インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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第25話

「和哉。お前箒に何かしたか?」

 

「何故俺にそんな事を訊くんだ?」

 

 俺が部屋で寛いでいる中、元気になった一夏がやって来て箒の事を訊いて来た。

 

 因みに布仏は今この部屋におらず、女子友達の部屋に行って談笑中だ。

 

「俺が部屋に戻ると箒がベッドに座って落ち込んでいたんだよ。俺の顔を見た途端急に部屋から出て行くし。あの箒があんなに落ち込むとなると、和哉が箒に何かキツイ説教でもされたんじゃないかと思ってな」

 

「………お前ってそう言う事に関してはやたらと鋭いんだな」

 

 恋愛に関しては滅茶苦茶ニブいくせに、よく落ち込んでいる箒を見ただけでそこまで分かるとは。感心すべきか呆れるべきか。

 

「じゃあやっぱり箒が落ち込んでいるのは……」

 

 俺が原因だと言おうとして来る一夏に……。

 

「言っておくがな一夏。今回は箒の自業自得だぞ。それとアイツは千冬さんの命令で明日懲罰部屋へ行く事になっている」

 

「なっ! ど、どう言う事だよ和哉!」

 

 理由を教えると今度は問い詰めるように言ってきた。

 

「何で箒が懲罰部屋へ行く事になるんだよ!? それにどうして千冬姉が……!」

 

「俺が千冬さんに報告したからな。で、話しを聞いた千冬さんは箒に処罰を下す事を決定したって訳だ」

 

「箒は何も悪い事なんてしてないだろう!」

 

「しただろうが。お前と鈴が襲撃者との戦闘中に、箒がアリーナのピットで大声を上げて敵に狙われたって馬鹿な行動を。それも生身で」

 

「け、けどあれは和哉が助けたから――」

 

「………はあっ。一夏。お前は箒が仕出かした事の重大さをまるで全然分かっていないみたいだから教えてやる」

 

 結果論を言おうとする一夏に、俺が声を低くするとすぐに黙った。

 

「確かに一夏の言うとおり、俺が守ったから箒は助かった。今回はセシリアのお蔭で箒がピットにいない事に気付いたから、アイツを助ける事が出来たからな。だがな一夏。もしあの時セシリアや俺が箒がいない事に気付かなかったら、アイツはどうなっていたと思う?」

 

「………………………………」

 

 俺の問いに一夏は考えながら徐々に顔を青褪めていた。恐らく箒が敵ISが放ったビームでお陀仏になっているのを想像したんだろう。

 

「その顔を見る限り、そこから先は言う必要が無いみたいだな」

 

「………………………………」

 

「だから一夏の言った結果論は、箒が運良く助かったに過ぎないだけだ。で、その当人である箒は自分が何をしたのか全く無自覚だったから、千冬さんが処分を下したって事だ」

 

 本当なら俺が箒に説教するつもりだったがな、と俺は付け加えて言う。

 

「これで分かっただろ一夏? 箒には処罰を下す理由があると」

 

「…………確かに理由は分かったよ。けど、いくらなんでも懲罰部屋はやり過ぎじゃ――」

 

「それは俺じゃなく千冬さんに言ってくれ。何だったら今すぐ千冬さんの所に行って、撤回するように進言したらどうだ? ま、いくら弟のお前でも聞き入れてくれないと思うが」

 

「うっ………」

 

 俺の予想に一夏は何も言い返さない。一夏自身も俺が言った通りの展開になると予想してるに違いない。

 

「だがな、今回の処罰はハッキリ言ってまだ軽い方だぞ。此処がもし軍の施設とかだったら、懲罰部屋なんかより重い処分が下されるか、下手したら退学って事もあり得る。箒がやった事はそれだけ周りに迷惑を掛けた事になるからな。自分だけじゃなく他の人間にも」

 

「そ、それはいくらなんでも飛躍しすぎじゃないか?」

 

「だったら千冬さんに訊いてみろよ。確かあの人は過去にドイツで教官をやってたんだろ? 軍経験のある千冬さんに聞けば、お前も納得出来ると思うがな」

 

「………ちょっと千冬姉に聞いてくる」

 

 そう言って一夏は部屋を出て行く。

 

「さてと、俺はトレーニングルームへ行くとするか」

 

 俺も部屋を出て目的の場所へと向かうのであった。

 

 

 

 

 そして翌日の朝。

 

「で、千冬さんの返答はどうだった?」

 

「………和哉の言うとおりだった」

 

 教室で席に着いてる一夏に結果を訊くと、どんよりとした雰囲気を漂わせながら予想通りの返答が返って来た。

 

 あの後に千冬さんがいる寮長室へと向かい、箒の処分と俺が話した事について訊くと一時間近く指導されたそうだ。そこまでされたって事は千冬さん自身も軽い処分だと思っていたんだろうな。そうでなきゃ一夏に一時間近く指導してないだろうし。

 

「あそこまで言われたら納得せざるを得なかった……」

 

「だろうな。で、肝心の箒は……」

 

 本日懲罰部屋で過ごす事になる箒を見ると、自分の席に座って大人しくしている。

 

