インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~ 作:さすらいの旅人
一先ずは一日一回更新する事にしますので、どうぞ宜しくお願いします。
プロローグ
二月の中旬。中学三年である俺、神代和哉は友人と一緒にある所へと向かっている。
「うー、寒っ……」
「だらしない奴だな。この程度の気温、北海道に比べたら暖かい方だぞ」
「そうは言っても寒いもんは寒いんだよ」
俺の隣では物凄く寒そうに言って来る俺の友人である織斑一夏。見た目は男の俺でも一目瞭然と言うくらい爽やかなイケメン。女子に物凄くモテるのは言うまでもない。だが残念な事に、この男は超が付く程の物凄い鈍感である。
例えるなら『付き合って下さい』と勇気を振り絞った女子からの告白を、『良いぜ。何処で買い物したいんだ?』と夢を粉々に壊すほどの鈍感だ。そんな超鈍感男である一夏とは中学一年からの付き合いだ。
「………なぁ和哉。俺の気のせいだと良いんだが、何か凄く失礼な事を考えてないか?」
「気のせいだろう」
顔を顰めながら訊いてくる一夏に俺は思い過ごしだと答える。コイツは女の事に関しては鈍感なくせに、こう言う事に関しては鋭いんだよな。
どうしてその鋭さを女の方へと持って行くことが出来ないんだと何十回も内心突っ込んだ事か。
「なら良いが。ところで、なんで一番近い高校の、その試験のために四駅乗らなきゃいけないんだ……。しかも今日、超寒いじゃねーか……」
「そんな事言われても困るんだがな……俺はあんまり大して寒くないがな」
寒さはどうでも良いが、試験に関しては一夏の言うとおりだった。
そうなってる理由は昨年に起きたカンニング事件により、各学校が入試会場を二日前に通知すると言う政府のお達しがあったからだ。無茶苦茶としか言い様が無いんだが、中学三年である俺達が文句を言い述べたところで状況は変わらなく、精々愚痴りながら試験会場に向かうのが関の山。
「しかしまぁ一夏。まさかお前が俺と同じ藍越学園を志望するとはな」
俺や一夏が受験する高校は私立藍越学園。そこは私立だと言うのに学費が格段に安い。
何故かと言うと、その学園の卒業生の進路、その九割が学園法人の関連企業に就職するからだ。
一時期の就職氷河期と呼ばれた時代ではないが、卒業後の進路まで面倒を見てくれる。おまけに就職先は殆ど優良企業で、地域密着型。突然の転勤により僻地に飛ばされる心配が無くて、将来が約束されているとも言える学園だ。
因みに俺は大学に行くより、早く就職していつでも独立出来るようにする為だ。
「いつまでも千冬姉の世話になってるわけにもいかないからな……」
一夏にはちょっとした事情があって両親がいなく、家族は年の離れた姉しかいない。姉である千冬さんに養われている弟の一夏であるが、本人はその事に引け目を感じている。
「だからと言って、中学を出てすぐに働くと聞いた時は少しばかり驚いたが」
「まあ、その時は千冬姉に無理矢理止められたけど……」
「主に腕力で、だろ?」
「………思い出してきたら体中痛くなってきた」
聞いた話では千冬さんに腕力を使っての説得をされたから、今はこうして受験生と言う訳である。
「千冬さんから必ず大学に行けと言われた筈じゃないのか? その言いつけを破ったらまたゴタゴタが起きると思うが」
「弟として、千冬姉を楽をさせたいんだよ」
「………相変わらず姉思いなことで」
と言うより一夏はシスコンの領域に入っているんじゃないかと思うくらい、かなりの姉思いだがな。
「お? 何だかんだ話してる内に着いたみたいだな」
試験会場に着いた俺と一夏はすぐに入る。俺は緊張していたが、一夏はその逆だ。何しろコイツは一年間猛勉強して模試での判定でAを取ってるから、普通に受ければ普通に受かる程の余裕があるからだ。俺は受かるか受からないかのどっちかだから緊張している。
まあそんなこんなで俺と一夏は典型的な公共事業の産物こと多目的ホールの中を進み、受験する教室を探している。しかし私立が市立の施設を借りると言うのもおかしな話なんだが、まあそこは地域密着型という大人のアレコレがあるんだろう。
「えーと……あれ? 和哉、此処はどうやって二階に行くんだ?」
「いや、俺もよく分からん」
と言うより、この施設は分かりにくい構造をしてるから全然方向感覚が掴めない。俺と一夏は完全に迷っている。
