……あれは私に向かって宣言したのか?」

 

「ええ。あの時の時点でIS学園最強は千冬さんとばかり思ってて……で、昨日会った更識先輩が『IS学園最強』と聞いたのを知って俺は凄く勘違いをして……」

 

「…………………………」

 

 俺が勘違いしてた事を教えると千冬さんは無言になっていたが……。

 

「ぷっ………ははは! あれは私に言ったのか! それは意外だ。しかし……くっ、ははっ! あの更識が勘違い? 流石のあいつも予想外だっただろうな! ははは!」

 

「そんなに意外でしたか?」

 

「それはそうだ。お前が私に言っただけでなく、更識など眼中に無い等とおかしくて仕方がないぞ。ふ、ふふっ、流石の更識もさぞかし面食らっただろうな……ははっ!」

 

 それから更に一頻り笑って、千冬さんは目尻の涙を拭う。何もそこまで笑わなくても良いのでは……? 俺はともかく、更識先輩が知ったらショック受けますよ。

 

「はははっ。私をここまで笑わせてくれたのはお前が初めてだぞ、神代」

 

「それはどうも。俺も千冬さんの意外な一面を見て驚きましたよ」

 

「織斑先生と呼べと言ってるだろう……だがまぁ良い。私を心の底から笑わせた事に免じて、今回は許してやろう。さて、もう少しで時間になるから、それまでここからは私の全力を見せてやろう」

 

「へぇ。今回はサービス良いですね。本気でやってくれるなんて」

 

「朝から面白い話を聞かせてくれた褒美だ。それと言っておくが神代。お前が私を倒すと宣言した以上、口だけでは無いと言うところを見せてもらうぞ」

 

 威圧感全開で構えている千冬さんは、さっきまでの様子とは違って本気の様子だ。

 

「言われなくてもそのつもりです。それとこっちも言い返させて貰います。俺は千冬さんに負けても更に修練を積み、勝つまで何度でも挑みますから」

 

「ふっ。それ位の気概が無くては詰まらんな。さあ来い、お前に力の差を教えてやる」

 

「では……行きます!!」

 

 そして俺も全力で千冬さんに挑むのであった。

 

 これは言うまでも無いが、時間になると俺は負けてしまい更に精進しようと心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑くん、神代くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

朝の教室にて、俺と一夏が席に着いた途端クラスメイトに話しかけられた。一夏はともかく、俺にまで声をかけることはクラスメイトとはそれなりに話せる間柄となっている。その殆どは俺が作ったアップルパイで仲良くなったが。

 

「転校生? 今の時期に?」

 

「今はまだ四月なのに、こんなタイミングで転入って事は……」

 

 だがIS学園に転入する際にかなり条件が厳しかった筈だ。試験は言う必要が無いほど難しいが、特に国の推薦が無ければ出来ない事になっている。その条件を満たしているとなると即ち……。

 

「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

 

「ふーん」

 

「やはりそうなるか」

 

 相手が将来国の代表の卵と言う事になる。

 

 けどそれは一夏の席の近くにも……。

 

「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 

 一組のイギリス代表の卵であるセシリア・オルコットがいる。今朝もまた、腰に手を当てたポーズを取っていた。もう見慣れてるとは言え、アイツは本当にあのポーズが好きなんだな。

 

「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」

 

 おや? さっきまで窓側の最前列(自分の席)に座っていた筈の箒が、いつのまにか一夏の側にいるし。噂に敏感なのか、一夏の近くにいるセシリアを警戒する為のどっちだか。俺としては後者のような気がする。

 

「どんなやつなんだろうな」

 

 箒が近くにいる事に大して気にしていない一夏はそう呟く。おいおい一夏よ、お前がちょっとでも他の女子の話をすると箒が不機嫌になるんだから。ってもう遅いか。

 

「む……気になるのか?」

 

「ん? ああ、少しは」

 

「ふん……」

 

 あ~らら。一夏の返答を聞いた箒が不機嫌になっちゃったよ。コイツもコイツで嫉妬深い上に狭量だな。

 

「箒、そんな事で嫉妬するなよ」

 

「! だ、誰が嫉妬などしているか!」

 

 俺の突っ込みに箒は即座に反応して顔を赤らめながら否定してくる。

 

「え? 箒が何に嫉妬してるんだ?」

 

「それはお前がさっき……むぐっ!」

 

 一夏の問いに答えようとする俺に箒が一瞬で俺の口を手で塞いだ。凄い速さだったな。

 

「(余計な事を言うな和哉!)」

 

(分かった分かった。もう言わないから手を放してくれ)

 

 箒が小声で言って来ると、俺は内心突っ込みながら首を縦に振って、手を放せとジェスチャーをする。

 

「何してるんだ箒? いきなり和哉の口を塞いで」

 