「あの様子だと、ちゃんと反省している感じだな」

 

「昨日からずっとあの調子だったから、あんな箒を見たのは正直初めてだったぞ」

 

「それだけアイツも漸く自分のやった事に自覚したって事か。もし鈴みたいな行動を取ったらどうしようかと……ってそう言えば一夏。鈴とはあの後どうしたんだ?」

 

「鈴? ああ、それなら……」

 

 鈴の事を言ってる最中に俺は(鈴が一方的に起こした)喧嘩について訊くと、一夏は昨日の保健室で起きた事を一通り話してくれた。

 

「ふ~ん……お前から先に謝って鈴も許したのか」

 

「まあな。経緯がどうであれ、結果がどうであれ、悪い事をした事に変わりは無いからな」

 

「…………ま、お前がそれで良いなら別に構わないが」

 

 相変わらず一夏は女に甘いな。少しはもうちょっと主張しても良いんだが……とは言え、コイツがそう言う奴だからこそ、鈴は一夏に惚れているんだろうけど。

 

「あと約束の件はどうだったんだ? ちゃんと思い出したのか?」

 

「ああ、それなんだけど。正確には『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』だったんだ。やっぱり俺の記憶違いだった」

 

「ほう、それで?」

 

「ちゃんと思い出して鈴に『毎日味噌汁を~』とかの話かと思って訊いたけど、どうやら俺の深読みしすぎだった。鈴もそう言って笑い飛ばしてたし……」

 

「………………………」

 

 超鈍感な一夏がやっと気付いたってのにアイツと来たら……やっぱりヘタレだったな。折角のチャンスを自ら捨てるとは愚かしいにも程がある。

 

「これはどうやらまだ争奪戦が続きそうだ………」

 

「え? 争奪戦って?」

 

「こっちの話だから気にするな。で、どうせ鈴の事だから、お前にISの事について教えてあげるとか何とか言ったんだろ?」

 

 二人きりになりたいと言う打って付けの口実になるからな、って内心そう考えると一夏は少々ゲンナリしている。

 

「そうなんだよ。それからセシリアも来ては保健室で色々と騒ぎ始めてそりゃもう大変で――」

 

「和哉さん!」

 

「「ん?」」

 

 一夏が言ってる最中に突然俺を呼ぶ声がしたので、振り向くとセシリアが立っており、俺に問い詰めるかのように迫ってきた。

 

「どうしたセシリア。朝っぱらからそんな大声を出して。いつも優雅に振舞って――」

 

「今はそんな事どうでもいいです! 和哉さん、今日の放課後に鈴さんとIS勝負してください!」

 

「はあ?」

 

 セシリアの台詞に俺は思わず素っ頓狂な声を出す。

 

「何故俺がそんな事をしなけりゃいけないんだ?」

 

「あ~……それはだな、和哉、その……」

 

「ん? 一夏も何か知ってるのか?」

 

 まさか保健室での騒動に俺を引き合いに出したんじゃないだろうな。

 

「えっと……さっき保健室で色々と騒ぎがあったって言ったろ? 俺その時鈴に『和哉に教えてもらってるから遠慮しとく』って言ったんだけど……」

 

「あの方は和哉さんの実力を知らないで好き放題言ってましたの! わたくしを倒すほどの実力者と言ったのに、あろう事か……キ~~~~~! 思い出しただけで腹が立ちますわ~~~!」

 

「おいおい落ち着け、セシリア。ってか一夏、一体何があったんだ?」

 

「それが……」

 

 一夏がバツが悪そうな顔で保健室での出来事を説明し始めた。

 

 

 

 

 鈴とセシリアが保健室で騒ぎをしている最中のこと。

 

「とにかく! 一夏さんはわたくしと和哉さんが特別コーチしているから、あなたは必要ありませんわ!」

 

「はあ? 何で和哉が一夏に教えてんのよ。アイツって一夏と同じく素人じゃなかったの?」

 

「確かに和哉さんはISに乗って間もないですが、それでも強いですわ!」

 

「強いねぇ……確かに和哉が強いのは知ってるけど、あくまで生身ででしょ? IS戦では敵じゃないわ」

 

「あなたは和哉さんを甘く見ていらっしゃいますわね? あの方はIS戦でもかなりの実力を持っていますわよ! このわたくしを倒すほどに!」

 

「何? アンタ和哉に負けたの? 代表候補生のくせに、素人の和哉に負けるなんて情けないわね。どうやらイギリスの代表候補生ってそう大して強くないみたいね」

 

「な、な、何ですってぇっ!」

 

「お、おい鈴。そこまでにした方が……」

 

 鈴とセシリアの言い争いに一夏が止めようとするが……。

 

「そこまでおっしゃるんでしたら、あなたも一度和哉さんと戦ってみたらどうです!?」

 

「別に良いわよ。どうせ勝つのはあたしだから。それに和哉にはちょっとした恨みもあるし」

 

 全く聞いておらず、何故か鈴が和哉と勝負する事になっていた。

 

「和哉さんが勝ちましたら、もう勝手なことはしないでください!」

 