「しかしこの、『常識的に作らない俺カッコイイ』的な感じはなんなんだ?」
「此処はもはや非常識極まりない構造としか言いようがない。設計したデザイナーは自意識過剰な変わり者確定だな……。それより階段は何処にあるんだ?」
これは迷路としか言わざるを得ない。と言うかどうして案内図が無いんだ? こう言った所は案内図が無いと確実に迷ってしまう。
一夏は周りを見ながら俺と一緒に階段を探しているが……。
「………なぁ一夏、俺達……」
「………言うな」
完全に迷子になってしまった。
二人揃ってもう少しで高校生になると言うのに迷子になるとは……ハッキリ言って恥ずかし過ぎる。
「はぁっ……仕方ない。これはもう自力で探すのを諦めて誰かに聞くしかないな」
「いや、まだだ。次に見つけたドアを開けるぞ、俺は。それで大体正解なんだ」
「何の根拠でそんな事を言えるのかが俺には分からんが……って本当に開けるのかよ!」
俺の突っ込みに一夏は無視し、見つけたドアを開けて中に入った。俺も後を追うように中に入る。
「あー、君達、受験生だよね。はい、向こうで着替えて。時間押してるから急いでね。ここ、四時までしか借りれないからやりにくいったらないわ。まったく、何考えて……」
部屋に入ってすぐ、神経質そうな三十代後半の女性教師に言われる。忙しいのか、忙しさの余り判断能力が鈍っているのか……恐らく両方だな……。
そう思っていると女性は俺達の顔も見ず、指示だけ出してすぐに出て行ってしまった。
「着替え? なあ和哉、今日の受験は着替えまでするのか?」
「そんな話は聞いていないな……まさかカンニング対策じゃないだろうな」
「ああ、十分あり得る。大変だなぁ、どこの学校も」
一夏がそう言ってカーテンを開けると、奇妙な物体が鎮座していた。
「こ…これは……!」
俺は思わず驚きの声をあげた。俺と一夏の目の前には『城に飾ってある鎧』が二体あるからだ。しかも忠誠を誓う騎士のように跪いている。
いや、それは人型に近いカタチをしている鎧と言っていいだろう。俺と一夏はソレを知っている。この鎧は『
ISの正式名称は『インフィニット・ストラトス』。宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。
だが製作者の意図とは別に宇宙進出は一向に進まなく、とんでもないスペックを持っている機械は兵器へと変わってしまった。戦略兵器と呼ばれるほどに。だがそれは各国の思惑によりスポーツへと落ち着いた飛行パワードスーツとなっている。俺から言わせれば表向きの口上だ。
しかしこの兵器には重大とも言える致命的な欠陥がある。
その理由は……。
「これって男は使えないんだよな?」
「ああ。俺達から見ればマネキン同然だ」
ISが女にしか反応しないからだ。欠陥兵器もいいところである。
この欠陥兵器のせいで世界がどれだけ急変し、どれだけ混乱したか……そしてどれだけ愚か者共が増えた事か。言い出したらもうキリが無い。
「こんなオモチャの為に、よくもまあ必死になるもんだ」
「和哉、それ酷くないか?」
「現にそうだろ。コレ欲しいが為に色々な手段を駆使してるんだからな……それも子供の喧嘩みたいに」
「………お前、ISが嫌いなんだな」
一夏がそう言ってISに触れて……。
「別にIS自体が嫌いな訳じゃない。これを笠に着て思い上がるバカ女共が嫌いなだけだ」
俺も触れると……。
「「!?」」
突然、キンッと金属質の音が頭に響いた。
「な…何だ!? 頭の中に色々な情報が流れ込んでくる……!」
「お…俺もだ和哉!」
「一夏もだと!?」
さっきからISの基本動作、操縦方法、性能、特性、現在の装備、可能な活動時間、行動範囲、センサー精度、レーダーレベル、アーマー残量、出力限界等の情報が入って来る。
ソレ等の情報は全て熟知したように、修練した技術のように、全てが理解し把握出来る。
そして視覚野に接続されたセンサーが直接意識にパラメータを浮かび上がらせて、周囲の状況が数値で知覚出来た。
「おい一夏……これって……」
「あ…ああ……」
俺と一夏は顔を見合わせ、
「和哉、何で俺達はISを動かせるんだ?」
「…………そんなもん俺が聞きたい」
共にISを動かした俺と一夏は何が何だか分からなくなっている。
だがこれだけは言える。女にしか動かせないISが……俺達によって覆してしまった。