「き、気にするな一夏。そんな事より。今のお前に女子を気にしている余裕があるのか? 来月にはクラス対抗戦があるというのに」

 

 一夏の問いに箒が何でもないように答えてすぐに話題を変えると、セシリアも便乗するように言って来る。

 

「そう! そうですわ、一夏さん。クラス対抗戦に向けて、より実戦的な訓練をしましょう。ああ、相手ならこのわたくし、セシリア・オルコットと和哉さんが務めさせていただきますわ。なにせ、専用機を持っているのはまだクラスでわたくしと一夏さんだけですし、和哉さんも常に訓練機を持っている状態ですから」

 

『だけ』という部分をえらく強調しているなぁセシリアさんよ。何気に俺も加えているけど、どうせアンタの事だから、ある程度の時間が経ったらさり気なく『一夏さんと二人っきりにさせて欲しい』って目で訴えるんだろ?

 

 まぁそれは置いといてだ。一夏は俺の訓練によってある程度の体力が付いたから、そろそろ本格的な戦闘訓練をやるせるとするか。基礎の方は重りを使わせるとしよう。 

 

 因みに、先程セシリアが言ってたクラス対抗戦とは読んでそのまま、クラス代表同士によるリーグマッチだ。本格的なIS学習が始まる前の、スタート時点での実力指標を作る為にやるとSHR時に山田先生から聞いた。

 

 並びに、クラス単位での交流及びクラスの団結の為のイベントでもあるそうだ。

 

 そしてクラスのやる気を出させる為に、一位クラスには優勝商品として学食デザートの半年フリーパスが配られる。それが欲しい理由で、女子達が燃えている訳だ。

 

「まあ、やれるだけやってみるか」

 

「おいおい一夏。そんな台詞で此処にいる面子が納得すると思うか?」

 

「和哉さんの言うとおりです! やれるだけでは困りますわ! 一夏さんには勝っていただきませんと!」

 

「そうだぞ。男たるものそのような弱気でどうする」

 

「織斑くんが勝つとクラスみんなが幸せだよ!」

 

 一夏の台詞に俺が突っ込んだ直後、セシリア、箒、クラスメイトが一夏に絶対勝てと言って来る。

 

「(ほらな? 分かっただろ、一夏)」

 

「(そう言われても、ここ最近はISの基本操縦でつまづいてるから、そんなんで自信に満ちた返事は出来ないぜ)」

 

「(言われて見ればそうだな。ISの訓練時にはやっと動かせると言った感じだったし。セシリアとの試合であれ程の動きを見せてたのに一体どうしたんだ?)」

 

「(最初に動かしたときはすごい馴染んだんだけどなぁ……)」

 

 一夏と小声で話して、俺は内心気付いた。思ったとおり一夏は訓練より実戦で強くなるタイプだ。やはりクラス代表にして正解だったな。一夏にはこの先、更に実戦経験をもらわないと。かと言って訓練を疎かにする気は無いが。

 

 そう考えていると、一夏の周りに一人二人と集まり、あっと言う間に女子で埋め尽くされていた。もうこれはいつものパターンとなっているから一夏は既に慣れている。

 

 ついでに……。

 

「かずー、おりむーが優勝したらアップルパイ作って~」

 

 布仏が俺の背中に覆い被さって抱き付いてくるのもパターンとなっていた。

 

「君は何かある度にアップルパイを作れと言って来るんだな」

 

「だってかずーのアップルパイ美味しいんだもん~」

 

 全くコイツと来たら。ってか布仏、顔が近いんだが。それと一夏、その目は何だ?

 

「か、和哉、お前ってのほほんさんとは前より仲良くなってるんだな」

 

「そう見えるか? お菓子を作ってくれと強請られているだけなんだが」

 

「いや、その割には……なんか、なぁ……取り敢えず頑張れ」

 

 何か言い辛そうなしている一夏。一体何が言いたいんだ? 頑張れって何をだ?

 

「和哉、私は応援してるからな」

 

「ちょっと箒さん、何の応援だ?」

 

「和哉さん、わたくしも篠ノ之さんと同じく見守っていますので頑張って下さい」

 

「待てセシリア、俺に一体何を頑張れと言うんだ?」

 

 それは暗にアップルパイを作ってやれって言ってるのか? んな事したら布仏に課してるお菓子制限の意味が無くなるだろうが。

 

「ねぇかずー、優勝祝いにアップルパイ作って~」

 

「そうよ! 織斑くんが優勝したら神代くんのアップルパイも付いてくる! 更にお得じゃない!」

 

「待てコラ。俺は一切承諾して無いぞ」

 

 布仏の台詞にクラスメイトの一人が何やら勝手な事を言っていた事に思わず突っ込む。だが俺の突っ込みは誰も聞いておらず話が勝手に進んでいく。

 