「アイツが勝てたらの話だけどね。その代わり、あたしが勝ったら一夏の特別コーチをするからね。無論あたしだけよ。良いわね?」

 

「ぐっ……! い、良いですわ! 万が一にも和哉さんがあなたに負けましたら、素直に身を引きましょう!」

 

「ちょ、ちょっと待てよお前等! 和哉に何の相談も無しにそんな勝手な事を……!」

 

 一夏が再度突っ込むが本人達は全く聞いておらず……。

 

「それでは明日の放課後、第三アリーナでやるから和哉に言っておいてよ。ま、分かりきった勝負だけど」

 

「そう言っていられるのも今のうちですわ! 覚悟しておきなさい!」

 

 もう勝手に勝負の日時も決められているのであった。

 

 

 

 

「と言う事があって……」

 

「そういうわけで和哉さん! 是非とも鈴さんに本当の敗北というものを教えてください!」

 

 一夏が一通りの説明を終えるとセシリアは暗に絶対勝てと言って来た。

 

「………お前等なぁ。人がいない間に勝手にそんな話し進めるなよ……はあっ」

 

 そして俺は話しを聞いてる内に呆れて、手を頭の上に置いて溜息を吐く。何で俺がそんな詰まらない理由で鈴と戦わなければいけないんだよ。思いっきり一夏争奪戦の騒動に巻き込まれてるじゃないか!

 

「ってか何で止めなかったんだよ、一夏?」

 

「あ、いや……とても俺じゃ止まらない雰囲気だったんで……」

 

「……………………」

 

「………………スマン、悪かった」

 

 俺の無言の睨みに一夏は根負けして謝ってくる。今更そんな事しても遅いんだが。

 

「……まぁ良いだろう。俺もISでの近距離戦が出来る相手と戦ってみたいと思ってたし」

 

 それに鈴には少し灸を据えておかないといけないしな。

 

「では和哉さん、放課後にお願いしますわ。それと必ず勝ってください」

 

「はいはい、分かったからそんな真剣に言わないでくれ」

 

 負けたら承知しないって目で訴えてるし。ったく。セシリアも箒と同様に一夏の事とお構いに無しに突っ走るなぁ。

 

「と、ところで和哉。鈴はお前に恨みがあるとか言ってたけど、お前アイツに何したんだ?」

 

 話題を変える一夏が俺に訊くと……。

 

「アイツが第三アリーナのピットの壁をISで破壊した事を千冬さんに報告したから……って言えば分かるか?」

 

「……ああ、そう言えば」

 

「……正直言ってそれは鈴さんの自業自得だと思いますが」

 

 鈴の恨みの理由を聞いた一夏とセシリアは呆れているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして放課後、第三アリーナにて……。

 

「さあ覚悟しなさい和哉! 約束通りギッタギタにしてやるんだから!」

 

「アレは鈴の自業自得なんだがな……ってかお前、代表候補生のクセして私情に走り過ぎだ」

 

 ISを展開している俺と鈴が対峙していた。

 

「アンタが余計な事をしなければ、あたしはあんな理不尽な目に遭わなかったのよ!」

 

「……はあっ。理不尽な事をしているのはお前だろうが、鈴」

 

 呆れる俺に鈴は全く聞いていない。一夏と仲直りはしても俺に対する恨みは相当あるみたいだな

 

 俺と鈴が対峙している中、この勝負を見ようとするギャラリーがたくさんいる。

 

『やっちゃえー凰さん!』

 

『あんな思い上がった男には力の差を見せ付けて~!』

 

『神代和哉~! もう調子に乗ってられるのもここまでよ~!』

 

『ギッタギタにやられちゃいなさーい!』

 

 殆どのギャラリーは鈴の応援ムード一色だった。まだああ言うのがいたんだな。本当に口だけは達者な連中だ。

 

 だが他にも……。

 

『和哉さん! その人にはもう遠慮なく勝って下さい!』

 

『と、取り敢えず和哉。応援してるから頑張れよ~』

 

『頑張ってかず~!』

 

『神代く~ん! 頑張って~!』

 

 セシリア、一夏、そして布仏や一組の女子達が俺を応援していた。

 

 因みに箒は懲罰部屋にいて此処には来ていない。

 

「ま、取り敢えずやるだけやりますか」

 

「和哉。前まであたしはアンタに力で言い負かされたけど、今は違うわ。この際アンタに格の差ってやつを教えてあげる」

 

「ほう? 随分強気な態度だな。ってか鈴。力で言い負かされたって言うが、お前の行動に問題があったから俺が説教しただけなんだが……そうやって自分を被害者面しないでくれ」

 

「人を問題児みたいな言い方しないでよね! アンタはいつもいつもそう言って偉そうに……!」

 

「事実を言ってるだけなんだがな……」

 

「もういいわ! 少しは手加減してやろうと思ったけど、アンタ相手にはそんな必要は無いみたいね! 本気でやるから覚悟しなさい!」

 

「是非そうしてくれ。加減したお前に勝っても面白くないからな」

 

 俺の台詞に鈴は背中に納めてた青竜刀――双天牙月――を構えて……。

 

「その余裕面……すぐに消してやるんだから!」

 

 俺に向かってくるのであった。

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