「織斑くん、がんばってねー」

 

「フリーパスのためにもね!」

 

「そして神代くんのアップルパイのためにも!」

 

「あの癒しの時間を是非!」

 

「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」

 

 やいのやいのと楽しそうな女子一同に……。

 

「おう」

 

 と、返事をする一夏だった。何かもうアップルパイを作る事は既に決定なんだな。俺が軽くジロッて睨んでも受け流しているし。アンタ等いつの間にかちょっと逞しくなってんだな。それと布仏、いつまでも俺の背中に被さってないで離れてくれ。

 

「――その情報、古いよ」

 

 ん? 教室の入り口から声が聞こえた。それに昨日俺に図々しい態度で案内しろって言ってきた声だなぁと思いながら振り向き……。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 そこには腕を組み、片膝を立ててドアにもたれていたのは凄く見覚えのある奴だった。 

 

(りん)……? お前、鈴か?」

 

「そうよ。中国代表候補生、(ファン)鈴音(・リンイン)。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

 思わず一夏が相手の名前を呼ぶと、向こうは頷いて名を名乗り宣戦布告した。

 

 誰かと思えば鈴だったか。あの強気な態度とツインテールは相変わらずだな。

 

「何格好付けてるんだ? すげえ似合わないぞ」

 

「全くだ。お前にそんな気取った喋り方は似合わん」

 

「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタたちは!」

 

 一夏と俺の突っ込みにやっと普通に喋った鈴。正直あの喋り方は軽く引いた。

 

「っていうか和哉! アンタ昨日よくもあたしを無視したわね!」

 

「ああ、スマンスマン。余りに図々しい態度だったから無視させてもらった。それに俺は前に言った筈だぞ。少しは相手に対して慎みを持て、とな」

 

「うるさいわね! アンタが案内してくれたら迷わなかったんだから!」

 

 強情な性格も相変わらずのようだな。以前から何度注意しても聞かないし。

 

「って和哉。アンタの背中に引っ付いてる子は誰なの? ひょっとしてアンタの彼女?」

 

「えへへ~。私かずーの彼女だってー」

 

「んな訳無いだろうが。ただの友達だ」

 

「いやいや、アンタとその子がとてもただの友達の関係には全然見えないんだけど」

 

 鈴の台詞に周りがウンウンと頷いている一夏達。失敬な奴等だな。

 

「それはそうと鈴、早く教室に戻れ。その方がお前の身の為だぞ」

 

「はぁ? 何をそんな偉そうに……」

 

 俺が忠告をすると鈴が顔を顰めているが……。

 

「おい」

 

「なによ?」

 

 

パシンッ!

 

 

 後ろから掛けられた声に聞き返した瞬間、鈴の頭には痛烈な出席簿打撃が食らう事となった。鈴の頭を叩いたのは言うまでも無く、一夏が鬼教官と称している我等が担任の織斑千冬さんだ。

 

「もうSHR(ショートホームルーム)の時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

「す、すみません」

 

 流石の強情な鈴でも千冬さん相手には逆らえないみたいだな。その態度は100%千冬さんに怯えているのが一目瞭然。

 

「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏! それと和哉! アンタ後で覚えてなさいよ!」

 

 一夏だけじゃなく俺もかよ。人が折角忠告してやってのに。

 

「さっさと戻れ」

 

「は、はいっ!」

 

 千冬さんの命令に二組へ猛ダッシュしていく鈴だった。

 

 それにしても、まさかあの鈴が中国の代表候補生とはな。正直驚いた。これはまた面倒な事が起きそうな気がする。

 

「っていうかアイツ、IS操縦者だったのか。初めて知った。和哉は知ってたか?」

 

「俺も初めて知った。ってか一夏、そんな事を言うと面倒な事になるぞ。ほら、そこ」

 

「え? ………あ」

 

 俺が指を差した方には……。

 

「……一夏、今のは誰だ? 知り合いか? えらく親しそうだったな?」

 

「い、一夏さん!? あの子とはどういう関係で――」

 

 箒とセシリアが一夏に詰めより、更にはクラスメイトからの質問集中砲火を喰らうのであった。愚か者め。もう少し周りを見てから発言するんだったな。

 

「ねぇかず~、あの人とどう言う関係なの~?」

 

「後で教えてあげるから、君は席に戻りなさい。早くしないと君の頭に出席簿が落ちる事になるぞ」

 

「分かった~」

 

 布仏に戻るように言って席に着いた瞬間……。

 

 

バシンバシンバシンバシン!

 

 

「席に着け、馬鹿ども」

 

 一夏に詰問していた面子の頭に千冬さんの出席簿が落ちた。

 

 そして本日もISの訓練と学習が始まるのであった。

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